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自動車

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自動車(じどうしゃ)は、原動機の動力によって車輪を回転させ、軌条や架線を用いずに路上を走る車。広義には自動二輪車(オートバイ)も含むが、本項では四輪自動車について述べる。

概要[編集]

自動車は、大辞泉では原動機の動力によって車輪を回転させ、軌条や架線を用いず路上を走る車、と説明されている。 角川の1989年の国語辞典には「発動機の動力で軌道なしに走る四輪車」と記載されている。

自動車は、18世紀に蒸気機関を用いた蒸気自動車として登場し、19世紀にはイギリスやフランスで都市間を移動するためのバスに用いられるようになっていた。19世紀後半、1870年代から1880年代にかけてはオーストリアやドイツでガソリンの内燃機関を用いた自動車の制作や特許取得が行われた。1896年に米国のヘンリー・フォードもガソリン自動車を開発し、1903年に自分の名を冠したフォード・モーター社を設立し、まずは2気筒エンジンの小さな車の製造・販売を開始、1905年には4気筒エンジン車を販売開始、1908年には改良のうえ、価格も比較的安く設定したフォード・モデルTを発売し、大人気となった。モデルTは1909年の1年間だけでも1万台を超える数が売れ、米国で急速に自動車が普及してゆくことになる。米国ではそれまで街の大通りを走る車と言えば(裕福な人々が所有し、御者付きの)馬車ばかりだったのだが、その後 わずか10年ほどのうちに馬車の所有者たちはそれを自動車へと換えてゆき、米国の通りの景色は一変することになった。1910 - 1920年代には安価な大衆車も普及しはじめた。→#歴史

自動車は基本的には、人や貨物を運ぶための実用の道具として用いられるものであり、交通手段の一つとして通勤・通学、客の送迎、顧客先訪問、旅の際に使用される事がある。貨物輸送に関してはトラック(貨物自動車)等を用いて、多種多様な荷物が運ばれており、鉄道が駅から駅への輸送しかできないのに対して、自動車は戸口から戸口へ(=建物から建物へ)と輸送できるという特徴がある。→#自動車の利用

また自動車は、実用性を離れて、愛着の対象となって趣味的に所有されたり、運転を楽しむため(スポーツ・ドライビングやツーリング)に用いられたり、整備すること("機械いじり")を楽しむために用いられることもある。また高級車の場合ステータスシンボルとして利用される場合などもある。→#自動車文化

自動車は世界中で大量に普及したため、大気汚染の原因となったり、その石油資源の消費量によって石油危機時のリスク要因となったり、道路上の自動車の過密状態などの問題を引き起こしている。課題の解決に向けた努力も続けられており、大気汚染防止のために行政は排出ガス規制を行い、自動車メーカーは消費する石油を減らすこと、つまり燃費の向上(省燃費エンジンの開発)を行い、電気自動車、ハイブリッド・カー、水素自動車などの開発・販売も行われている。

専用の軌道を必要としないことから、経路と進路の自由度が高いという特徴がある。 自動車を動かすこと・操ることを運転と言い、ほとんどの国で、公道での自動車の運転には運転免許が必要とされている。自動車の最初期の段階からすでに運転を誤る事故(交通事故)が発生していた。自動車によって、怪我をさせられたり命を失ってしまう人やその家族という被害者が生じ、同時に運転者が加害者として生きていかなければならなくなることは、自動車普及後の社会が抱え続けている重い課題のひとつである。最近では単純な自動運転技術を超える、本格的な人工知能と高度なセンサー類を用いて自律走行が可能な自動運転車も研究されており、AIならば人間が運転するよりも事故率が劇的に減るであろうと期待されてもいて、一部ではすでに(社会実験的な)導入が開始されており、世界での本格的な普及開始の時期が近付いている。

