東日本大震災における首都圏鉄道各線の運転再開時刻
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東日本大震災における首都圏鉄道各線の運転再開時刻(ひがしにほんだいしんさいにおけるしゅとけんてつどうかくせんのうんてんさいかいじこく)では、2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響により運休した首都圏の鉄道各線の運転再開時刻をまとめたものである。
概要[編集]
この地震により関東地方で震度4から5強の強い揺れが観測され地震発生直後より東日本旅客鉄道(JR東日本)は新幹線と在来線の運転を終日見合わせ、関東・首都圏では私鉄と地下鉄の全線が運行を停止した[1]。沿岸付近の路線では津波の襲来に備える態勢が取られた。その後、運転再開に向けた点検・復旧作業等は度重なる余震の中で進められた。首都圏ではこの影響で100万人を超える帰宅難民が発生し、大きな社会問題と化した。このことは、今日までのインフラ防災強化のきっかけとなっている。
地震発生時の対応[編集]
首都圏において大規模地震が発生した場合には以下のような対応が定められている[2]。
【事例1】[編集]
〇強い地震(震度4以上)を計測したときは、指令は全列車を一旦停止させる。
〇震度4の場合、指令の指示により55km/h以下で次駅又は先行列車が停止していた位置まで注意運転し、安全が確認できれば通常の速度で運転する。
〇震度5弱の場合、指令の指示により25kmh以下で次駅又は先行列車が停止していた位置まで注意運転し、安全が確認できれば通常の速度で運転する。
〇震度5強以上の場合、保守係員が要注意箇所について点検を行い、安全が確認できるまで運転を中止する。
【事例2】[編集]
指令から全列車に対し「注意運転(運転速度の規制なし)」を一斉に列車無線により指令する。各列車は、先行列車が停止していた駅まで注意運転し、運転士から異常ない旨の報告を受けて注意運転を解除して通常運転とする。
全列車に対して列車無線により音声で「緊急停止」指令を自動的に発信する。また100ガル以上の場合は、「緊急停止」指令の発信を行うとともに停止信号を現示させる。なお、この停止信号は30秒後に自動的に復帰する。
・40ガル以上80ガル未満各列車は、先行列車が停止していた駅まで25km/h以下で注意運転し、運転士から異常ない旨の報告を受けて速度制限を解除する。また、保守係員が列車添乗による目視点検を行い、異常がなければ注意運転を解除して通常運転とする。
各列車は、先行列車が停止していた駅まで15km/h以下で注意運転し、運転士から異常ない旨の報告を受けて速度制限を解除する。また、保守係員が列車添乗による目視点検を行い、異常がなければ注意運転を解除して通常運転とする。
・100ガル以上
駅間に停止した列車は、停止した位置から次駅まで5km/h以下で移動し、運転を見合わせる。保守係員が徒歩点検を行い、異常がないことを確認し運転を再開する。その際、先行列車のあった駅まで25km/h以下で注意運転し、運転士から異常ない旨の報告を受けて注意運転を解除して通常運転とする。
【事例3】[編集]
地震発生による運転規制は、線路の条件により規制区間を3つに分けている。なお、運転中止とした場合、線路の変形、倒壊物による支障がないかどうかを巡回により点検し、異常がないことを確認できた区間から運転を再開する。運転再開時の初列車の運転速度は、貨物列車が25km/h以下、それ以外の列車が35km/h以下としており、初列車で異常動揺等がないことが確認できれば次列車以降は通常の運転速度とする。ただし、仮復旧による運転再開の場合は、運転速度を制限した上で運転することがある。
- 規制区間は、3カイン以上6カイン未満が速度規制、6カイン以上が運転中止。
- 規制区間は、6カイン以上12カイン未満が速度規制、12カイン以上が運転中止。
- 規制区間は、9カイン以上18カイン未満が速度規制、18カイン以上が運転中止。
※規制区間:規制区間及び規制区間以外。
※規制区間:地震時に落石の可能性がない区間。
※規制区間:地震時に落石の可能性がなく、「耐震設計指針」以降の設計標準等で設計し、建設された区間。
運転再開が遅れた原因[編集]
駅・駅間の施設点検等で多くの鉄道事業者が、道路渋滞で施設点検復旧のための要員移動及び資材運搬に時間を要した。また携帯電話等が繋がりにくい状態であったため点検者への連絡(情報収集含む。)・指示に支障を来し、実際に点検復旧作業を行う協力会社への連絡が困難であった。さらに列車が駅間に停止したため踏切が長時間閉じた状態となったため、道路が渋滞し点検復旧作業用自動車の移動に時間を要したり、運転を停止している区間において、乗客以外の一般の人が線路内を通行していたため、復旧が困難な事例もあった[2]。
運転再開[編集]
発生からおよそ6時間後の20時過ぎから30km圏・80km圏とも運転を再開しはじめ、翌日0時には30km圏で38%、80km圏で24%の運転再開率であった。その後、翌日4時から運転再開率はさらに上昇し、14時には30km圏で95%、80km圏で80%となり、3月13日の7時には30km圏で100%、80km圏で93%の運転再開率であった。なお、東京駅から30km圈内において3月12日午前0時までに運転を再開した39線区(11鉄道事業者)のうち37線区(10鉄道事業者)において終夜運転を含め運行時間の延長が行われた[3]。
JR東日本[編集]
路線 | 再開時刻 | 備考 | 損壊等 |
---|---|---|---|
東北線(宇都宮線) | 3月12日午前8時40分 | ||
常磐快速線 | 3月12日午前9時5分 | ||
常磐緩行線 | 3月12日午前9時5分 | ||
武蔵野線 | 3月12日午前10時40分 | ||
総武快速線 | 3月12日午前8時25分 | ||
中央総武線緩行線 | 3月12日午前8時5分 | ||
