三菱UFJフィナンシャル・グループ
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(みつびしユーエフジェイフィナンシャル・グループ、英: Mitsubishi UFJ Financial Group, Inc.)はメガバンクの三菱UFJ銀行などを傘下に置く三菱グループの金融持株会社。東証プライム市場およびニューヨーク証券取引所(NYSE)上場企業である。略称はMUFGで、上場銘柄としての略称は「三菱UFJ」を用いている。日経平均株価およびTOPIX Core30、JPX日経インデックス400の構成銘柄の一つ。
概要[編集]
三菱グループの三菱東京フィナンシャル・グループ(MTFG)とUFJグループのUFJホールディングス(UFJHD)が2005年10月1日に合併して誕生した。資産規模は約190兆円で、世界最大級の金融グループである。
現在、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ証券ホールディングス、三菱HCキャピタル、三菱UFJニコスなど主要中核5社を中心とした「総合金融グループ」である。
三菱UFJ銀行の前身の旧三菱銀行・旧三和銀行・旧東海銀行はそれぞれ首都圏・京阪神・中京圏の三大都市圏を地盤としている。外国為替専門銀行であった旧東京銀行の流れを汲み、国際業務でも優位性をもつ。また、国外にタイのアユタヤ銀行を傘下に置いており、アメリカの投資銀行であるモルガン・スタンレーの筆頭株主でもあり、海外進出に積極的なのも特徴である。なお、かつてはアメリカの地方銀行であるユニオン・バンクも子会社としていたが、2022年12月に売却した。
2015年3月期決算では、国内銀行グループにおいて初の純利益が1兆円を超えた。また同6月25日付で委員会設置会社に移行した。
コーポレートカラーは「MUFGレッド」。グループスローガンは「世界が進むチカラになる。」である。
発足の経緯[編集]
三菱東京フィナンシャル・グループ(以下「MTFG」)とUFJホールディングス(以下「UFJHD」)が合併およびグループ経営統合に至った背景は、UFJ側、特にUFJ銀行の不良債権が膨張し、健全な経営姿勢が困難になったことが挙げられる。そこでUFJHDは、傘下のUFJ信託銀行株式会社を一旦2004年6月に住友信託銀行株式会社(以下「住信」)に売却する方針を発表したが、2004年7月にUFJHDは一転してMTFGとの経営統合の方針を明らかにした。これに対し、住信は東京地方裁判所にMTFGとUFJHDの統合を禁止する仮処分の申請を行った。2004年7月27日、東京地方裁判所は住信の申請を認めたものの(UFJHDが申し立てた異議も8月4日却下)、8月11日、東京高等裁判所はUFJHDの抗告を認め住信の申請を退けた。これにより翌12日、経営統合に関する基本合意を発表した。住信は8月11日に特別抗告を行ったが8月30日最高裁判所は東京高等裁判所の決定は妥当としてこの申請を退ける決定がなされた。住信はUFJHDへの損害賠償請求に切り替えて控訴したが、2006年11月21日に東京高等裁判所の提案による住信に対して25億円の和解金を支払うことで和解が成立した。
2005年2月18日に正式に2005年10月1日付での合併が決定し、グループの名称を「三菱UFJフィナンシャル・グループ」とすること、合併に際しUFJHD1株に対しMTFG0.62株を割り当てることが発表された。グループ企業も、一部を除いて旧MTFG側を吸収合併存続会社とし持株会社と同一期日に合併する方針が採られたが、普通銀行の東京三菱銀行とUFJ銀行については合併に伴う大規模なシステム障害を懸念する金融庁の勧告を受けて、ネット証券のMeネット証券とカブドットコム証券の合併についてはカブドットコム証券が株式を上場したばかりで対処が遅れたため、共に2006年1月1日に変更された。リースとカード・信販はそれぞれ2007年4月1日に合併し、消費者金融であるモビットの改編も進められた。
歴代社長[編集]
代 | 氏名 | 在任期間 | 出身校 |
---|---|---|---|
1 | 畔柳信雄 | 2005年10月 - 2010年4月 | 東京大学経済学部 |
2 | 永易克典 | 2010年4月 - 2013年4月 | 東京大学法学部
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 |