自動車の生産は、部品となる様々な工業製品があってはじめて可能となるので、他の様々な工業の振興、一次的工業品の製造とも関連する。その規模の大きさ、影響の大きさによって、政府にとっては自動車の製造は(一国の)経済を支える重要な産業となりうる。現在のところ、一握りの先進国が自動車の生産を独占してしまっているような状況にある。多くの開発途上国の政府が、自動車製造を行うために懸命の努力を行っている(例えば、先進国の自動車メーカーや政府と交渉し、自動車を輸入するだけでなく、自国内に製造工場などを設けさせる努力を続けている)のは、経済的な影響が大きいからである。

公共交通機関の発達していない田舎などでは特に一人当たりの所有率が一般的に高い。

歴史[編集]

蒸気自動車[編集]

最初の自動車は蒸気機関で動く蒸気自動車で、1769年にフランス陸軍の技術大尉ニコラ=ジョゼフ・キュニョーが製作したキュニョーの砲車であると言われている。この自動車は前輪荷重が重すぎて旋回が困難だったため、時速約3キロしか出なかったにもかかわらず、パリ市内を試運転中に塀に衝突して自動車事故の第一号となった。

イギリスでは1827年ごろから定期バスとして都市部および、都市間で広く用いられ、1860年ごろにはフランスでも用いられるようになった。1885年に、フランスのレオン・セルボレが開発し1887年に自動車に搭載したフラッシュ・ボイラーにより蒸気自動車は2分でスタートできるまでに短縮された。1900年ごろにはアメリカ合衆国で、石炭の代わりに石油を使った蒸気自動車が作られ、さらに普及していった。この頃は蒸気自動車の方がガソリン自動車よりも騒音が少なく運転が容易だった。アメリカ合衆国では1920年代後半まで蒸気自動車が販売されていた。

1865年にイギリスで赤旗法が施行された。当時普及しはじめた蒸気自動車は、道路を傷め馬を驚かすと敵対視されており、住民の圧力によってこれを規制する「赤旗法」が成立したのである。この法律により、蒸気自動車は郊外では時速4マイル(6.4 km/h)、市内では時速2マイル(3.2 km/h)に速度を制限され、人や動物に予告するために、赤い旗を持った歩行者が先導しなければならなくなった。その結果、イギリスでの蒸気自動車の製造・開発は、この赤旗法が廃止される1896年まで停滞することになり、それに続くガソリン自動車の開発においても、ドイツやフランスが先行する事になる。

日本では1904年(明治37年)に、電気技師の山羽虎夫が制作した蒸気自動車が最初で、これが日本産自動車の第1号だといわれている。

ガソリン自動車[編集]

1870年、ユダヤ系オーストリア人のジークフリート・マルクス(Siegfried Samuel Marcus)によって初のガソリン自動車「第一マルクスカー」が発明された。1876年、ドイツ人のニコラウス・オットーが石炭ガスで動作する効率的な内燃機関のオットーサイクルを発明すると、ゴットリープ・ダイムラーがこれを液体燃料を用いるガソリンエンジンへと改良して二輪車や馬車に取り付け、走行試験を行った。1885年にダイムラーによる特許が出されている。1885年、ドイツのカール・ベンツは、ダイムラーとは別にエンジンを改良して、車体から設計した3輪自動車をつくった。ベンツ夫人はこの自動車を独力で運転し、製造者以外でも訓練さえすれば運転できる乗り物であることを証明した。ベンツは最初の自動車販売店を作り、生産した自動車を数百台販売した。また、ダイムラーも自動車会社を興した。現在、ガソリン式自動車の発明者はダイムラーとベンツの両者とされることが多い。

1898年(明治31年)には、フランスから日本に輸入されたガソリン自動車「パナール・ルヴァッソール」が、日本国内最初の自動車として登場した。

日本国産のガソリン自動車は、1907年(明治40年)に誕生した「タクリー号」が最初であった。名称の由来は、道を「がたくり、がたくり」と音を立てて走ることから。

蒸気・ガソリン・電気の3方式並立の時代からガソリン車時代へ[編集]

