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警察署

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警察署(けいさつしょ)とは、地域の警察の本部や事務所のこと。警察符牒ではPS(ぴーえす)と略称されることがある。

日本[編集]

日本では警察法第53条を根拠に設置されている。内部の組織を指すと同時に、庁舎そのものも指す語である。2023年4月1日現在、1,150の警察署が設置されている。 近年では、一部の都市部においては人口増加により署が新設される一方、地方では市町村合併に伴う管轄の変更や署名の変更、さらには統合により署を廃止し「幹部交番」への降格が行われる署もある。なお、設置数は警視庁(東京都)が最大(102署)で、最小は鳥取県警察(9署)である。警視庁の数が最大である理由は単に東京都の人口が多いだけではなく、日本の首都あるいは国際都市として、多数かつ複雑な犯罪が起きるためである。そのため、上記のように署数だけではなく、警察署の組織においても組織犯罪対策課が置かれるなど犯罪への対策が強化されている。

規定・定義[編集]

都道府県の区域を分かち、その各地域を管轄する警察署を置くと定められている。警察署の名称、位置及び管轄区域は、警察法施行令第5条で定める基準に従い、都道府県の条例で定められる。警察署には警察署長が置かれ、警察署長は都道府県警察の長、方面本部長、市警察部長等の指揮・監督を受け、その管轄区域内における警察の事務を処理し、所属の警察職員を指揮監督する。警察署の下部機構として、交番・派出所・駐在所を置くことができる。(警察法第53条)

  • 通常、警察署は1または複数の市町村を管轄するように置かれるが、特別区や政令指定都市、中核市など人口・面積の大きい市区では、1市区内に複数の警察署を置く場合も多い。また、市の一部と周辺市町村というように、行政区画と一致しない場合もある。
  • 原則として警察署の課長のうち、実際に捜査活動を行う部署(概ね警務課・会計課以外の課)の長は警部以上の階級者でなければならない。これは逮捕状の請求を各課の権限で行うことができるようにするためであり(刑事訴訟法第199条第2項)、そうでなければ各課による捜査活動に支障が生じるからである。大規模な警察署の主要な課長には警視が就く場合もあるが、ほとんどの課長は警部である。警務課・会計課などの場合は、警部相当の職階にある事務吏員を課長とする場合もある。
  • 署長の階級は警視正または警視の階級にある警察官でなければならないとする旨が、一般に都道府県の条例・都道府県公安委員会の規則で規定されている。概ね大規模・主要な警察署の場合は警視正、それ以外の警察署の場合は警視が充てられる。
  • 人事に関しては、署に属する警察官のうち地方公務員である警視階級者までならば、署長に裁量権が委ねられている。

庁舎[編集]

警察署の庁舎は、知事部局との調整、予算折衝に基づき都道府県警察本部が設置する。庁舎の建設発注も警察本部が行う。

また、庁舎の建て増しや建て直しなども計画的に行われている。老朽化も一因であるが、阪神・淡路大震災に鑑み、警察署や消防署など防災拠点が倒壊した事例により、耐震性を高める附帯工事が必要になったからである。耐震性を高めるにも予算的に新築の方が安く上がれば、新築する例も多い。

一般的な警察署には留置場や道場、講堂、取調室、駐車場、拳銃保管庫、霊安室などが設置されている。また、一部の警察署には射撃場などが設置されているところもある。

また道場は一般市民に開放される場合があり、現役警察官が非番の日を利用して、少年犯罪予防と心身の健全な育成を図るべく、柔道・剣道・空手などの各種武道教室を地元の子供達向けに開催する事もある。さらに家宅捜索で押収した証拠品・盗品が並べられる場所も警察署の道場で、報道陣に公開されることも多い。

なお日本の警察署は、道路使用許可や運転免許関連の手続きなどで一般市民も出入りする事が多いが、しばしば護送中の被疑者や、警察官職務執行法などにより保護した者・同行させた者も表玄関から出入りさせることがあり、一般市民の目に触れる場合がある。また、警察署自体は24時間署員が勤務しているが各種手続きは受付時間が限定されていることもあり(他の官公署同様、午前8時半から午後5時までとなっている)、また市街地にある署では来訪者のための駐車場も併設されていない場合もあるので、事前に訪問する署に電話などで確認すると良い。

2000年代以降に建設された警視庁の庁舎などでは、独身寮を併設しているケースがある。

警察署長[編集]

