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役員 (会社)

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役員(やくいん)とは、会社の業務執行や監督を行う幹部職員のことをいう。いわゆる経営者・上位管理職。

日本の会社の役員[編集]

日本の雇用者 (総務省統計局、2019年度労働力調査)
雇用形態 万人
役員 335
期間の定めのない労働契約 3,728
1年以上の有期契約 451
1か月~1年未満の有期契約(臨時雇) 763
1か月未満の有期契約(日雇い) 15
期間がわからない 239
  • 以下、条名のみ記す場合、会社法(平成17年7月26日法第86号)の条文を指す。

法律上の定義[編集]

日本の会社法における「役員」は、取締役・会計参与・監査役を指す(329条)。

会社法施行規則では、役員に加えて、執行役・理事・監事などを含めている。一般的には、それよりも広く執行役員までを含めて解釈されることが多いが、これらは会社法の役員ではない

なお、会社法で「役員等」という場合は、取締役・会計参与・監査役に加えて、執行役・会計監査人を含む(423条)。またこれらの役員等は会社法において会社の機関であることに留意されたい。

また役員は、経営者であり従業員ではない。従って従業員から役員に昇格する際には、一旦、会社を退職する。退職金のある会社では、退職金を受け取ることになる。即ち、従業員としての身分は一切失われる。例えば、会長や副社長、専務や常務、執行役や執行役員であっても、これらの役職にあっても、「取締役」「会計参与」「監査役」でなければ、それは役員ではない。

日本の独占禁止法における役員とは、理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の事業の主任者をいう(独占禁止法第2条第3項)。 企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針では、独占禁止法の「本店若しくは支店の事業の主任者」とは、会社法で支配人と同じ権限を有するとみなされる会社の使用人(例えば、本店総支配人、支店長、営業本部長)等をいう。また、「これらに準ずる者」とは、取締役、監査役等に当たらないが、相談役、顧問、参与等の名称で、事実上役員会に出席するなど会社の経営に実際に参画している者をいう。なお、部長、課長、係長、主任等の名称のみを有する者は、従業員であって役員では無い。

法律上の社員との関係[編集]

役員は、会社の実質的所有者である社員(株主)とは必ずしも一致しない。法律上の「社員」とは、株主を指し従業員を指さない。会社法では、株式会社の所有者である株主と、会社の経営者が異なる事を原則としており、これを「所有と経営の分離」という。これは、広く資本を集めるために、株主には出資額での有限責任のみを求め、経営は経営能力のある人に委任できるようにするためである。この意味からは、役員とは取締役・会計参与・監査役の3つのみを指す

特に株式が自由に譲渡できる公開会社である株式会社においては、取締役の資格を定款で株主に限定することができない(331条2項)。ただし、株式が自由に譲渡できない非公開会社の場合や、公開会社であっても所有者と経営者が結果的に一致することまで妨げるものではなく、現状としてほとんどの株式会社では所有者と経営者が同一の場合が大多数である。

会社との法律関係[編集]

会社との契約関係は、従業員が会社とは雇用契約を締結するのに対して、役員は会社とは委任・準委任契約としての性質を持つ任用契約を締結する。

役員は、一般的には、労働基準法上の労働者には該当しない。同法第9条の「使用される」とは、会社や上司の指揮監督の下での労働のことをいうのに対して、以下に挙げるように、役員の業務は、いずれも上司の指揮監督の下の労働にはあたらないためである。

  • 取締役は、業務を執行する(会社法第348条、第363条)
  • 取締役会設置会社の取締役は、取締役会の構成員として取締役の職務の執行を監督する(会社法第362条)
  • 監査役は、取締役の職務の執行を監査する(会社法第381条)

そのため、役員は、労災保険の適用を受けず、雇用保険の被保険者ともならない。

ただし、取締役であっても、業務執行権や代表権を持たない者が、工場長、部長等の地位を兼ねて、(社長等の)指揮命令の下に労働に従事し、労働の対価として賃金の支払を受ける場合、その限りにおいては、労働基準法上の労働者となる(昭23.3.17基発第461号)。このような場合、工場長、部長等の地位においては、労災保険の適用を受ける。

また、使用者たる地位における賃金の額が役員たる地位における報酬の額を上回り、就業規則等の適用が一般の労働者と同様に適用されている者については、雇用保険の被保険者となる。

法律にない役職との関係[編集]

会社法では、役員は取締役、監査役、会計参与の3つに限られる。良く誤解される執行役は、役員等として規定され役員とは区別される。

一方で、一般に使われる社長、専務及び常務などの役職は法律上規定されているものではなく、法律上は定義がない(#会社法に規定のない内部的職制を参照)。しかし、社長・専務等の呼び方は、世間一般的に常勤役員であることを指すものである。社長と呼称する者は代表権があるものと推定させたり(表見代理)、専務や常務等の呼び方は序列を意識させたりするものであるため、代表権の無いものを社長と称したり、専務と常務の序列を入れ替えて称したりすることは、会社の統制上は避けるべき行為といえる。なお、中小企業において、会長とは、一線を退いた創業者や前社長を指す場合が多く、代表権が無い場合があるため注意すべきである。

「#会社法に規定のない内部的職制」節も参照。

なお、会社法に規定のある役員・役員等の名称と会社法に規定のない内部的職制の名称を並べて役職を表現することがある。例えば代表取締役であって社長である者は「代表取締役社長」などと表現される。

  • 役員に関する規定
    • 選任及び解任の株主総会の決議(341条) - 役員選任のための決議
    • 役員等の第三者に対する損害賠償責任(429条)

会社法に規定のある役員・役員等[編集]

