八月の青
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| 作者 | ヘンリー・スコット・テューク |
|---|---|
| 製作年 | 1893年-1894年 |
| 種類 | 油彩、カンバス[1] |
| 寸法 | 121.9 cm × 182.9[1] cm (48.0 in × ??) |
| 所蔵 | テート・ギャラリー[1]、ロンドン |
『八月の青』（はちがつのあお、英: August Blue）は、1893年から1894年にかけてイギリスの画家ヘンリー・スコット・テュークによって描かれた油彩作品[1][2]。テュークが多く描いた、コーンウォールのファルマス港で海水浴をする少年たちを題材とする作品の一つで[3]、水平線近くに数隻の帆船が見えるおだやかな海に浮かぶ小型のボート上あるいは側面にいる痩身の裸三人着衣一人の少年たちを描いている。作品名"August Blue"はAlgernon Swinburneが1866年に刊行した詩"The Sundew"の一節'Thou wert not worth green midsummer / Nor fit to live to August blue,'からの引用である[1]。
1893年、テュークは、「屋外で」（en plein air）、コーンウォールのファルマス港のボートの上で絵に着手した。完成した絵は、1894年、ロイヤル・アカデミー・サマー・エキシビション（Royal Academy summer exhibition）で展示され、そしてテート・ギャラリーのために購入され、そしてそこにとどまっている。
初期の複数の絵とは異なって、彼の1892年のコルフ島とアルバニアへの旅行の影響をうけた印象主義的なスタイルである。
背景[編集]
テュークは1858年、ヨーク（York）に生まれたが、一家は翌年、ファルマスに移った。ファルマスのおだやかな気候が父親のダニエル・ハック・テューク（Daniel Hack Tuke）医師がわずらっている結核を改善するであろうことが希望された。
テュークは早くから画才をしめし、1874年から1879年にかけてロンドンのスレード美術学校（Slade School of Art）で、1881年から1883年にかけてパリで学んだ。1883年にコーンウォールに帰郷し、そして通例、ニューリン派（Newlyn school）のメンバーであると見なされている。
彼の作品の多くは、しばしば海の中かまたはそのすぐかたわらで、そして通例は裸の（ただし生殖器が視界からかくされている位置にいる）少年らと若い男性らをふくんでいる。
絵[編集]
絵は、ファルマス港で水浴している4人の男性をえがいている：海の中の1人は、手漕ぎボートのふちにつかまっている。1人は、布または服をつかんでボートのなかで立ち上がっている。2人はボートのなかで座っており、うち1人は船尾で後ろにもたれて日光浴をしていて、もう1人は、オールの近くで前かがみになっている。最初の3人は裸であるのに対して、4人目はブルーのシャツとブラウンのウエストコート（waistcoat）を着ている。
支配的な色は、タイトルに反映されているとおり、青である。上の空は青く、金色の日光が、燃えるように鮮やかな色をつくっている。画面下方には青い水面があり、ボートが緑がかった影をおとしている。背景では、横帆艤装の複数のボートが、帆をまきおさめて停泊している。
注意深い構図は、若者らの健康な肉体をフレッシュでモダンなスタイルでしめしているが、これは、同時代のアカデミーの絵に描かれた、生命感のない古典的なモデルとテュークの初期の作品と対照されてよいかもしれない。
絵はあいまいであり、そして何通りかの読み方ができる：運動競技者らしい男らしさの賞賛として。あるいは、若さの無垢と純粋の表現、自己を意識しない自然な状態で自己を意識しない状態、失われた田園詩への追憶として。しかし多くのひとびとは、同性愛的な刺激に気づいている。
絵の寸法は、122センチメートル（48インチ）×183センチメートル（72インチ）である。変色したワニスは、2000年に取り除かれたが、絵は、下左と上右のすみにむかってグレーのしみをしめしていて、これはひょっとすると下に横たわる絵の構造をしめしているかもしれない。
タイトルは、『モウセンゴケ』（"The Sundew"）の最後のヴァースから採られている。『モウセンゴケ』は、モウセンゴケによって目撃された恋人らの湿地地帯における密会をえがいている、アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーンの1866年刊行の詩作品で、その最後は「"Thou wert not worth green midsummer // Nor fit to live to August blue, // O Sundew, not remembering her"」でおわる。