19世紀の自動車は手作りであるため非常に高価なものであり、貴族や富裕層だけが所有できるものであった。そして彼らは自分たちが持っている自動車で競走をすることを考えた。このころに行われた初期の自動車レースで活躍したのが、ルノー、プジョー、シボレー、フォードといった現在も残るブランドたちであった。このころはまだガソリン自動車だけでなく蒸気自動車や電気自動車も相当数走っており、どの自動車が主流ということもなかったが、1897年のフランスでの自動車レースでガソリン自動車が蒸気自動車に勝利し、1901年にはアメリカのテキサス州で油田が発見されてガソリンの供給が安定する一方、当時の電気自動車や蒸気自動車は構造上の問題でガソリン自動車を超えることができず、20世紀初頭には急速に衰退していった。

共有、個人所有、シェアリングの歴史[編集]

共有の歴史

当初は自動車を所有するのはごくごく少数の貴族や富裕層にとどまっていた。所有者に重いコストがのしかかる乗り物という存在を、所有せず活用する、という発想は古くからあり、例えば古代ローマにも馬車を現代のタクシーのように従量式で使う手法も存在したことがあったともいう。1620年にはフランスで貸馬車業が登場し(言わば、現代のレンタカーに当たる)、1662年にはブレーズ・パスカルが史上初のバスとされる5ソルの馬車を発明しパリで営業を開始した。1831年にはゴールズワージー・ガーニー、ウォルター・ハンコックが蒸気式の自動車で乗り合いバスの運行を開始した。 1871年にはドイツ人のヴィルヘルム・ブルーンによってタクシーメーターが発明され、1897年にはゴットリープ・ダイムラーが世界初のメーター付きタクシー(ガソリン車)Daimler Victoriaを製造した。レンタカーの最古の歴史ははっきりしないが、米国における最初のレンタカー業者は、初の量産車とされるT型フォードを用いて1916年から営業した、と言われることはある。その最初のレンタカー業者とされるネブラスカの男Joe Saundersは、車にメーターを取り付け 1マイルあたり10セントの方式で貸したという。

大量生産と大衆による所有と個人所有にかかる諸費用の膨張

米国で1908年、フォードがフォード・T型を発売した。フォードは、流れ作業による大量生産方式を採用し自動車の価格を引き下げることに成功した。これにより裕福層の所有物であった自動車を、大衆が所有することが可能となり自動車産業が大きく発展するさきがけとなった。ヨーロッパでは1910年ごろに、大衆の自動車に対する欲求を満たすように、二輪車の部品や技術を用いて製造された小型軽量車、いわゆる「サイクルカー」が普及していった。1922年にフォードと同様の生産方法を用いた小型大衆車が発売され、本格的に自動車が普及していく事になった。また、それに伴いサイクルカーは姿を消していき、大衆車の普及によって、一般市民が自動車を所有することが可能となり、自家用自動車(自家用車)が普及すると、それに伴って自動車の利用が一般化、いわゆるモータリゼーションが起きた。世界で初めてモータリゼーションが起こったのは1920年代のアメリカ合衆国であり、次いで西ヨーロッパ諸国においても起こり、日本でも1970年ごろにモータリゼーションがはじまった。個人用自動車の普及は、鉄道や船といった公共交通機関に頼っていた時代に比べて利用者に圧倒的に高い自由度をもたらし、個人の行動半径を大きく拡大させることとなった。

だが現代では、自動車を個人が所有するには、払わなければならない費用は、車両の価格だけで済まず、それ以外に自動車税自動車重量税自賠責保険料車検代消耗品等の費用ガソリン代駐車場代任意保険料などの費用がかかる。ナイル株式会社が2022年に公表した、「自家用車にかかる費用が家計を圧迫していると感じるか?」という設問で行ったアンケートの結果によると、 62.4%(730人)が(自動車にかかる費用が家計を圧迫していると)「感じる」と答えた。

カーシェアリングやライドシェア

1970年代にはスイスなどでカーシェアリングも始まった。カーシェアはその後世界各国に広がり、 2000年代には、アメリカやヨーロッパなどではUberウーバー)など、自家用車による有償ライドシェアを認める地域も増えてきているなど、自動車を個人所有せず快適に利用する方法は多様化してきている。(日本は既得権益優先なのでウーバーが参入できていない)。

機械の生産方式や人々の労働への影響[編集]

