Bluetooth
Bluetooth(ブルートゥース、ブルーツース)は、デジタル機器用の近距離無線通信規格の1つである。Bluetooth Basic Rate/Enhanced Data Rate (BR/EDR) と Bluetooth Low Energy (LE) から構成される。
概要[編集]
数メートルから数十メートル程度の距離の情報機器間で、電波を使い簡易な情報のやりとりを行うのに使用される。
当初、エリクソン、インテル、IBM、ノキア、東芝の5社(プロモーター企業)によって策定された。その後マイクロソフト、モトローラ、3COM、ルーセント・テクノロジーの4社がプロモーター企業として加わった。現在[いつ?]は3COM、ルーセント・テクノロジーの2社が脱退し、Apple、およびノルディック・セミコンダクターが加わり、9社がプロモーター企業となっている。IEEEでの規格名は、IEEE 802.15.1である。
2.4 GHz帯を使用してPC(主にノートパソコン)等のマウス、キーボードをはじめ、携帯電話、PHS、スマートフォン、タブレットでの文字情報や音声情報といったデジタル情報の無線通信を比較的低速度で行う用途に採用されている。
基本事項[編集]
Bluetooth BR/EDRは2.4 GHz帯を79の周波数チャネルに分け(LEは40)、利用する周波数をランダムに変える周波数ホッピングを行いながら、半径10 - 100m程度のBluetooth搭載機器と、最大3Mbps(HSは24 Mbps)で無線通信を行う。
当初は赤外線短距離通信であるIrDAの完全置換えという誤った認識で普及が試みられたが、使いにくさが強調され、普及の妨げとなった。しかしその後(赤外線通信と比較して)指向性の少ない、簡易なデジタル無線通信としての利便性が認識され、多様な分野で普及が進んでいる。
Bluetooth BR/EDRは、無線接続の状態を意識せずに常時接続したままでの使用状況に適している。反対にIrDAは、意図して接続するのに適している。これらは互いを補完している。LE は短時間のバースト通信に最適化している。
Bluetooth BR/EDR/LEと2.4 GHz帯の無線LAN (Wi-Fi) は、ISMバンドで周波数帯を共用する。そのため相互干渉・混信が起こり、Bluetooth使用時に無線LANの速度が著しく低下するという問題が起こることもある。
セキュリティに関しては、BR/EDR は SAFER+(英語版) 64bit もしくは 128bit を少し変更したアルゴリズムをキーの配送に使用し、E0(英語版) で暗号化できる。LE のポイント・ツー・ポイントとメッシュは AES 128bit が利用可能。上位のアプリケーションレイヤーで独自の暗号化を施すことも可能。
Bluetooth Basic Rate/Enhanced Data Rate (BR/EDR) は、「Bluetoothクラシック」(Bluetooth Classic) と呼ばれることもある。
名称の由来[編集]
名称はスウェーデンのエリクソン社の技術者がつけたものである。初めてノルウェーとデンマークを交渉により無血統合し、文化の橋渡しをしたデンマーク王、ハーラル・ブロタン・ゴームソン (Harald Blåtand Gormsen / Haraldr blátǫnn Gormsson) の歯に失活歯があり、それが青黒い灰色だったので「青歯王」と呼ばれたことに由来している。つまり、「乱立する無線通信規格を統合したい」という願いが込められている。
Bluetooth のロゴは、北欧の長枝ルーン文字(イェリング墳墓群の石碑に見られる)でハーラル・ブロタンの頭文字のH (ᚼ) とB (ᛒ) を組み合わせたものに由来する。
沿革[編集]
- 1994年 - エリクソン社内のプロジェクトとして開発開始。
- 1998年5月20日 - エリクソン、インテル、IBM、ノキア、東芝の5社でBluetooth SIGを設立。同時に Bluetooth という名称を発表。
- 1999年7月26日 - Bluetooth仕様書バージョン1.0を発表。
- 2001年2月 - バージョン1.1を発表。
- 2003年頃 - 日本でBluetoothが普及し始める。[要出典]
- 2003年11月 - バージョン1.2を発表。
- 2004年11月 - バージョン2.0を発表。Enhanced Data Rate (EDR) を追加。
- 2007年3月28日 - バージョン2.1を発表。
- 2009年4月21日 - バージョン3.0を発表。High Speed (HS) を追加。
- 2009年12月17日 - バージョン4.0を発表。Bluetooth Low Energy (LE) を追加。
- 2011年6月21日 - Appleとノルディック・セミコンダクターが理事会に加わる。
