Xbox (ゲーム機)
Xbox(エックスボックス)は、マイクロソフトが開発および販売を行った家庭用ゲーム機である。「Xbox」と小文字で表記されることが多いが、ロゴ等は「XBOX」とすべて大文字で表記されている。
本機発売当初、Xboxは固定されたゲームプラットフォームのことを指していたが、その後同社から発売されたWindows 8ではエンターテインメントブランド、Windows 10では「Xbox Play Anywhere」といったゲームをコアとしたサービスプラットフォームへと広がった。ブランドについては「Xbox」を参照。
全世界での累計販売台数はニンテンドーゲームキューブを若干上回っており、北米をはじめ日本以外の地域ではPlayStation 2(以下、PS2)に次ぐシェアを獲得。最終的に日本国内で47万台、全世界では約2,400万台の売り上げを記録した。
歴史[編集]
当初、マイクロソフトはセガのドリームキャストに自社が開発したオペレーティングシステムのWindows CEを提供して技術協力していた。ドリームキャストが商業的に失敗すると、マイクロソフト自身がゲーム業界に参入するという噂が流れる。背景にはセガとの路線対立や、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE・当時)や任天堂に提携を求めて断られたことがあるとも言われている。
当時のセガ会長・大川功がXbox開発の話を聞きつけ、マイクロソフトの当時社長ビル・ゲイツに何度も直談判し「セガのタイトル資産を提供するからドリームキャストの互換性をXboxで実現させてくれ」とドリームキャストの道筋を作ろうとした。だが、ドリームキャストはインターネット環境を有するのに対し、Xboxはインターネット環境を考えておらず、この話は結局破談となった。
2000年3月、日本国内のPS2発売のわずか数日後に、マイクロソフトがゲーム機参入を発表。当時ソニーグループはPS2でWintelに挑戦すると宣言しており(PS3でも同様)、マイクロソフトが逆に挑戦するという構図になったことで話題を集めた。一方で本体OSがWindowsから乖離した事が原因でビル・ゲイツが激怒し、プロジェクト中止の危険もあった。しかし、最終的にOSは独自規格のままとなり、Xbox OneでようやくWindowsのOSが採用されるまで約12年間を費やした。
日本発売時の初回出荷台数は25万台と発表された。一方、エンターブレインによれば、日本での発売開始から3日間の推定販売台数は12万3929本で、ソフト装着率(全ソフト販売台数÷本体販売台数)は1.45本である。また、日本はシェアがマイナスになった唯一の国でもある。
2005年、日本国外で初めてゲーム関連事業は単年度黒字を達成した。
ハードウェア[編集]
製品仕様や発売前の技術デモなどは徹底的にPS2を意識していた。噂の段階から開発コードネームとして浸透した「X-BOX」が、そのまま実際の名称にも使われることとなった。マイクロソフト社内での最初期のコードネームは「プロジェクト・ミッドウェー」で、マイクロソフトならではのPCのノウハウを生かしたゲームコンソールとPCの中間(一般名詞midway)の存在を目指すこと、およびミッドウェー海戦になぞらえた日本への反攻開始が意味されていた。
仕様[編集]
PC/AT互換機用パーソナルコンピュータの部品をほぼそのまま流用した構成となっており、一部のメディアはほとんどPCと呼ぶほどだった。コントローラのポートは形状こそ異なるがPCでも一般的なUSB規格が使われている。製造はフレクストロニクスに委託された。ゲーム機としては初めて720p、1080iに対応した。
- CPU:Intel Mobile Celeron(Pentium IIIベース(Coppermine-128k))733MHz
- グラフィック:NVIDIA製 XGPU(X-Chip) 233MHz(GeForce3の改良版)
- ポリゴン描画能力:1億2500万ポリゴン/秒(理論値)
- メモリ:DDR SDRAM 64MB(CPU、GPU共用)
- メモリ帯域幅:6.4GB/秒
- 記憶装置:5倍速DVD、8GBハードディスク、8MBメモリーユニット
- サウンド:ウォルフソン・マイクロエレクトロニクス社製 ステレオコーデック 256チャンネル
- インターフェース:コントローラポート×4、10/100Mbpsイーサネットポート
- 最大解像度:1920×1080
- 電源:100V,50/60Hz 消費電力:絶対最大定格200W
- 重量:3.86 kg
- 外形寸法:324×265×90mm
サウンド、HDD/DVDインターフェイス、イーサネットは、nForceのMCPに相当する集積チップのMCPXが処理する。
オペレーティングシステムとしてWindows 2000のカーネルをごく軽量化したものを搭載し、APIにはDirectXを採用している。OSそのものはカスタムOSであるが、Xbox 360ではPowerPC基準のOS、Xbox One以降ではWindowsとなった。
