J3リーグ
J3リーグ(英: J3 LEAGUE)は、日本サッカーのリーグ構成における3部リーグで、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)における3部リーグ。略称はJ3。
リーグ発足当初から明治安田生命保険相互会社が特別協賛しており、「明治安田J3リーグ」(2023年シーズンまでは「明治安田生命J3リーグ」、(英: MEIJI YASUDA J3 LEAGUE)の名称を用いている。(2024年シーズンから)
概要[編集]
J1リーグ、J2リーグの下位カテゴリに位置するリーグとして、2014年に誕生した。日本サッカーのリーグ構成においては、アマチュア最上位カテゴリーである日本フットボールリーグ (JFL) と同位カテゴリーとされており、2023年シーズンから行われるJ3とJFLの入れ替え制度導入時のレギュレーションにおいても「Jリーグに入会」「(Jリーグ)会員資格を喪失」という表現が用いられ、「J3へ昇格」「JFLへ降格」という表現は用いられていない。但し、Jリーグ入会に向けた公式の手引き書に「JFLからJ3へは最大2クラブが昇格」といった形で記されているなど、JFLをJ3の下位リーグであるかのように扱う資料は存在している。
成績上位かつJ2リーグ参入要件を満たしたクラブはJ2リーグへ昇格し、また成績下位はJFLでJ3参入要件を満たした上位クラブの結果次第でJ3会員退会となる。
所属クラブ(2024年)[編集]
クラブ名 | Jリーグ
加盟年 |
J3在籍年 |
---|---|---|
ヴァンラーレ八戸 | 2019年 | 2019- |
いわてグルージャ盛岡 | 2014年 | 2014-2021,2023- |
福島ユナイテッドFC | 2014年 | 2014- |
大宮アルディージャ | 1999年 | 2024- |
Y.S.C.C.横浜 | 2014年 | 2014- |
SC相模原 | 2014年 | 2014-2020,2022- |
松本山雅FC | 2012年 | 2022- |
AC長野パルセイロ | 2014年 | 2014- |
カターレ富山 | 2009年 | 2015- |
ツエーゲン金沢 | 2014年 | 2014,2024- |
アスルクラロ沼津 | 2017年 | 2017- |
FC岐阜 | 2008年 | 2020- |
FC大阪 | 2023年 | 2023- |
奈良クラブ | 2023年 | 2023- |
ガイナーレ鳥取 | 2011年 | 2014- |
カマタマーレ讃岐 | 2014年 | 2019- |
FC今治 | 2020年 | 2020- |
ギラヴァンツ北九州 | 2010年 | 2017-2019,2022- |
テゲバジャーロ宮崎 | 2021年 | 2021- |
FC琉球 | 2014年 | 2014-2018,2023- |
J3ライセンス[編集]
J3加盟の条件となる「J3ライセンス」発給の要件および「J3スタジアム要件」として、以下のようなものが挙げられており、総じてJ2ライセンスより緩やかな基準となっている。
- ホームスタジアムの収容人員は原則として5000人以上を求める(原則として座席のみであるが、特に安全性などをJリーグが精査して、問題がないと判断された場合は芝生席も座席と同じ扱いとみなすことができる)。 座席の増築、並びに芝のグラウンドや照明設備がないクラブには、今後整備を目指す前提で設備がない状態でも発給を認める。
- プロ契約選手は1チームあたり3人以上。
- U-18(ユース)・U-15(中学生)・U-12(小学生)などの下部組織を最低1つ保有する。
- 監督はJFA 公認S級コーチの資格を持っている者に限る。
- クラブの法人格はJ1・J2の公益法人、株式会社に加えて特定非営利活動法人 (NPO法人) も認める。
2015年4月28日、J3リーグの参加資格を明文化した「J3リーグクラブライセンス交付規定」 を制定した。基本的なルールは上記記載事項を踏襲しており、財務面で3期連続赤字、ないしは債務超過である場合はライセンス交付・発行を認めないことを原則とするが、J2以上のクラブにおいても財務面において参加基準を満たせなくなった場合、Jリーグが改善の見込みがあると認められた場合はJ3リーグに参加できるようにする。ただしこの場合、該当したクラブに対しては、そのシーズンについては獲得した勝ち点から最大で10点の減点処分となる。
