SARSコロナウイルス2
SARSコロナウイルス2(サーズコロナウイルスツー、英語: severe acute respiratory syndrome coronavirus 2、略称: SARS-CoV-2)は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の原因となる、SARS関連コロナウイルス (SARSr-CoV) に属するコロナウイルスである。日本の国家機関や主要な報道機関は「新型コロナウイルス」と呼称しており、「新型コロナ」や単に「コロナ」と省略される場合もある。
2019年11月に中華人民共和国湖北省武漢市で初めて発生が確認され、その後、2020年に入ってからCOVID-19の世界的流行(パンデミック)を引き起こしている。国によって異なる流行像がある。また2020年末以降、スパイクタンパク質の構造変化などを伴う新たな変異株も次々に出現しており、以前の株を置き換えるようにして世界各地で流行を度々引き起こしている。
SARSの名を冠しているが、本ウイルスは2002年から2003年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルスとは異なるものであり、SARSが付く理由は本ウイルスがSARSの原因ウイルスであるSARSコロナウイルス(SARS-CoV、あるいはレトロニムとしてSARS-CoV-1)と同種で、SARS関連コロナウイルスの株の一つと考えられているためである。
名称[編集]
このウイルスの国際的な正式名称は、severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(略称: SARS-CoV-2)であり、ウイルスによる疾患の正式名称は、coronavirus disease 2019(略称: COVID-19)である。
2020年1月7日、世界保健機関 (World Health Organization; 以下 WHO) は、中国武漢で発生している疾患の原因であるウイルスを2019-nCoV(2019 novel coronavirus の略称)と暫定的に命名した。この呼称は厚生労働省の公式ウェブサイトのほか、国立感染症研究所が作成の「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」と、これを基にした「2019-nCoV 遺伝子検査方法」にも使用された。このため、体外医薬品の名称や、正式名称決定以前に作成されたウェブサイトなどにみられる。
同年2月11日、国際ウイルス分類委員会 (ICTV) は、SARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 の頭字語)と正式に命名した。この日本語訳としてSARSコロナウイルス2のほか、SARSコロナウイルス-2、サーズコロナウイルス2、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2、重症急性呼吸器症候群 (SARS) コロナウイルス2型などと呼称・表記される場合もある。日本の国家機関や主要な報道機関は同年時点で、単に新型コロナウイルスと呼称している。WHOは同日、このウイルスによる疾患をCOVID-19(Coronavirus disease 2019 の略称)と命名した。
呼称に関する論争[編集]
詳細は「中国本土における2019年コロナウイルス感染症の流行状況#ウイルスの呼称・発生地に関する争議」を参照
アメリカ合衆国などでは発生地の名前を付けて武漢ウイルス (Wuhan Virus) 、中国ウイルス (Chinese Virus) などと呼称すべきだとする意見が出るなどの論争がある。しかし、WHOは以前から感染症やウイルスの名称に地域や人の名前などをつけることは差別や偏見を生む可能性があるとして禁止している。
発見[編集]
SARSコロナウイルス2は2019年11月に中国武漢市で発生が確認され、同年12月31日に最初にWHOに報告された。元々コウモリなどの野生動物が保因していたものが、それぞれ独立してヒトに伝播、ヒトへの感染能力を獲得したと考えられている。
2020年1月20日、病原体を調査している中国・国家衛生健康委員会 (NHC) 専門家の鍾南山グループ長は、広東省でヒトからヒトへの感染(ヒト - ヒト感染)が確認されたと発表した。新しいコロナウイルスに対する特定の治療法はないが、既存の抗ウイルス薬を流用することはできるとしている。
ただし、2019年3月スペインのバルセロナ大学の研究チームがバルセロナで採取した廃水サンプルから新型コロナウイルスを検出したと発表した。また、2019年の9月イタリアのミラノにある国立がん研究所の研究によると、早いものでは2019年9月の血液サンプルから新型コロナウイルスの抗体が検出された。