文部科学省
文部科学省(もんぶかがくしょう、英: Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology、略称: MEXT)は、日本の行政機関のひとつ。教育、学術、スポーツ、文化および科学技術の振興、宗教事務等を所管する。日本語略称・通称は、文科省(もんかしょう)。
中央合同庁舎第7号館東館に所在している。2004年(平成16年)1月から2008年(平成20年)1月までの期間、新庁舎への建替え・移転のため丸の内の旧三菱重工ビルを「文部科学省ビル」と改称して仮庁舎としていた。
2008年の新庁舎建て替えに伴い、制定された羅針盤をモチーフにしたシンボルマークは勝井三雄のデザインである。
概説[編集]
上記の文部科学省設置法第3条に示された任務を達成するため、文部科学省は、教育、科学技術、学術、文化、および健常者スポーツ(障害者スポーツは厚生労働省の所管)の振興に関する事項をつかさどる。
2001年(平成13年)1月6日、中央省庁再編に伴い、学術・教育・学校等に関する行政機関だった旧文部省と、科学技術行政を総合的に推進する行政機関で旧総理府の外局だった旧科学技術庁とが統合されて誕生した(歴代の文部大臣、歴代の科学技術庁長官を参照)。
科学技術庁は、長官に国務大臣が充てられる大臣庁であり、府省庁の垣根を超えた横断的な行政機関として機能し、他府省庁からの出向者も多かった。また、他府省庁の各専門機関の予算調整等の役割を担うこともあった。文部科学省はそうした性格であった大臣庁と省が統合された異例の再編であった。
旧科学技術庁の調整機能は内閣府に移管されたが、原子力行政に代表されるように、特定の行政機能がこの統合・再編で各府省庁にいびつに分散、または文部科学省に集中した。分散の代表が原子力行政であるとすれば、集中の代表は独立行政法人の研究機関であると言える。
沿革[編集]
- 1871年9月2日(明治4年7月18日)- 文部省設置
- 1950年(昭和25年)8月29日 - 文部省の外局として、文化財保護委員会設置
- 1956年(昭和31年)5月19日 - 科学技術庁設置
- 1968年(昭和43年)6月15日 - 文化財保護委員会を廃止して、文部省の外局として文化庁を設置
- 2001年(平成13年)1月6日 - 中央省庁再編により文部省と科学技術庁を廃止した後、これらを統合した文部科学省を設置
- 2012年(平成24年)9月19日 - 原子力規制委員会の設置により、原子力安全に係る事務が原子力規制委員会に移管
- 2015年(平成27年)2月6日 - 文部科学大臣補佐官が置かれ、初代補佐官として鈴木寛が任命
- 2015年(平成27年)10月1日 - 文部科学省の外局としてスポーツ庁設置
- 2018年(平成30年)10月1日 - 文化庁の組織改正により、長官官房及び部が廃止され、次長2名、文化財鑑査官1名が各課(9課)の事務を分担
- 2018年(平成30年)10月16日 - 生涯学習政策局を総合教育政策局に改組、文教施設企画部を文教施設企画・防災部に改組等の組織改正実施
- 2021年(令和3年)10月1日 - 初等中等教育局及び科学技術系部局再編
所掌事務[編集]
文部科学省設置法第4条は計97号に及ぶ所掌事務をつかさどると規定している。具体的には以下に関することなどがある。
- 教育改革(第1号)
- 生涯学習(第2号)
- 地方教育行政の企画・指導(第3号)
- 地方教育費(第4号)
- 地方公務員である教育関係職員の人事行政(第5~6号)
- 初等中等教育(第7~9号)
- 教科用図書検定(第10号)
- 教科用図書の発行及び無償措置(第11号)
- 学校保健・学校安全・学校給食及び災害共済給付(第12号)
- 教員養成(第13号)
- 海外子女教育および帰国・外国人児童生徒教育(第14号)
- 大学及び高等専門学校(第15~18号)
- 大学入試・学位授与(第19号)
- 奨学・厚生補導(第20号)
- 外国人留学生(第21~22号)
- 専修学校及び各種学校(第23~24号)
- 国立大学(第25号)
- 国立高等専門学校(第26号)
- 宇宙航空研究開発機構(第27号)
- 私立学校(第28~30号)
- 私立学校教職員の共済制度(第31号)
- 社会教育(第32~33号)
- 青少年の団体宿泊施設・訓練(第34号)
- 通信教育及び視聴覚教育(第35号)
- 日本語教育(第36号)
- 家庭教育(第37号)
- 文教施設(第38・39号)
- 学校施設及び教育用品(第40・41号)
- 青少年健全育成(第42号)
- 体力の保持及び増進(第43号)
- 科学技術政策(第44号)
- 研究開発の計画(第45号)
- 学術振興(第48号)
- 研究者養成(第49号)
- 技術者養成(第50号)
- 技術士(第51号)
- 研究開発の環境整備(第52~54号)
- 研究開発の成果の普及・活用(第55号)
- 発明・実用新案(第56号)
- 科学技術知識の普及(第57号)
