偏差値操作
偏差値操作(へんさちそうさ)は、大学などの教育機関が入学試験において、入学者や合格者における総合的な学力の実態以上に、大手予備校等で算出される一般入試の学力偏差値を高く見せかけて外見上の大学のレベルを上げる事。合格者の学力を隠蔽できる推薦入試等で大量の入学者を確保すると共に、一般入試の募集人数を少なくする他、受験方式を増やしたり複数回の受験による受験料の割引などで一般入試の競争率を高めたり、一般入試の受験科目数を減らしたり受験必須科目を削減して選択科目にする軽量入試を行う等の方法がある。2013年に大阪産業大学が附属高校生に大量受験させている問題がKTVニュースで偏差値操作と報道された[1]。理論上、偏差値を低く見せかけることも考えられるが、これを実行している教育機関やこれによる利点は確認されていない。
概要[編集]
日本では学力偏差値が大学を語る上で、重要な役割を担ってきた。大学等の合格に必要な学力水準を示すものとして受験生や学校関係者たちにとっての役割を果たすだけではない。ランキングという形で公開されるなど、一般入試における合格指標でしか無いはずの偏差値が逆に大学等の世俗的な意味での序列や大学等そのものの価値を決める大きな要素になっている。各々の偏差値が持つ意味は各大学学部学科間の受験前提の差によって大きく異なるが、その種の受験前提を無視した前提がバラバラな上での単純な数値としての偏差値に目が行きやすいため、見かけ上の偏差値を操作する動機づけを大学等の側に与えている。それゆえ、将来的に淘汰も予見される地方の小規模の大学等もあり、ブランド作りの一環として偏差値操作を行っているのではないかと、BBSなどで語られ、インターネットスラングとしてもよく用いられる。
しかし、この項の主題でもある、推薦等入試による入学者が私立大学では過半数となり[2]、一般入試の指標でしかない学力偏差値の意味(対象となる人数)は薄れつつあるため偏差値操作による効果には疑問が残る。また、定員を充足できている都市部や規模の大きい大学では、入学する学生の学力の高低で学費収入の多寡は変化しない。推薦等入試による入学者の割合増となる実際上の理由としては、推薦入試による定員が3割から5割に変更する法改正、多様な学生(編入生、社会人、障害者、留学生等)を受け入れることによる補助金の増[3]、入学定員超過による罰則回避のための入試細分化(回数を細かくすればするほどリスクが下がる)[4]が挙げられる。
方法[編集]
偏差値操作の手口
- 定員を減らす
- 100人募集を50人へ減らしたとする。そうすると、入学試験で1位 - 100位まで合格するところを、1位 - 50位までしか合格しなくなるわけだから、より高い学力の人50人しか合格出来なくなり、偏差値は上昇する。定員を減らすためには、AO入試や各種推薦入試、内部進学などの偏差値を測定する際に算入されない入試方法で多くの学生を確保し、一般入試での募集人数を減らすという方法が一般的である。また、入試形態を多様化し、日程を複数用意するなどして、各入試方法の定員を減らすという方法もとられる。また、操作している事実が表面化しない方法であるため、多くの大学で行われている。この点は読売新聞社教育取材班「大学の実力」で、多くの主要大学の推薦比率について確認が可能である。私立大学では約3/4以上が半分以上を推薦入学で埋めている。国立大学も平均16%、公立大学も平均26%がAO入試や推薦入試であり、一部の公立大などだと一般入試以外の入学者が4~5割を占める大学もある。国立大でも一部国立大で3~4割程度が一般入試以外の入学者というケースもある。
- 科目数を減らす
- 受験科目数が少ないと、特定教科だけを得意とする学生や不要科目の受験勉強を放棄して入試で必要な科目に特化した学生が多く受験することになる。当然だが、一部の科目だけで高偏差値を取るよりも、より多くの科目で高偏差値を取るほうが難しい。しかし、入試難易度として表示されるのはもちろん必要な科目のみの偏差値であるため、科目数が少ないほうが合格者の総合的な学力に比べて偏差値が高く出る傾向がある。故に、3科目以下の受験などで、偏差値を高く見せかける大学が多くある。また、科目数を減らすだけではなく苦手とする学生が多い科目を選択科目にしたり入試科目から除外して、母集団の平均レベルが低い科目のみを受験科目にできたり配点比重を大きくすることで、偏差値操作をすると同時に受験生人気を得ることができる。
