蜂蜜
蜂蜜(はちみつ)とは、ミツバチが花の蜜を採集し、巣の中で加工、貯蔵されたものをいう。約8割の糖分と約2割の水分によって構成され、ビタミンやアミノ酸、ミネラル類などの栄養素をわずかに含む。味や色は蜜源植物によって様々である。
本来はミツバチの食料であるが、しばしば他の生物が採集して食料としている。「蜂蜜の歴史は人類の歴史」ということわざがあるように、人類も、古来、食用や薬用など様々な用途に用いている。人類は初め、野生のミツバチの巣から蜂蜜を採集していたが、やがてミツバチを飼育して採集すること(養蜂)を始めた。
人類による蜂蜜の生産量は、世界全体で年間約120万トンと推定される。
後述のように、乳児に与えるのは危険なので、絶対に与えてはならない食料である。
採集[編集]
ミツバチによる花の蜜の採集[編集]
蜂蜜のもととなる花の蜜は、メスのミツバチによって採集される。採集された花の蜜はショ糖液、つまり水分を含んだスクロース(ショ糖)の状態で胃の前部にある蜜嚢(蜜胃)と呼ばれる器官に貯えられる。蜜嚢が花の蜜で満たされると、ミツバチは巣へ戻る。
一般にはミツバチが採集した花の蜜のことを蜂蜜と呼ぶと考えられがちであるが、花の蜜が巣の中で加工、貯蔵されたものが蜂蜜であり、両者の性質には物理的、化学的な違いがある。まず、花の蜜は蜂蜜よりも糖濃度が低い。一般に花の蜜の糖度はミツバチが採集した段階で40%未満であるが、巣に持ち帰られた後で水分の発散が行われる結果、蜂蜜の糖度は80%前後に上昇する。また、水分を発散させるための作業の一つとして、ミツバチは巣の中で口器を使って蜜を膜状に引き延ばすが、この際ミツバチの唾液に含まれる酵素(インベルターゼ、転化酵素)が蜜に混入し、その作用によって蜜の中のスクロースがグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)に分解される。
また、本来は花の蜜に含まれない物質がミツバチの口器から混入する。一例としてコリンが挙げられる。コリンはミツバチの咽頭腺から分泌されるローヤルゼリーに含まれる物質であり、ミツバチが花の蜜の水分の発散と並行して同じく口器を用いて咽頭腺から分泌されたローヤルゼリーを女王蜂の幼虫に与える作業を行うため、ローヤルゼリー中のコリンが蜂蜜に混入すると考えられる。
ちなみに、中国の明代の薬学書『本草綱目』は「臭腐神奇」という霊的な作用によって大便から蜂蜜が生成されると説いており、この説は同じく明代の産業技術書『天工開物』や日本の江戸時代の類書『和漢三才図会』に受け継がれた。日本ではこの説に対し、江戸時代の本草学者貝原益軒が蜂蜜は花の蜜から作られると反論した。日本初の養蜂書『家蜂畜養記』の著者久世敦行も同様に反論を行った。