- 研究開発が経済社会に及ぼす影響の評価(第58号)
- 基礎研究(第59号)
- 理化学研究所(第62号)
- 放射線利用(第63号)
- 宇宙の開発及び利用(第64・65号)
- 原子力に関する科学技術・研究開発(第64・68・69号)
- 資源の総合的利用(第67号)
- 原子力損害の賠償(第70号)
- スポーツ振興(第76~80号)
- 文化振興(第81・82号)
- 劇場・音楽堂・美術館等(第83号)
- 展示会・講習会(第84号)
- 国語の改善・普及(第85号)
- 著作権の保護・利用(第86号)
- 文化財の保存・利用(第87号)
- アイヌ文化(第88号)
- 宗教法人(第89号)
- 国際文化交流(第90号)
- ユネスコ活動(第91号)
- 文化功労者(第92号)
- 教育関係者に対する管轄分野の指導助言(第93・94号)
組織[編集]
文部科学省の内部組織は一般的に、法律の文部科学省設置法、政令の文部科学省組織令および省令の文部科学省組織規則が重層的に規定している。
幹部[編集]
- 文部科学大臣(法律第2条第2項)
- 文部科学副大臣(国家行政組織法第16条)(2名)
- 文部科学大臣政務官(国家行政組織法第17条)(2名)
- 文部科学大臣補佐官(国家行政組織法第17条の2) (1名、必置ではない)
- 文部科学事務次官(国家行政組織法第18条)
- 文部科学審議官(法律第5条)(2名)
- 文部科学大臣秘書官
内部部局[編集]
- 大臣官房(政令第2条第1項)
- 人事課(政令第16条第1項)
- 総務課
- 会計課
- 政策課
- 国際課
- 文教施設企画・防災部(政令第2条第2項)
- 施設企画課(政令第16条第2項)
- 施設助成課
- 計画課
- 参事官
- 総合教育政策局
- 政策課(政令第25条)
- 調査企画課
- 教育人材政策課
- 国際教育課
- 生涯学習推進課
- 地域学習推進課
- 男女共同参画共生社会学習・安全課
- 初等中等教育局
- 初等中等教育企画課(政令第33条)
- 財務課
- 教育課程課
- 児童生徒課
- 幼児教育課
- 特別支援教育課
- 修学支援・教材課
- 教科書課
- 健康教育・食育課
- 参事官
- 高等教育局
- 高等教育企画課
- 大学教育・入試課
- 専門教育課
- 医学教育課
- 学生支援課
- 国立大学法人支援課
- 参事官(国際担当)
- 私学部(政令第2条第2項)
- 私学行政課(政令第44条第2項)
- 私学助成課
- 参事官
- 科学技術・学術政策局
- 政策課(政令第54条)
- 研究開発戦略課
- 人材政策課
- 研究環境課
- 産業連携・地域支援課
- 参事官
- 研究振興局
- 振興企画課(政令第61条)
- 基礎·基盤研究課
- 大学研究基盤整備課
- 学術研究助成課
- ライフサイエンス課
- 参事官 (2)
- 研究開発局
- 開発企画課(政令第70条)
- 地震・防災研究課
- 海洋地球課
- 環境エネルギー課
- 宇宙開発利用課
- 原子力課
- 参事官
- 国際統括官
審議会等[編集]
- 科学技術・学術審議会(法律第6条第1項)
- 国立大学法人評価委員会(国立大学法人法、法律第6条第2項)
- 中央教育審議会(政令第75条)
- 教科用図書検定調査審議会
- 大学設置・学校法人審議会
- 国立研究開発法人審議会
- 原子力損害賠償紛争審査会(原子力損害の賠償に関する法律)
施設等機関[編集]
- 国立教育政策研究所(政令第80条第1項)
- 科学技術・学術政策研究所(政令第80条第2項)
特別の機関[編集]
- 日本学士院(法律第9条第1項)
- 地震調査研究推進本部(地震防災対策特別措置法、法律第9条第2項)
- 日本ユネスコ国内委員会(ユネスコ活動に関する法律、法律第9条第2項)
地方支分部局[編集]
文部科学省は他省の「○○地方~局」に相当する、全国を分割網羅する地方支分部局を持たない。かつて、地方にある大学や地方教育委員会の施設整備に関する補助金交付事務を行う「○○地方工事事務所」が国立大学の敷地内に存在したが、国立大学の法人化に伴い廃止された。補助金交付事務は本省で行えば足り、教育行政は完全な地方分権であるため必要がないというのが理由である。元科学技術庁の機関であった水戸原子力事務所が唯一の地方支分部局であったが原子力規制委員会設置法(平成24年法律第47号)により平成25年3月31日に廃止された。
外局[編集]
- スポーツ庁(国家行政組織法、法律第13条)
- 政策課(政令第85条)
- 健康スポーツ課
- 地域スポーツ課
- 競技スポーツ課
- 参事官
- スポーツ審議会(政令第92条第1項)
- 文化庁(国家行政組織法、法律第13条)
- 政策課(政令第96条)
- 企画調整課(政令第97条)
- 文化経済・国際課(政令第98条)
- 国語課(政令第99条)
- 著作権課(政令第100条)
- 文化資源活用課(政令第101条)
- 文化財第一課(政令第102条)
- 文化財第二課(政令第103条)
