黒川杯
黒川杯(くろかわはい)は、東京高等検察庁検事長であった黒川弘務が、賭け麻雀を行ったにもかかわらず、国家公務員法で定められている懲戒処分を受けずに訓告に終わったことを受け、東京都千代田区霞が関の検察庁前で麻雀をすることによって行われている抗議行動である[1]。主催者は、「新基準の礎を築いてくれた黒川元検事長に敬意を表し」て開催したものであると発表している[2]。
開催までの経緯[編集]
2020年5月21日週刊文春にて、当時東京高等検察庁検事長であった黒川弘務が、産経新聞の記者2人と朝日新聞の記者1人と、賭け麻雀をしていたことが報道される。
法務省の川原隆司刑事局長は、「旧知の間で、レートはいわゆる点ピン。具体的に申し上げますと、1000点を100円と換算されるものでございまして、もちろん賭けマージャンは許されるものではありませんが、社会の実情をみましたところ高額と言えないレートでした」(1回の勝ち負けがおよそ2万円)と述べた[3]。
それに対し、国会議員鈴木宗男は「世間では2万円までなら賭け麻雀をやってもセーフだなというのが国民の受け止め」と国会で追及、これを揶揄した「黒川基準」という言葉も生まれた[4]。
第1回黒川杯[編集]
2020年5月30日、「旧知の間柄のような気がした人」[2] からなる市民グループが、第1回黒川杯を開催。中央合同庁舎第6号館前の歩道橋の階段下で麻雀をしようとした[5]。しかしそれを多くの警察官が制止し、道路交通法を根拠として「通行の妨げになる」と通告し、撤去を求めた[5]。参加者らの主張としては「通行を妨げない形ならば路上で麻雀を打つ行為は道路交通法に違反しない」という旨であった[6] が、これに対して警察側から公式な発表は2020年6月5日現在なされていない。途中からは、警察官が参加者と麻雀卓の間に体をねじ込んだり、参加者を押したりなどの妨害も始めた[5]。
検察庁前で麻雀卓を広げてから30分経過後も麻雀を開始できず、主催者は賭けが成立しないことを危惧した[4]。そのため参加者らは、公道での麻雀を問題視する警察官に対して譲歩し、日比谷公園への移動を始めた[5]。警察官も参加者と共に移動し、「ぶつかったら公妨(公務執行妨害)で逮捕だからな」などと参加者を威圧した[5]。参加者らは、日比谷公園の健康広場で改めて麻雀卓の準備を始めたが、そこでも警察官の強硬な態度は変わらず、参加者の一人は押し倒されて地面にたたきつけられた[5]。
その後、公園管理事務所職員が現れ、参加者らに「公園内の占用はやめてほしい」と撤去を求めた。警察官らも「公園法で決まっている」と主張。公園管理事務所職員の撤去要請と「公園法」を根拠に強硬な制止を続けた[5]。一方、参加者側は、この問題は公園管理事務所と主催者との問題であり、警察に対して民事不介入を求めた[5]。
16時30分に広場の閉園時間となり、麻雀は東3局で終了した[5]。開始前に定められた規則「半荘で賭け成立」の条件を満たさなかったため、金銭のやり取りは行われなかった[5]。
主催者は、「半荘できなかったのが非常に残念。黒川さんの遺志を継げずに申し訳ない。本当は賭けてカネをやり取りした後に反省するつもりだったんですけど、私の力不足です。お詫びさせていただきます」とコメントしている[5]。
主催者発表によると、参加者は「警察官の風貌をしたギャラリー60人程度を含め、100人程度に達した」[5]。
法的解釈[編集]
刑法第185条(賭博罪)は、「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」と定めており、法務省が黒川検事長の処分については説明したところによると、1万円から2万円程度の賭け事は遊びの範囲を超えておらず、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」に相当するとしている[7]。一方、自由民主党元幹事長の石破茂は、自身のブログで大審院の判例を紹介し、「金銭はその多寡にかかわらず許されないとされています」と反論した[8]。
一方で、法律には可罰的違法性(可罰性)という考えもある。この点について、元大阪地方検察庁特別捜査部主任検事の前田恒彦は、テンピンのレートで賭け麻雀をさせた雀荘経営者が賭博場開張等図利罪で起訴され有罪判決が出たことがあることを挙げつつ、いくらまでの金銭の賭けであればこれを欠くのかという基準を示すべきだと発言した[9]。
なお、負けた者の支払いが本人によって行われない場合(たとえば大会においてスポンサーがあり、勝者に賞金を提供するなど)、または勝った者の利益が本人の手に渡らない場合は賭博罪には当たらない。
社会的反響[編集]
第1回黒川杯[編集]
第1回黒川杯の開催がtwipla上で告知された[2]後、主にtwitter上において話題となった。町山智浩など著名人による本大会の紹介[10]の影響もあり、開催日時が公表されていない段階でJ-CASTニュースによる取材が行われる[11]ほどの注目度となった。
