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(さけ)は、エタノール(アルコールの一種)が含まれた飲料の総称。原料をアルコール発酵させて得る醸造酒、それから造られる蒸留酒などに大別され、原料や酵母、製法などの違いによる多様な酒が世界各地にある。

酒を飲むことを飲酒といい、アルコールは抑制作用を有するため、飲酒はヒトに酩酊(酒酔い)を引き起こす。

概説[編集]

日本語では丁寧な呼び方として御酒(おさけ、ごしゅ、おささ、みき)もよく用いられ、酒類(しゅるい、さけるい) やアルコール飲料(アルコールいんりょう)、またソフトドリンクに対して「ハードドリンク」とも呼ばれることがある。西洋ではワインに相当する言葉が総称として用いられることがある。

酒は人類史において最古から存在する向精神薬[要出典]の一つである。しかし、酩酊は往々にして混乱や無秩序をもたらし、社会から忌避される。「百薬の長とはいへど、よろづの病は酒よりこそ起これ」などと言われ、古来より酒は社会にとって両価値的存在だった。

酒の歴史は古く、有史以前から作られていたと見られている。

製造方法・原料・味わいなどは非常に多種多様であり、分類方法も同様である。

原料は多くの場合、ブドウやリンゴなどの果実、大麦や米などの穀物、イモなどの根菜のいずれかが使われる。

効用としてはストレスの解消、コミュニケーションの円滑化、疲労回復が挙げられる(→#効用)。そしてヒトの脳を萎縮させ、時に違法薬物を上回ると言われる最も有害な薬物であり、世界で毎年250万人の死亡につながり死因の4%を占める。作用量と致命的な量が近く急性アルコール中毒になりやすい薬物であり、アルコール乱用や、禁断症状が致命的な振戦せん妄となりうるアルコール依存症となることもあり、アルコール飲料はIARC発がん性でグループ1(発がん性あり)にも分類される。

アメリカ合衆国では飲酒による死因の14%が運転事故、8%が他殺、7%が自殺、5.6%が転落死を占める(→#飲酒と社会)。またその効用も副作用も、(主に遺伝的な)個人差が大きいことで知られる。

このように及ぼす影響が大きいため、2010年に世界保健機関(WHO)の「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」が採択されており、また政府の税収確保のため、酒の製造および流通(販売)は、多くの国において法律により規制されている(→#法律)。宗教ごとに酒の扱いは異なっており、儀式に用いられたり、神への捧げ物とされていたり、また身を清め神との一体感を高めるための飲み物とされていたりする。宗教によっては、飲酒を禁じているものもある。

原料[編集]

糖分、もしくは糖分に転化されうるデンプン分があるものは、酒の原料になりうる。脂肪やタンパク質が多いもの(たとえば大豆などの豆類)は原料に向かない。

よく用いられる原料[編集]

果実類
ブドウ、リンゴ、サクランボ、ヤシやクリの実など
穀物類
米、麦、トウモロコシなど
根菜類
ジャガイモ、サツマイモなど

アルコール発酵に用いる菌[編集]

酒に含まれるアルコール分はほとんどの場合、酵母などの菌によって、糖のアルコール発酵が行われる。テキーラは酵母ではなくザイモモナスと呼ばれる細菌をアルコール発酵に使用している)。

しかし、麦・米・芋などの穀物類から造る酒の場合、原材料の中の炭水化物はデンプンの形で存在しているため、先にこれを糖に分解(糖化)する。糖化のためにはアミラーゼ等の酵素が必要である。酵素の供給源として、西洋では主に麦芽が、東洋では主に麹が使われる。

その他の原料[編集]

天然の素材
サトウキビ、テンサイ、樹液、乳、蜂蜜
加工品
  • 酒造の副産物として得られる酒粕やブドウの絞りかすなど

このほか、通常は飲料や食材として扱われていなくても、含有している糖分をアルコール発酵させれば酒は造れる。日本の森林総合研究所は、木材を細かく破砕してリグニンに保護されていたセルロースを露出させて酵素により糖に変え、樹種により味・香りが異なる酒を造る製法を開発した。

種類[編集]

製造方法による分類[編集]