なお自動車で採用された大量生産の手法が、ライン生産方式という効率的な手法を、自動車産業に限らず様々な製造業において広めてゆくことになった。これは企業経営者にとっては好都合な手法であったが、それは同時に分業が徹底される結果を生み、工場で多くの労働者が、まるでただの機械や道具のように扱われ、同一の単調な作業ばかりを繰り返すことを強制され、働くことに喜びを見出しにくくなる、労働者に精神的な不幸をもたらすという負の事態も引き起こした。一時期はあまりに効率重視で作業の細分化がゆきすぎ、それこそひとりの労働者が、ボルトを1個~数個締める作業ばかりを繰り返すなどというひどい方式になってしまい、労働者への精神的な悪影響が大きくなりすぎ、それが学者などからも指摘されるようになり、その後長い年数をかけて、作業を細分化しすぎないように、ある程度はまとまった範囲の任務を与える、という方式を採用する工場も増えてきた。たとえば一人の担当者が、せめてエンジン部分はまとめて責任を持って一人で組み立てることで、その人なりに「自分の作品を仕上げた」と感じられるようにする、などといった方式である。

2000年代における技術開発の動向[編集]

中国など新興国の経済成長や人口増加で、世界全体の自動車販売台数は増えている。これに伴い化石燃料の消費増や大気汚染が問題となり、各国政府は自動車に対して排気ガスなどの規制を強化。自動車メーカーは温室効果ガスや大気汚染物質の排出が少ない又は皆無で、石油資源を節約できる低公害車の開発・販売に力を入れる。

近年は、公害や地球温暖化の対策として、電気自動車や燃料電池車等のゼロエミッション車の開発が進んでいる。特に2015年にフォルクスワーゲングループにて発覚した排ガス不正でディーゼルエンジンの悪影響が露呈されてから、欧州各国では近い将来ガソリン車およびディーゼル車などの販売を禁止する法案が賛成多数の情勢にある。オランダとノルウェーでは2025年、ドイツでは2030年に施行するべく、そうした法案が提出され始めている。

近年は情報通信技術(ICT)が急速に進歩している。このため自動車メーカーや大手ICT企業は、インターネットで外部と接続されたコネクテッドカーや、人工知能(AI)を応用した自動運転車の研究・開発も急いでいる。

かつてはSF作品中の存在であった「空飛ぶ車」の開発も進んでいる。日本では、トヨタ自動車グループの支援を受ける有志団体「CARTIVATOR(カーティベーター)が、2018年の試作機完成を目指していた。

分類・種類[編集]

自動車の分類法はいくつもあるが、おおまかに言うと、構造(ハードウェア)による分類と使用目的(ソフト)による分類がある。

理屈の上では使用目的と構造の組み合わせがマトリックス(縦横の表)のように多数あるわけだが、実際には全ての組み合わせが用いられるではなく、使用目的ごとに適している構造は(全ての構造ではなく)いくつかの目的に適した構造に絞られることになり、また多くの使用者・購入者から評価される典型的な組み合わせや傾向のようなものが生じ、ただしそれはまったく固定しているわけではなく、時代とともにそれが緩やかに変遷を経てきた歴史がある。

特定の国に限らない分類としては、基本的には、たとえば、目的によって「乗用車(数名の人を運ぶための自動車) / 貨物車(貨物を運ぶための自動車)/ 特殊な車(それ以外の目的の自動車)」と分ける方法がある。またたとえば、大きさによって「小型車 / 中型車 / 大型車」などと分ける方法が、基本的にはある。

なお自動車が登場する以前の馬車の時代に、馬車がその姿(形状)によって分類され、すでに分類法やその分類用語が確立していたので、(馬を排したとは言え)自動車の車体に関してもそれに沿った分類法が採用されてきた歴史がある。「セダン」「クーペ」「ワゴン」などという分類法はもともとは馬車の分類法を継承したものである。→#普通自動車の分類

法規上の分類[編集]

