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警察

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警察(けいさつ、英, 仏: police、独: Polizei)とは、権力行使をもって国家の治安を維持する行政作用、およびその主体をいい、社会の安全や秩序を守る責任を課された行政機関である。軍隊と並ぶ国家の実力組織である。

語源[編集]

「警察」という名称は、日本固有の語ではなく、フランス語のpolice(英: police、独: Polizei)を翻訳したものである。法律上初めて「警察」という語が現れたのは、司法警察規則(明治7年太政官達第14号)及び行政警察規則(明治8年太政官達第29号)であるとされる。

policeの語は、フランスから出たものであって、その語源は、ギリシャ語のΠολιτείαがラテン語化したpolitiaから出たものである。politiaは、本来、「憲法」という意味(または、憲法から転化した「政治」もしくは「行政」の意味)であったが、一転してPoliceの語となり、その原語とは全く異なる意義に用いられるに至った。その理由は、これとは全く別の語であるpolitesse(polirから来る語であり、「清浄整備な」という意味)の意義と混同されたためであるとされている。

「ポリス」という語がフランスで初めて用いられたのは、14世紀ころであったが、その語の意義は、それ以来、しばしば変遷している。当初は、「社会の秩序があって幸福である状態」を意味していたが、後にまもなく、「このような状態を目的とする国家の作用」を意味するに至った。18世紀ころになると、いわゆる「内務行政」と同義に用いられ、司法、軍事、財政及び外交のほか、国家の全ての作用は全て「ポリス」の観念に包含されることとなった。しかし、個人の自由を尊重し、国家の権力を制限しようとする自然法学説の発達とともに、警察権の観念についても、18世紀末から次第にこれを制限するようになり、従前よりも狭い意義に解そうとする傾向が生じた。この変遷は、フランスにおいてもドイツにおいてもほぼ同一であり、「警察」は、内務行政の全部を意味するものではなく、内務行政のうち、国家的権力をもって国民の自由を制限し、もって公共の秩序を維持する作用のみを意味するものと解されるに至った。

歴史[編集]

古代、治安維持の多くに責任を持っていたのは軍隊であった。ただし、古代ローマでは、ローマに軍事目的で使用されない警察「ウィギレス(英語版)」が設置されていた。そのほかの諸都市は治安が悪かったといわれる。ノルマン・コンクエスト以降のイングランドでは、公共秩序を担う制度として、constable に指揮される tishing が存在したが、多くの場合は、地方の領主や貴族が自分の領地の秩序維持に責任を負うことで、警察活動を担う(しばしば無給の)constable を任命した。

近代になり、軍事、治安維持(警察)ともに専門性が高まってくると、軍が軍事、警察を共管することは効率的でないと判断されるようになり、軍事と治安維持を分離する傾向が見られ始めた。

警察は軍から分化した組織であるが、現代において警察と軍とが分化していない例は、国家憲兵制度などに見られている。

社会学的には暴力装置に該当し、他者に対する物理的な破壊力である暴力を国家が独占して国内を統制することで、万人の万人に対する闘争を回避する目的で置かれる。

警察権[編集]

警察権は社会や公共の秩序を維持するために国民に対し命令や強制を加える公権力のことである。国家における警察権とは一般にはドイツにおいて18世紀および19世紀前半にあらわれた権力形態を指し、非立憲的かつ前産業的な国家形態のうち、その行政部分を取り上げてとくに警察国家と呼ばれる。警察国家は法治国家の対語として用いられ、内容的に不確定な「警察権(ius politiae)」に基礎をおいた行政執行が、合目的性には従うものの格別法的な形式や法的原則に服していなかったことに特徴がある。国家を統治するための高権と人民との間には事実的な権力関係が存在し、司法や行政の名目上の区別にもかかわらず法学上の根拠をもたないため行政法や行政法学ではなく、法学上の分野としては成立しえない「警察学」により統治される。19世紀の中葉にはドイツ社会や政治理念、憲法構造の革命により警察は行政法に、警察学は行政法学にとって換わられた。警察権の行使については警察公共の原則、警察責任の原則、警察比例の原則、警察消極の原則の4原則があるとされる。

警察公共の原則
警察権は公共の秩序と安寧を維持するという消極目的のためのみに発動することができる。私生活不可侵、私住所不可侵、民事不介入を原則とする。
警察責任の原則
警察権は警察違反の状態にあるとき、警察責任を有する者に対してのみ発動することができる。
警察比例の原則
警察権の発動は、除去すべき障害に対比して社会通念上相当であるということができる範囲でのみ発動することができる。
警察消極の原則
警察権は、公共の秩序と安寧の維持、これらに対する障害の未然防止および既然の鎮圧といった消極的な目的のみ発動されるのであり、その限界を踰越した積極的作用は違法である。

美濃部達吉によれば、警察権は、「社会的ノ利益ヲ保持スルコトヲ其ノ目的トシ、臣民ニ命令シ、強制スルコトヲ其ノ手段ト為スモノ」と定義される。

機能[編集]

