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防災

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防災(ぼうさい)とは、狭義には災害予防及び災害応急対策をまとめた概念である。これに災害復旧(被災前の状態に戻す意味)を含める場合もある。つまり「防災」には災害を未然に防ぐ被害抑止のみを指す場合もあれば、被害の拡大を防ぐ被害軽減や、被災からの復旧まで含める場合もある。さらに地域防災計画などでは被災地に新たにより良い社会を創出する復興まで含める場合もある。

災害の概念は広いので、自然災害のみならず、人為的災害への対応も含めることがある。類義語として、防災が被害抑止のみを指す場合に区別される減災、防災よりやや広い概念である危機管理などがある。

防災と危機管理[編集]

防災上の危機管理の要素[編集]

防災上の危機管理の要素は時系列でみると準備、緊急対応、収束の3つの局面からなる。

準備
防災上の準備は、予測、備え、点検訓練の3つの要素からなる。予測は自然災害や事件・事故などの危機の予測である。予測された危機に対する人、物、金、情報、仕組みなどの用意が備えであり、災害時に支援する側に回ることができるかや二次災害が発生するかといった分岐点にもなる。点検訓練は準備している備えに実効性があるか確認することである。
緊急対応
緊急対応は、発生した危機による被害をいかに少なくするかをいう。
収束
収束は平常時に戻るための段階であり、原因の究明、緊急対応の不備の点検、対策の検討実施などからなる。

災害は人口減少、財政悪化、感染症のまん延、企業の転出、犯罪の発生など複次的な多様な危機とも関連がある。

防災の種類とマネジメント[編集]

災害の防止策は大きく2つに分けられる。

  1. 被害抑止
    被害が生じないように講じる対策。土地利用の管理、河川の改修、建物の耐震化、災害の予報・警報など。
  2. 被害軽減
    被害が生じてもそれを少なくし、立ち直りがスムーズになるよう講じる対策。災害対応マニュアル や防災計画 の作成、防災システムの開発、人材育成、災害の予報・警報など。

一方、災害発生後の対応も大きく2つに分けられる。

  1. 応急対応
    救助、消火、医療、避難所の運営など。
  2. 復旧・復興
    住宅や生活の再建、心のケアなど。

これらに加えて、誘因たる外力を知ることも重要である。具体的には、自然災害のメカニズムやそれを抑止する技術の研究、災害の予測(ハザードアナリシス)、それらの知識の普及(防災教育)などである。

行政や企業などの組織が行う総合的な防災では、知識や技術、資金や利害関係の調整が求められるため、経営管理(マネジメント)的な視点が必要となる。そのため、この分野において防災はクライシスマネジメント(危機管理)・リスクマネジメントの一部として認識されている。

ディザスターマネジメント(災害管理)またはエマージェンシーマネジメント(緊急事態管理)においては、上記の行為は右図のように1つの循環の中に位置付けられる。この図では被害抑止や被害軽減はリスクマネジメント、応急対応や復旧・復興はクライシスマネジメントの範疇に定義しているが、より広く定義する場合もある。

また、災害のリスクについて理解を深め、その深刻さや受け入れ可能性(深刻さに応じた防災目標)、信頼できる警報のあり方、避難指示に従ってもらう方策、避難を引き出す方法などについて、実行しながら改善検討を重ねていくことをリスクコミュニケーションという。これに対し、災害発生後の被災現場で災害時特有の心理状態にある被災者に配慮しながら情報提供を行う方法について実行しながら改善検討を重ねていくことをクライシスコミュニケーションという。

被害抑止・被害軽減[編集]

防災の施策は大きく、構造物によって災害の誘因たる外力を防ぐハード(hard)面の対策と、知識や制度により災害の素因たる防災力を向上させるソフト(soft)面の対策に2分される。外力が小さいければ大部分をハード面の対策で防ぐことが可能だが、外力が大きくなるほどソフト面の対策が果たす役割が大きくかつ重要になってくる。なお、特徴としてハード対策は管理が専門的で行政が担うものが多いのに対し、ソフト対策は管理が非専門家にも開かれており住民やコミュニティが担うものが多い。

ハード面

  • 水害や土砂災害に対する治水構造物の設置、斜面改良
  • 建築物や土木構造物における、耐震化(制震、免震を含む)、防火化、消防設備の設置
  • 防災拠点(防災倉庫、避難場所など)の整備や防災実働機関の設備整備
  • 防災無線の整備、通信設備の耐災害化
  • 災害医療設備の整備

ソフト面

  • 建築物や土木構造物における法的規制(耐震基準設定、防火基準設定、避難設備基準設定など)
  • 防災を考慮した都市計画の設定
  • 地域主体での防災まちづくり活動
  • 水害や土砂災害における危険箇所への法的規制(建築制限、危険箇所指定など)
  • 水害・土砂災害・風害・雪害に対する保安林の設定
  • 災害時の行政から住民への周知体制の整備(広報車、サイレンなど)
  • 災害時の防災担当機関から報道機関への連絡体制、報道体制の整備
  • 災害医療体制の整備
  • 災害を想定した体制の整備、防災訓練(避難訓練による避難経路の確認など)
  • 行政によるハザードマップ作成、公表
  • 学校教育や地域・行政・企業での防災教育

地震災害を例に、発生からの経過時間別のクライシスマネジメント(危機管理)の目安を示す。

  • 即時対応(1日以内) - 救助・脱出・応急手当、災害医療、二次災害防止、自治体職員の非常招集、被災情報の収集解析と対応、安否情報など。改善策として、住民が使える救助道具の備蓄、自治体職員の勤務管理や被災程度を考慮した負担軽減、医療機関での備蓄や情報共有など。
  • 緊急対応(2日目 - 1週間) - 避難所の開設と機能強化、幹線道路の通行確保・交通整理、救援物資の配布、重傷患者の転送など。改善策として、避難所での被災者への情報提供の強化など。
  • 応急対応(2週目 - 1か月) - 仮設住宅の建設・入居、物流管理の継続、復旧の計画と実施、生活支援、ボランティア活動など。改善策として、地域コミュニティを分断しない仮設住宅入居、インフラ復旧の作業効率を高める全体的な調整、ボランティアの養成など。
  • 復旧対応(2月目 - 6か月) - 心的外傷後ストレス障害 (PTSD) のケア、瓦礫の撤去、復興計画作成など。改善策として、心のケアを行うボランティア強化、瓦礫撤去の効率化・円滑化、事前の被害想定による復興計画作成負担の軽減など。
  • 復興対応(7か月目以降) - 災害経験・教訓の継承、災害に強いまちづくり、生活再建など。

なお、これは「不意打ち」で突然やってくる地震災害を対象として阪神・淡路大震災後に作成されたものであり、ある程度予測でき進行が緩やかな洪水・高潮といった災害には必ずしも当てはまらない。洪水・高潮では、災害レベルに達する前に警報や避難指示を出すことができること、避難所・備蓄倉庫・庁舎などの浸水対策を考える必要があること、二次災害として感染症の危険性が高いことなどが異なる。



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