京葉線 | 3月12日午後2時 | ||
埼京線 | 3月12日午前8時5分 | ||
山手線 | 3月12日午前8時35 | ||
山手線 | 3月12日午前8時35 | ||
中央快速線 | 3月12日午前7時30分 | ||
湘南新宿ライン | 3月12日午前8時50分 | ||
横須賀線 | 3月13日午前4時30分 | 津波警報発令による点検作業の遅れ | |
東海道線 | 3月12日午前8時 | ||
南武線 | 3月12日午前7時35分 | ||
鶴見線 | 3月13日午前5時45分 | 津波警報発令による点検作業の遅れ | |
横浜線 | 3月12日午前7時 | ||
京浜東北線 | 3月12日午前8時50分 | ||
根岸線 | 3月12日午前8時50分 | 桜木町以北で運転再開 |
私鉄・地下鉄[編集]
路線 | 再開時刻 | 備考 | 損壊等 |
---|---|---|---|
東武伊勢崎線 | 3月12日午前8時57分 | ||
東武亀戸線 | 3月12日午後1時 | ||
東武大師線 | 3月12日午後1時 | ||
東武野田線 | 3月12日午前8時40分 | ||
東武東上本線 | 3月12日午前5時54分 | ||
西武池袋線 | 3月11日午後9時55分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
西武新宿線 | 3月11日午後9時55分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
西武拝島線 | 3月11日午後9時55分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
西武国分寺線 | 3月11日午後9時55分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
西武豊島線 | 3月11日午後9時55分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
西武多摩湖線 | 3月11日午後9時55分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
西武多摩川線 | 3月11日午後9時55分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
西武有楽町線 | 3月12日午前5時46分 | ||
京成本線 | 3月12日午前6時20分 | ||
京成押上線 | 3月12日午前6時41分 | ||
京成千葉線 | 3月12日午前6時46分 | ||
京成金町線 | 3月12日午前6時33分 | ||
新京成線 | 3月12日午前6時 | ||
京王京王線 | 3月11日午後10時10 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
京王相模原線 | 3月11日午後10時10 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
京王井の頭線 | 3月11日午後10時10 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
京王高尾線 | 3月11日午後10時10 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
京王新線 | 3月11日午後10時10 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
京王多摩動物公園線 | 3月11日午後10時10 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
京王競馬場線 | 3月11日午後10時10 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
小田急小田原線 | 3月12日午前0時 | ||
小田急多摩線 | 3月12日午前0時 | ||
小田急江ノ島線 | 3月12日午前0時 | 3月12日午後6時16分全線で運転再開 | |
東急東横線 | 3月11日午後10時30分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
東急目黒線 | 3月11日午後10時30分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
東急田園都市線 | 3月11日午後10時30分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
東急大井町線 | 3月11日午後10時30分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
東急池上線 | 3月11日午後10時30分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
東急多摩川線 | 3月11日午後10時30分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
東急こどもの国線 | 3月11日午後10時30分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
東急世田谷線 | 3月11日午後10時30分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
横浜高速鉄道みなとみらい21線 | 3月11日午後10時44分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
京急本線 | 3月12日午前4時52分 | ||
空港線 | 3月12日午前5時19分 | ||
大師線 | 3月12日午前5時7分 | ||