酒は大きく分けて醸造酒、蒸留酒、混成酒に分かれる。醸造酒は単発酵酒と複発酵酒に分けられ、複発酵酒は単行複発酵酒と並行複発酵酒に分けられる。

  • 醸造酒:原料を発酵させた酒。蒸留や混成といった手順を踏まないもの(発酵後そのままとは限らない。飲みやすく調整するために水を加えるなど)。
    • 単発酵酒:原料中に糖類が含まれており、最初からアルコール発酵を行うもの。
    • 複発酵酒:アルコール発酵だけでなく、穀物のデンプンなどを糖化する過程を含むもの。
      • 単行複発酵酒:糖化の過程が終わってからアルコール発酵が行われるもの。ビールなど。
      • 並行複発酵酒:糖化とアルコール発酵が並行して行われるもの。清酒など。
  • 蒸留酒:醸造酒を蒸留し、アルコール分を高めた酒。
  • 混成酒:酒(蒸留酒が主に使われる)に他の原料を加え、香り・味・色などを整えた酒。

蒸留酒のうち、樽熟成を行わないものをホワイトスピリッツ、何年かの樽熟成で着色したものをブラウンスピリッツとする分類法がある。ただし、テキーラ、ラム、アクアビットなどではホワイトスピリッツとブラウンスピリッツの両方の製品があり、分類としては本質的なものではない。

なお、全ての酒が上記いずれかに含まれるわけではない。例えばアイスボックビール は、醸造後にアルコール分を高める手順があるため醸造酒とは言いがたいが、その手順が蒸留ではない(凍結濃縮)ため蒸留酒でもない。また、凍結濃縮を他の酒類に適用する研究も行われている。

原料による分類[編集]

原料によって酒の種類がある程度決まる。しかし、ジン、ウォッカ、焼酎、ビール、マッコリがあり、必ずしも原料によって酒の種類が決まるわけではない。また、原産地によって名称が制限される場合がある。たとえばテキーラは産地が限定されていて、他の地域で作ったものはテキーラと呼ぶことができずメスカルと呼ばれる。

醸造酒 蒸留酒 混成酒
果実 ブドウ ワイン ブランデー

ピスコ

ブドウ(絞りかす) グラッパ

マール

リンゴ シードル(アップル・ワイン) カルヴァドス

サボルチの林檎パーリンカ

ナシ ペリー(またはペルー)
レモン リモンチェッロ
プルーン ツイカ

スリヴォヴィッツ

バナナ バナナ・ビール
その他 猿酒
穀物 清酒

どぶろく

紹興酒

マッコリ

サト

米焼酎

泡盛

ソジュ

みりん
米(酒粕) 粕取焼酎
小麦 白ビール

ボザ

大麦 ビール

バーレーワイン

モルトウイスキー

麦焼酎

トウモロコシ チチャ バーボン・ウイスキー
トウモロコシ

(コーンスターチ)

ビール

※副材料として

用いられる。

甲類および乙類焼酎
モロコシ 白酒
ソバ 蕎麦焼酎
ライムギ クワス
ヒエ トノト
テフ テラ
根菜類 サツマイモ 芋焼酎
ジャガイモ アクアビット
タピオカ 甲類焼酎 ※一部の商品
その他

植物

サトウキビ アグリラム

カシャッサ

黒糖焼酎

リュウゼツラン プルケ メスカル

テキーラ

ヤシの樹液 ヤシ酒
トマト トマト焼酎
その他 馬乳酒

クミス

アルヒ
蜂蜜 ミード

メドヴーハ

廃糖蜜 甲類焼酎

インダストリアルラム

酒類の分類に関連する法律[編集]

アルコール飲料は多くの国で課税対象であり、また年齢によって飲用が制限されることも多いため、法律によって酒の定義や区分を明確に定めている。 日本ではアルコール度数1度以上が酒類と定義され20歳未満の飲用は禁じられているが、これらの閾値は当然国・地域によって異なる。 また、フランスのAOC法のように文化財としての酒を保護するための法律もある。

度数[編集]

100g中の酒に含まれるアルコール質量
種類 100g中のアルコール質量
日本酒(純米酒) 12.3g
日本酒(本醸造酒) 12.3g
日本酒(吟醸酒) 12.5g
日本酒(純米吟醸酒) 12.0g
ビール(淡色) 3.7g
ビール(黒) 4.2g
ビール(スタウト) 5.9g
発泡酒 4.2 g
ぶどう酒(白) 9.1g
ぶどう酒(赤) 9.3g
ぶどう酒(ロゼ) 8.5g
紹興酒(紹興酒) 14.1g
しょうちゅう(甲類) 29.0g
しょうちゅう(乙類) 20.5g
ウイスキー 33.4g
ブランデー 33.4g
ウオッカ 33.8g
ジン 40.0g