権限

一地域での警察の権限を行使する警察署の最高責任者なので、所属長としての一般的な監督権限のほか、法令により各種の権限が与えられる。

  • 主な権限
    • 消防法の規定に基づき大規模なガス、火薬又は危険物の漏洩、飛散又は流出等の事故が起きた場合において現場に消防吏員、消防団員が居ない時は警察署長の指揮により火災警戒区域を設定することができる(消防法第23条の2第2項)。
    • 死体を解剖した者は、その死体について犯罪と関係のある異状があると認めたときは、二十四時間以内に、解剖をした地の警察署長に届け出なければならない。(死体解剖保存法 第11条)
    • 警察署管轄区域内における警察の事務処理・所属警察職員の指揮監督(人事裁量・庁舎管理など)(警察法第53条第3項)
    • 管内の交通規制のうち、道路標識により1か月を越えない期間行なわれる一定範囲のもの(道路交通法第5条第1項、道路交通法施行令第3条の2)
    • 管内の道路使用許可(道路交通法第77条)
    • 自動車の保管場所の確保等に関する法律に関する事務の処理(自動車の保管場所証明書の交付(同法第3条)、保管場所標章の交付(同法第6条)等)
    • 児童福祉法に基づく児童相談所との連携
    • ストーカー規制法に基づく処分、命令等
    • 風俗営業法に基づく風俗営業に係る営業所への立入検査  
    • 司法警察員としての犯罪捜査(刑事訴訟法各条)。例えば、下記の通り。
      • 逮捕状の請求、請求により発せられた逮捕状による被疑者の逮捕(同法第199条)
      • 逮捕された被疑者の留置(同法第203条)
      • 差押、捜索、検証、身体検査の令状の請求、発せられた令状の執行(同法第218条)
      • 検察官の指示に基づく変死者又は変死の疑いのある死体の検視(同法第229条)
      • 告訴・告発の受理(口頭で受けた場合は調書の作成)、それに基づく捜査、検察官への送致(同法第241~246条)
    • 遺失物法に基づく遺失物の売却処分

組織の構成[編集]

1960年代以降、順次課制になり、現在では警察署の規模によって「刑事生活安全課」、「刑事組織犯罪対策課」、「交通地域課」のように2つ以上の課が統合されていることもある。逆に「地域第二課」、「刑事第一課」のように2つ以上の課に分割しているところや課の一部または全部を置かず係のみ置く所もある。

  • 警務課
    各種受付、警察相談、留置管理、人事・厚生事務等、警察署の庶務一般。
  • 会計課
    拾得物受理・管理、給与事務、予算執行、庁舎管理、備品管理等。小規模署では警務課の中に「会計係」として置かれている。交番等で受理した拾得物はこの会計課へ集約され、遺失物法に基づき返還への措置、保管等が行われる。
  • 生活安全課
    防犯活動、行方不明者届、風俗営業、ストーカー事件・少年事件・環境事件・サイバー事件などの捜査。かつては「防犯課」「保安課」と呼ばれていた。
  • 地域課
    交番・駐在所、パトカーの運用、雑踏警備など。かつては「外勤課」「警ら課」と呼ばれていた。規則により警察署によっては、地域課に警察署の所在地付近の区域を管轄する交番としての機能を持たせて、パトロールや巡回連絡などを行っている場合がある。これは「署所在地」と呼ばれ交番の一つとみなされる。
  • 刑事課
  • 留置管理課
    留置場や勾留されている被疑者の身柄管理。留置管理課がない警察署では人権問題上、警務課所属の「留置管理係」になっている事が多い。
  • 交通課
  • 警備課
    共産党、過激派等の視察、テロ対策、密入国事犯、警衛・警護、災害対策、雑踏警備など。
  • 組織犯罪対策課
    銃器・薬物捜査(かつては生活安全課の担当)、暴力犯捜査(かつては刑事課の担当)など。独立した課として置いている県は少なく、多くの県では刑事課の組織犯罪対策係として活動している。
  • 一部警察署には課長の上に刑事担当次長、地域・交通担当次長等、その他地域でも大規模警察署を中心に管理官として「刑事官」「交通官」「地域官」という職が存在する。これらの階級は警視である。複数の課がある部門の統括を行なう。

日本の警察署の関連用語[編集]

  • 交通安全協会
  • 防犯連絡所
  • 一日署長
  • 警備派出所
  • 警察署協議会


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