なお、J3発足以後、上述のとおり「プロ契約3名以上」という条件であるため、J2以上は大半が全選手とクラブとでプロ契約を結んでいるが、J3ではプロリーグでありながら、ギャランティ(勝利給など)をもらいながらも、副業を持つセミプロ、あるいはアマチュア契約者も多くおり、育成アカデミーのコーチ兼任や、社員選手(スポンサーとなる企業や団体で職業あっせんを受けながら試合に出場する選手)、あるいはアルバイトや派遣社員などで生計を立てる選手も少なくなく、事実上のセミプロリーグという状態になっている。
創設の経緯[編集]
2008年6月発表の『J2リーグの将来像』について、「J2の参加クラブ数は最大22とする」「J2の参加クラブ数が22に達したシーズン以降はJ2とJFLの入れ替え制度を導入」といった昇降格要件等についてはいずれも2012年シーズンをもって達成されたが、その一方で「全国で100以上のJリーグを目指しうるクラブが活動することを、将来目標とする」という部分、ならびに「日本サッカー協会(JFA)が、並行して検討する事項」として付記された「JFL(=日本フットボールリーグ)の活性化、およびJ2から降格したクラブへの支援施策」などについては途上段階にあった。
加えてJリーグ側の現状認識として、「Jリーグは40クラブと準加盟6クラブまで拡大したものの全国に広がっているとは言えない」「サッカーファミリー拡大のためには『Jリーグを目指す』と意思を表示したクラブをできるだけ広くJリーグの『仲間』として受け入れて、地域に根づいた、経営基盤の整ったクラブになることをサポートすることで、Jリーグの理念を推進するクラブを日本に多く作ること」と考えられていた。
こういった状況を踏まえ、2012年1月30日・3月23日に開催された「JFA/Jリーグ将来構想委員会」において「J2下位クラブの地力強化」と「(下部リーグの)裾野の拡大」を視野に入れた検討がなされ、その後の議論で2012年9月1日に行われた「Jリーグ準加盟規程」の改定(要件緩和)と、J2からJFLに降格するクラブの不安を払拭する施策を総合的に加味したものとして、「Jリーグを目指しうるクラブ」を全国に100以上つくる施策の具現化の一つとしてJ2の下部リーグ、すなわちJ3設立の方向が示され、2012年12月11日の「JFA/Jリーグ将来構想委員会」において「最速で2014シーズンからJ3をスタートさせること」をJFA・Jリーグの各理事会に諮ることが議論され、各理事会にて議論が進められた。
事前報道[編集]
こういった流れを受けて、2012年から2013年にかけて、複数のメディアにおいて、それまでのプロ・アマ混成リーグである日本フットボールリーグ(JFL)に代わる、Jリーグを目指すプロクラブのみによる新リーグの創設を検討しているとの報道が行われていた。
時事通信社の報道 によると、J2とJFLの入れ替え制度が始まったことにより、J2から降格するクラブとJリーグ加盟を目指すクラブがプレーする場としての3部相当リーグの設置構想が浮上し、2012年11月のJ1とJ2の合同実行委員会で、リーグ側が3部相当リーグを設置することを提案したと報じており、関係機関による議論を経て2014年シーズンから12クラブ程度で導入を目指すとしており、3部相当リーグの参加基準となる準加盟規定について、J1・J2よりも条件を緩和する方向で検討するとした。
読売新聞社の報道によると、3部相当リーグの名称は「J3」であるとしており、J1・J2に参加する「正会員」に対して「準会員」を対象としたリーグを想定していた。具体的には、ナイトゲーム開催可能な照明設備を備え、収容人数がJ1で15,000人以上、J2で10,000人以上であることというホームスタジアムの基準を、「J3」では照明設備なしの3,000人収容のスタジアムでもホームスタジアムとすることを認める方向で検討するなど、総じてクラブライセンスの取得を必須とするJ1・J2に対して、クラブライセンスを必要とせず参入基準を緩和する方向性が見込まれているとされていた。読売新聞は紙面での解説記事において、新たに「J3」を設けることについて「J入会に向けた『準備段階』としての役割」「指導者・選手の受け皿としての役割」の2つの面での期待が大きいとしている一方、「経営難のクラブをさらに増やすことにならないか」「現在のJFLの位置づけをどうするのか」といった課題も指摘していた。
発足[編集]
2013年1月16日に行われたJ1・J2合同実行委員会の場で「J3」設置構想について議論された。Jリーグ理事の中西大介は日刊スポーツの取材に対し「J3設立に関しては基本、全クラブの理解は得た」と説明しており、「J3」創設に向けて正式に動き出すことになった。2014年度の発足を目指す案に対しては反対論や慎重論が相次いだとの報道もあった が、2013年2月26日のJリーグ理事会で2014年からの「J3」新設を正式決定した。チェアマンの大東和美は理事会後の記者会見で「(新しい3部リーグを)やります。J1のブランド力を落とさずに、底辺を広げる」とした上で「底辺を広くすることで、地域での私たちの活動の場も広がる」としている。関連して、企画部の中に「J3準備室」を設立し準備を進めることになった。