本体[編集]
日本での発売当初の希望小売価格は34,800円だったが、2002年5月22日に価格改定され、希望小売価格24,800円となる。2003年5月29日から7月31日まで6,800円のキャッシュバックキャンペーンを実施し、2003年11月20日には本体価格は16,800円に値下げされた。その後、2004年5月に発売された「Xboxプラチナパック2」は、ゲームソフト2本や追加のコントローラ、DVDビデオ再生キットなどを追加した上、19,000円(税別)にまで希望小売価格を下げた。
ゲームディスクは、ディスク裏面にマイクロソフト製インストールディスクにあるような特殊な模様が付与されており、これは今後のXboxシリーズにも受け継がれることになった。ディスクはDVDとほぼ同じもので、ディスクの表面にはWindowsのインストールディスクと同じ「Genuine」ロゴも印字されていた(360以降は廃止)。CEROの発足後はディスクにも年齢規定のロゴを記載するようになった。XboxとXbox 360の初期のディスクを通常のDVDプレイヤーに挿入すると、専用の演出が流れたあと、「これは、Xbox(Xbox 360)のディスクです。このゲームをプレイするには、ディスクをXbox(Xbox 360)に入れてください。」と表示される。Xbox 360も同様にDVD規格であるが、独自技術により4.7GB以上の容量を同じディスク品質のまま記録できるようになっているが、ディスク表面の層が明確に見えるような形状となっている。これは2層DVDの単純な採用ではディスクが痛みやすくなるためである。
本体の起動時に、記録媒体などに致命的なエラーが発生した場合は、起動ロゴが出て、メインメニューに遷移する前に「不具合が発生しました。カスタマーサポートにお問い合わせください。」と表示される。また、画面に二桁のエラーコード(初期のXbox Oneではさらに桁が多い)も同時に表記される。Xbox 360、初期OSのXbox Oneの場合は、前文が「システムエラー。」になる。
周辺機器[編集]
- Xbox コントローラブラックとグレーの2種類がある。ドリームキャストからデザインや機能性を引き継いだため、LBとRBに該当するボタンはABXYの上にある白黒の二つのボタンになり、LRはトリガーとなっている。当初発売版では全世界で大型のコントローラが採用されたが、日本では本体同様に大きめのコントローラに関係者が懸念を抱き、より小型で軽量な「コントローラS」が採用された。大型のコントローラは本国アメリカでも、のち2006年にIGNが掲載した記事「最悪なゲームコントローラー TOP10」で2位となるなど評判は芳しくなく、本体発売半年後、この日本仕様の「コントローラS」への変更が行われた。LB,RBに該当するボタンはABXYの下にある黒・白色の二つのボタンである。
- 差込端子部分が独自規格になっている。規格自体はUSBのため、配線の一部を半田づけするか変換用のコンバーターを使用すればPCでの使用も可能である。
- 大型コントローラはDukeと呼ばれているが、後に復刻された。
- 操作デバイスは正面に方向パッド(左下右側に配備)、2本のアナログスティック(左上左側と右下左側に配備。両方とも押し込み可能)、STARTボタン/BACKボタン(DUKEでは中央下側に、小型版では左下左側に配備。BACKボタンは他社製品でいうSELECTボタンに該当するもの)、A/B/X/Yボタン(右上右側に配備)、白/黒ボタン(DUKEでは右上右側に、小型版では右下左側に配備)を配備し、上面奥側には深押しが可能な左右(L/R)トリガーボタンを備える。
- 内部には振動モーターを左右1つずつ(合計2つ)内蔵している。
- Xbox メモリーユニット
- 補助記憶装置。容量は8MB。ブロックという独特の単位を用いている。16KBを1ブロックとして、502ブロック使用出来る。各コントローラーに2つのスロットが有り、挿入して使用する。合わせて1004ブロック(16MB)使用可能。
- Xbox DVDビデオ再生キット
- リモコンと赤外線受信アダプターのセット。アダプターをXbox前面のコントローラー用の端子に接続して使用する。受光部にリージョンコードが埋め込まれており、日本で製造されていない本体に日本版の受光部を差し込むとエラーが発生し、反対も同様。また、本体に初めて受光部を差し込み、使用した際にDVD用のリージョンコードが本体に記録され、そのリージョンデータをリセットすることは公式による修理以外では不可能。
- Xbox システムリンクケーブル
- 2台の本体を接続して、通信対戦を行うためのケーブル。
- Xbox RFアダプタ
- ビデオ入力端子の無いテレビに本体をRF接続するためのケーブル。
- Xbox 標準AVケーブル
- コンポジット映像と音声を出力するケーブル。AVケーブルはドリームキャストのものと似ている端子を使用しているが、Xbox 360用、ドリームキャスト用のものと互換性はない。
