神戸大学
神戸大学(こうべだいがく、英語: Kobe University)は、兵庫県神戸市灘区六甲台町1番1号に本部を置く日本の国立大学である。1902年創立、1949年大学設置。略称は神大(しんだい)あるいは神戸大(こうべだい)。
戦前の旧制時代からの歴史を持つ旧官立大学の一校であり、一橋大学、大阪公立大学と共に旧三商大の一校である。
概観[編集]
大学全体[編集]
神戸大学は1902年(明治35年)に日本で2番目に設立された官立高等商業学校である神戸高等商業学校に開学の起首を持つ。現在は10学部・15研究科を設置する総合大学となっている。前身の神戸高商は、日清戦争後の急速な日本の経済の成長を背景に、実業界における人材需要が高まる中、東京高等商業学校(現一橋大学)に続く形で設置された。初代校長である水島銕也は東京高商との差別化を図るため、学理からより実践的な実学教育を重視した。1949年の学制改革による新制大学としての改組時に、日本で最初の経営学部を設置している。また、唯一の海事科学部を設置している大学である。旧官立9大学の一校である。
学部学生数11,411人、大学院学生数4,460人、計15,871人、教員数(常勤)1,253人。
建学の精神(理念・学是)[編集]
「学理と実際の調和」を理念としている。神戸高等商業学校設立以来、「真摯」「自由」「協同」の精神で、社会に貢献するような指導的人材を育成する世界的研究・教育機関たることを目指している。
ビジョン[編集]
「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」
教育および研究[編集]
イギリスの大学評価機関「クアクアレリ・シモンズ社」によるQS世界大学ランキング2020(2019年)では、第395位、アジア第59位である。
2007年(平成19年)に、理学・工学・システム情報学・農学・海事科学の5研究科に加え、自然科学系の5つの研究センターが参加する学際組織、「自然科学系先端融合研究環」を設置。2016年(平成28年)に「先端融合研究環」へと改組。2011年(平成23年)には神戸ポートアイランドに先端的・融合研究を集積する目的で「統合研究拠点」を設置している。このように、文理・分野融合を意識した横断的な研究開発、人材育成に力を入れている。
EUインスティテュート関西のコンソーシアムメンバーとして参加しており、通常の留学支援だけでなく、専門教育と留学の双方を中心に据えた独自性の高い少数精鋭教育プログラム「EUエキスパート人材養成プログラム (KUPES)」「5年一貫経済学国際教育プログラム (IFEEK)」「KIBER Program」等を実施している。
沿革[編集]
略歴[編集]
- もともと東京高商に次ぐ第二の高商の設置場所は文部省の意向で神戸市に内定していたが、大阪市が大阪への高商設置を求め攻勢に出たことで激しい誘致合戦が発生した経緯がある。しかし、1900年11月の帝国議会において、71票対70票の一票差で神戸への設置が採択された。
- 神戸高等商業学校の設置が1902年(明治35年)3月。
- 神戸高等商業学校は1929年、旧制神戸商業大学に昇格。1940年には大学予科を設置。1944年には政府の方針として神戸経済大学へ名称変更された。
- 第二次世界大戦後の学制改革に伴い、1949年、近隣の姫路高等学校・神戸工業専門学校・兵庫師範学校・兵庫青年師範学校を併合し、新制「神戸大学」となった。その際、日本初となる経営学部を設置し、1953年には同じく日本初となる大学院経営学研究科(修士課程および博士課程)を設置した。1964年に神戸医科大学を包括して新たに医学部を設置、1966年には兵庫農科大学を併合して農学部を設置する。2003年には、旧:神戸高等商船学校を起源とする神戸商船大学と合併し、海事科学部とし深江キャンパスを同大学から引き継いだ。
- 神戸大学の公式見解としては神戸高等商業学校およびその後身の神戸商業大学を母体としており、1902年の神戸高等商業学校の創立を、神戸大学の開学の起点としている。
- 2000年、神戸大学百年記念館が竣工し、旧制神戸高等商業学校設置から100年後に当たる2002年5月に、神戸大学創立百周年記念式典も挙行した。