- 2013年12月4日 - バージョン4.1を発表。
- 2014年12月3日 - バージョン4.2を発表。
- 2016年12月8日 - バージョン5.0を発表。
- 2019年1月21日 - バージョン5.1を発表。
- 2020年1月6日 - バージョン5.2を発表。
- 2021年7月13日 - バージョン5.3を発表。
- 2023年2月7日 - バージョン5.4を発表。
バージョン[編集]
Bluetooth規格には以下のバージョンがある。普及バージョンである1.1以降においては、3.0以前、3.0+HS、4.0以降の3グループで通信方式が異なるため、各グループ内でのみ互換性を持っている。ただし、複数の通信方式を同時に実装することが可能であり、論理層の基本的な仕様は大きく変わらないため、統一的なユーザーインターフェイスでラップされ、一般利用者が非互換性を意識する必要が無いよう配慮された実装となっている場合が多い。
- 1.0b
- 最初のバージョン。
- 1.0b + CE (Critical Errata)
- 1.0bに修正を加えた。
- 1.1
- Bluetoothリリース後、最初に広く普及したバージョン。
- 1.2
- 2.4 GHz帯域の無線LAN (IEEE 802.11/b/g) などとの干渉対策が盛り込まれた。2003年11月公開。
- 2.0
- 容量の大きいデータを通信する際に最大通信速度を3 Mbpsの通信に切り替える Enhanced Data Rate (EDR) がオプションで追加できるようになった。2004年11月公開。
- 2.1
- ペアリングが簡略化され、近距離無線通信の Near Field Communication (NFC) に対応した。マウスやキーボードなどのスリープ時間が多い機器のバッテリーを最大で5倍延長できる「Sniff Subrating」機能を加えた。2007年3月公開。
- 3.0
- Protocol Adaptation Layer (PAL) とGeneric Alternate MAC/PHY (AMP) によって無線LAN規格IEEE 802.11のMAC/PHY層の利用が可能となり、最大通信速度が24 Mbpsとなる High Speed (HS) がオプションで追加できるようになった。また、電力管理機能を強化して省電力性を向上させた。2009年4月公開。
- 4.0
- 従来からの Bluetooth Basic Rate/Enhanced Data Rate (BR/EDR) に加えて、BR/EDR に比べ大幅に省電力化された Bluetooth Low Energy (LE) が追加された。Bluetooth SIGが公開する資料によれば、ボタン電池1つのみでも数年駆動可能としている。転送速度は1 Mbpsだが、データパケットサイズが8 - 27オクテットと非常に小さくなっている。これは、例えば家電製品などに搭載されたセンサーとのデータ通信に向けた仕様となっている。この点が BR/EDR と方向性が異なっており、互換性が無く、ベンダーは BR/EDR と LE をそれぞれ目的別に採用するものとされている。ホスト側は両方を組み込んだ「デュアルモード」を実装できる。
- BR/EDR に ATT and GATT over BR/EDR を追加。
- 2009年12月公開。
- 4.1
- Bluetooth Low Energy にモバイル端末向け通信サービスの電波との干渉を抑える技術、データ転送の効率化、自動の再接続機能、直接インターネット接続できる機能、ホストとクライアント同時になれる機能[要出典]、が追加された。
- 4.2
- Bluetooth Low Energy に Data Packet Length Extension を追加し、通信速度(アプリケーションスループット)が260 kbpsから650 kbpsに2.5倍高速化。Bluetooth Low Energy が IPv6/6LoWPAN でインターネット接続できるようになる。
- 5.0
- Bluetooth Low Energy のデータレートが2 Mbps, 1 Mbps, 500 kbps, 125 kbpsになり、2 Mbpsおよび1 Mbpsは従来通り到達距離が100 m、125 kbpsは到達距離が400 mとなった。
- 5.1
- ペアリングされているBluetooth機器の方向を探知する機能が追加された。
- 5.2
- LE Audio規格の追加を含む複数の改良。
- 5.3
- LE Audio規格の改良。
- 5.4
- 電子棚札(ESL)への対応。
バージョン | 非対称型通信時 | 対称型通信時 | データレート |
---|---|---|---|
BR (1.0 以降, GFSK) | 下り723.2 kbps / 上り57.6 kbps | 433.9 kbps | 1 Mbps |