それぞれの国で法規によって排気量や車体の大きさ、輸送能力などによって分類されている。それが税区分や通行区分、運転免許の区分の基準とされる。

日本においては、道路交通法第三条により、大型自動車、中型自動車、準中型自動車、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、大型自動二輪車、普通自動二輪車の8種類に分類され、道路運送車両法第三条により、普通自動車、小型自動車、軽自動車、大型特殊自動車および小型特殊自動車に分類されている。

日本では上位概念で「自動車」が明確に定義されており、動力(原動機、電動機など)により駆動される物や牽引される物は名前や形状に関わらず自動車とされる。一方でオーストラリアでは上位概念で自動車が定義されて無く、ピクニックテーブルにエンジンを取り付けた「エンジン付き移動式ピクニックテーブル」などの運行を取り締まる事ができずに、地元警察は「危険だから」という理由で運行しないことを呼びかけている。

「日本における自動車」も参照

統計上の分類[編集]

国際的な統計品目番号では第87類の「鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品及び附属品」に分類される。

  • トラクター(87.01) - 他の車両、機器又は貨物をけん引したり押すための車輪式又は無限軌道式の車両。
  • 10人以上の人員(運転手を含む)の輸送用の自動車 (87.02) - 原動機付きバス、客車、トロリーバス及びジャイロバスを含む。
  • 乗用自動車その他の自動車(87.02のものを除く)(87.03) - 乗用自動車(リムジン、タクシー、スポーツカー及びレーシングカー)、特殊運搬車(救急車、囚人護送車及び霊柩車等)、移動住宅車(キャンピングカー等)などを含む。
  • 貨物自動車(87.04) - ダンプカー、シャトルカー等を含む。
  • 特殊用途自動車(87.05) - 救難車、クレーン車、消防車、コンクリートミキサー車、道路清掃車、散水車、工作車及びレントゲン車等を含む。
  • 原動機付きシャシ(87.06) - 自動車用のシャシのフレーム又は結合したシャシボディの骨組に原動機等を装備したもので車体を有しない自動車が含まれる。

普通自動車の分類[編集]

姿形による分類[編集]

もとは馬車の形状による分類用語である。その後、馬車にはなかった分類用語が追加されてきた歴史がある。

なお、自動車メーカーが差別化(付加価値)として商品につける商品名(商標)においてはこの限りではなく、2ボックス形状のセダン、4ドア・5ドアのクーペ、ハッチバック形状のワゴン、ワンボックス形状のワゴンなど、下記の形状と異なるものも多い。

  • セダン:ローエンドの大衆車では2ドアも多いが、原則4ドアの車。ボンネット+キャビン+トランクルームで構成されるスリーボックスカー。
  • クーペ:もとは基本形のセダンをフランス語で「クペ」したもの、つまりセダンが少し「切られて」短くなった形。(4ドアから2ドア分減って)原則2ドアのスリーボックス車。かつてはトランクルームに2名分の補助席を備えるものもあった。現在は長さやドア数だけでは区別できなくなっている。
  • ワゴン: (もとは荷馬車en:Wagonを指す用語で)荷室が主となっている自動車。
    • 主に荷物を運ぶために使われる車はバンと呼ばれるが、アメリカ合衆国発祥のミニバンは乗用車に分類される。
    • ステーションワゴン:(ワゴン車の一種ではあるが)後部には乗員の座席とひとつづきの荷室を備えているツーボックスカーで、主に人を乗せる為に使われる車。荷室に収納式の補助席(ジャンプシート)を2名分持つものもある
  • ハッチバック:トランクルームを省略し、キャビンと荷室を一体化させた車で、跳ね上げ式のバックドア(背面扉)を持つ車。結果として3ドアもしくは5ドアとなる。

