キリ・テ・カナワ
キリ・ジャネット・テ・カナワ[1]（Kiri Janette Te Kanawa,[2] 1944年[3]3月6日[4] - ）は、ニュージーランドのソプラノ歌手。[5]
ギズボーンにて[6]クレア・マリー・テレサ・ローストロン(Claire Mary Teresa Rawstron)[7][8]として生まれる。実母は作曲家のアーサー・サリヴァンの遠戚、父はマオリ族で「輝かしい銀色のテノールの声」を持っていたが、35歳で結核で亡くなったとされる。[9][10][11]生後五か月の時[3]に両親からトーマスとネルのテ・カナワ夫妻[12]の所に養子に出されている。[13][14]幼少期から歌うことを好み、楽才を見込んだ義母の尽力により[15]1958年からオークランドのセント・メリーズ・カレッジ[16]に通学し、[17]メアリー・レオ・ニコル[18]とジョニー・ワイティティ[19]に声楽を学ぶ。ただ、メアリー・レオのレッスンが学業を圧迫した為に成績が悪く、２年で放校となり、ビジネス・スクールでタイピングと速記を学ぶことになった。その後、受付係や電話交換手として働きながら声楽の勉強を続け、1960年にオークランドの声楽コンテストで優勝している。[15]1963年にはモービル・ソング・クエストで２位入賞し、[20]1966年にはメルボルン・サン・アリア・コンクールで優勝。[21]1966年にはイギリス留学でロンドン・オペラ・センターに入学して[22]ジェームズ・ロバートソン[23]とヴェラ・ローザの薫陶を受けた。[24]ロンドンでの修行中、入学した年にはヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの《魔笛》の第二の侍女役で初舞台を踏む。[25][26]1967年にはリチャード・ボニングの助言を受けてメゾ・ソプラノ歌手からソプラノ歌手に転向。[27]1967年にはパーセル・ホールでの[28]ヘンリー・パーセルの《ディドとエネアス》のコンサート上演に表題役で出演。[27]1970年[29]にはモデスト・ムソルグスキーの《ボリス・ゴドゥノフ》の公演でクセニア役を歌ってコヴェント・ガーデン王立歌劇場に初登場。[15]1971年にコヴェント・ガーデン王立歌劇場でモーツァルトの《フィガロの結婚》で伯爵夫人役を歌って批評家筋から高く評価され、[30]サンタフェの歌劇場に於いて同演目の同役で出演して[31]アメリカ楽壇に初登場。[32]1974年のニューヨークのメトロポリタン歌劇場に於けるジュゼッペ・ヴェルディの《オテロ》の上演でテレサ・ストラータスの代役としてデスデモナ役[33]で初出演し、高い評価を得た。[34]1973年にOBEを受勲し、1982年にはDBEに昇格。[35]1989年にはフランス政府から芸術文化勲章、1990年にはオーストリア政府から名誉コンパニオン勲章、1995年にはニュージーランド勲章、2018年にはコンパニオン・オブ・オナー勲章をそれぞれ受勲。[36]2004年にはオペラでの歌唱の第一線から退いた。[37]2017年に歌唱活動からの引退を表明。[38]
脚注[編集]
- ↑ “Dame Kiri Janette Te Kanawa — Bern Schwartz”. 2024年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月24日閲覧。
- ↑ 本名はキリ・ジャネット・クレア・テ・カナワ(Jeanette Claire Te Kanawa)。(Etches, Melina (2023年10月16日). “The magic of music: Dame Kiri Jeanette Claire Te Kanawa attends Opera in Rarotonga”. Cook Island News. オリジナルの2024年9月24日時点におけるアーカイブ。 2024年9月24日閲覧。)
- ↑ 3.0 3.1 “Kiri Te Kanawa | Biography, Operas, & Facts | Britannica”. 2024年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月24日閲覧。
- ↑ Sleeman, Elizabeth, ed (2001). The International Who's Who of Women 2002 (3 ed.). Routledge. p. 566. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 9781857431223
- ↑ キリ・テ・カナワ - Discogs
- ↑ Stinchelli, Enrico (2020). Les Stars de l'opéra. Gremese. p. 95. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 9781135939618
- ↑ Batista da Silva, George (2013). Músicas & Músicos. Clube de Autores. p. 83
- ↑ 出生名をクレア・マリー・テレサ・ローストン(Claire Mary Teresa Rawston)とする資料もある。(Hayward, Janine; Shaw, Richard (2016). Historical Dictionary of New Zealand (3 ed.). Rowman & Littlefield Publishing Group Inc.. p. 314. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 9781442274389)
- ↑ Robertson, Mary May (2023). The Marriage between Perfume and the Lyric Stage. Cambridge Scholars Publishing. p. 317. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 9781527531284
- ↑ アリス・フォーラーの伝える所によると、ニュージーランドのトクマル・ベイという辺鄙な地域で、ウェイトレスのノリーン・ローストロンと、彼女のボーイフレンドで既婚のマオリ族の肉屋のジャック・ワワタイとの間に生まれたが、生後わずか数週間で養子に出されてしまった。(Fowler, Alice. “Dame Kiri talks of her heartache”. Daily Mail. オリジナルの2024年9月24日時点におけるアーカイブ。 2024年9月24日閲覧。)
- ↑ アイリッシュ・インデペンデント紙によると、母親ノリーン・ローストロンはアイルランドからの移民で、ノリーンの母テルマはギズボーンから50キロメートル離れたトコマル・ベイのスラム街で清掃員をして６人の子供を養っていた。ノリーンは既に私生児を産んでおり、1943年に２度目の妊娠が発覚した際には、産まれる子を育てられる状況にはなかった。父親はティエキ・ジャック・ワワタイという既婚のマオリ族の肉屋で、ノリーンの妊娠を知らぬまま家族の元へと帰っていった。ノリーンは子を産む前にギズボーンに行き、生まれた子に「クレア・マリー・テレサ」と名付けたが、出生証明書には父親の名前を記入しなかった。ノリーンは数週間後、その子を養子に出し、トコマル・ベイに戻っていった。(“The magic of music: Dame Kiri Jeanette Claire Te Kanawa attends Opera in Rarotonga”. Irish Independent. (1998年11月16日). オリジナルの2024年9月25日時点におけるアーカイブ。 2024年9月25日閲覧。)
- ↑ 養父はマオリ族の良家の出身であった。(Robertson 2023, p. 317)
- ↑ Hayward & Shaw 2016, p. 314