3 | 平野信行 | 2013年4月 - 2019年4月 | 京都大学法学部 |
4 | 三毛兼承 | 2019年4月 - 2020年4月 | 慶應義塾大学経済学部
ペンシルベニア大学ウォートン校 |
5 | 亀澤宏規 | 2020年4月 - 現職 | 東京大学大学院理学系研究科 |
主なグループ企業[編集]
- 普通銀行
- 三菱UFJ銀行
- 三菱UFJ信託銀行
- アユタヤ銀行(タイ王国の銀行で当行の完全子会社。当行の現地支店を統合し、当行の在タイ法人としても機能している。)
- セキュリティバンク(フィリピンの準大手銀行。現在は、持分法適用会社)
- 大新銀行(英語版)(香港の中堅銀行)
- ベトナム産業貿易銀行(英語版)(ベトナムの大手銀行)
- ダナモン銀行(インドネシアの準大手行。当行の現地支店を統合し、連結子会社化)
- auじぶん銀行(ネット専業銀行)
その他にも、グループではないものの三菱UFJ銀行が筆頭株主となっている(なっていた)銀行がある。三菱UFJ銀行#関係が親密な地方銀行参照
- マイクロファイナンス
- ハッタ・カクセカー(カンボジアのマイクロファイナンス)
- 証券
- 三菱UFJ証券ホールディングス(MUSHD。初代三菱UFJ証券を中間持株会社化したもの)
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券(MUMSS。リテールをメインとする、MUSHDとモルガン・スタンレーの合弁会社。初代三菱UFJ証券(現・三菱UFJ証券HD)の受け皿だった、2代目三菱UFJ証券より改称)
- モルガン・スタンレーMUFG証券(MSMS。ホールセール専業証券である、MUFGとモルガン・スタンレーの合弁会社)
- auカブコム証券(ネット専業証券。MUSHDの子会社であり、BTMUも第2位株主。かつてはBTMUが4割超を保有する筆頭株主、MUSHDが1割程度を保有する第2位株主であったが2015年4月に資本異動が行われた。)
- モルガン・スタンレー(ニューヨーク証券取引所に上場する米国金融大手。2011年7月以降、持分法適用会社となっている。)
- 三菱UFJ証券ホールディングス(MUSHD。初代三菱UFJ証券を中間持株会社化したもの)
- リース
- 三菱HCキャピタル(三菱UFJリースが日立キャピタルを吸収合併。三菱UFJフィナンシャル・グループの持分法適用関連会社、東証プライム・名証プレミア)
- 東銀リース - 旧東京銀行系。持分法適用会社。2022年の第三者割当増資により、東京センチュリー・農林中央金庫も大株主に。
- 調査・コンサルティング
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
- 三菱アセット・ブレインズ
- 三菱UFJトラスト投資工学研究所
- システム
- 三菱総研DCS(三菱総合研究所の連結子会社。持分法適用関連会社)
- 三菱UFJインフォメーションテクノロジー
- 三菱UFJトラストシステム
- MUS情報システム
- エム・ユー・ビジネス・エンジニアリング
- 資産管理
- 日本マスタートラスト信託銀行
- 資産運用
- 三菱UFJアセットマネジメント
- MU投資顧問
- ベンチャーキャピタル
- 三菱UFJキャピタル
- ウェルスマネジメント
- 三菱UFJ個人財務アドバイザーズ
- ファクタリング
- 三菱UFJファクター
- 証券代行
- 日本シェアホルダーサービス
- 銀行業務代行
- 三菱UFJフィナンシャルパートナーズ
- 外貨両替
- 東京クレジットサービス
- 消費者金融
- アコム(持分法適用関連会社、東証一部)
- カード・信販
- 三菱UFJニコス
- 菱信ディーシーカード
- ジャックス(持分法適用関連会社、東証一部・札証)
- ジャルカード
- 東京クレジットサービス(旧東京銀行系のため、VJAに加盟)
- ファイナンス
- 日本住宅無尽(無尽会社)
- 不動産
- 三菱UFJ不動産販売
- 債権回収
- エム・ユー・フロンティア債権回収
- 公益法人
- 公益財団法人三菱UFJ信託奨学財団
- 公益財団法人三菱UFJ信託地域文化財団
- 公益財団法人三菱UFJ信託芸術文化財団
- 公益財団法人三菱UFJ国際財団
- 公益財団法人三菱経済研究所
- 公益財団法人三菱財団
- 公益財団法人三菱養和会
主要大口取引先
- 製造業