屋根による分類法は次のようなものがある。

  • オープンカー : 屋根のない車。カブリオレ、ドロップヘッドクーペ、スパイダー、ロードスター、スピードスターなどの商標がある。
  • ハードトップ : 本来は幌屋根に対する「脱着可能な硬い屋根」である部品を指す言葉であった。その後、スリーボックスで主に側面中央の窓柱(Bピラー)を持たない車を指す用語に。
  • ソフトトップ : 屋根を持つ車。フェートンという呼称は廃れたが、スポーツカーやクロスカントリーカーではまだ見られる。
  • コンバーチブル : 可動式の屋根を持ち、屋根の開・閉、どちらでも走行可能な車。以前はソフトトップ車の名称であったが、クーペカブリオレの登場によってハードトップが主流となっている。
  • オープントップ : ピラーや各ドアの窓枠、基本骨格などは通常の車と同じで、屋根のみを開閉式の幌としたもの。キャンバストップなどの商標で知られる。オープントップバスには覆いを持たないものもある。
  • グラストップ : オープントップの幌部分を大型のガラス屋根としたもの。一部が開閉するものもある。
  • デタッチャブルトップ : 屋根の一部のみを取り外し式としたもので、ハードトップの類型と見ることもできる。商標では、タルガトップ、トランストップ、Tトップ、Tバールーフなど。

スペースによる分類[編集]

自動車メーカーが消費者を満足させるために、乗用車(普通自動車)に関してさまざまな形状のものを開発してきた結果、1980年代~2000年代以降、従来の分類法や分類用語では分類しきれない車や、あるいは複数のカテゴリに該当するような車が増え、消費者も自動車メーカーも自動車誌等も、従来の分類法やカテゴリ名に困惑を感じることが増え、メーカーや販売会社と消費者のコミュニケーションでも混乱が生じるようになった。そうした困惑や混乱を回避するために、多種多様な普通自動車をざっくりと以下のように分類する方法が考えだされ、それが採用されることが増えた。

  • ワンボックスカー(モノスペースカー):全体が一つの大きな箱(ボックス)状になっている車。内部的には、エンジンルーム、キャビン(=室内スペース)、荷物室があっても、見た目は大きな一つの箱のように見える車。
  • ツーボックスカー(ファストバックカー、カムバックカー): キャビンと荷物室が1つの大きなボックスで、エンジンルームが別のボックスとして飛びだしているように見える車。
  • スリーボックスカー(ノッチバックカー):キャビンが1つ大きなボックスとして真ん中にあり、そこから前後に(キャビンよりは高さが低い)エンジンルームと荷物室のボックスが飛び出している形状の車。

構造[編集]

自動車はその歴史のなかで様々な構造が現れ、変遷を繰り返してきた。ここでは現在市販されている自動車として一般的なものを示す。したがって、いくつかの自動車には例外があり、特に競技用や、特殊自動車などについては構造が大きく異なる例もある。

車体構造[編集]

車体の強度部材に用いられる材料は鋼鉄が主流で、近年では超高張力鋼板の使用部位が広範にわたっており、アルミニウム合金や炭素繊維強化プラスチックなどの複合材料を用いたものも市販されるようになってきている。骨格部材以外のパネル部分には合成樹脂を用いる例も増えてきている。

構造は大きく分けてフレーム形式とモノコック形式とに分けられる。フレーム形式は独立した骨格部材の上に、車室を構成する構造物が載せられたもので、古くから自動車の車体構造として用いられ、現在でも貨物自動車を中心に採用されている。モノコック形式は車室を構成する外殻自体が強度部材として作られた構造で、20世紀半ば頃から自動車の車体構造として普及しはじめ、現在の乗用車と小型商用車(LCV)のほとんどで採用されている。

現在は内燃機関か、電気モーターを用いるものが主流である。内燃機関では、ピストンの往復運動をクランクシャフトで回転運動に変換して出力するディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどのレシプロエンジンが一般的である。それぞれに4サイクルと2サイクルがあるが、現在では4サイクルが主流となっている。

火花点火内燃機関の燃料にはガソリンが用いられるのが主流となっているが、環境性能や単価を理由に液化石油ガス(LPG)や液化天然ガス(LNG)、エタノール等のアルコール燃料が用いられる場合もある。近年では、内燃機関と電気モーターを組み合わせたハイブリッドカー、電気自動車などが普及してきている。

動力伝達[編集]