- ↑ テ・カナワ家に引き取られた時、マオリ語で「鐘」を意味する「キリ」(Kiri)の名前が与えられた。(“Dame Kiri Te Kanawa interviewed by Margaret Throsby”. ABC listen. (2021年8月30日). オリジナルの2024年9月24日時点におけるアーカイブ。 2024年9月24日閲覧。)
- ↑ 15.0 15.1 15.2 “Dame Kiri Te Kanawa | Academy of Achievement”. 2024年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月25日閲覧。
- ↑ 1959年から1965年まで通学したとする資料もある。(Smelt, Roselynn (1998). New Zealand. Cultures of the World. Benchmark Books. p. 94. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 9780761408086)
- ↑ Robertson 2023, p. 317
- ↑ “Niccol, Mary Leo – Dictionary of New Zealand Biography – Te Ara”. 2024年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月25日閲覧。
- ↑ McCaslin, Nikki (2001). Finding Our Place (3 ed.). Routledge. p. 321. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 9780313342714
- ↑ “Kiri Te Kanawa, Malvina Major, Donald McIntyre”. Eyes on NZ. (2024年7月10日). オリジナルの2024年9月25日時点におけるアーカイブ。 2024年9月25日閲覧。
- ↑ Thompson, Clifford (2020). Contemporary World Musicians. Routledge. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 9781135939618
- ↑ 1969年に卒業。(Kutsch, Karl-Josef; Riemens, Leo (2003). Großes Sängerlexikon (4 ed.). K.G.Saur. p. 4667. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 9783598115981)
- ↑ ロバートソンはテ・カナワが出場したコンクールに審査員として参加しており、彼女をロンドン・オペラ・センターに招いた。(Lewis, Anthony (1971年12月14日). “Praised Soprano Keeps ‘Maori Cool’”. The New York date=1971-12-14. オリジナルの2024年9月25日時点におけるアーカイブ。 2024年9月25日閲覧。)
- ↑ “Kiri Te Kanawa - 10 facts you never knew - Classic FM”. 2024年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月25日閲覧。
- ↑ “Kiri Te Kanawa | Biography & History | AllMusic”. 2024年9月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月26日閲覧。
- ↑ 1969年のロンドンのキャムデン音楽祭に於いてジョアキーノ・ロッシーニの《湖上の美人》でエレナ役を歌ったのがデビューとする資料もある。(ウォラック, ジョン、ウェスト, ユアン「テ・カナワ，キリ」『オックスフォード オペラ大事典』大崎滋生,西原稔訳、平凡社、1996年（原著1992年）、399頁。モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 9784582125214。モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。OCLC 674991537。)
- ↑ 27.0 27.1 Kesting, Jürgen (2024年3月6日). “Was für eine schöne Stimme!”. Frankfurter Allgemeine Zeitung. オリジナルの2024年6月23日時点におけるアーカイブ。 2024年6月23日閲覧。
- ↑ Badenes, Gonzalo (2005). Voces (Ritmo, 1987-2000). Publicacions de la Universitat de València. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 9788437062556
- ↑ この年には初来日も果たした。(アーカイブ 2024年9月26日 - ウェイバックマシン)
- ↑ Bhatt, Jogai (2024年3月6日). “In pictures: Dame Kiri Te Kanawa turns 80 - A life in style”. Frankfurter Allgemeine Zeitung. オリジナルの2024年6月23日時点におけるアーカイブ。 2024年6月23日閲覧。
- ↑ “Kiri Te Kanawa | Santa Fe Opera”. 2024年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月25日閲覧。
- ↑ “Dame Kiri Te Kanawa, ONZ, DBE (1982) [OBE 1973], AC | Department of the Prime Minister and Cabinet (DPMC)”. 2024年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月25日閲覧。
- ↑ 1980年にウィーン国立歌劇場に初出演した時もこの役を歌った。“Vorstellungen mit Kiri Te Kanawa | Spielplanarchiv der Wiener Staatsoper”. 2024年9月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月26日閲覧。
- ↑ Hughes, Allen (1974年2月11日). “Opera: Sparkling ‘Otello’”. The New York Times. オリジナルの2024年6月23日時点におけるアーカイブ。 2024年6月23日閲覧。
- ↑ Kennedy, Michael; Kennedy, Joyce Bourne (2004). The Concise Oxford Dictionary of Music. Oxford University Press. p. 462. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 9780198608844
- ↑ “Kiri Te Kanawa – Store norske leksikon”. 2024年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月25日閲覧。
- ↑ “Kiri Te Kanawa”. 2024年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月25日閲覧。
- ↑ ジョーンズ, レベッカ (2017年9月15日). “ソプラノ歌手のキリ・テ・カナワさん、歌手引退を表明 BBCラジオに語る”. BBC News. オリジナルの2024年9月24日時点におけるアーカイブ。 2024年9月24日閲覧。
 
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