EDR (2.0 以降, π/4 DQPSK) | 下り1448.5 kbps / 上り115.2 kbps | 869.1 kbps | 2 Mbps |
EDR (2.0 以降, 8DPSK) | 下り2178.1 kbps / 上り177.1 kbps | 1306.9 kbps | 3 Mbps |
バージョン | データレート |
---|---|
HS (3.0 以降 5.2まで, 802.11 PAL) | 24 Mbps |
バージョン | アプリケーションスループット | データレート |
---|---|---|
4.0 | 260 kbps | 1 Mbps |
4.2 Data Packet Length Extension | 650 kbps | 1 Mbps |
5.0 | 2 Mbps, 1 Mbps, 500 kbps, 125 kbps |
プロファイル[編集]
Bluetoothはその特性上、様々なデバイスでの通信に使用されるため、機器の種類ごとに策定されたプロトコルがあり、それらの使用方法をプロファイル (Profile) と呼び標準化している。 通信しようとする機器同士が同じプロファイルを持っている場合に限り、そのプロファイルの機能を利用した通信をおこなえる。 代表的なものに以下のプロファイルがあり、Bluetooth対応機種であっても利用する機器の双方が適切なプロファイルに対応している必要がある。
- A2DP (Advanced Audio Distribution Profile)
- 音声をレシーバー付きヘッドフォン(またはワイヤレススピーカー)に伝送するためのプロファイル。HSP/HFPと異なり、ステレオ音声・高音質となる。
- AVRCP (Audio/Video Remote Control Profile)
- AV機器のリモコン機能を実現するためのプロファイル。
- BIP (Basic Imaging Profile)
- 静止画像を転送するためのプロファイル。
- BPP (Basic Print Profile)
- プリンターへ転送・印刷するためのプロファイル。
- DUN (Dial-up Networking Profile)
- 携帯電話・PHSを介してインターネットにダイヤルアップ接続するためのプロファイル。
- FTP (File Transfer Profile)
- パソコン同士でデータ転送を行うためのプロファイル。コンピュータネットワークなどで用いられるファイル転送プロトコルのFTPとは無関係。
- GAP (Generic Access Profile)
- 機器の接続/認証/暗号化を行うためのプロファイル。
- HCRP (Hardcopy Cable Replacement Profile)
- プリンターへの出力を無線化するためのプロファイル。
- HDP (Health Device Profile)
- 健康管理機器同士を接続するためのプロファイル。
- HFP (Hands-Free Profile)
- 車内やヘッドセットでハンズフリー通話を実現するためのプロファイル。HSPの機能に加え、通信の発信・着信機能を持つ。
- HID (Human Interface Device Profile)
- マウスやキーボードなどの入力機器を無線化するためのプロファイル。
- HSP (Headset Profile)
- Bluetooth搭載ヘッドセットと通信するためのプロファイル。モノラル音声の受信だけではなく、マイクで双方向通信する。
- OBEX (Object Exchange)
- オブジェクト交換 (OPP、BIP、FTP、SYNC) で用いる認証方式の一つ。データ転送プロファイルの一つで、実装しているとデータ送受信時にOBEX認証パスキーの入力を接続相手に要求する。
- OPP (Object Push Profile)
- 名刺データの交換などを行うためのプロファイル。
- PAN (Personal Area Network Profile)
- 小規模ネットワークを実現するためのプロファイル。
- PBAP (Phone Book Access Profile)
- 電話帳のデータを転送するためのプロファイル。
- SDAP (Service Discovery Application Profile)
- 他のBluetooth機器が提供する機能を調べるためのプロファイル。
- SPP (Serial Port Profile)
- Bluetooth機器を仮想シリアルポート化するためのプロファイル。
- SYNC (Synchronization Profile)
- 携帯電話・PHSやPDAと、PCとの間で、スケジュール帳や電話帳のデータ転送を行い、自動的にアップデートするためのプロファイル。