また、当日にやや日刊カルト新聞が生中継を行ない、その動画を元にした動画記録をネット上に公開している[12][13]。当日には写真週刊誌FLASHによる直接取材[14]や、TBS記者の取材[15]もあり、これらは後日記事として公開されている。
この件に関して、ネットメディアのみならず、TVメディアも報じる事態となった。サンデージャポンは5月31日放映回において、黒川検事長問題に絡めて黒川杯について報道し、テリー伊藤が「面白いね。こういうマージャンはどんどんやってほしいね」とコメントした[16]ことで、さらなる反響を招いた。
出典[編集]
- ↑ 賭けマージャン“黒川杯”「路上ダメ」…警察官の注意で検察庁前から日比谷公園に移動、ゲーム途中の解散で賭け成立せず 中日スポーツ、2020年5月30日発信、2020年6月4日閲覧
- ↑ 2.0 2.1 2.2 “【祝レート麻雀解禁!】検察庁前テンピン麻雀大会 - TwiPla” (日本語). 2020年6月6日閲覧。
- ↑ “黒川麻雀「レートはいわゆる点ピン」国会で法務省明かす「必ずしも高額とは…」(デイリースポーツ)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2020年6月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月4日閲覧。
- ↑ 4.0 4.1 “テンピン麻雀解禁記念!? 検察庁前麻雀大会「黒川杯」ルポ” (日本語). NEWSポストセブン. 2020年6月4日閲覧。
- ↑ 5.00 5.01 5.02 5.03 5.04 5.05 5.06 5.07 5.08 5.09 5.10 5.11 藤倉善郎 (2020年6月3日). “検察庁前で”賭け麻雀”!?「黒川杯」があぶり出した警察の横暴” (日本語). ハーバー・ビジネス・オンライン. 2020年6月4日閲覧。
- ↑ “黑川杯總轄|東8番|note” (日本語) (2020年6月1日). 2020年6月6日閲覧。
- ↑ “なぜ?黒川氏「訓告」止まり 内閣の責任問題回避か” (日本語). 西日本新聞ニュース. 2020年6月4日閲覧。
- ↑ “自民党・石破茂氏、黒川弘務検事長の訓告処分にブログで見解…「正直言って『もういい加減にしてもらいたい』との思いが募ります」” (日本語). スポーツ報知 (2020年5月23日). 2020年6月4日閲覧。
- ↑ “地検前でテンピン麻雀「黒川杯」を開催したら逮捕される? 賭博罪の告発の行方は(前田恒彦) - Yahoo!ニュース” (日本語). Yahoo!ニュース 個人. 2020年6月4日閲覧。
- ↑ “町山智浩さんはTwitterを使っています 「「法務省刑事局の公式見解によると、テンピン麻雀は問題ないらしいのでテンピン麻雀大会を公然と実施することになりました。...」/ Twitter”. 2020年6月6日閲覧。
- ↑ “賭け麻雀「黒川杯」、検察庁前で実施と告知 ジョーク?本気?発案者に聞くと...: J-CAST ニュース【全文表示】” (日本語) (2020年5月28日). 2020年6月6日閲覧。
- ↑ “第1回テンピン麻雀大会@検察庁前 黒川杯 - YouTube”. 2020年6月6日閲覧。
- ↑ “検察庁前テンピン麻雀大会「黒川杯」第一回大会 ~日比谷公園編!~ - YouTube”. 2020年6月6日閲覧。
- ↑ “テンピンなら合法?検察庁前でおこなわれた「賭け麻雀」” (日本語). 2020年6月6日閲覧。
- ↑ ““黒川レート”で抗議の賭け麻雀|TBS NEWS” (日本語). 2020年6月6日閲覧。
- ↑ “テリー伊藤氏、検察庁前で麻雀「黒川杯」に「どんどんやってほしい。警察が止める事はおかしい」(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース”. 2020年6月6日閲覧。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 「黒川杯」呼びかけ人に聞く - 酒井徹の網絡日誌
- 賭け麻雀「黒川杯」、検察庁前で実施と告知 ジョーク?本気?発案者に聞くと... - J-CASTニュース (2020年05月28日)
- テリー伊藤氏、検察庁前で麻雀「黒川杯」に「どんどんやってほしい。警察が止める事はおかしい」 - スポーツ報知(2020年5月31日)
- テンピン麻雀解禁記念!? 検察庁前麻雀大会「黒川杯」ルポ - NEWSポストセブン(2020年06月01日)
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