- 三菱電機、三菱ケミカルグループ、三菱マテリアル、三菱重工業、三菱自動車工業、小岩井乳業、ニコン、日立製作所、帝人、神戸製鋼所、UBE、近畿車輛、TOYO TIRE、トヨタ自動車、豊田自動織機、ヤンマー
- 商業
- 三菱商事、兼松、双日、豊田通商、三菱食品、明治屋、大丸松坂屋百貨店、阪急阪神百貨店
- 運輸
- 東日本旅客鉄道、小田急電鉄、東急電鉄、南海電気鉄道、京阪電気鉄道、阪急電鉄
- 情報・通信
- 東海テレビ放送、中部日本放送、毎日放送、関西テレビ放送
- 地方自治体
- 愛知県、名古屋市、犬山市、豊田市、武蔵野市、府中市、多摩市、京都市、大阪市、豊中市、堺市、明石市
出資など[編集]
2008年10月13日、モルガン・スタンレーに90億ドル(当時の日本円で約9000億円)の出資をし発行済み株式の21%を取得した。9月29日に普通株で30億ドル、優先株で60億ドルを出資することで一旦合意をしたが、10月10日にモルガン・スタンレーの株価が急落し、当初の合意通りではMUFG側に多額の損失が生じる可能性があったため、再検討の結果全額優先株となった。
その後モルガン・スタンレー側が段階的に公募増資を発表したため、それに応じる形で優先株の一部償還・普通株の取得を行っているが、引き続き議決権の20%超を維持し続けている。また三菱UFJ証券とモルガン・スタンレー証券(日本法人)の統合、モルガン・スタンレーへの取締役の派遣など、徐々に具体的な協業体制の構築が始まりつつある。
有価証券報告書の株主総会前の開示[編集]
有価証券報告書の株主総会前の開示は、日本の企業統治改革が進むなか、ほぼ唯一、手つかずで残る問題であり[1]、EY新日本有限責任監査法人の調査では、有価証券報告書を株主総会前に開示する3月期企業は、2023年3月期決算の上場企業2325社のうち、8割以上が有報を定時株主総会と同じ日か翌日に提出しており、総会前に提出したのは33社、全体の1.4%にとどまる中[2][3]、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は2022年3月期から有価証券報告書を定時株主総会の2日前の2022年6月27日に開示している。これは、2021年6月29日に開催された第16期定時株主総会において、週刊報道サイトの佐藤昇ら株主が株主提案した第4号議案(有価証券報告書の早期提出)を、三菱UFJフィナンシャル・グループが実質的に取り入れて早期提出したことによるものであると三菱UFJフィナンシャル・グループから直接告知を受けたことから、佐藤昇ら株主は、協議の上、2022年6月29日に開催された第17期定時株主総会において同趣旨の議案を取り下げた[4]。
ブランディング[編集]
ブランディングは日本デザインセンターの永井一正が手がけた。シンボルマークは円形を重ね合わせることで、「グループの総力を結集して生み出す新しい総合金融サービス」と「お客さまと一体感のある親しみやすいサービス」を表している。
シンボルマークにも使用されている三菱UFJフィナンシャル・グループのコーポレートカラーは「MUFGレッド」で、「常に最高レベルのサービスを追求し、これからの金融サービスをダイナミックに変えていく活力と、お客さまとの結びつきを大切に、お客さま一人ひとりに向き合っていく情熱」を表している。また「MUFGグローバルロゴタイプ」に使用している「MUFGグレー」は、「真に頼りがいのある総合金融グループとしての信頼感」を表している。
永井によれば、MUFG発足時に電通、ランドーアソシエイツ、博報堂のコンペから博報堂が採用され、博報堂が永井とアイヴァン・チャマイエフの2人にデザイン案を出させた。永井とチャマイエフは6案ずつ、計12のデザインを提案したが、三菱UFJフィナンシャル・グループ初代社長の畔柳信雄が即決で永井が提案した現行案にしたという。
2015年にロゴマークが微修正され、「MUFG」ロゴのフォントが「MTFG」のロゴに近いものになった。
脚注[編集]
- ↑ 「有報の株主総会前開示」を考える 日本経済新聞 2024年4月9日
- ↑ 有価証券報告書「株主総会前に開示」 金融庁検討、先行わずか33社 朝日新聞 2024年5月14日
- ↑ 3月期決算企業の有報、総会前開示1%どまり 負担重く 日本経済新聞 2023年6月22日
- ↑ 2022年の株主総会見どころ「株主提案77社リスト」東洋経済新報社 2022年6月21日
関連項目[編集]
- 週刊報道サイト - 代表者の佐藤昇が株主として、株主提案権を行使している。