日本でのアルコール度数は、含まれるアルコールの容量パーセントで「度」と表す。正確には、温度15℃のとき、その中に含まれるエチルアルコールの容量をパーセントで表した値。販売されている酒の多くは、3度(ビール等)から50度前後(蒸留酒類)の範囲であるが、中には90度を超す商品もある。日本の酒税法では、1度未満の飲料は酒に含まれない。そのため一般的な甘酒はソフトドリンクに分類される。なお、日本酒には「日本酒度」という尺度があるが、これは日本酒の比重に基づくもので、アルコール度数とエキス分(酒類中の糖、有機酸、アミノ酸など不揮発性成分の含有量)に依存する。

英語圏では、度数のほか、アルコールプルーフも使われる。USプルーフは度数の2倍、UKプルーフは度数の約1.75倍である。英語圏で degree や ° といえばプルーフのことなので、注意が必要である。

効用[編集]

高齢期の認知能力向上[編集]

中年期の適度なアルコール摂取(女性で約325ml/日、男性で約600ml/日)が、老年期の認知能力の向上につながる可能性を示唆する研究がある。

食欲の増進[編集]

個人差はあるものの、少量の飲酒に限れば、胃液の分泌が盛んになり消化を助け、食欲が増進する。

ストレスの解消[編集]

ほろ酔い程度の飲酒により、行動欲求を抑圧している精神的な緊張を緩和し、気分がリラックスし、ストレスの解消につながる(セルフメディケーション)。

コミュニケーションの円滑化[編集]

適量のアルコールが体内に入ると、思考や知覚、運動、記憶などといった機能をつかさどっている大脳皮質の抑制が解放される作用がある。抑制が取れることにより緊張がほぐれ、コミュニケーションがより陽気で快活になり、会話が活発になる。酒により会話などの行動する勇気が出る効果を英語では、liquid courage(リキッド・カレージ)と言われる。魅力的に見えるビール・ゴーグル効果と呼ばれるものはあるが、研究では魅力の増減ではなく魅力的に見える相手にリキッド・カレージで近寄りやすくなる効果が確認された。

疲労回復[編集]

少量の飲酒は、血管を拡張させて血液の流れを良くして血行を改善する。その結果、体を温め、疲労回復の効果があがる。また、利尿作用もあるので、体内にたまった疲労のもとになる老廃物の排出を促進する。

健康食品として[編集]

アルコールに関しては健康への悪影響が懸念される中、ワインなどに含まれるポリフェノールについても注目されている。ポリフェノールは動脈硬化や脳梗塞を防ぐ抗酸化作用、ホルモン促進作用などがあり、特にウィスキーの樽ポリフェノールは従来のポリフェノールの約7倍の抗酸化力を持ち、細胞内ソルビトールの蓄積を抑制するため糖尿病なども抑制する効果を持つ。その他にウィスキーにはメラニンの生成を抑制するチロシナーゼが含まれているため美白効果をもたらす可能性も期待されている。

死亡率の低下[編集]

2000年に開始された日本の政策、健康日本21のまとめでは、日本人では全くアルコールを飲まないより、一日の純アルコール摂取量が男性で10から19g、女性9gまでの場合に、最も死亡率が低くなるとされている。これを超える場合、死亡率が高まるとしている。

しかし、別の研究では少量でも健康へ悪影響があるとしている。

料理と酒[編集]

特に酒とともに食べる料理を肴という。ソーセージとビールや、キャビアとウォッカなど料理と定番の組み合わせがある。フランス料理とワインや、日本料理と日本酒のように食事の際にも飲まれる。また食前酒や食後酒などもある。特に酒のための食事を宴会とよぶ。

料理に風味付けや肉や魚などの臭み消し等の用途でみりん、日本酒、ワイン、ブランデー、ウィスキーなどが使用され、煮切りやフランベなどの調理法がある。そのほか、パンの原材料としてや、漬物、饅頭やカステラなどの和菓子、チョコレートやケーキなどの洋菓子にも使われる。奈良漬けやブランデー・ケーキ、中のシロップにワインやブランデーが使われているチョコレートなどには風味のためアルコール分が残してある。

エチオピアにはパルショータと呼ばれる醸造酒を主食とする人々がいる。



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