木更津市みつわ幼稚園理事長不当解任事件

木更津市みつわ幼稚園理事長不当解任事件（きさらづしみつわようちえんりじちょうふとうかいにんじけん）とは、2014年（平成26年）3月に、千葉県庁からの是正指導に応えるため公認会計士資格を持つ弁護士に調査を委任して問題解決を進めていた理事長が、園の資産を不正に引き出していた副園長ら他の役員から「会計調査のために弁護士に帳簿を閲覧させたことは第三者への情報漏洩であり重大な不正行為だ」との支離滅裂な非難を浴びせられ、汚名を着せられた上で理事職を解任された事件である。その後、この事件は訴訟（千葉地裁平成26年（ワ）第95号事件）へと発展した。

事件の概要[編集]

千葉県木更津市にある学校法人みつわ学園（みつわ幼稚園）の初代理事長Xの娘Yは、Xが老衰により亡くなった平成14年度に理事長職を引き継いだが、その直前に当学園がYから突如2300万円以上の巨額の資金を借り入れたとする不可解な会計処理が決算書上では為されており、それを根拠に当学園からYに対して借入金の返済を理由とする支払いが長期間に渡って行われていた。この借入金に関して、その根拠となる借用書が存在せず返済の時期や金額についての取り決めもない中で、恣意的な時期に恣意的な金額を返済名目でYに支払っていた当学園の財務状況を問題視した千葉県庁は、当学園に対してこの問題に適切に対処するよう是正を指導した。この是正指導は平成14年、19年と繰り返し行われたが、二代目理事長Yおよびその娘である経理担当者はこの指導を無視し続け、当学園から自身らへの根拠のない借入金返済名目の支払いを続行した。

なお、借入金返済の名目でYに支払われていた金額は、平成17年度は120万円、18年度は230万円、19年度は30万円、20年度は70万円、21年度は100万円、22年度は60万円、23年度は140万円である。借用書がないことは元より、上記のような無計画で恣意的な支払いを続けていたことは公金の助成を受ける学校法人の会計として明らかに不健全であった。

平成24年の学校法人検査でも、千葉県庁は当該借入金に対する是正指導を行った。平成22年に理事長に就任したZはこの時に当該借入金に関する問題を認識し、Yへの借入金返済名目の支払いを停止するよう経理担当者に指示した上で、当該借入金の経緯や根拠等について調査を開始するとともに、当問題に対する措置状況の報告を求める千葉県庁に対して「実際の借入状況について現在調査中であり、結果が判明し次第、必ず報告する」と回答した。

千葉県庁からの是正指導に応えるため調査を開始した三代目理事長Zは、調査の過程で前理事長Yが虚偽の会計処理を行っていた可能性が高いことに気付き、会計専門の弁護士に問題解決を依頼して当学園の帳簿等を検査させていた。すると、それまでに当学園から累計400万円以上を借入金返済名目で母Yに不正に支払っており、さらにその他にも様々な手口で当学園の資産を密かに横領していた副園長は、不正の発覚やその責任追及などから逃れるため、他の役員らと結託して、理事長Zに対して「弁護士に帳簿を調査させたことは第三者への情報漏洩であり重大な不正行為だ」との支離滅裂な非難を集団で浴びせ、汚名を着せた上で理事長職を解任し、当学園から追放した。

不当解任を強行した後、自ら理事長となった副園長は、その後の法廷の場においてもなお虚偽に基づいた不合理な主張を展開して元理事長を責め立て貶めるなどして自身らの正当性を強弁したが、千葉地裁は新理事長ら役員の行為の正当性を否定し、新理事長らが元理事長Zに与えた精神的苦痛は慰謝料100万円をもって償われるべき不法行為であると断罪した上で、理事長解任は無効であるとの判決を下した。

控訴審において、新理事長は地裁判決を大筋で受け入れ、慰謝料の支払いおよび新理事長らの強行した理事長Zの解任が無効であることの確認などを主旨とした和解が平成28年6月に成立した。しかし、平成28年3月ですでに役員の任期が終了していた元理事長Zは役員に復する法的根拠を失っており、結果として、違法な理事長解任を強行した新理事長がその後もなお当学園の理事長に留まっている。

また、本事件における不当解任は寄附行為の定めに反して強行された違法な役員変更であったが、当地域の私立学校を監督する責務を負う千葉県庁は本事件の発覚後も何らの対応措置を取らないまま、例年と変わらず年額数千万円に上る公金を助成し続けている。