2013年7月16日Jリーグ理事会において、J3は2014年度に12チームで発足し、初年度は3回総当たり(1チームあたり33試合)で開催されることが決定した。当初は12クラブの場合は4回戦制も検討していたが、3回戦制にした理由については、悪天候時の予備日の確保に加え、試合自体の質の向上を目的に試合の間隔を広げて行う、夏の時期のデーゲームの対応を踏まえ、日程の編成自体に余裕を持たせるためだと説明している。
2013年11月13日に行われた、JリーグのJ1・J2合同実行委員会で、予定通り、J3を12チームでスタートすることを確認。その内訳はJ3ライセンスを持っている10クラブと、地域リーグから1クラブ、それに、Jリーグの若手選抜チームである。
2013年11月19日のJリーグ理事会で、JFL9クラブ および22歳以下の選手で構成される1チーム、12月2日にグルージャ盛岡、12月8日にJ2・JFL入れ替え戦に敗れたガイナーレ鳥取の参加がそれぞれ決まった。
2013年12月17日の理事会後に、リーグ戦の概要 が発表された(「大会方式」の節を参照)。
J1・J2との差別化[編集]
J3は創設当初、運営面において、J1・J2との差別化を図っていた。
クラブの参加要件が緩和されている ほか、リーグの名称が(発足当時J1の正式名称が「Jリーグ ディビジョン1」の名称であったのに対し)発足当初より正式名称を「J3リーグ」とすること、ロゴマークもJ1・J2で使用する「J」のマークを黒い縁取りの白抜きに、3部リーグを示す3を組み合わせたもの を使用している。ロゴについては、J3もJ2間との入れ替え制度が導入されるため「Jリーグ」の一員とみなしてリーグ戦の名称やロゴもJ2以上と同じものを使うことを予定していたが、「希少性が失せてしまう」として、J3は独自性を強めるためにロゴや名称を一部異なるものとしている 他、公式サイトについてもJリーグの公式サイトとは別に、J3専用の公式サイトも独自に設けられていた が、Jリーグ公式サイトのリニューアルに伴い、2015年2月1日からはJ's GOALを含めてJリーグ公式サイトに統合された。
なお、ロゴマークについては2022年12月の明治安田生命とのタイトルパートナー契約の更新(後述)に併せてJ1/J2リーグと同じデザインに変更し、併せてそれまでJリーグの基調カラー(赤・緑・黒)から採用された黒 を用いていたリーグカテゴリーカラーを変更。「生命の源である海の青」をコンセプトとした青とした。
大会名称[編集]
2014年1月29日、明治安田生命保険がJリーグトップパートナー(協賛スポンサーの最上位カテゴリ)と、J3リーグの特別協賛(タイトルパートナー)になることを発表。発足初年度よりリーグの名称を「明治安田生命J3リーグ」とすることとなった。明治安田生命保険代表執行役社長の根岸秋男は、協賛する理由について「地域に根ざすJリーグの理念に賛同した」と説明している。なお、明治安田生命保険は2015年シーズンからJリーグ全体のタイトルスポンサーとしての契約(Jリーグタイトルパートナー契約)を締結し、J1・J2のリーグ正式名称もJ3に合わせて変更。タイトルパートナー契約は2018年 と2022年 に更新しており、2024年からは、リーグ戦の名称を「明治安田J3リーグ」とすることになった。
初年度J3加盟の条件[編集]
2013年3月6日に行われた記者会見で明らかにされた概要によると、J3は初年度(2014年度)は10ないし12クラブで発足すること、毎年およそ2クラブを拡大することを視野に入れて 徐々にクラブ数を増やしていく一方で、当面は成績要件によるJFLへの降格は行わない(経営面の問題によるライセンスの抹消(剥奪)による退会はあり得る)こと、数が増えたところで東西ブロック制にするなど リーグの構造を柔軟に検討し、Jリーグを目指すクラブを全国に100以上作ることを体現するリーグとすることを目指す。
Jリーグでは初年度のJ3入会のための条件として以下の4段階を挙げている。
- Jリーグに準加盟していること。発表時点で準加盟していないクラブは2013年6月末までに準加盟の申請を行い、準加盟クラブとして承認を受けること。初年度入会のための準加盟の可否は9月末に決定する。
- 「J3ライセンス」資格審査及び「J3スタジアム要件」審査に合格すること。
- 「J3入会審査」を受け、Jリーグ理事会から入会を承認されること。J3入会金はJ2の4分の1となる500万円、年間費はJ2の半分の1000万円に抑え、これらにより、クラブの年間予算規模は2-3億程度が想定される。