これらプロファイルのうち、DUN/FTP/HID/OPP/HSP/HFP/A2DP/AVRCPなどの使用頻度が高い。GAPやSDAPのような下位層のものは実装されていても意識されないことが多い。また、プロファイルによっては実装されていてもほとんど使われていないものもある。
同じプロファイルでもクライアント側とサーバー側の違いがあり、逆方向にも使えるとは限らない。DUNの場合を例にとると、本体になる側(PC・PDAなど)からモデムになる側(携帯電話・PHSなど)に対してBluetooth接続を要求する。つまり前者はクライアント (DUN-DT)、後者はサーバー (DUN-GW) であり、通常は片方の役割しか実装されていないため、役割を入れ替えて逆方向に使うことはできない。例えば、DUN-GWを実装しBluetoothモデムになれるスマートフォンがあったとして、これを本体として、DUN-GWを実装した他の携帯電話をモデムとしてダイヤルアップすることは通常できない。
プロファイルは、各機器がBluetoothを使って何ができるかを示したもので、機器同士の接続性が一目でわかるようになるものと期待された。しかし現実には、Bluetooth応用分野の拡大に伴って急激にプロファイルが増加したこともあり、以下のような問題が目立つ。
- 同じような機能のプロファイルが乱立気味であり、利用可能な、あるいは目的に適したプロファイルがわかりにくい。
- 対応プロファイルの少ない古い製品の陳腐化を助長し、しかもアップグレードが提供されないことが多いので買い替えを余儀なくされる。
- 「同じBluetoothなのにプロファイルの有無が原因でつながらない」という印象を与えやすい。
- Advanced Audio Distribution Profileのように、基本的にプロファイルに対応していれば接続可能でも、コーデックなどが乱立しており、全て実装すると高価になるためにメーカーがトレードオフな開発を強いられる場合にユーザーは製品を選びにくくなる。
クラス[編集]
Bluetoothには、電波強度を規定したクラスという概念がある。各機器はいずれかのクラスに分類される。電波強度の差だけであり、両方が同じクラスである必要はない。
クラス | 出力 | 到達距離 |
---|---|---|
Class 1 | 100 mW | 100 m |
Class 2 | 2.5 mW | 10 m |
Class 3 | 1 mW | 1 m |
クラス | 出力 |
---|---|
Class 1 | 100 mW |
Class 1.5 | 10 mW |
Class 2 | 2.5 mW |
Class 3 | 1 mW |
実際の接続手順[編集]
Bluetooth機器を最初に使用する際には、接続相手を特定するため、ペアリング(ボンディング、組み合わせ)と呼ばれる操作が必要になる。ここでは、その一般的な手順を示す。
- 一方の機器を「ペアリング可能状態」に設定する。また、認証・暗号化の設定を双方であわせておく。
- 他方の機器から「探索(発見)」操作を行う。
- 探索可能状態にある周囲のBluetooth機器の一覧が提示されるので、その中から所望の接続相手を指定する。
- 双方に同一のパスキー(認証鍵のこと、PINともいう)を入力する。
パスキー
- パスキーは、通常4 - 16桁程度の任意の数字で指定する。短いパスキーでは通信を傍受・解読されるおそれがあるので、ある程度長いほうがよい。パスキーを入力できないデバイス(マウス、ヘッドセットなど)では、パスキーが固定値、もしくは入力が不要な場合がある。こうした機器の場合、通常デフォルトでは「0000」「1234」などの単純な羅列となっている。
- パスキーの交換が終われば、ペアリングが完了する。一度ペアリングを行った機器間では、次からは自動的あるいは半自動的に接続が確立され、パスキーの入力は不要である。相性によっては、毎回パスキー入力が必要となることもある。
Bluetooth LEでは、位置情報を発信するだけのビーコンのような単方向のアドバタイズ用途の場合、必ずしもペアリングする必要はない。
採用例[編集]
Bluetoothは汎用インターフェイスであり、様々な機器に採用されている。以下にその一例を挙げる。
携帯電話・スマートフォン・PHS[編集]
携帯電話やPHSの高機能化に伴い、携帯電話類同士や携帯電話類とBluetoothに対応したモバイル機器との間での情報の受け渡しに使われるようになっている。一部の携帯電話やPHS端末は、対応のPCやPDAとBluetoothで接続することで無線モデムにできる。