- 一方で、公式サイトではそれぞれの学部ごとの個別の沿革も紹介しており、個別のそれぞれの歴史も尊重している。
- 神戸商業大学は、大学群のカテゴライズにおいて旧三商大に属しており、現在の大学院経済学研究科・大学院経営学研究科・大学院法学研究科・大学院国際協力研究科・経済経営研究所のルーツに当たる。
本稿では主として新制神戸大学設立後の沿革をまとめている(前身の旧制諸学校の沿革については、各校の記事を参照のこと)。
年表[編集]
- 1949年 国立学校設置法施行に伴い、神戸地区に所在していた神戸経済大学・神戸経済大学予科・神戸工業専門学校・姫路高等学校・兵庫師範学校・兵庫青年師範学校を包括して神戸大学を設立。文理学部、教育学部、法学部、経済学部、経営学部、工学部を設置。
- 1953年 大学院法学研究科・経済学研究科・経営学研究科(修士課程・博士課程)を設置。
- 1954年 文理学部を文学部と理学部に分離。
- 1955年 工学専攻科を設置。
- 1957年 理学専攻科を設置。
- 1958年 文学専攻科を設置。
- 1963年 教養部設置。
- 1964年 兵庫県立神戸医科大学(旧制兵庫県立医科大学)が神戸大学へ移管され、同大学を母体に医学部を設置。工学専攻科を改組して大学院工学研究科(修士課程)を設置。
- 1965年 理学専攻科を改組して大学院理学研究科(修士課程)を設置。教育専攻科を設置。
- 1966年 兵庫県立兵庫農科大学が神戸大学へ移管され、同大学を母体に農学部を設置。
- 1967年 大学院医学研究科(博士課程)を設置。
- 1968年 文学専攻科を改組して大学院文学研究科(修士課程)を設置。
- 1972年 大学院農学研究科(修士課程)を設置。
- 1980年 大学院文化学研究科(博士課程)を設置。
- 1981年 大学院自然科学研究科(博士後期課程)を設置。教育専攻科を改組して大学院教育学研究科(修士課程)を設置。
- 1992年 教養部と教育学部を統合改組して国際文化学部と発達科学部を設置。大学院国際協力研究科(修士課程)を設置。これまでの小学校・中学校の教員養成機能は新設された兵庫教育大学が担うことになった。
- 1994年 大学院農学研究科・工学研究科・理学研究科を統合改組して大学院自然科学研究科(博士前期課程)を設置。医療技術短期大学部を改組して医学部保健学科を設置。
- 1995年 大学院国際協力研究科(博士課程)を設置。阪神・淡路大震災により、44人(学生・留学生39人、教職員3人・生協職員2人)の神戸大学関係者が死亡する。大学の校舎は一つも倒壊しなかったが、研究用の機械・機器類の破損や建物や路面のひび割れなどで約770億円の被害が出る。
- 1997年 大学院総合人間科学研究科(修士課程)を設置。
- 1999年 大学院総合人間科学研究科(博士課程)を設置。経営学部を大学院重点化。
- 2000年 経済学部・法学部を大学院重点化。百年記念館が竣工。
- 2001年 医学部を大学院重点化。
- 2002年 創立百周年記念式典を挙行。
- 2003年 神戸商船大学と合併し、同大学を母体に海事科学部を設置。
- 2004年 国立大学法人法の規定により国立大学法人へ移行。法科大学院(大学院法学研究科実務法律専攻)を設置、法学部夜間主コース募集停止。
- 2006年 経営学部夜間主コース募集停止。
- 2007年 大学院自然科学研究科を改組して大学院理学研究科・工学研究科・農学研究科・海事科学研究科を設置。自然科学系先端融合研究環を設置。大学院文化学研究科・文学研究科を統合改組して大学院人文学研究科を設置。大学院総合人間科学研究科を改組して大学院国際文化学研究科・人間発達環境学研究科を設置。大学院重点化が完了。
- 2008年 大学院医学系研究科を改組して大学院医学研究科・保健学研究科を設置。経済学部夜間主コース募集停止。
- 2010年 大学院工学研究科から情報知能学専攻が独立。「システム科学」「情報科学」「計算科学」の3専攻構成の大学院システム情報学研究科を設置。
- 2016年 大学院科学技術イノベーション研究科を設置。自然科学系先端融合研究環を先端融合研究環に改組。
- 2017年 発達科学部と国際文化学部を再編統合した国際人間科学部を設置。