- 2013年シーズン成績の上位であること。Jリーグ ディビジョン2(J2)自動降格→入れ替え戦出場→JFL→第37回全国地域サッカーリーグ決勝大会(地域決勝)決勝リーグ進出→地域決勝予選リーグ進出、の順に上位からクラブ数を割り当て、予定数になった時点で打ち切り。
以上の条件を経てJ3に入会したクラブ(及び今後J3に昇格するクラブ)についてはJリーグ正会員のうち「J3会員」に位置づけられる。一方、Jリーグでは2014年から従来の準加盟との区分けを明確にするため、Jリーグ準加盟の承認を受けながら初年度のJ3入会の審査をクリアできなかったクラブや、今後Jリーグ加盟を目指すとしてJリーグが認定したJFL以下のクラブについては、Jリーグから『Jリーグ百年構想クラブ』と認定される(実質的に「Jリーグ準加盟クラブ」からの移行)。また、「Jリーグ百年構想クラブ」に認定されたクラブについては、Jリーグが2015年度以降のJ3リーグ昇格を目指す取り組みをサポートすることになる。
J3への参戦にあたっては、出場各クラブに最低2-3名程度の22歳以下の選手の登録を義務付ける「U-22枠」の設置案が検討されている。
2013年10月15日のJリーグ理事会で、ステップ2のJ3参加のための「J3ライセンス基準」の審査について、地域リーグ所属の3つのJリーグ準加盟クラブに対しては、当初の10月理事会までの審査終了から、11月の理事会にて審査結果を出すことを決めた。
初年度J3参入チーム決定までの経緯[編集]
参入希望の動向[編集]
2013年3月6日の発表では、Jリーグ加盟を目指す、Jリーグ準加盟クラブを含めたJFLの12クラブ、地域リーグの5クラブ前後が関心を示していると報告され、発足時点では、この中から「10から12クラブ」に絞るとしていた。
2013年7月1日の報道 ならびに2013年7月16日に公開された「J3準備室」特設サイトでの公開情報によれば、初年度のJ3への参加意思があるのは19クラブであり、この19クラブを対象に加入審査を行うと報じられている。内訳としてはJリーグ準加盟クラブが6クラブと、新たに準加盟申請を行う13クラブとなっている。19クラブのうち半数以上の11クラブがJ1、J2のクラブのない地域のチームであり、日刊スポーツは「地域や自治体が一体で将来的に「J1を目指す」という夢を共有できる意味は大きい。(いわゆる)「J空白県」が埋まることは「全国で100クラブ」を目指すJリーグの構想とも合致する。」と論じている。
19クラブ以外にはヴィアティン桑名(三重県2部)も2013年6月28日に準加盟申請を行った が、Jリーグ準加盟申請が書類不備で不受理となっており、Jリーグでは初年度J3参入希望の19クラブには含めていない。また、南国高知FC(四国・高知県)、ヴォルカ鹿児島(九州・鹿児島県)、FC KAGOSHIMA(九州・鹿児島県)、FCガンジュ岩手(東北1部・岩手県)も初年度のJ3入りを目指していたが、初年度のJ3入りの条件となる2013年6月までの準加盟申請を断念している。
審査結果[編集]
2013年11月19日の理事会において、J3に参加希望していた19クラブのうち9クラブのJリーグへの入会が承認され、Jリーグ・アンダー22選抜を併せてJ3発足12チームのうち10チームまでが決定した。
残る2クラブについては、1クラブは2013年12月1日・8日に行われるJ2・JFL入れ替え戦で対戦する「ガイナーレ鳥取(2013年J2最下位=22位)対カマタマーレ讃岐(2013年JFL2位)」の結果でJ2参加とならなかったチーム、もう1クラブは17日のJリーグ理事会でJ3ライセンス交付が認められた地域リーグのチーム(グルージャ盛岡、アスルクラロ沼津、レノファ山口FC)の3クラブのうちから1クラブを選ぶこととした。
- J2・JFL入れ替え戦は讃岐が勝利したため、讃岐がJ2参入、鳥取がJ3参入となった。
- 地域リーグの3クラブの入会ヒアリングは地域リーグ決勝大会などの成績を踏まえ、優先順位を盛岡→山口→沼津の順番で審査を行うものとされ、その後盛岡のJ3参入が承認された。このため山口・沼津はJ3入会審査に及ばなかった。その後山口・沼津はともに日本フットボールリーグ(JFL)のチーム数減少に伴う新規参入希望枠(第15回日本フットボールリーグ#地域リーグとの入れ替えを参照)によってJFLへの昇格が認められた。
下の表における「準加盟申請日」は、2013年3月以降に準加盟申請を行った日付を記す。同欄で「準加盟」とあるのは2013年3月時点で準加盟が承認されている6クラブ。審査段階については2013年12月2日時点の結果を示している。