動力は、ガソリン自動車の場合は、原動機が効率的に出力を発揮する回転速度から、走行に適した回転速度へと変速機によって減速あるいは増速される。変速機は、運転者が複数の減速比から選択して操作するマニュアルトランスミッション(MT)と、自動的に選択または変化するオートマチックトランスミッション(AT)に大別できる。MTは基本的に減速比を切り替える際などにはクラッチを操作する必要があるが、このクラッチ操作を自動化したものはセミオートマチックトランスミッションと呼ばれる。近年は、MTの基本構造を持ちながらクラッチ操作と変速操作が自動制御された、自動制御式マニュアルトランスミッション(AMT)も普及し始めている。

電気自動車の場合は、原動機の効率的な回転速度の範囲が広いため減速比を切り替えない変速機を採用し、原動機を逆回転させることが可能なので後退ギアを持たない場合がほとんどである。

マニュアルトランスミッションの場合、前進の変速比は3段から6段程度が一般的だが、副変速機を用いて変速段数を2倍とする例も貨物車を中心に少なくない。

オートマチックトランスミッションは、トルクコンバータとプラネタリーギアを組み合わせたものが広く普及している。日本の乗用車では、CVTと呼ばれる無段変速機の採用例が増えてきている。いずれの方式においても、運転者の操作によって「Lレンジ」などのように減速比の範囲を限定する機構や、「マニュアルモード」、「ホールドモード」、「スポーツモード」などと呼ばれる任意の減速比に固定できる機構を備えている。

セミオートマチックトランスミッションは日本の法規ではAT車に分類され、日本車の例ではトヨタ・MR-SのSMTがある。

操舵装置[編集]

操舵は前輪の方向を変えて車体を旋回させる前輪操舵方式が一般的で、その機構全体を指してステアリングと呼ぶ。操作部を「ハンドル」あるいは「ステアリング・ホイール」と呼ぶ。ハンドルの回転はボール・ナットやラック・アンド・ピニオンなどの機構を介して車輪を左右に押す作用に換えられる。近年は油圧や電動モーターを用いて運転者のハンドル操作を助力するパワーステアリングが広く普及している。

旋回時の各瞬間に、それぞれの車輪がその動いている方向を向くようにすると、前輪の左右では舵角が異なる。例えばハンドルを右に切ると右タイヤの方が舵角が大きくなる。これについての機構をアッカーマン機構と呼ぶ。

制動・拘束装置[編集]

主たる制動操作は、足踏み式のペダルで行うフットブレーキがほとんどである。ペダルに加えられた力は油圧や空気圧を介してブレーキ装置に伝達し、摩擦材を回転部分に押しつけ、運動エネルギーを熱エネルギーに変換して速度を落とす。市販車のほとんどが、エアブレーキ以外の液圧式では、エンジンの吸気管負圧や油圧を利用した、ペダル踏力を軽減する倍力装置を有している。

下り坂などで、フットブレーキに頼り過ぎるとフェード現象で制動力が著しく低下したり、ベーパーロック現象でペダル踏力が全く伝わらなくなってしまうことがある。これらを防ぐためにエンジンブレーキを利用することが運転免許教習でも指導されているが、車両総重量が大きくエンジンブレーキだけでは抑速や減速効果が得られにくい大型の貨物自動車では、排気ブレーキやリターダを搭載する車種も多い。

高速からの制動には、放熱性に優れるディスクブレーキが有効であるが、重量が大きい車両の制動や、勾配での駐車などには、自己倍力作用の働きで「拘束力」の大きいドラムブレーキが有利となる。

駐車時に車体が動き出さないように拘束するパーキングブレーキはワイヤ式または空気式のものが多い。乗用車の場合はブレーキ装置を制動用のものと共用する構造がほとんどであるが、制動用のディスクブレーキの内周に拘束用のドラムブレーキを備えるものもある。従来貨物車ではトランスミッション(変速機)出力部にドラムブレーキを備え、プロペラシャフトを拘束するセンターブレーキが一般的であったが、法改正により常用ブレーキを兼用する「ホイールパーク式」/「マキシブレーキ」と呼ばれる、ホイールを直接拘束する方式に移行した。

運転装置[編集]

