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血栓症

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血栓症(けっせんしょう)は血管内に血栓が形成され、循環系における血流が閉塞するヒトの病態である。ある血管が傷害されると、失血を防ぐために血小板とフィブリンによって凝血塊が形成される(外因性血液凝固)。一方血管が傷害されていない場合でも、ある適当な環境の下では凝血塊が形成されることがある(内因性血液凝固)。もしこの内因性凝固の程度が激しいと、凝血塊は形成された血管内皮から遊離し、血管内を流れて塞栓となる。

血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)とは血栓形成とその主な合併症である塞栓症をあわせたものの名称である。

血管内腔の面積の75%以上を血栓が占めると、組織に供給される血流が低下し、その結果酸素供給の低下(低酸素症)および代謝産物である乳酸の蓄積に伴う症状が現れる。さらに内腔の90%以上が閉塞すると完全な酸素喪失状態になり、その結果細胞死の状態すなわち梗塞となる。

原因[編集]

古典的な定義として、血栓症は以下のうち一つ以上の異常によって起こる(ウィルヒョウの三徴):

  • 血液組成(凝固能亢進または血栓形成傾向)
  • 血管壁の状態(内皮細胞障害)
  • 血流の状態(鬱血、乱流)

凝固能亢進[編集]

凝固能亢進状態は遺伝子欠損や自己免疫疾患、炎症の亢進、線溶系低下などが原因となる。

重症肺炎からDICを起こしたり、癌に深部静脈血栓症を合併するなどがある。

内皮細胞障害[編集]

血管壁障害の原因となるものにはアテローム性動脈硬化、外傷、外科手術、感染症、血管分岐部での乱流などがある。主な傷害のメカニズムは血液凝固系への組織因子の曝露である。

血流の乱れ[編集]

血流障害の原因は、血管内皮傷害部位の遠位における血流の停滞や心不全などで起こる静脈血の鬱滞、あるいは航空機への搭乗のような長時間座位保持などである(エコノミークラス症候群)。心房細動も左心耳の血流鬱滞による血栓塞栓症の原因となる。がんや白血病のような悪性腫瘍は血管を外部から圧迫したり、より稀ではあるが(腎細胞がんが腎静脈内に進展するように)脈管内部への伸展によって血栓症のリスクを高める。がん治療(放射線療法や化学療法)もしばしば凝固能をさらに亢進させる。

塞栓化[編集]

血栓症の起こった部位に細菌感染が存在すると、血栓が破綻して感染物質が体内循環をめぐり(膿血症、敗血症性塞栓)、あらゆる場所に転移性膿瘍を形成する。感染が存在しなくても血栓は形成された場所から分離して循環系にのり、塞栓(血栓性塞栓、アテローム塞栓)となって最終的にどこかの血管を閉塞して、そこから先の部分は緊急に治療しなければ(酸素と栄養の供給が絶たれるため)組織の壊死(梗塞)を起こすことになる。この血管閉塞が冠動脈で起これば、心筋の虚血が起こりやすくなり、そのため心筋細胞が酸欠状態となって正常に機能しなくなる。この酸素の欠乏は心筋梗塞につながる。

しかしほとんどの血栓は線維組織に分解される(線溶系)ため、血栓化した血管は徐々に再灌流することになる。



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