- Xbox 拡張AVパック
- 本体に接続して、S映像・光デジタル音声出力する変換ボックス。
- Xbox コンポーネントAVパック
- 本体に接続して、コンポーネント映像・光デジタル音声出力する変換ボックス。
- 電源コード
二軸の電源ケーブル。Xbox One S以降も二軸ケーブルが採用された。
ソフトウェア[編集]
全世界で最も売れたソフトは『Halo 2』の849万本で、日本国内で最も売れたソフトは『デッド オア アライブ3』の24万本である。
Xbox Live[編集]
2002年11月に米国、2003年1月に日本、同3月に欧州各国で、それぞれ開始されたオンラインサービス。標準本体のみでオンラインサービスに接続できるのが最大のセールスポイントであった。さらに、Xbox Live対応ゲーム全てで共通のコミュニケーション手段としてプレイヤー同士の音声での会話、ボイスチャットを採用した。スターターキットにセガの人気タイトル『ファンタシースターオンライン』(Phantasy Star Online)を標準添付するなど、戦略的な施策も盛り込まれた。しかし、日本でのオンラインゲーム普及のペースが予想より遅かったことや、2002年9月に発表され、Xbox Liveのキラーソフトとして期待されていた『トゥルーファンタジー ライブオンライン』が開発中止になるなど、魅力的なソフトが存在しないことから、ライバル機に対し優位性を打ち出せなかった。また、他機種がウェブマネーや口座振替などの未成年者でも比較的利用しやすい決済方法を取り入れているのに対し、クレジット決済しか提供されていなかったことがハードルの高さにも繋がった。
初代XboxでのXbox Liveは、2010年4月15日にサービス終了となった。HALO1,2のオンライン対戦に関しては、後に発売されたHALO Master Chief Collectionで復活した。
リージョン[編集]
Xbox、Xbox 360は本体にリージョンが存在し、一部作品にのみリージョンロックがかけられている。XboxはDVDプレイヤーの受光部を利用してゲーム用とはまた別にリージョンがかかる。Xbox One、Xbox Series Xではすべてのソフトでリージョンが存在せず、そもそも本体の中にDVD,Blu-rayを除くゲームのリージョンコードが埋め込まれていない。Xbox One以降のXboxシリーズでは、MultiVersusのベータテスト、HBOMaxなどのごく僅かなVPN制限によるリージョンロックされたゲーム・アプリの例外を除き、設定から「言語」を変更することでXbox Liveのサーバーの地域も自動的に変更される(Xbox Cloud Gamingも同様)。ただし、一部のゲームではVPNによるマッチング制限が引き続きかかる場合もある(ブラックオプス3など)。Xbox One以降のXbox 360後方互換対応作でもリージョンフリーとなっており、他地域のディスクを挿入しても認証が可能である。
広告[編集]
かつて、日本のゲーム機市場に他国メーカーが本格参入した例は少なく、Xboxの上陸は「黒船」に例えられて話題を集めた。2002年2月22日の日本市場発売に合わせてビル・ゲイツが来日し、『笑っていいとも!』に生出演したり、X JAPANのYOSHIKIを起用するなどの宣伝活動をした。
後方互換性[編集]
Xbox 360[編集]
エミュレーターを経由し、全世界で発売された990本のゲームのうち、462本を遊ぶことが可能。エミュレーターはXbox 360本体の公式製の内臓HDDにしか記録されていないため、非正規のHDDを使用するか、HDDが付属していないアーケード・4GBモデルではプレイすること自体が不可能となる。Xboxの起動画面はエミュレーター起動であるため省略される。一部の作品はXbox MarketPlace上でも販売されている。
Xbox One,XBOX Series X/S[編集]
エミュレーターは経由されず、直起動でごく一部のゲームをオンライン上からダウンロードし、遊ぶことが可能。(ディスク版の経由でも対応した作品であれば可能。)990本のゲームのうち、63本(実質61本、バトルフィールド2とグランド・セフト・オート・サンアンドレアスはXbox版ディスクを挿入するとXbox 360版がインストール)を遊ぶことができ、2017年6月11日のE3 2017で初めてこの機能が発表された。ライセンス上の問題、エミュレーターを経由せずに起動するシステムから成る問題により遊べる作品はかなり少なめとなっているが、一部作品はMicrosoft Storeからダウンロード版を購入可能である。もともとのXboxのOSの仕様上、Xboxの作品はDirectXを必ず使用しているため、解像度がXbox 360の作品より上昇する場合もある。一部作品は16:9に対応しているため、対応作品は自動的にネイティブ画質が向上したり、画面サイズが変更されたりする。クラウドセーブはXbox One側の処理で自動的に行われ、システムリンクも引き続き可能である。