ワイヤレスヘッドセットでは中級品以下までBluetoothの採用が進んでいる。2008年の日本市場では、3キャリアがほぼ標準機能として採用していた。ソフトバンクモバイル向けでは3G機種のほとんどがBluetooth対応のためか普及率が高い。KDDI/沖縄セルラー電話(各auブランド)は2007年冬モデル以降の一部の「KCP+」採用機種に、NTTドコモは2008年秋冬の新コンセプトモデル以降に、積極的に採用している。Bluetoothの活用について携帯電話キャリア側からの目につく提案は、ミュージックプレーヤーとしての「音楽ケータイ」とワイヤレスヘッドホンを結ぶ機能であるというかたちがほとんどで、ファイル転送や車内ハンズフリー通話などについてカタログで大きく取り扱われるようにはなっていない。
スマートフォンに関しては、iPhoneや、Android OSを搭載している機種では概ね標準機能として採用されている。ただしiOSがサポートする標準BluetoothプロファイルはHFP/A2DP/HIDなどの一部に限定されており、サードパーティー製のアプリケーションや周辺電子機器で自由に使用することはできず、SPPなどの非標準プロファイルを利用したデバイスを開発・製造するにはMFi認証プログラムへの参加が必要となる。iOSバージョン5.0以降のCore BluetoothフレームワークによりBluetooth LEに対応し、またiOSバージョン13.0以降のCore Bluetooth ClassicによりGATT over BR/EDRに対応している。Androidはバージョン2.0以降(Bluetooth LEについてはバージョン4.3以降)でOS側の対応が始まった。また文字入力の補助のために、スマートフォンと一緒に持ち歩ける小型サイズのBluetooth接続キーボードが出回っている。また最近[いつ?]ではBluetoothを利用したテザリングができる機種が出てきている。Android搭載機では、Bluetoothマウスでの操作も可能である。iPhoneでは、iOS 13以降でBluetoothマウスに対応している。iOS機器のAirDropや、Android機器のNearby Shareなど、相手端末の探索には省電力のBluetoothを、ファイル転送には高速なWi-Fiを併用する機能もある。
なお、日本国内で発売された携帯電話で初めてBluetoothを搭載したのは、2001年にauから発売されたC413S(ソニー)である。ただし、この機種はA2DP/HSP/HFPプロファイルに対応しておらず、ヘッドセットを用いたハンズフリー通話には対応していなかった(Bluetooth搭載携帯電話・PCとの接続には対応しており、データのやりとりや後述の無線モデムとしての利用は可能だった)。
ハンズフリー通話[編集]
日本では2004年の道路交通法改正により、自動車の運転中に携帯電話・PHSを手に持って通話した場合の罰則が強化されたため、手に持たずに通話できるハンズフリー機能が注目されるようになった。
ハンズフリー・マイクロフォン機能としては、ヘッドセットやイヤホンマイクをイヤホンジャックに接続する安価なものが一般的であるが、事前に頭・耳にヘッドセット等を装備して、それと携帯電話等の間をコードで繋いだままでいなければならないなど煩雑であるため、無線により自動的にハンズフリー車載器(スピーカー・マイクは車内に装備)と接続してハンズフリー通話ができるBluetoothハンズフリー機器の開発や製品の輸入ライセンス販売が活発化した。
東京都をはじめとする一部の都道府県では、道路交通法第71条を根拠に公安委員会が定めた遵守事項として、イヤホンを付け運転することを(多くは条件付きであるが)禁じており、片耳だけのヘッドセットでも取締りの対象となる可能性がある。
サンバイザーに挟み込むような形状で使用するスピーカーフォンも登場している。
タブレット端末・タブレットPC・ノートPC[編集]
iPadやAndroid搭載タブレットのようなタブレット端末、Microsoft SurfaceのようなタブレットPCでも、Wi-FiやBluetoothを標準搭載している製品が多い。さらに一般的な従来型のノートPCなど、持ち運びのできる小型コンピュータ端末での採用も広がっている。スマートフォン同様、Bluetooth規格の対応状況はハードウェアの世代およびそれぞれのOSによる。
無線モデム[編集]
パソコン・PDAなどのほかのコンピュータから、DUN (Dial-up Networking Profile) 機能を持つ携帯電話を無線モデムとして利用し、インターネットに接続することができる。日本では携帯電話会社がインターネット・プロバイダ契約を提供しており、別途独立したISPと契約しなくてもよいことが多い。W-CDMA網を用いたパケット通信、GSM網を用いたGPRS (General Packet Radio Service) 接続などが抽象化されて提供される。
パソコン・PDA側では通常のモデムの場合と違い、特別な初期化コマンドが必要となることもある。例えばソフトバンクモバイルの場合では、『+CGDCONT=1,"IP","softbank"』というものである。これらの設定を行うダイヤルアップ接続のセットアッププログラムが、携帯電話会社から供給されていることもある。
