通信販売
通信販売(つうしんはんばい、英語:Mail order(メールオーダー)、Home shopping(ホームショッピング))とは、通信で注文を受け、郵便や宅配便でその注文した商品を引き渡す販売方法である。顧客はまったく商品の実物を見ないで注文する。通販(つうはん)と略称される。
近年のインターネット端末の普及にともない、「通信販売」「通販」といえば、ウェブサイトによるものを指すことがある。
詳細は「電子商取引」を参照
概要[編集]
日本における通信販売の定義・種類[編集]
通信販売業を規制する、特定商取引に関する法律(特定商取引法、旧訪問販売法)での通信販売の定義は
- 販売業者又は役務提供事業者が郵便等(郵便、電話、フアクシミリ、電報、郵便振替、銀行振込など)により 売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは指定権利の販売または役務の提供となっている。
なお、一般的な意味の通信販売において、事業者・消費者双方が用いる媒体は以下のとおりとなる。
- テレビ・ラジオの既存局、あるいはCSやケーブルテレビなどに設置された専門チャンネル(例:QVCジャパン、ジャパネットたかた、はぴねすくらぶ)
- CM、テレビショッピング、ラジオショッピング、インフォマーシャル
- カタログ(例:通販生活、ディノス、ニッセン)
- フリーマガジンとして街頭や建物内に設置されるほか、ダイレクトメールで個人や会社に届けられ、回覧される。また、購入した商品に同梱されて届けられるものや、雑誌として書店で売られているものもある。
- はがき、リーフレット、ブックレット
- 街頭で配布されるものや、ダイレクトメール等で届けられるものもある。
- 新聞の広告・折込チラシ、各種雑誌の広告・記事
- インターネットのウェブサイト(例:Amazon、楽天市場、ZOZOTOWN)
- ECサイト、電子商店街
- 場合によってはインターネットオークションも広義の通信販売に含まれる。(例:Yahoo!オークション、メルカリ、フリル)
- ECサイト、電子商店街
支払い方法[編集]
代金の支払いのタイミングには、先払いと後払いがある。先払い(前払い)は、消費者が注文にあわせて代金を支払い、販売業者が支払いを確認後商品を発送する順序である。後払いは、販売業者が注文にあわせて商品を発送し、消費者が商品到着を確認後代金を支払う順序である。
先払い(前払い)の場合、現金で決済するときは、注文時に金融機関やコンビニエンスストアを通じて販売業者の口座へ送金する方法や、現金書留、郵便為替で送金する方法がある。また、クレジットカードで決済するときは、注文時にカード情報をECサイト上で入力するか、電話で伝達するか、注文用紙に記入するか、いずれかの方法を利用することで、口座自動振替される。
後払いの場合、商品に同梱された用紙等を利用し、金融機関やコンビニエンスストアを通じて販売業者の口座へ送金する方法や、現金書留、郵便為替で送金する方法や、配達時の運送業者による代金引換サービスを利用する方法がある。 このほかに、消費者が法人の場合には請求書払いという方法もある。
また、後払いの場合、業者や商品やキャンペーンによっては分割払いが適用されている場合もある。
事業主体[編集]
昨今の通信販売業者は、カタログ販売専門を代表とする無店舗業者にとどまらず、多種多様である。百貨店や専門店のような店舗を持つ小売業者のほか、卸売業者や製造業者、水産業者や農作物生産者等による直販まで、様々な流通チャンネルで通信販売が行われている。放送局・新聞社・出版社・プロバイダ等の関連企業が通信販売事業を行う例も多い。
歴史[編集]
1498年、ヴェネツィアの出版業者アルドゥス・マヌティウスが自身が刷った本のカタログを印刷した。1667年、イングランドの園芸業者ウィリアム・ルカス(William Lucas)が顧客に価格を知らせるために種のカタログを印刷し郵送した。植民地時代のアメリカでもカタログが伝わり、ベンジャミン・フランクリンは、1744年に売られている科学と学術の書籍カタログを作成したことから、英領アメリカで最初にカタログを作成したと信じられている。
最初の通信販売[編集]
1824年(文政7年)発行の江戸の商店広告集『江戸買物独案内』に掲載された江戸両国薬研堀の四ツ目屋の広告には「諸国御文通にて御注文之節は箱入封付ニいたし差上可申候 飛脚便リにても早速御届可申上候」とあり、江戸以外の地方への通信販売もすること、その際には中身が分からないように封印梱包すること、飛脚によるスピード配送も可能なことが記されている。
ウェールズの事業家プライス・プライス・ジョーンズ(英語版)は、1861年にはじめて近代的な通信販売を開始した。彼はウェールズのニュータウン市にある呉服屋に弟子入りし、1856年に事業を引き継いだ後、ロイヤル・ウェールズ・ウェアハウスと改称し、ウェールズ・フランネルを販売した。
1840年には、ユニフォームペニー郵便が設立され、ニュータウンへの鉄道網も拡張された、それらは小さな農村の企業を結果的に世界的な名声を持つ会社に変えるのを支援した。1861年に、彼は独自の販売方法を始めた。彼は商品のカタログを全国に配布し、人々が希望するアイテムをポストで注文出来るようにした。そして送られてきた注文を鉄道を使い発送した。これが世界で初めての通販事業であり、その後の小売業の本質を変えるアイデアであった。
彼はヴィクトリア女王やヨーロッパの王室、フローレンス・ナイチンゲールなどの有名人に製品を発送した。彼はまた、米国や英国植民地へカーテンの輸出も開始した。
もっとも売れた商品の一つは現代の寝袋の先駆けであるEuklisia Rugで、ロシア軍へ6万枚発送するなど世界中に販売した。1880年には10万人以上の顧客を抱え、1887年には爵位を授与された。
未整理[編集]
19世紀後半頃のアメリカ合衆国で、地方の農民たちを対象としたカタログ販売が開始されたのが起源とされている。この頃には鉄道網や郵便網の拡充が進み、19世紀末期にはシアーズなど大手のカタログ販売小売業者が設立され、今日のようなカタログ販売の基礎が作られた。
日本では1876年(明治9年)のアメリカ産トウモロコシの種の通信販売が最初といわれている(津田仙が創刊した「農学雑誌」において)。大正時代には野間清治の経営する講談社の代理部が同社発刊雑誌の広告を通じて通信販売を行った。対象商品は雑誌だけでなく、生活用品・雑貨、家具、果ては清涼飲料水・どりこのに代表される食品や化粧品・薬品など、多岐に渡った。配達は主に同社少年部(日本全国から募集され、約30倍前後の高い競争率をくぐり抜けて採用された小卒男子児童による修養教育としての勤務部署)所属の社員見習いの者が自転車やオートバイで行った。
しかし、日本において産業として確立したのは戦後で、ラジオ受信機製作用電子部品の雑誌広告による通信販売、大手百貨店の通信販売への参入が始まり、1960年代にはカタログ販売の主要業者が設立され、1970年代頃からはテレビショッピング、ラジオショッピングの形でも行われるようになった。
1980年代後半以後、女性の社会進出の拡大や、宅配便サービスの拡充、さらに1990年代以後インターネットの拡大によって大きく発達し、現在では販売品目も魚介類などの生鮮食品から、各地方の名産品、パソコンなどの大型電気製品に至るまで販売されている。