裸の少年らが水浴しているテュークの複数の絵は、19世紀後半と20世紀前半の同性愛の詩人らによるいくつかの作品の霊感源となったが、そのなかには、アラン・スタンレー（Alan Stanley）による『あけぼののノクターン（八月の青）』（"The Dawn Nocturne (August Blue)"、1894年）、より初期の詩作品群としてチャールズ・ケーンズ・ジャクソン（Charles Kains Jackson）による『テュークによる絵についてのソネット』（"Sonnet on a Picture by Tuke"、1889年）と自称コーヴォ男爵（"Baron Corvo"）フレデリック・ロルフ（Frederick Rolfe）による『水浴する少年たちのバラード』（"Ballade of Boys Bathing"、1890年）がふくまれる。
受容[編集]
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1894年、絵は、ロイヤル・アカデミー・サマー・エクサビションで展示されたとき、批評においては成功をおさめたが、ただし批評家のなかには、インフォーマルな印象主義的なスタイルがこれを完成作品にではなくスケッチに近づけていると不平を言った者もいた。
同年、この作品は美術家からテート・ギャラリーによって525ポンドで購入された。この際、シャントリー遺産基金（Chantrey Bequest Fund）からの基金が宛てられたが、この基金は彫刻家フランシス・レガット・チャントリーの遺産から設立され、英国内で制作された「最高の価値」（"highest merit"）がある絵画や彫刻を購入することによって英国美術を鼓舞するためのものであった。
これは、1889年の『総員ポンプにつけ』（All Hands to the Pumps）につづいて、テート・ギャラリーのためにシャントリー遺産基金によって購入されたテュークの作品のうち2作目で、この美術家へのまれな賛辞であった。
その後、同様なテーマのテュークの作品がつづいたが、そのなかには、1902年にロイヤル・アカデミーで展示された『ルビー、金、そして孔雀石』（Ruby, Gold and Malachite）がふくまれている。
古典的な文脈の外部では、水浴の描写を顕著な例外として、裸体の若者を描いた絵画はこの時代においては一般には受容されなかった。もうひとつの顕著な例は、トマス・エイキンズの『深みの水泳』である。
テュークは、1900年にロイヤル・アカデミー準会員に、1904年に会員に、えらばれた。彼の作品は、第1次世界大戦が後期ヴィクトリア朝とエドワード時代のイングランドの金めっき時代をおわらせるまで、人気があった。
テュークのモデルたちの身元を確認することは、彼の絵において頭部と胴体を交代させる癖のために困難であるが、しかしひとりはモーリス・クリフト（Maurice Clift）であって、彼は一家の友人の甥であって、彼は第1次世界大戦で戦死した。もうひとりは、美術家リンゼー・サイミントン（Lindsay Symington）であって、彼は、水中でボートにつかまっている少年のモデルをつとめた。
テュークの作品は、その戦争ののち、嫌われるようになり、そしてテュークは1929年に死去した。
彼の作品は、1970年代に公然たる同性愛の美術の熱狂者の世代によって発見されたのち、人気を再獲得した。
脚注[編集]
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 'Catalogue entry', "August Blue". Tate Gallery. 2022年11月16日閲覧。
- ↑ "Henry Scott Tuke, 1858-1928", The Correspondence of James McNeill Whistler, University of Glasgow. 2022年11月16日閲覧。
- ↑ 'Display caption', "August Blue". Tate Gallery. 2022年11月16日閲覧。
参考文献[編集]
- The Sexual Perspective: Homosexuality and Art in the Last 100 Years in the West, Emmanuel Cooper p. 39-43
- "The Romance of Boys Bathing: Poetic Precedents and Respondents to the Paintings of Henry Scott Tuke", by Julia F. Saville, in Victorian Sexual Dissidence, edited by Richard Dellamora, p. 253-278
- The Edwardians: Henry Scott Tuke, advocate.com
- Dialogos: Hellenic Studies Review, David Ricks, Michael Trapp, p. 139
- Literary Visions of Homosexuality, Stuart Kellogg, p. 26
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