- 論述学力試験の配点を減らす
- マーク式や面接、小論文の配点を高く、論述学力試験の配点を低く設定することで、志願者を比較的容易な対策に学習を集中させることができる。故に、難易度の低い模試における偏差値を高く見せかけることができる。
- センター試験・論述学力試験のどちらか一方しか利用しない
- マークと論述では異なる対策が必要となる。どちらか一方のみの試験形態をとることで志願者の学習の負担を大幅に軽減させる。故に、難易度の低い模試における偏差値を高く見せかけることができる。
- 成績優秀かつ入学意思のない学生を有償で募り受験させる。これによって合格者名簿が入学意図のない学生で埋めることが出来、偏差値が上昇する。不足する合格者は推薦入試の入学者数で補う。この手口は大阪産業大学で行われていることが報道されている[5][6][7]。
問題点[編集]
現在、AO入試や推薦入試が拡充されており、2009年の春に私立大学を受験した人のうち一般入試を受験したのは、『読売新聞』の調査では44%であり、何らの学力審査を経ないで大学生になる人は相当数に上る。また、私立大学や一部の国公立大学が実施している科目負担が軽い一般入試によって、入試で不要な多くの科目の学習インセンティブが崩れ、5教科各科目の枢要を学ばず、高校時代の早期から複数科目の学力が剥落する学生が非常に多い。ゆえに、高校生及び大学生の学力低下の一因との指摘がある。
出典[編集]
- ↑ “大産大が"偏差値操作"”. 関西テレビ放送. (2013年3月20日). オリジナルの2013年3月22日時点におけるアーカイブ。
- ↑ “2011年度の推薦・AO入試はここが変わる!(2010年7月)”. 大学受験パスナビ. 旺文社 (2010年7月). 2011年10月17日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年9月10日閲覧。
- ↑ 私立大学等経常費補助金 (PDF) - 日本私立学校振興・共済事業団
- ↑ 私立大「定員超過」による補助金“不交付”、23年度から「経過措置」廃し、“本来”基準で強化! (PDF) - 旺文社 教育情報センター 22年11月
- ↑ “大阪産業大学:付属高生に謝礼を払い「やらせ受験」”. Yahoo!ニュース. 毎日新聞. (2013年3月17日). オリジナルの2013年3月20日時点におけるアーカイブ。
- ↑ “「やらせ受験」一回5千円で 大産大、元教頭の告発放置”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2013年3月19日). オリジナルの2013年3月19日時点におけるアーカイブ。
- ↑ “「やらせ受験」、大阪桐蔭から2千人出願 系列校”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2013年3月19日). オリジナルの2013年3月20日時点におけるアーカイブ。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- これが大学の偏差値操作の実態、やらせ受験や点数・倍率に手を加えるやり方などが明らかに | BUZZAP!
- “知りたい!:偏差値≠難易度の怪 推薦・AO入試で一般枠減り 大学側が倍率操作?”. 毎日jp (毎日新聞社). (2013年2月16日). オリジナルの2013年2月16日時点におけるアーカイブ。
- “大学入試:偏差値=難易度にあらず 推薦、AO増で逆転も”. 毎日jp (毎日新聞社). (2013年2月16日). オリジナルの2013年2月19日時点におけるアーカイブ。
- 中央大学 | ニュース | 【受験生とご父母へ】 偏差値トリック
- マル激トーク・オン・ディマンド 第358回(2008年02月09日)大学がおかしい。
- http://d.hatena.ne.jp/daigaku-syokuin/20090615/p1
- http://news.livedoor.com/article/detail/3705599/
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