カーナビゲーション[編集]
自動車メーカー各社も、自動車向けBluetoothハンズフリー通話装置の開発を行った。既にカーナビゲーション・システムが自動車の情報端末として確立していたため、Bluetoothはこれらカーナビに組み込まれることが多くなり、「Bluetooth対応純正カーナビ」が登場した。
このうち、KDDIの準筆頭株主のトヨタ自動車が最も積極的で、現在[いつ?]ではおもにトヨタのG-BOOK、日産のカーウイングス、ホンダのインターナビの3つの陣営に分かれている。
2023年現在、カロッツェリア(パイオニア カーエレクトロニクス事業部)やパナソニックなどサードパーティー製カーナビにも、Bluetooth接続機能が一部の機種に標準装備、またはオプションで用意されている。Bluetooth対応カーナビは、Bluetooth対応携帯電話とHFP/HSPで接続し、Bluetoothの設定などの操作はカーナビ画面、着信・発信時の操作はカーナビ画面・専用ボタン・自動着信/音声認識発信など、マイクは運転席の周辺、スピーカは車のカーステレオのものを流用している。
カーナビと携帯電話の連携は、単に携帯電話を発話・受話できることにとどまらず、各カーナビ陣営の運営するサーバーに収録された渋滞情報の取得やサーバーへの走行履歴の送信、カーナビに収録された店舗情報に収録されている電話番号に直接電話をかけることができるなどといった、より高度な利用法に進化している。 また、機種によってはBluetooth接続で携帯音楽プレーヤーに収録した音楽を操作・演奏することができ、両者がAVRCPのVer.1.3以上に対応していればカーナビ側に楽曲のタイトルなどを表示することもできる。また、PBAPに対応している場合は、スマートフォン・携帯電話などから電話帳情報をカーナビに読み込ませることもできる。
音楽プレーヤー[編集]
Bluetoothを利用できる音楽プレーヤーとして、ウォークマン、iPodなどのデジタルオーディオプレーヤー、Android、iPhoneなどのスマートフォンのような製品が見受けられるようになっている。
Bluetoothでワイヤレス再生する場合、A2DPの標準コーデックとして「Sub Band CODEC (SBC)」が使われることが多い。SBCは伝送環境の悪化に強く変換時の負荷も少ない反面、音質の劣化や再生時の遅延が起きやすい。そのため、標準以外の独自コーデックも採用する機種が増えている。CSR(後にクアルコムに買収)開発の「aptX」とそのハイレゾ対応版の「aptX HD」および低遅延の「aptX LL (Low latency)」、AppleのiPhoneやiPadで多く採用されている「AAC」、ソニー開発のハイレゾ対応「LDAC」などの高音質・低遅延なコーデックを採用するようになっている。これらを利用して再生する際には音楽プレーヤーだけでなく、ヘッドフォンやヘッドセット、レシーバーなどもこれらのコーデックに対応した物が必要となる。
ワイヤレスヘッドフォン・イヤホン[編集]
一般的にヘッドホンやイヤホンは、再生機器にプラグを差し込んで使う有線型であるが、Bluetoothにて音楽信号を伝送する無線型が普及してきている。2020年代現在ではスマートフォンの高価格モデルを中心に、3.5mmイヤホンジャックを搭載せずワイヤレス接続を前提とする機種も登場している。再生機器から伝送された音楽信号は、Bluetooth対応のヘッドホン・イヤホン側で処理が行われ、音楽として再生される。再生機器側と線がつながっていないため、取り回しがしやすく動きやすいという利便性がある。またヘッドホン・イヤホン側から再生機器側に対して、ワイヤレスで再生・停止・音量調整などを行う機能もある。欠点としては、バッテリーを搭載しているため定期的に充電が必要なことである(電池切れになると無線で再生できなくなる)。また低価格イヤホンに採用される標準コーデックであるSBCは設計の古さなどから音質的に劣り、高音質コーデック採用モデルは相応の価格上昇となる点もある。Bluetoothイヤホンは左右が線でつながっているものと、独立したもの(左右完全独立型)があり、他にも首掛け型や耳掛け型などがある。
RFIDタグとバーコードリーダー[編集]
産業界ではBluetoothを用いてパソコン、PDA、携帯電話等へデータ転送するRFIDタグリーダーやバーコードリーダーが広く用いられている。RFIDリーダーのうち、日立のミューチップなどのように2.45 GHz帯を用いるRFIDはBluetoothの搬送波と干渉するため、実装に対して特別な工夫が必要となる。
これらのリーダーはSPP (Serial Port Profile) を用いて接続するものが一般的である。