- 2018年 医学部推薦入試の地域特別枠で、募集要項に明記せずに過疎地域出身者に有利な配点をしていたと発表した。100点満点の書類審査において、出身地域ごとに最大25点を段階的に配点していた。出身高校の所在地や保護者の居住地が医師が少ない地域だった場合は最大25点が得られ、都市部出身者は0点になる仕組みだった。(詳細は2018年に発覚した医学部不正入試問題の項目を参照のこと)。
- 2021年 海事科学部を改組し、海洋政策科学部を設置。
歴代学長[編集]
- 神戸高等商業学校
- 初代:水島銕也(1903年1月 - 1925年7月)
- 第2代:田崎慎治(1925年7月 - 1929年3月)
- 神戸商業大学
- 初代:田崎慎治(1929年4月 - 1942年1月)
- 第2代:丸谷喜市(1942年1月 - 1944年9月)
- 神戸経済大学
- 初代:丸谷喜市(1944年10月 - 1946年3月)
- 第2代:花戸龍蔵(1946年3月 - 1948年5月)
- 第3代:田中保太郎(1948年5月 - 1949年5月)
- 神戸大学
- 初代:田中保太郎(1949年5月 - 1953年12月) 出身部局:法学部
- 第2代:古林喜楽(1953年12月 - 1959年12月) 出身部局:経営学部
- 第3代:福田敬太郎(1959年12月 - 1963年12月) 出身部局:経営学部
- 第4代:柚木馨(1963年12月 - 1965年11月) 出身部局:法学部
- 学長事務取扱:國歳胤臣(1965年11月 - 1966年2月) 出身部局:法学部
- 第5代:八木弘(1966年2月 - 1969年1月) 出身部局:法学部
- 学長事務取扱:戸田義郎(1969年1月 - 1971年2月) 出身部局:経営学部
- 第6代:戸田義郎(1971年2月 - 1975年2月) 出身部局:経営学部
- 第7代:須田勇(1975年2月 - 1981年2月) 出身部局:医学部
- 第8代:堯天義久(1981年2月 - 1985年2月) 出身部局:工学部
- 第9代:新野幸次郎(1985年2月 - 1991年2月) 出身部局:経済学部
- 第10代:鈴木正裕(1991年2月 - 1995年2月) 出身部局:法学部
- 第11代:西塚泰美(1995年2月 - 2001年2月) 出身部局:医学部
- 第12代:野上智行(2001年2月 - 2009年4月) 出身部局:発達科学部
- 第13代:福田秀樹(2009年4月 - 2015年3月) 出身部局:自然科学系先端融合研究環
- 第14代:武田廣(2015年4月 - 2021年3月) 出身部局:大学院理学研究科
- 第15代:藤澤正人(2021年4月 - ) 出身部局:大学院医学研究科
基礎データ[編集]
所在地[編集]
- 六甲台地区(神戸市灘区)
- 楠地区(神戸市中央区)
- 名谷地区(神戸市須磨区)
- 深江地区(神戸市東灘区)
象徴[編集]
ロゴマーク[編集]
神戸大学のロゴマークは2002年(平成14年)の創立百周年を機に制定されたもので、「Kobe University」の頭文字「K」を2羽の鳥に象徴化し、それぞれが大きな軌跡(個性)を描きながら山や海を渡り、大空(世界)へと自由に羽ばたき、時にはお互いに助け合いながら進みゆく様子を表現している。
配色は、鳥を大学のシンボルカラーのブリックカラー (RGB:R196 / G0 / B0) とし、緑は山、青は海をイメージしている。
ロゴタイプ[編集]
ゴシック系フォントを用い、未来にまっすぐ進む堅実なイメージを表現。世界に発信する神戸大学を、広がりのあるデザインでアピールしている。
校歌[編集]
- 神戸大学学歌
- 1992年(平成4年)、神戸大学創立90周年を機に制作された。作詞は詩人の安水稔和(1954年文学部卒)、作曲は中村茂隆(名誉教授)。
- 商神
- 前身の旧制神戸高等商業学校時代の1906年(明治39年)に学友会歌として作られ、戦後も神戸大学愛唱曲・準校歌として長く歌い継がれた。歌詞は8番まである。「商神」とはギリシア神話のヘルメス(ローマ神話のマーキュリー)を指す。作詞は詩人の生忠田兵造、作曲は米田虎之助。
マスコットキャラクター[編集]
神戸大学のマスコットキャラクターは「神大うりぼー」であり、六甲山に出没するイノシシの子供である「うり坊」をモチーフとしている。