朝鮮語
朝: 조선어, 조선말、英: Korean)または朝: 한국어)は、主に朝鮮半島で使用されている言語で、大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の国語である。
この言語の名称については議論があるが、日本の言語学・音韻論など学術的には、表記として「朝鮮語」が用いられてきた。
概要[編集]
約5,200万の韓国人、2,500万以上の北朝鮮人、約280万のアメリカ合衆国やカナダの韓国系アメリカ人、韓国系カナダ人、約190万の中国籍である朝鮮族、約80万の在日韓国・朝鮮人と朝鮮系日本人、約70万のロシアや中央アジア、ヨーロッパの高麗人と韓国人の間で話される。ただし、これらのうちウズベキスタンやカザフスタンなど、中央アジアで話されている言語は「高麗語(コリョマル)」として、別言語扱いとされる場合もある。
現在の大韓民国(韓国)の標準語及び朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の文化語は、朝鮮王朝の首都が一定して漢城府(現ソウル)であったことから、ソウル特別市の方言がベースとなっている。もっとも、北朝鮮では、文化語は平壌直轄市の言葉を基準としている建前である。
音韻面では、子音に有気音と無気音の対立がある。連音(フランス語で用いられる用語のリエゾンとしばしば混同されるが、実際にはそれに合わせれば「アンシェヌマン」である)が起こることも特徴である。音節構造においては、ほとんどが母音で終わる開音節の日本語とは異なり、子音で終わる閉音節も多く現れる。ただし、在日朝鮮語では日本語の影響で閉音節の発音はほぼ崩壊している。
言語類型論の観点から見ると、日本語と同じ膠着語であり、修飾語は被修飾語に先行し、前置詞ではなく後置詞を用いる。歴史的に日本語やベトナム語と同様に漢字文化の影響があるが、現在の表記には主にハングルが用いられる。
韓国、北朝鮮でそれぞれ規範形の定められている複数中心地言語でもある。言語学的な基準からすると韓国で話されている言語と北朝鮮で話されている言語は同一の言語である(つまり、韓国・北朝鮮とも双方の言語を同一の言語と見なしている)が、南北には発音・語彙・文法・正書法などに違いが存在する。
ISO 639による言語コードは2字ではko
、3字ではkor
で表される。
言語名[編集]
日本では、伝統的に「朝鮮半島」や「朝鮮民族」などと同様に「朝鮮」の名を冠した「朝鮮語」という呼称が用いられている。しかし、朝鮮半島が南北に分かれ、日本が韓国としか国交がない現状を反映し、とくに2000年代頃になってからは「韓国語」と呼ぶことが多くなっている。そのほか、「コリア語」「韓国朝鮮語」などの呼称が存在する。また、本来ハングルは文字の名前であり言語の名前ではないが、言語名として「ハングル」を用いることもあり、日本放送協会(NHK)は「ハングル講座」を放送している。ハングル能力検定試験協会は「『韓国・朝鮮語』を統括する意味で『ハングル』を用いて」いると説明している。
一方、韓国では「韓国語」に相当する「ハングゴ)」「ハングンマル)」という呼称が用いられており、北朝鮮においては「朝鮮語」に相当する「チョソンマル)」「チョソノ)」という呼称が用いられている。この他に朝鮮民族どうしの表現として「国語」に相当する「국어(國語、クゴ)」や、朝鮮語の固有語で「我々の言葉」を意味する「우리말(ウリマル)」という表現も用いられる。
また、中国では、1949年の建国から社会主義陣営に所属しており、当初から北朝鮮を朝鮮半島全体の唯一の正統政府としていた立場から、朝鮮民族の国家、民族や言語、文化に冠する呼称に「朝鮮」(簡体字で「朝鲜」)を使用し、中国の国民を構成する朝鮮系の集団やその言語に対してもこの名称を用いて、「朝鮮族」や「朝鮮語」と呼称してきた。
しかし、1992年に韓国と中国が国交を樹立してからは、韓国との直接交流が進展し、韓国資本の裏付けにより、韓国式の語彙や文字配列をそのまま移植した語学テキストや辞典類が「韓国語」の名称を冠して発行されるようになった。その結果、韓国の朝鮮語を指す「韓国語」「韓語」は、中国の延辺朝鮮語や北朝鮮の朝鮮語を指す「朝鮮語」とともに併用されるようになってきている。
日本外務省および中華人民共和国外交部の公式ウェブサイトにおいては国に応じて別の呼称を使用している(韓国の公用語は韓国語、北朝鮮の公用語は朝鮮語とされる)。
中国本土を除く中華圏(香港、マカオ、台湾)では政治的な理由から「韓語」としか呼ばない。
また、中央アジアの朝鮮人の間では「高麗語」(고려말、高麗말、Корё маль、コリョマル)という呼称が用いられている。多くのヨーロッパ言語では高麗に由来する Korean (英語)などの名称を用いており、中立性の問題は提起されていない。