ポリコレカードバトル (インターネットスラング)
ポリコレカードバトルとは、2010年代後半からインターネットで広まっているスラングである。ポリティカル・コレクトネスに対する冷笑的な揶揄であり、差別的なスラングである[1]。
概要[編集]
2018年からインターネット上で広まり始めた。マイノリティの属性をカードゲームの手札に例え、多く持っているほど強いとされる。
英語圏でも似た 「race card」(人種を武器に利益を得ようとする)や学者が使う言葉では、1993年にエリザベス・マルティネスが発言した「Oppression Olympic」(抑圧オリンピック)という用語が存在する[2]。
マルティネスはその後、1998年に出版した単行本『De Colores Means All of Us: Latina Views for a Multi-Colored Century』において、「抑圧オリンピック」についてより幅広く執筆することになる。
この本の序文でアンジェラ・デイヴィスは、マルティネスは「彼女の話を聞いたことのある多くの人が認めるであろう言葉」を想起させた」と書き、マルティネスは「『抑圧オリンピック』に参加すること(あるいは苦痛の無益なヒエラルキーを作り出すこと)ではなく、人種差別、家父長制、同性愛嫌悪、グローバル資本主義による搾取を織り成す、ますます複雑化する支配のシステムに対する私たちの反対を強めるために、むしろ、根強く残る不正義に対する私たちの怒りを利用するよう促している」と述べている[3]。
自閉症の当事者でもある障害者.comのライターである遥けき博愛の郷は、このようなスラングが広まった背景として、「ポリティカル・コレクトネスが当事者でもない、ただ正義感を振り翳したい人の政争の道具とされてしまった事」が背景にあると指摘、「 いずれ「戦争」の尻拭いをさせられるのは、マイノリティのほうかもしれません。かといって、未だに差別表現へ固執した発信も残っておりますので「声を上げるな」というのも違います」と、当事者として複雑な思いを述べている[4]。
「ポリコレカードバトル」などと揶揄されている通り、ポジショントークやクレームのぶつけ合いも目立ってきました。さながら「戦争状態」とも形容できる現況は、結局のところ別の生きづらさに覆いつくされてしまっただけにも思えます。「日経COMEMO」に投稿されたコラムでは「変えようのない過去を掘り返して現代の基準で断罪するばかりでは、いずれ社会がアップデートされなくなる」と警告されています。
コラム投稿者の意見はこうです。「過去の罪を何でも水に流せという訳ではなく、寧ろ償われるべき。しかし、社会の価値観が変わっていく以上、今当たり前のことが将来『許されざること』に変わるのは十分あり得る」「繰り返すが、罪を有耶無耶にせよということではない。ただ、責任を個人に負わせて終わりではなく、どう社会をアップデートさせていくか皆で考えることが大切なのだ」「それなのに過去をいつまでも責められ続けるようでは、社会の価値観を変えていく意欲など生まれてこない」
いずれ「戦争」の尻拭いをさせられるのは、マイノリティのほうかもしれません。かといって、未だに差別表現へ固執した発信も残っておりますので「声を上げるな」というのも違います。ポリコレが新たな戦争状態を作っていくさなか、何ができるというのでしょうか。 — 遥けき博愛の郷
「日経COMEMO」に投稿されたコラムでは、このようなスラングが生まれてしまった背景には、「断罪」を優先する現代社会の構造が問題であるとしている。また、「断罪するばかりでは、いずれ社会がアップデートされなくなる」と警告している[5]。
ルール[編集]
主なルールとして広まっているものは、下記の通りである。
- 手札を用意する(しなくてもよい)。
- 対戦を申し込む。相手はカードを持っている人なら誰でもよい。 対戦を申しまれた者は拒否することは出来ない。拒否=負けだからである(例外はある)。 申し込まなくてもオーディエンスが勝手に始める事もある。
- バトルを始める。あらゆる場所・状況を問わず始める事ができ、またポリコレカードバトルは全てにおいて優先されるべき事項である。このためバトルを批判する者には社会的批判が許されているので、対戦前に排除することでクリーンなバトルができる。
- 手札からカードを発動して攻撃する(発動枚数制限は無い)。手札が尽きても途中で創造すればいい、というか基本戦術。所謂セットカード(伏せカード)も何枚でも伏せることが出来、任意のタイミングで発動可能。
- オーディエンスが好きなタイミングで勝敗を決める。競技者のサレンダー(降参)は可能。
- 特典を貰う。ただし勝者が受け取れるとは限らず、オーディエンスのみが貰う場合もある。
関連用語[編集]
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ↑ “戦争化していくポリコレと生きづらさの源泉 - 成年者向けコラム” (日本語). 障害者ドットコム. 2023年10月27日閲覧。
- ↑ “Angela Y. Davis & Elizabeth Martínez – Center for Cultural Studies”. culturalstudies.ucsc.edu. 2023年10月27日閲覧。
- ↑ Martínez, Elizabeth Sutherland (1998). De colores means all of us: Latina views for a multi-colored century. Cambridge, Mass: South End Press. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 978-0-89608-583-1
- ↑ “戦争化していくポリコレと生きづらさの源泉 - 成年者向けコラム” (日本語). 障害者ドットコム. 2023年10月27日閲覧。
- ↑ “「キャンセルカルチャー」がカルチャーを殺す日 〜「内ゲバ」としてのキャンセルカルチャー|若宮和男(メタバースクリエイターズ/uni'que/アート思考キュレーター/福岡女子大客員教授)” (日本語). 日経COMEMO (2021年8月10日). 2023年10月27日閲覧。
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