相模鉄道本線 | 3月11日午後9時41分 | 3月11日から3月12日午前4時45分にかけて終夜運転を実施 | |
東京臨海高速鉄道りんかい線 | 3月12日午前6時22分 | ||
流鉄流山線 | 3月11日午後4時20分 | ||
北総線 | 3月12日午前6時10分 | ||
東葉高速線 | 3月12日午前5時7分 | ||
埼玉高速鉄道線 | 3月11日午後9時20分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
首都圏新都市鉄道(つくばEXP) | 3月12日午前9時 | 3月12日午後0時20分八潮~おおたかの森運転再開・3月13日午前6時30分全線運転再開 | |
銀座線 | 3月11日午後8時40分 | 3月11日午後8時40分~午後9時43分・午後10時50分~午後11時57分に運転再開。その間、渋谷駅ホーム上混雑のため運転見合わせ。3月12日0時44分から終夜運転を実施 | |
丸の内線 | 3月11日午後11時 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
日比谷線 | 3月11日午後11時32分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
東西線 | 3月11日午後11時8分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
千代田線 | 3月11日午後10時35分 | 3月11日午後10時35分~3月12日午前0時12分に運転再開。3月12日0時35分から終夜運転を実施。その間、北千住駅ホーム上混雑のため運転見合わせ。 | |
有楽町線 | 3月11日午後10時15分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
副都心線 | 3月12日午前0時 | ||
半蔵門線 | 3月11日午後8時40分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
南北線 | 3月11日午後9時 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
浅草線 | 3月11日午後9時20分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
三田線 | 3月11日午後9時15分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
新宿線 | 3月11日午後10時45分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
大江戸線 | 3月11日午後8時40分 | 3月11日から3月12日にかけて終夜運転を実施 | |
横浜市営地下鉄1・3号線(ブルーライン) | 3月11日午後11時15分 | 翌日午前3時58分まで終電を延長 | |
横浜市営地下鉄4号線(グリーンライン) | 3月11日午後11時19分 | 翌日午前3時58分まで終電を延長 | |
東京モノレール羽田空港線 | 3月12日午前4時58分 |
運転再開後の影響[編集]
全国の原子力発電所一斉停止による電力不足から、各鉄道会社は大幅な運行変更や運休が生じた。(優等列車の終日運転取りやめ・日中の運行停止など) 後日、国土交通大臣はJR東日本㈱に対し、3月11日の地震発生から間もない時間に終日運転を見合わせを発表したことへ、苦言を呈した。
また、首都圏の鉄道会社では毎年3月11日の地震発生時刻に列車一斉停止訓練と称し、大規模地震が発生したという想定で全線で一時的に列車を止める訓練を行っている。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 地震直後のツイート地図表示 - 「3.11」思い起こして 地震直後のツイート地図表示
- [1] - 〔帰宅難民・体験リポート〕地震後、徒歩で自宅へ
- [2] - 3.11の東京。2時46分以降の1日を振り返る【画像集】
- [3] - 【検証!】大阪北部地震、企業や自治体の帰宅困難者対策は機能したか?
出典・引用[編集]
- ↑ 1.0 1.1 1.2 “地震:運転見合わせ JR東、私鉄、地下鉄など”. 毎日jp(毎日新聞) (2011年3月11日). 2011年3月13日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2011年3月11日閲覧。
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 “鉄道:「大規模地震発生時における首都圏鉄道の運転再開のあり方に関する協議会」報告書について - 国土交通省”. www.mlit.go.jp. 2021年2月14日閲覧。
- ↑ 3.0 3.1 3.2 “大規模地震発生時における首都圏鉄道の運転再開のあり方に関する協議会報告書”. 大規模地震発生時における首都圏鉄道の運転再開のあり方に関する協議会. 2021年2月13日閲覧。
- ↑ 4.0 4.1 Company, The Asahi Shimbun. “震災直後の鉄道運転再開、どう判断 国交省、首都圏調査” (日本語). asahi.com. 2021年2月16日閲覧。
- ↑ “写真で見る西武ヒストリー(後編)”. 西武電鉄. 2021年2月閲覧。
- ↑ “東日本大震災からの復旧および支援活動”. 京王電鉄. 2021年2月閲覧。
- ↑ “東日本大震災当日の状況と危機管理体制の見直し|安全報告書2011|企業・IR情報|小田急電鉄”. www.odakyu.jp. 2021年2月16日閲覧。
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