自由貿易
自由貿易(じゆうぼうえき、英: free trade)は、関税や、数量制限などの国家の介入や干渉を排して自由に行う貿易を指す。学説としては、重商主義にもとづく保護貿易に対して、イギリスのアダム・スミスやデヴィッド・リカードらによって唱えられた。貿易が利益になるというのは経済学における最古の命題の一つであり、自由貿易はこの命題にもとづいている。また、営業の自由をはじめとする経済活動の自由や移動の自由と密接に関係している。通史は、貿易史#近世・近代および貿易史#現代を参照のこと。今日、主流経済学では、自由貿易は保護貿易よりも各国の経済発展に役立つと一般的に評価されている。
概要[編集]
貿易では、国が互いに財やサービスを売ると両国の利益となる。これは国際経済学における最も重要な洞察ともいわれる。貿易の便益は実体のある財だけでなく、サービス産業などにも及ぶ。国は貿易で利益を得るが、国内において特定の集団に害を与えることがある。そのため、どれだけの貿易を認めるかという論争が続いている。
自由貿易を支持する経済学的な理由としては、(1) 効率性の利益について定式化した分析がある。(2) 定式化に含まれない追加の利益がある。(3) 複雑な経済政策の実施は難しいが、自由貿易は簡易である、などがある。
第一次世界大戦(1914年-1918年)までの自由貿易はイギリスが主導し、通貨制度は金本位制にもとづいていた。第二次世界大戦(1939年-1945年)後の自由貿易はアメリカが主導し、通貨制度はアメリカのドルとの比率にもとづくブレトンウッズ体制で始まり、現在は変動相場制となっている。完全な自由貿易の国は存在しないが、貿易自由化の国際機関として世界貿易機関(WTO)がある。WTOは諸国間の取引のルールを定め、より自由貿易に近い状態が実現されるよう努めている。貿易依存度は2000年代後半には60%を超え、21世紀は歴史的に自由貿易が最も実現されているといえる。
自由貿易の支持者の主張には以下のものがある。
- 国外から安価な商品が輸入できる。
- 国外に商品を輸出して利益が享受できる。
- 国外から機械・原材料が輸入されることで、技術・スキルが移転される。
- 国外への輸出機会を得ることで国内生産のスケールメリット(規模の経済)が活かされる。
- 国外からの競争圧力によって、国内の独占の弊害を軽減できる。
- 国外からの輸入を通じて多様な商品が消費できる。