PC周辺機器[編集]
- マウス (HID)
- キーボード (HID)
- GPSレシーバー(SPP (Serial Port Profile) で利用するものが一般的)
- 小型プリンター、走査(スキャン)[要説明](OPP他)
PCでBluetooth機器と通信する場合、内蔵または外付けのBluetoothアダプターを利用する方法があるが、オペレーティングシステム (OS) の対応状況を考慮する必要がある。
Microsoft Windows[編集]
Windows XP SP2以降・Windows Server 2016以降では、Bluetoothワイヤレステクノロジーを標準サポートしている。Windows 2000以前のOSやWindows Server 2012以前のOSは、標準でBluetoothをサポートしないが、マイクロソフト以外のBluetoothドライバーを利用できる可能性がある。Windowsが全くサポートしないプロファイルについても、マイクロソフト純正ドライバーを使用せずサードパーティー製のBluetoothドライバーをインストールすることで、プロファイルを使用できる可能性がある。
なお、Windowsは原則としてBluetooth 1.0に対応しない。マイクロソフトは、これについて「Bluetoothバージョン1.0の仕様には、WindowsがBluetoothワイヤレステクノロジーを十分にサポートするために必要な、いくつかの重要なアップデートが欠けていたため」と説明している。また、High Speed (HS) は非推奨としていて、代わりにWi-Fi Direct(英語版)を使うことを推奨している。
Windows のバージョン | Bluetooth のバージョン | 対応プロファイル |
---|---|---|
Windows 2000 以前 | サポートなし | |
Windows Server 2012 以前 | ||
Windows XP(SP2以降) | 1.1〜2.0 BR・EDR |
|
Windows Vista | 1.1〜2.0 BR・EDR |
|
Windows Vista(SP2以降) | 1.1〜2.1 BR・EDR | |
Windows 7 | ||
Windows 8 | 1.1〜4.0 BR・EDR・LE | |
Windows 8.1 | ||
Windows 10 | 1.1〜5.0BR・EDR・LE |
|
Windows Server 2016 |
Linux[編集]
Linuxの本体であるカーネルには各種のBluetoothコントローラーのドライバーが組み込まれている。実際に利用するためのツールは主だったデスクトップ向けディストリビューションで、BlueZパッケージなどの関連パッケージが用意されている。初期段階で組み込まれている場合もあり、また統合的なパッケージ管理ツールから、手軽にこれらを導入できることも多い。一般的に各種のGUI環境において、BluetoothについてのGUIツールが組み合わせられ、インジケーターなども提供される。BlueZなどはAndroidにも採用されており、Androidで利用できるプロファイルはLinuxでも利用可能で、A2DP, HFP/HSP, FTP, HID, RFCOMMなどを活用できる。ただし、プロファイルは対応していても、実際にそれを活用するソフトウェアが不足するような場合はある。
ディストリビューションの構成、バージョンによって、設定に手間がかかる場合もある。ただし、たとえば2011年10月現在のUbuntu 11.10では、Bluetooth対応は標準機能に近い位置づけで、Bluetooth機能の自動認識、デバイスドライバーの自動組み込みが行われる。また、Bluetooth機器の登録もウィザード機能で手軽に行えるようになっている。
実際の使い勝手も改良が進み、A2DP、HFP/HSP、内蔵音源、USB音源などの混在した音源デバイスを、個別のアプリケーションごと自由に切り替えることもできるほか、A2DPホスト機能によってスマートフォンで再生する音楽を、PCに繋いだスピーカーで鳴らすこともできるようになっている。
macOS[編集]
macOSでは、Mac OS X v10.2.8以降から、OS標準でBluetoothワイヤレステクノロジーをサポートしている。対応するプロファイルは、DUN・HID・SPP・OPP・FTP・SYNC。更に、Bluetooth software 1.5にて、HCRP・HSPに対応する。OS X Mountain Lion (10.8) では、更にA2DPとAVRCPもサポートしている。
Bluetooth Low Energyに関しては、セントラルロールはMac OS X Lion (10.7) 以降、ペリフェラルロールはOS X Mavericks (10.9) 以降で対応。
ゲーム機[編集]
