日本産業規格
日本産業規格、(にほんさんぎょうきかく、英: Japanese Industrial Standards)は、産業標準化法に基づき、認定標準作成機関の申し出又は日本産業標準調査会(JISC)の答申を受けて、主務大臣が制定する規格であり、日本の国家標準の一つである。またはと通称されている。[編集]
1949年以来、長らくと呼ばれてきたが、法改正に伴い2019年7月1日より改称された(後述)。
歴史[編集]
明治時代には、日本の工業規格は民間団体が作っていた。ただし、軍需品などの政府調達品には、政府の購入規格、試験規格、標準仕様書があった。
日本標準規格[編集]
1921年(大正10年)には、大正10年勅令第164号に基づいて工業品規格統一調査会が設置された。この調査会は、1941年までに520件の日本標準規格(旧JES、Japanese Engineering Standards)を制定した。
臨時日本標準規格[編集]
臨時日本標準規格 (臨JES)は、1939年(昭和14年)から1945年(昭和20年)までの間に931件制定された。臨JESには、規格が要求する品質を下げて物資の有効利用をはかることおよび、制定手続を簡素化して規格の制定を促進すること、というねらいがあった(工業技術院標準部 1997、p. 226)。臨時規格または戦時規格とも呼ばれた(国立国会図書館 2006)。
日本航空機規格[編集]
日本航空機規格(航格)は、1938年(昭和13年)の航空機製造事業法第6条に基づいて定められた航空機の規格である。工業技術院標準部(1997、p. 229)は、臨JESとは別に航格が設けられた理由の一つに「外部に対して秘匿扱いする必要があるものもある」ことを挙げている。1945年までに660件の航格が制定された。
航格の特徴は、強制標準である点にある。航空機製造事業法第6条は、航格に適合しない航空機部品の製造または使用を禁じていた。
日本規格[編集]
昭和21年勅令第98号によって、1946年(昭和21年)2月に工業品統一調査会が廃止され、そのかわりに工業標準調査会が設けられた。旧JES、臨JESおよび航格を再検討し、これらのかわりに2,102件の日本規格(新JES)が制定された(工業技術院標準部 1997、p. 231)。旧JES、臨JESおよび航格は文語体で書かれていたが、新JESは口語体で書かれた(工業技術院標準部 1997、p. 231)。
日本工業規格[編集]
工業標準化法は、1949年(昭和24年)6月1日に制定され、7月1日から施行された。工業標準調査会は廃止され、日本工業標準調査会(JISC)が設けられた。10月31日には、最初の日本工業規格(JIS)であるJIS C 0901 電気機器の防爆構造(炭坑用)が制定された。
日本産業規格[編集]
2017年(平成29年)7月に経済産業省の産業構造審議会基準認証小委員会 第3回、日本工業標準調査会基本政策部会 第1回 合同会議は、日本の国内総生産の約70%がサービス業によるなど産業構造が変化したことを踏まえ、標準化対象のサービス業への拡大を含めた法改正の答申を行った。
翌2018年(平成30年)に第196回国会にて、工業標準化法の改正を含む「不正競争防止法等の一部を改正する法律」(平成30年5月30日法律第33号)が可決成立し、2019年(令和元年)7月1日に法律を産業標準化法に、規格名を日本産業規格 (JIS)に、日本工業標準調査会を日本産業標準調査会にそれぞれ改め、JISの標準化対象に「データ、サービス等」を追加することとなった。ただし、JISの英語名称は従来のまま変更はない。
国際規格(ISO, IEC, ITU)との関係[編集]
JISの国際規格との整合性[編集]
日本は1995年に発効した貿易の技術的障害に関する協定により、ISO及びIECに準ずることが定められている。したがって、本協定に依れば、全てのJISは前述の国際規格に準じた内容とする必要がある。
ただし、各国特有の地域性や商習慣による変更は許容される。
実際には、機械的に同時にすべてのJIS規格を国際規格に適合させることは困難であるため、規格内容の見直し等のタイミングでJIS規格の国際規格適合のための改訂が実施されている。
JISの国際規格対応の程度について[編集]
JISの国際規格への対応の程度によって、JIS規格には略号が付される。略号はJIS文書の付属書等に対応表や説明書きを参照することで把握することができる。
- IDT(Identical):一致
次の場合、国家規格は国際規格と一致する。
- a) 国家規格が、技術的内容、構成及び文言に関して一致している。
- b) 国家規格が、技術的内容及び構成に関して一致しているが、最小限の編集上の変更を含む。
- MOD(Modified):修正
- 許容される技術的差異が明記され、説明されている場合は、国家規格は、国際規格に対する修正となる。
- 国家規格は国際規格の構成を反映するが、構成を改変しても両規格の内容が容易に比較できる場合は、構成の変更が許される。修正規格も、一致規格の場合に許される変更を含んでよい。
- NEQ(Not Equivalent):同等でない
- 国家規格は、技術的内容及び構成において、国際規格と 同等でなく、変更点が明記されていない。
- 国家規格と国際規格との明確な対応が見られない。このカテゴリは、国際規格の採用に該当しない。
産業標準化法における定義[編集]
産業標準化法にいう産業標準化は、つぎの事項を「全国的に統一し、又は単純化すること」を意味し、産業標準は、そのための基準である(第2条)。この法律に基づいて主務大臣が制定する産業標準が、日本産業規格と呼ばれる(第17条第1項)。
- 鉱工業品の種類、型式、形状、寸法、構造、装備、品質、等級、成分、性能、耐久度または安全度
- 鉱工業品の生産方法、設計方法、製図方法、使用方法または原単位
- 鉱工業品の生産に関する作業方法または安全条件
- 鉱工業品の包装の種類、型式、形状、寸法、構造、性能または等級
- 鉱工業品の包装方法
- 鉱工業品に関する試験、分析、鑑定、検査、検定または測定の方法
- 鉱工業の技術に関する用語、略語、記号、符号、標準数または単位
- プログラムその他の電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)(以下単に「電磁的記録」という。)の種類、構造、品質、等級又は性能
- 電磁的記録の作成方法又は使用方法
- 電磁的記録に関する試験又は測定の方法
- 建築物その他の構築物の設計、施行方法または安全条件
- 役務(農林物資の販売その他の取扱いに係る役務を除く。以下同じ。)の種類、内容、品質又は等級
- 役務の内容又は品質に関する調査又は評価の方法
- 役務に関する用語、略語、記号、符号又は単位
- 役務の提供に必要な能力
- 事業者の経営管理の方法(日本農林規格等に関する法律第二条第二項第二号に規定する経営管理の方法を除く。)
- 前各号に掲げる事項に準ずるものとして主務省令で定める事項
- 鉱工業品には、産業標準化法第2条第1号の定義により、医薬品、農薬、化学肥料、蚕糸および農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律による農林物資を含まない。