車椅子
車椅子(くるまいす、英: wheelchair)とは、身体の機能障害などにより歩行困難となった者の移動に使われる福祉用具。一般的なものは、椅子の両側に自転車に似た車輪が1対、足元にキャスター(自在輪)が1対の、計4輪を備える。車椅子は健常者も使用できる。
筋力などの理由により一般的なものの利用が困難な場合、「電動車いす」の利用が検討される。こちらは動力に電動モーターを使用したものであるが、いわゆる「セニアカー(シニアカー)」などと呼称されるものとは構造が異なる。そのほかにも、重度な障害者向けにストレッチャーのような形態のものや、各種障害者スポーツに特化したものも存在する。以下、該当項目を参照のこと。
2010年11月30日までは、「椅」(い)が常用漢字外であったこともあり、日本の法令では「椅子」を平仮名で車いすと表記した。
使用者として、身体障害者の内でも下肢障害者が想定されるが、脳性まひなどによる不随意運動やパーキンソン病などによる振戦により身体の動作がうまくいかない場合や、内部疾患(心臓や呼吸器)による中長距離の歩行が困難な者、加齢による筋力低下、怪我(骨折など)による一時的使用など、幅広く使われている。そのため、普段は使わない人でも、中長距離歩行に不安の有るものが移動の時には使用し、こういった人々の利用に供する為、公共施設や病院には備え付けのものが常備されていたり、自治体などでは貸し出しのシステムが備えられている場合がある。 自治体などで車椅子体験会でも使われることもある。
歴史[編集]
椅子と車輪という発明が存在した地域から、自然発生的に生まれたと考えられており、その歴史はかなり古い。車輪のついた家具という発明は、記録に残っている限り、紀元前6世紀から5世紀頃、中国の石板に見られる碑文や、ギリシャの花瓶に描かれている乳母車である。障害者を運ぶために使われる車椅子の初期の記録は、3世紀ごろの中国に遡る。当時の車椅子は、重い物を運ぶための手押し車に近いものであり、障害者だけでなく、重い物も運ぶもので、障害者専用として明確に区分けされていたわけではなかった。
有名なところでは、障害者ではないが諸葛亮が三国志演義の中で、車輪のついた椅子に乗っている描写がある。三国志演義は明の時代に書かれており、この時代の中国には、車椅子という発想が存在していたことを示している。
また、1595年に描かれたとされる、スペイン王フェリペ2世の肖像には、召使に押してもらう型(今で言う介助型)に乗っている姿が描かれている。この車椅子を発明した人物の名は不明である。これは、肘掛けや足置きを備えた精巧なものであったが、一方で車輪は小さく、移動にはかなりの労力を要するなど、欠点があった。
自走式タイプが初めて考案されたのは、1650年、ステファン・ファルファという人物によって(ファーフラーとも。自身が下肢に障害があった模様で、自走といっても今のような後輪を直接回すのではなく、前輪をギヤ駆動のクランクで回す形式であった)。これらは、障害者も利用したが、障害者でない者も利用しており、当時は「車椅子は障害者の乗り物」という現代人の常識とは異なっていたようである。ヨーロッパでは、18世紀のはじめ頃から車椅子が商業的に製造されていたと考えられている。