- 家庭用ゲーム機の無線コントローラー (HID)
- Wii、Wii U、Nintendo Switch
- Wiiリモコン、バランスWiiボード、Wii U Proコントローラー、Joy-Con、Nintendo Switch Proコントローラー
- PlayStation 3、PlayStation 4、PlayStation 5
- SIXAXIS(→PlayStation 3#コントローラ)、デュアルショック3、4、DualSense
- Wii、Wii U、Nintendo Switch
- 携帯型ゲーム
- ニンテンドーDS
- ニンテンドー ワイヤレスキーボード
- PlayStation Portable go
- PlayStation Vita
- たまごっち
- 2018年発売の「たまごっちみーつ」にて、スマートフォン「たまごっちみーつ アプリ」と連携。
- ニンテンドーDS
マイクロソフトのXboxシリーズの本体はBluetoothに対応しておらず、専用のワイヤレス技術を使用しているが、ヘッドセットやコントローラーなどの周辺機器はBluetooth接続にも対応している。Xbox OneやXbox Series X/Sのワイヤレスコントローラーは、Windows/Android/iOSデバイスとBluetooth接続することができる。
健康管理機器[編集]
コンティニュア・ヘルス・アライアンスが標準的な接続方法としてBluetoothを採用しているため、多くの健康管理機器がBluetoothでの接続を実現している。
- 体重計
- 体脂肪計
- 血圧計
- 心拍計
勤怠機器[編集]
- タイムレコーダー・タイムレコーダー用アダプター
- アマノ「TimeP@ck STD/iC/EX」
- アマノ「TP@C-6101C 打刻印刷専用プリンター」
その他の採用例[編集]
- 補聴器
- デジタルペン(ノキア、ぺんてる製など)
- 超小型のヘッドフォン(Skypeなどの利用から、補聴器使用者のPC利用などにも有効)
- インターカム バイク用(ライダー間会話用)の製品などが複数商品化されている。class1出力の場合見通し100mまで通話可能で、中には500mまで可能と宣伝している物もある。同時に普通のヘッドセットとして携帯電話等と接続できる機能も備えているものが多い。
- NTTが販売するビジネスホンαNXシリーズおよびαGXシリーズのカールコードレス電話機。GXシリーズではカナ品名に<2>が付くもので、GX-24CCLSTEL-<2>-<W>等。ただし、他機器との相互接続はできない仕様となっている。
- トータルステーション
- デジタルカメラ・デジタルカメラ用アダプター
- リコー「Caplio 500SE」
- ソニー「サイバーショット DSC-FX77」
- オリンパス「PENPAL PP-1」 - 同社製の対応デジタルカメラから写真画像をスマートフォンなどに転送できるアダプター。
- カシオ「HIGH SPEED EXILIM EX-ZR1600」
- 腕時計・スマートウォッチ(腕時計型デバイス)
- シチズン「i:VIRT」「i:VIRT M」
- カシオ計算機 「G-SHOCK GB-6900/GB-5600」「G-MIX GBA-400」「EDIFICE EQB-500D」
- ソニー・エリクソン/ソニーモバイルコミュニケーションズ(現・ソニー〈二代目法人〉)「MBW-100」「MBW-150 Music Edition」「MBW-200」「LiveView MN800」「SmartWatch MN2」「SmartWatch 2 SW2」
- Wear OS(旧Android Wear)搭載端末
- Apple「Apple Watch」
- フィットネストラッカー
- 自撮り棒
- サイクルコンピュータ
- キャットアイ「アベントゥーラ」「パドローネ スマート」
- 自転車用フロントライト・リアライト
- キャットアイ「シンク コア」「シンク キネティック」「シンク ウェアラブル」
- 歯ブラシ
- ブラウン「オーラルB ジーニアス10000・9000/スマート7000・5000・4000/プラチナ」
- フィリップス「ソニッケアー ダイヤモンドクリーン/フレックスケアープラチナム」
- センサーを内蔵した電動歯ブラシにスマートフォンの専用アプリと連携して、磨き方のチェックやスケジュール管理等を行う。
- サンスター「G・U・M PLAY」 - 歯ブラシのハンドル部に装着するアタッチメント。スマートフォンの専用アプリと連携して、歯磨き動作の記録・管理等を行う。
- 貨物追跡システム
- アメリカのデルタ航空が、コンテナ追跡のため、大手航空会社として初導入。
- 自動販売機
- コカ・コーラ「Coke On」
- 自動車用フォグランプ
- スマートフォンのアプリと連携して発光色や照度等の設定・管理を行う。