河出書房新社
株式会社河出書房新社(かわでしょぼうしんしゃ)は、日本の出版社である。本社は東京都渋谷区千駄ヶ谷にある。
3代目社長の河出朋久は歌人でもあり、歌集『白葉集』1 - 3(短歌研究社、2004年 - 2006年)がある。佐佐木幸綱、高野公彦、小野茂樹など学生歌人を社員登用していたこともある。
歴史[編集]
1886年(明治19年)に河出静一郎(1857年 - 1936年)によって岐阜の「成美堂書店」の東京支店として日本橋に設立されたのが始まりである。当時は教科書や学習参考書を中心に出版していたが、農学関係書の刊行が次第に増えていった。
1933年(昭和8年)に2代目(静一郎の女婿)の河出孝雄(1901年 - 1965年)が河出書房に改称し、文芸書や思想書を中心に刊行するようになった。1944年(昭和19年)には改造社より文芸雑誌『文藝』を買い取った。1945年(昭和20年)の東京大空襲で被災し、千代田区神田小川町に移転する。
1950年(昭和25年)に刊行した笠信太郎『ものの見方について』がベストセラーとなる。1954年(昭和29年)に創業70周年記念企画として総合雑誌『現代生活』の創刊を公告するも、立ち上げの資金を編集スタッフに持ち逃げされた。『現代生活』は『知性』という名で創刊するが、これが遠因となって1957年(昭和32年)に経営破綻、新たに河出書房新社を創設し再建された。同年3月には女性週刊誌の先駆けである『週刊女性』を創刊していたが、倒産に伴い、4号で休刊。同年8月に同誌の編集・発行権を主婦と生活社へ譲渡した。 1965年(昭和40年)、河出孝雄が死去し、河出朋久(1938年 - )が3代目社長となる。1967年(昭和42年)に会社更生法を申請し再度倒産、再建され中島隆之が社長となる。また、子会社「河出ベストセラーズ」を岩瀬順三が1967年に設立。1968年(昭和43年)12月、吉本隆明の『共同幻想論』を刊行する。
1977年(昭和52年)に品川区東大井から新宿区住吉町に移転し、清水勝が社長となる。2年後に千駄ヶ谷に移転し現在に至る。旧社は登記のみ残し休眠状態だったが、2000年(平成12年)から東大井で営業再開した。2007年(平成19年)、新社と業務提携、販売契約を締結した。
1962年(昭和37年)より文藝賞を創設した。同賞を受賞した高橋和巳は主たる作家となる。主なベストセラーとして1981年(昭和56年)、田中康夫『なんとなく、クリスタル』(第17回文藝賞受賞作)、堀田あけみ『1980アイコ十六歳』(第18回文藝賞受賞作)、1983年(昭和58年)、唐十郎『佐川君からの手紙』、1987年(昭和62年)、俵万智『サラダ記念日』。
文藝賞は山田詠美、長野まゆみ、星野智幸、鹿島田真希、中村航、綿矢りさ、羽田圭介、白岩玄、山崎ナオコーラ、青山七恵、磯崎憲一郎といった優れた作家を輩出。新人作家の登竜門となる。
1997年(平成9年)、俵万智『チョコレート革命』がベストセラーとなる。1990年代末には『文藝』を中心とした若手作家ブームが訪れ、「J文学」が流行。中原昌也、藤沢周などがデビュー。
2002年(平成14年)、社長が清水勝から若森繁男に交代する。主なベストセラーに『大人の塗り絵』シリーズ(累計777万部)。白岩玄『野ブタ。をプロデュース』(後にドラマ化)、山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』(後に映画化)、青山七恵『ひとり日和』(第136回芥川賞受賞)、秦建日子『推理小説』(後にドラマ・映画化)。
2004年(平成16年)、綿矢りさ『蹴りたい背中』が史上最年少で芥川賞を受賞し、127万部のベストセラーとなる。
2007年(平成19年)、創業120周年記念で、池澤夏樹=個人編集「世界文学全集」(III期、全30巻)刊行開始。近年の文学全集としては異例のベストセラーに。2014年(平成26年)には創業130周年記念で、池澤夏樹=個人編集「日本文学全集」(III期、全30巻)も刊行開始された。
2011年(平成23年)、社長が若森繁男から小野寺優に交代する。主なベストセラーに紫月香帆『やってはいけない風水』、中村文則『掏摸』、赤坂真理『東京プリズン』、伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』(第33回SF大賞特別賞受賞)、いとうせいこう『想像ラジオ』(第35回野間文芸新人賞受賞作)、木皿泉『昨夜のカレー、明日のパン』(後にドラマ化)、佐々木中『切りとれ、あの祈る手を』(紀伊國屋じんぶん大賞2010)、千葉雅也『動きすぎてはいけない』(紀伊國屋じんぶん大賞2013)、高橋源一郎・SEALDs『民主主義ってなんだ?』。
2014年(平成26年)、若手社員4人が「嫌韓などの書籍や雑誌が売れている」という風潮に対し、問題提起するため、小熊英二らの協力も得て「今、この国を考える〜「嫌」でもなく「呆」でもなく」と題した選書フェアを企画した。
2022年(令和4年)、2026年の創業140周年に向けたカウントダウン企画として「日常に読書の栞を」を掲げ、季刊誌『スピン/spin』を創刊。
出版物[編集]
雑誌[編集]
- 『文藝』
- 『スピン/spin』
文庫・新書・叢書[編集]
- 河出文庫
- 河出ブックス
- 世界の大思想
- KAWADE夢ムック
- KAWADE道の手帖
- 河出新書
- KAWADE夢新書
- 九龍コミックス
- ふくろうの本
- らんぷの本
- 奇想コレクション
- 14歳の世渡り術
- 池澤夏樹=個人編集「世界文学全集」(全30巻)
- 池澤夏樹=個人編集「日本文学全集」(全30巻)