角栄システム
Lua エラー package.lua 内、80 行目: module 'Module:Message box/configuration' not found 角栄システム（かくえいシステム）は、田中角栄が考案した院内戦略の一つ。
田中角栄の場合には400人を超える「木曜クラブ秘書会」[1]を形成したことから、この院内戦略は可能であった。[2]
主に政務秘書に発言させる一方で、議員自身は、その秘書の後ろで、ただ静かに、にこにこしているだけで、何も言わないという院内戦略である。
メリット[編集]
1972年当時、省庁は1府22省庁体制であった。
- 府（1）：総理府
- 省（12）：法務省、外務省、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省、自治省
- 庁（10）：国家公安委員会、金融再生委員会、総務庁、北海道開発庁、防衛庁、経済企画庁、科学技術庁、環境庁、沖縄開発庁、国土庁
政務秘書を22人以上雇い、それぞれに1省庁ずつ役割を割り振る。そして、陳情に訪れた人々に対して、その相手に合わせて、適当とみられる秘書を引き合わせる。但し、角栄自身は、秘書の後ろで何も言わず、ただ静かに聴いて、にこにこしているだけという状況にしておく。
なお、秘書に担当省庁を兼務させることはできない。仮に、文部省と通商産業省とを兼務させるとすれば、政策形成の局面で矛盾が生じることになるからである。したがって、担当省庁に1人ずつ秘書を割り振ることを要する。
たとえば、農林水産業者が、陳情に訪れた際には、通商産業省担当の秘書を控室に隠し、農林水産省担当の秘書を引き合わせる。
同様に、貿易業者が、陳情に訪れた際には、自治省担当の秘書を控室に隠し、外務省担当の秘書を引き合わせる。
こうすることで、角栄自身がいかにも相手に近しい思想を持っているかのようにアピールすることができ、派閥を拡大することができるようになる。
さらに、すべての発言の責任を、秘書に背負わせることで、議員自身は、発言責任を問われなくて済むというメリットがある。
デメリット[編集]
議員自身は手を汚さず、すべての発言責任を政務秘書にすりかえる。もし秘書間で争いが起きた場合には、そのどちらかを優先することになるが、優先されなかった側の秘書の面目は立たなくなり、秘書が辞めてゆく契機になる。
例として、当時、政務秘書の中でも、建設省担当である麓邦明と早坂茂三の二人が、大蔵省担当である佐藤昭子および小佐野賢治と対立し、田中に彼ら二人を切るように進言した。田中はこの進言を拒否した。職を辞する覚悟でなされたこの進言は聞き入れられず、失意の後に、麓は心筋梗塞の病で倒れる。[3]
角栄の場合には、浦和の病院に収容された麓を庇い、院長、執刀医、総婦長など、多くの関係者に深々と頭を下げて、「まだあの男を死なせるわけにはいかないんです。助けてください」と頼み、医療費の工面をなした。
このように、議員が、優先されなかった側の政務秘書をも庇わなければならない。そうしなければ、その後の信頼関係が壊れ、次々と政務秘書が辞めてゆくことになり、角栄システムは維持できない。
コスト[編集]
田中角栄の場合には、少なくとも派閥議員、公設秘書、私設秘書を合わせても院内で400人前後が活動していたことから、このような角栄システムを運用することができた。これに加えて、地盤である新潟では「越山会」が選挙対策を取り仕切り、発足時には163人、最大で600人前後の選挙区対策秘書が支援にまわっていた。このため、最大で「越山会」の会員数は9万5千人を数えることになった。
さりとて、政務秘書を22人も雇うには莫大な資金源が必要となる。これに加えて、党務秘書、財務秘書、選挙区対策秘書、事務秘書、選挙参謀秘書を雇わなければならないため、資金源に乏しい議員は、これを利用することはできない。
このシステムは莫大な資金源を要するために、与党から野党に転落すれば、議員のみならず、その所属する政党にも負担がのしかかることになる。
1993年7月、自民党がはじめて野党に転落した際には、当時の都市銀行8行（三菱、三和、東海、住友、さくら、第一勧業、富士、大和）から12億5千万円ずつ、計100億円を借りている。[4]
現在では、公設秘書が3人と決められており、私設秘書を雇う他には角栄システムを利用することはできない。
そのため、資金源に乏しい議員は、私設秘書の雇い入れの点で、辛酸をなめる結果に終わる。
ところで、私設秘書が足りない場合には、院内における自派閥グループの議員を利用することになる。
最近では前原誠司が、永田寿康や細野豪志を、さながら私設秘書のように扱っていたことで知られる。角栄と異なり、前原は永田を庇わなかったことから、信頼関係は壊れ、永田は自殺することになった。[5]同じく、細野豪志は、民主党を離党し、自民党二階派へ入会する。[6]このように角栄システムのデメリットを知らずに利用すると、部下の自殺や離反を招いてしまう。義のない人間として、秘書から音声データをリークされてしまうような国会議員（豊田真由子）も出始め、議員自身が発狂することになる。
したがって、財力に乏しい議員や、野党議員が、角栄システムを利用することは禁じ手となっている。
参考[編集]
アメリカでは、下院議員が秘書を22人まで雇うことができる仕組みになっている。実際には平均で16.9人を雇っている。[7]
上院議員はこれを遥かに上回り、議員一人あたり平均して43.5人の秘書を雇っている。
脚注・引用文献[編集]
- ↑ “田中角栄「怒涛の戦後史」(7)最強の「秘書軍団」(上) (2019年8月5日)” (日本語). エキサイトニュース. 2019年10月27日閲覧。
- ↑ “総勢1000人の秘書団がオヤジさんを支えていた｜元秘書が語る 素顔の田中角栄” (日本語). 日刊ゲンダイDIGITAL. 2019年10月27日閲覧。
- ↑ “田中角栄「怒涛の戦後史」(3)小佐野賢治(下) (2019年6月17日)” (日本語). エキサイトニュース. 2019年10月27日閲覧。
- ↑ 津阪直樹,五十嵐聖士郎,板橋洋佳,座小田英史 (20190227T080000+0900). “自民党、100億円借金やっと完済 借り手に有利な条件とは 〈週刊朝日〉” (日本語). AERA dot. (アエラドット). 2019年10月27日閲覧。
- ↑ “前原誠司氏の非凡（白井聡） - Yahoo!ニュース” (日本語). Yahoo!ニュース 個人. 2019年10月27日閲覧。
- ↑ INC, SANKEI DIGITAL. “細野氏が前原氏に下克上！？ グループ会合同時開催で派閥化 師弟関係崩れる” (日本語). 産経ニュース. 2019年10月27日閲覧。
- ↑ 欧米主要国の議員秘書制度【第 2 版】. 国立国会図書館. (2011年12月22日)
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