文学フリマ
文学フリマ(ぶんがくフリマ)は、文学作品展示即売会。
出店者が自ら作った作品を自ら手売りするフリーマーケット形式のイベントである。
全国各地で開催されており、開催当日は出店者自身が制作した小説、詩、短歌、俳句、批評、ノンフィクション、エッセイ、絵本、紙芝居のほか、写真集、ZINE、漫画など幅広いジャンルの作品が出品される。
概要[編集]
文学フリマ開催当日は出店者にブース (販売用のスペース) が貸し出され、出店者自らの手で開催時間中に自由に販売・配布が行われる。読者は出店者のブースに直接訪問し、作品を購入できる。
販売・配布可能な作品としては「『自らが〈文学〉と信じるもの』であれば、形態・内容・価格を問わず、自由に販売・配布」できるものとされており、幅広い作品の販売が認められている。出店資格は個人・団体(サークル)・法人を問わず幅広く認められている。ただし出店受付期間内に所定の手続きを行い出店料の払い込み等を済ませる必要がある。
開催都市は2023年現在、札幌・岩手・東京・京都・大阪・広島・福岡の7都市で、年8回開催している(東京開催は年2回)。2024年より香川でも開催が始まり、年9回開催となる。
基本的に全国の文学フリマ共通で、一般参加者の入場は無料であったが、経費増と入場者数の増加等の理由により、東京開催に限っては2024年5月開催の文芸フリマ東京38から一般参加者の入場も有料化される予定となっている。
運営体制[編集]
各地域ごとに、地元在住のボランティアからなる事務局が任意団体として設立され、イベントの開催・運営を担当している。主催業務はこの地域ごとに事務局が担当している。全国組織の運営・システム運用など、文学フリマで共通するインフラの整備は一般社団法人文学フリマ事務局が担当し、全国組織と地域別組織の分業が図られている。
特徴[編集]
出店者[編集]
プロ・アマチュアを問わず、個人・グループ・法人問わず、多くの出店が行われる。大学の公認サークルや、短歌や俳句の結社などの既成の団体のみならず、文学フリマへの出店を目的として結成された団体も出店している。
出店数の最多は文学フリマ東京36の約1435出店。出店数の増加によって落選が出ることもあり、会場の規模を拡大して配慮している。
出店カテゴリの傾向は開催地・開催回により様相が異なり、地域ごとの特徴が色濃く表れる。そのため在住地から遠く離れた地域に出店する出店者も多い。
作品[編集]
コピー機や家庭用のインクジェットプリンターで印刷されホチキスで製本された簡易的な冊子や、個人向けの印刷会社で印刷・製本された冊子を販売する出店者が多い。形式を問わず『自らが〈文学〉と信じるもの』の販売が広く認められているため、1ページのみの作品や、電子書籍・Tシャツ・CDの販売をする出店者も見られる。
文学フリマでの販売を目的に制作された作品が多く、それらは50部程度のごく限られた部数のみが出品される。開催当日のみで売り切れとなることも多い。
文学作品展示即売会であることから、文章で構成された作品が多いが、イラストを含むもの、漫画や写真を主とするものなど多様性が見られる。様式を問わず、出品される作品は出店者自身が「『文学』と信じるもの」であることが条件とされている。
価格の設定は出店者が自分自身で行う。営利・非営利いずれの出店目的も認められているため、価格設定にも出店者ごとに多様さが見られる。
同人誌即売会との類似点[編集]
文学フリマは「文学」の存続に対する危機意識から、「文学の生き残りのための場」、「開かれた《文学》のための場」として、コミックマーケットを参考として開催が始まった、という特徴的な経緯を持つ。そのため次に述べる細部の点で、コミックマーケットをはじめとした多くの同人誌即売会との類似する点がある。
- 出店時には事前に申し込みをする必要がある。
- 出店者自身が販売することを原則とし、イベント主催者は原則として販売に関与しない。
一方で、異なる点も多数ある。
- 一般の文学愛好者の参加を広く促すため、「サークル参加」「一般参加」「頒布」「スペース」などの同人誌即売会固有の用語を「出店」「来場」「販売」「ブース」などの平易な言葉に改めている。
- 個人やサークルのみならず、法人(営利団体)の出店を認めている。
- 商業出版物の販売も認められている。(ただし、作者・編集者など作り手自身が販売する場合に限る)
- 形式を「本」に限定せず、TシャツやDVD等の販売も認めている。
出身作家[編集]
プロ作家としてのデビュー前に文学フリマで出店を経験している作家は次の通り。
- こだま
- 爪切男
- 乗代雄介
- 小林エリコ
- 菊池良
- 並木陽
- 世津路章
- 高瀬隼子
- 僕のマリ
主な出来事[編集]
文学フリマはプロ・アマを問わず「文学」の書き手の出店を募っており、初回から商業誌に作品を発表している作家も参加している。
- 第1回東京(2002年) - 佐藤友哉と西尾維新が小説を書き、講談社の編集者太田克史が寄稿し、舞城王太郎が挿絵を付けたコピー誌『タンデムローターの方法論』が販売された。また、大塚英志は『文學界』(文藝春秋)に掲載拒否された石原慎太郎論を手書き原稿で販売した。
- 第4回東京(2005年) - 桜坂洋と桜庭一樹が合作した小説『桜色ハミングディスタンス』が販売された。
- 第5回東京(2006年) - 文学フリマ運営事務局による初の出版物「文学フリマ五周年記念文集」が販売された。
- 第7回東京(2008年) - 講談社BOXが主催する「東浩紀のゼロアカ道場」第4回関門の実施会場となり、同企画に参加していた8チーム16名が批評の同人誌を販売した。
- 第9回東京(2009年) - 併催イベントとして片渕須直や奥泉光を迎えたトークイベントが実施された。
- 第10回東京(2010年) - 講談社BOXが主催する「『西島大介のきらめき☆マンガ学校』二学期・公開講義」が実施された。
- 第13回東京(2011年) - 文学フリマ事務局編集の「これからの『文学フリマ』の話をしよう 〜文学フリマ十周年記念文集〜」が刊行された。後に芥川賞を受賞する又吉直樹(ピース)が一般参加した。
- 第2回大阪(2014年) - 株式会社はてなが後援。汀こるものが出店した。
- 第30回東京(2020年) - COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の国内での拡大状況・行政の発表等を鑑みて中止となった。