開智中学校生徒自殺事件
開智中学校生徒自殺事件(かいちちゅがっこうせいとじさつじけん)は、日本で起きた自殺事件。
概要[編集]
事件の流れ[編集]
2006年5月に後に自殺することとなる開智中学校3年生の生徒は、校内で他の生徒が盗難しているところを目撃する[1]。6月に盗難を目撃したことを教師に打ち明けた。同年7月3日にもこのことを教師に話し、母親にも事件を告げた。翌7月4日に普段どおりに家を出たが登校せず、午後1時45分ごろに越谷市内の駅で電車に飛び込んで自殺した[2]。自殺当日の警察署での母親の証言では、自殺前日に体育の授業中に他の生徒からボールを頭にぶつけるということをされていた[3]。担任教師への証人尋問では、他の生徒に殴られて鼻血を流していたということがあった[1]。
自殺した生徒の両親は、学校は盗難事件の解明を怠ったことで生徒に精神的苦痛を与えたことと、自殺した当日に午後まで欠席確認を保護者にしなかったことは安全確認義務違反であるとして、学校法人開智学園と教師を相手取り裁判が行われることとなった[2]。
裁判[編集]
裁判では生徒の両親は学校側の欠席確認義務違反、全容解明義務違反、調査報告義務違反などを主張する。これに対して学校側は全てを否定して争う[4]。
2008年7月18日にさいたま地方裁判所で判決が下される。ここでは両親の主張に対して学校側の一部の過失が認められる[5]。原告は学校側の欠席確認義務違反、全容解明義務違反、調査報告義務違反、不誠実な発言を主張していたのに対し、調査報告義務違反のみが認められたというものであった[6]。
欠席確認義務違反については、生徒が欠席した場合に、生徒の身に危険が発生するような事態を具体的に予見することが可能な場合のみに認められ、この場合には学校が自殺を予見することは不可能で、欠席確認をしなかったことは違法ではないとされた[6]。
全容解明義務違反については、自殺した生徒が盗難事件の被害者であったならば法的保護に値する利益はあるが、この場合には自殺した生徒の利益とは極めて間接的であるため、解明する義務は無いとされた。仮に盗難事件を目撃したために報復的に嫌がらせをされるようになったならば、解明することで嫌がらせをやめさせる利益があるが、嫌がらせを受けている根拠が無いため認められないとされた[6]。
調査報告義務違反については、学校は信義則上、親権者等に対して生徒の自殺が学校に起因するかどうかを解明可能な程度に調査して報告する義務がある。自殺した生徒は盗難事件の犯人とされた生徒とトラブルがあったことと、自殺前日に他の生徒にボールをぶつけられていたため、他の生徒との間でトラブルを抱えていたことは考えられる。このため自殺した生徒へのいじめが存在して、それを苦にして自殺したことも考えられるため、学校側がいじめの調査をしないで、自殺の動機は学校生活とは無関係として格別な調査をしなかったことは拙速に過ぎる。学校側が他の生徒からの情報収集をせず、自殺には学校生活上には何の原因も無いと判断したことは、学校に課された責任を認識していないか軽視している。このため学校には調査報告義務違反があると認められた[6]。
学校側の不誠実な発言については、遺族の感情を害するものであったとしても、不法行為として評価するほどの違法性は無いとされた[6]。
関連項目[編集]
脚注[編集]
出典タイトルに自殺当事者の氏名が含まれる場合はAと伏せている。
- ↑ 1.0 1.1 “開智学園・Aくん(中3・14)自殺事件 証人尋問。”. 武田さち子. 2023年4月4日閲覧。
- ↑ 2.0 2.1 “開智中学校 中3自殺で両親が提訴”. アクセス教育情報センター. 2023年4月4日閲覧。
- ↑ “開智学園のAくん(中3・14)自殺事件の判決”. 武田さち子. 2023年4月4日閲覧。
- ↑ “Aくん(中3・14)自殺事件裁判(4/13)の傍聴報告”. 武田さち子. 2023年4月4日閲覧。
- ↑ “中3自殺「調査怠った」 学校に22万円支払い命じる”. INTERNET ARCHIVE. 2023年4月4日閲覧。
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 “開智学園のAくん(中3・14)自殺事件の判決”. 武田さち子. 2023年4月4日閲覧。
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