運転者の座席は座部と背もたれを備えた椅子形のものが主流である。運転席の正面には操舵用のハンドルとアクセルペダルとブレーキペダル、あるいはクラッチペダルが備えられているのが標準的な自動車の構造である。ハンドルは円形が一般的だが、オート三輪ではオートバイやスクーターのような棒状のハンドルも存在した。また、腿まわりの空間的余裕が増える楕円形のハンドルを採用している車種もある。駐車ブレーキを操作する装置は、レバーを引き上げる方式のものが主流であるが、古いトラックやワンボックスカーでは杖状のレバーを車体前方の奥から手前に引き寄せる方式のものもある。また、近年では足踏み式のものや電気的に作動する押しボタン式も採用されるようになった。変速機の操作レバーはMTの場合はシフトレバー、ATの場合はセレクトレバーと呼ばれる。いずれの場合も運転席の脇、車体中央側の床に設置されているフロアシフトが大半を占める。古いタクシーやトラック、ワンボックスカーではステアリングコラムにシフトレバーを設置したコラムシフトのMTも多く存在した。一時期のAT車ではミニバンを中心に、ステアリングコラムにセレクトレバーを備える車種は珍しくないものとなっていたが、近年はインストルメントパネルにセレクトレバーを配置したものが多い。

自動車の利用[編集]

乗用車としての利用[編集]

自動車は人や物を輸送でき、また道路さえ整備されていれば様々な場所に行くことができる。これはかつての馬車で行われていた用途の継続でもあった。道路の全国的な整備が、先進国への仲間入りとも言える。

アメリカは、1908年に大衆車のパイオニアであるフォードT型を発売、1911年には自動車専用道路の先駆けとなるパークウェイが整備された。イタリアでは、1924年にミラノからヴァレーセまでの約50kmに、交差点のない幅10mのアウトストラーダを完成させている。ドイツナチ党のアドルフ・ヒトラーは、1933年に「休日には低所得者層が自動車に乗ってピクニックに出かけられる」暮らしが必要であると提え、モータリゼーション推進を宣言。アウトバーンの整備や伝説的大衆車フォルクスワーゲンビートルの開発に着手した。日本は、元々馬車文化が未熟であったために道路整備は難航したが、戦後に入って首都高速道路が建設されるなど、欧米に劣らぬ勢いを見せた。

商用車としての利用[編集]

他方の利用として、自動車を用いたサービス業が多様に存在し、市民の生活にとって大きな役割を担っている。これには大きく分けて「自動車で何かをする」形態と、「自動車に何かをする」形態がある。

前者の例として、旅客輸送や貨物輸送を行うサービス全般を運輸業と呼ぶ。旅客であればタクシーやハイヤー、またバスなどとして運営され、バスは多くの人員の輸送が可能であることから、形態に応じて路線バス、観光バス、高速バス、定期観光バスなどと様々なものがある。貨物輸送に関しては運送会社がトラックを用いて輸送する。 直接的な輸送サービスの提供ではないが、自動車を賃貸するレンタカーやカーリースもある。

後者の例としては自動車の整備を行う自動車整備業、自動車への燃料補給などを行う水素ステーションなどがある。

緊急車両・特殊車両としての利用[編集]

国民の安全や治安維持のために、自動車を利用する例がある。

パトロールカー (パトカー) は、犯罪や交通違反の取り締まりのために使用される。パトロールを行うことで犯罪の抑制に繋がるという重要なメリットも持ち合わせている。消防車は、火災その他災害に際してその鎮圧や防御を行う際に使用される。この用途は古くから馬車や人力車などで担われていた。救急車は、疾病または災害などによって発生した傷病者を治療可能な医療施設まで迅速に搬送するために使用される。一般道を利用しながら早急に目的地へ到着しなければならないため、市民の協力が重要とされる。

また特殊車両としては、国の平和・安全のために使用される装甲車や、建設工事に使用されるクレーン車やブルドーザー、輸送に使用されるタンクローリーやトレーラーなどがあり、いずれも国民が健康で文化的な最低限度の生活を送るためには必要不可欠な自動車である。



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