警察の機能には三つの基本的な部門に分類することが考えられる。第一に犯罪の予防や治安の維持などの行政警察活動(仏: police administrative、独: Verwaltungspolizei)を行う一般予防部門であり、第二に既に起こった犯罪の捜査や犯人逮捕などの司法警察活動(仏: police judiciaire、独: Justizpolizei)を行う犯罪捜査部門である。日本の警察活動ではこの両者が区別されている。第三に反政府活動や暴動・騒擾の調査や警戒、防諜などの公安警察活動を行う特別部門がある。

また警察の機能には通常の警察力で対処が困難な暴動や騒擾などを鎮圧することを目的とする治安警察活動を行うものもある(例:日本の機動隊)が、これは行政警察活動に含まれる。

行政警察と司法警察の区別は、フランスの1795年の罪刑法典(フランス語版)に淵源を発するものであり、19世紀に入ってから、この区別が多くの学説によって採用され、その後、裁判所によっても用いられるようになったことから、一般に定着したとされている。日本においても、明治初年にフランス法由来の観念が持ち込まれて以来、警察法及び刑事訴訟法の領域において、この区別が強い影響を与えている。

しかしながら、フランスにおいても、講学上の用途を別にすれば、行政警察と司法警察とを区別する実際上の意義は、警察官の行為に違法があったと疑われる場合に、その救済を行政裁判所と通常裁判所のいずれに対して求めればよいかという裁判管轄上の基準となる点に、ほぼ限られてきたとされている。日本においても、行政裁判所が廃止された現在、そのような意味での区別の必要は、もはや存在しないと指摘されている。

なお、フランスの場合には、刑事手続の公判前の事件調査は予審判事が主宰するという建前が維持されており、警察は、予審判事の「共助の嘱託」(仏: commission rogatoire)を受けて必要な処分を行うか、予審が未だ開始していないときに、司法警察作用として検察官の指揮のもとに捜査を行うとされている。また、ドイツの場合には、捜査は検察官が主宰し、警察はその補助機関として一定の処分を行うことが原則とされている。そのため、警察が独自に行うことができる行政警察活動は、権限の根拠や検察官等のコントロールのもとに置かれるか否かという点で差があるため、両者を区別する意味があるとされる。これに対して、日本の場合には、警察が第一次的捜査機関とされており、個々の事件捜査について検察官の直接の指揮・命令下に置かれるという関係にはないことから(刑事訴訟法189条2項、192条)、行政警察と司法警察の区別の意味は薄れていると指摘されている。

行政警察と司法警察の区別を維持してきた大陸法系の諸国においても、両者の区別自体の存在意義を問い直す動きが出ている。フランスでは、警察の活動が実際には行政警察と司法警察の境なく一体的ないし連続的になされることが多いのにもかかわらず、裁判上あえて両者を峻別することによって、特に、行政警察作用であると認定された場合に、一般的には緩やかな基準が適用されるため、その活動によって被害を受けた者の権利保護を弱いものとする結果をもたらしてきたことが指摘されている。ドイツにおいても、犯罪捜査に類似ないし接合した個人情報の収集活動などについて、それが行政警察活動であるとすると、州レベルでの警察法規によってその権限を創設することができる上、犯罪捜査におけるような検察官のコントロールを受ける可能性がないことから、不適切であると認識されており、むしろ、刑事手続法のもとに取り込んで適切な法規制を図るべきであるとする意見も現れてきている。

ある警察活動が行政警察作用であるということは、それが当然に許されるということまで意味するものではない。対象者の権利・利益の侵害を伴うような活動である場合に、刑事訴訟法上の強制処分法定主義の適用はない(したがって、刑事訴訟法の改正という形による必要はない)としても、行政法上の侵害留保の原則(法律の留保)によって法律上の根拠が必要となることから、立法上、そのような活動を認めるか否かの選択が必要となることに違いはない。しかしながら、その選択をするにあたって、憲法上の制約がどの程度あるかという点や、その選択がなされた場合に盛り込まれる手続的保障の内容という点において、司法警察作用ないし犯罪捜査についてみられるほどの厳格な考え方が取られるかについては、疑わしいとされている。

犯罪の予防[編集]

一般に防犯と呼ばれる機能であり、直接的には制服警察官あるいはパトロールカーの姿を見せることにより、犯罪の発生を未然に防止するものである。さらには警察官による学校、自治体などに対する防犯指導を通じ、市民の防犯意識を高める機能も担っている。

犯罪の捜査[編集]

予防に失敗した場合、警察の中でも犯罪捜査部門の部署が対処することになる。主に構成員は私服の刑事警察官であり、犯罪捜査によって得られた証拠に基づいて犯人を特定し、妥当な場合にはこれを逮捕して出廷させることを業務とする。手続きの上では重大事件が発生した場合には刑事でない警察官が犯罪現場を確保して捜査資料を保全した後、刑事部門に通報することとなっている。



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