- 宗務課(政令第104条)
- 参事官
- 文化審議会(法律第20条第1項)
- 宗教法人審議会(法律第20条第2項)
- 日本芸術院(法律第23条)
所管法人[編集]
- 文部科学省が主管する独立行政法人(2023年4月1日現在、計22法人)
- 国立特別支援教育総合研究所
- 大学入試センター
- 国立青少年教育振興機構
- 国立女性教育会館
- 国立科学博物館
- 物質・材料研究機構
- 防災科学技術研究所
- 量子科学技術研究開発機構
- 国立美術館
- 国立文化財機構
- 教職員支援機構
- 科学技術振興機構
- 日本学術振興会
- 理化学研究所
- 宇宙航空研究開発機構
- 日本スポーツ振興センター
- 日本芸術文化振興会
- 日本学生支援機構
- 海洋研究開発機構
- 国立高等専門学校機構
- 大学改革支援・学位授与機構
- 日本原子力研究開発機構
- 国立大学法人:全国85法人
- 大学共同利用機関法人(計4法人)
- 人間文化研究機構
- 自然科学研究機構
- 高エネルギー加速器研究機構
- 情報・システム研究機構
- 主管する特殊法人(2023年4月1日現在、計2法人)
- 日本私立学校振興・共済事業団
- 放送大学学園(総務省と共管)
特別の法律により設立される民間法人、特別の法律により設立される法人および認可法人は所管しない。
財政[編集]
2023年度(令和5年度)一般会計当初予算における文部科学所管の歳出予算は5兆2941億3824万8千円である。組織別の内訳では文部科学本省が5兆1498億504万6千円、文部科学本省所轄機関が44億9374万円、スポーツ庁が322億8694万2千円、文化庁が1075億5252万円となっている。本省予算のうち義務教育費国庫負担金が1兆5215億5300万円、国立大学法人運営費が1兆783億5305万4千円と大きな比重をしめる。本省所轄機関とは国立教育政策研究所、科学技術・学術政策研究所、日本学士院をさす。
文部科学省は、内閣府、経済産業省及び環境省とエネルギー対策特別会計を共管 する。また、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、デジタル庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び防衛省所管 の東日本大震災復興特別会計を共管する。
職員[編集]
一般職の在職者数は2022年7月1日現在、文部科学省全体で2,115人(男性1,510人、女性605人)。機関別内訳は本省が1,724人(男性1,232人、女性492人)、文化庁282人(男性199人、女性83人)、スポーツ庁109人(男性79人、女性30人)となっている。
行政機関職員定員令に定められた文部科学省の定員は特別職1人を含めて2,162人(2023年9月30日までは、2,178人)。本省および各外局別の定員は省令の文部科学省定員規則により、本省1,752人(2023年9月30日までは、1,768人)、スポーツ庁110人、文化庁300人となっている。
2023年度一般会計予算における予算定員は特別職7人、一般職2,141人の計2,148人である。機関別内訳は特別職7人は、すべて本省であり、一般職は本省が1,546人、文部科学本省所轄機関185人、スポーツ庁110人、文化庁300人となっている。他に東日本大震災復興特別会計において本省に20人の予算定員がある。
文部科学省職員は一般職の国家公務員なので、労働基本権のうち、争議権と団体協約締結権は国家公務員法により認められていない。団結権は認められており、職員は労働組合として国公法の規定する「職員団体」を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる(国公法第108条の2第3項)。2022年3月31日現在、人事院に登録された職員団体は存在しない。2005年度以降、組織率が数パーセントの状況が続き、2011年度にはついに0%となった。かつては国公労連加盟の文部省職員労働組合が活動していたが、2011年3月31日をもって解散した。
広報[編集]
文部科学省が編集する白書には「文部科学白書」及び「科学技術白書」があり、後者は科学技術基本法の規定により、政府が毎年国会に提出する「政府が科学技術の振興に関して講じた施策に関する報告書」(年次報告書、同法第8条)を収録している。
文部科学省が発行または編集する広報誌としては、本省の『文部科学広報』(月刊)、文化庁の『月刊文化財』、日本学士院の『日本学士院ニュースレター - 明六社だより』(年2回刊)、地震調査研究推進本部の『地震本部ニュース』(月刊)、などがある。『月刊文化財』の発行主体は第一法規株式会社で、文化庁は監修に携わっている。かつては、ぎょうせい発行の『文部科学時報』(月刊)があったが、2012年3月10日号をもって終刊となった。文化庁の『文化庁月報』(月刊)も2014年3月号をもって終刊となり、不定期のウェブ広報誌『ぶんかる』として発刊している。