大前提として、旧商法が大陸法を基本として成立し、改正商法・会社法が英米法概念に相当接近した事により役員の範囲・責任が大幅に変化している。

取締役[編集]

会社の組織をどのようにするかで権限が異なるため、会社法における取締役の一義的な定義は困難である。

会社法の原則形態である取締役会非設置会社においては、取締役とは会社において内部的な業務執行を行うとともに、対外的に会社を代表する必要的常設機関である(348条・349条)。この場合、取締役は1人以上でよい。

これに対して、取締役会設置会社においては、取締役は取締役会の構成員である。この場合、取締役は3人以上でなければならない(331条4項)。

会社法の規定によるものではないが、社長や専務などの内部的職制を有する取締役を役付取締役、そうではない取締役を平取締役と呼ぶことがある。

代表取締役[編集]

代表取締役は、取締役会設置会社と任意に代表取締役設置を決めた取締役会非設置会社において、内部的な業務執行を行うとともに、対外的に会社を代表する機関である(349条・363条)。

取締役会設置会社においては、設置が義務づけられている必要的常設機関である。一方、取締役会非設置会社においては、原則として各取締役が会社の代表権を有している(会社法349条1項・2項)ため、代表取締役は定款に定めることで任意に設置できる(会社法349条3項)。また、委員会設置会社においては、取締役には業務執行権がなく(415条)、代表権は代表執行役が有するため、代表取締役は設置できない。

代表取締役の人数については、1人と誤解されていることがあるが、法律上は人数に制限が無く、2人以上を選定した場合は各代表取締役が会社を代表する。

社外取締役[編集]

社外取締役とは、株式会社の取締役であって、当該株式会社又は子会社の業務執行取締役・執行役・支配人その他の使用人ではなく、かつ、過去に当該株式会社又は子会社の業務執行取締役・執行役・支配人その他の使用人となったことがない者のことである(会社法2条15号)。

社外の者が取締役会の構成員になることで、会社の業務執行の適正さを保持させる趣旨である。しかし、この定義に当たれば社外取締役なので、業務執行をしていなければ就任から何年経っても社外取締役であるし、親会社の役員も子会社の社外取締役になりうる。

委員会設置会社においては、社外取締役が必ずいなければならず、各委員会の過半数が社外取締役でなければならない(400条3項)。

執行役[編集]

会社法では役員等(「等」が付く)であり、「取締役」でない者は会社法の役員ではない。執行役は、委員会設置会社の業務執行をおこなう機関である(418条)。執行役員とは異なる

委員会設置会社においては、業務の意思決定と執行が分離される。前者は取締役会が、後者は執行役が担当する。この場合、取締役には業務の執行権限はないが、取締役と執行役を兼任することは可能である。

代表執行役[編集]

執行役の一種であり、会社法では役員等(「等」が付く)であり、「取締役」でない者は会社法の役員ではない。代表執行役は、委員会設置会社において会社を代表する権限を有する執行役である(420条)。取締役会の構成員ではない点を除いて、委員会設置会社以外の取締役会設置会社における代表取締役に相当する。1人の場合もあるが、1人とは限らない。

監査役[編集]

監査役は、取締役の業務執行を監査する会社の機関である(381条)。委員会設置会社を除く取締役会設置会社と、取締役会非設置会社のうち会計監査人設置会社には設置が義務づけられる(327条)。監査役を設置している会社のうち、監査役に業務監査権を認めている会社を監査役設置会社という(会計監査しかできない監査役が設置されていても、会社法上は監査役設置会社ではない)。また、監査役で構成される監査役会を設置することもできる。監査役会設置会社では、監査役は3人以上で、その半数以上は社外監査役でなければならない(335条3項)。

社外監査役[編集]

社外監査役とは、株式会社の監査役であって、当該株式会社又は子会社の取締役・会計参与・支配人その他の使用人となったことがない者のことである(2条16号)。監査役会設置会社で義務付けられている。

会計参与[編集]

会計参与は、取締役または執行役と共同して、計算書類等を作成する会社の任意的機関である(374条)。公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人でなければ会計参与にはなれない(333条1項)。会社法においてはじめて設けられた新しい制度である。

会社法に規定のない内部的職制[編集]

法律に規定のない名称は会社が自由に付けられるので、必ずしも一義的な定義があるわけではない。会社によって使われ方がまちまちである。以下では、比較的多い使われ方の説明をする。下記の役職のほか、最近は欧米企業で用いられているチーフ・オフィサー(最高責任者)の名称を使用している企業も多く見られる。

会長[編集]

この役職や呼称であっても、「監査役」「取締役」でない者は、会社法の役員ではない。会長とは、日本の会社においては一般に社長より上位の役職であり、社長を退いた前社長が就く肩書として用いられる。また、複数の企業を傘下に置くグループ全体の長であることを示すために会長を使用する例も多い。この場合、グループ各社の持株会社であるホールディングス企業の代表取締役を兼任することもある。

会長が会社全体の戦略を指揮し(CEO)、社長が日常の業務執行を指揮する(COO)といった分担をすることもあり、その場合は会長が事実上の最高責任者である。

ただし、「会長」という役職について会社法では特段定義付けされておらず、その地位の上下、権限や責任の軽重などは個々の会社の任意である。これは、以下に記載する専務・常務、執行役員など会社法に定義が明記されない全ての肩書に当てはまる。取締役を兼任すること、またはしないこと、代表取締役であること、そうでないことも、いずれもまた任意である。(前述のCEO/COOも、会長/社長でなく社長/副社長であっても良い)

相談役的な位置付けであることもあれば、いわゆる「院政」を敷くために便宜上用いられることもある。かたや、実質的な権限は取り上げた上で会長という肩書をもって形式上祭り上げておく名誉職の場合もあり、その位置付けは個々の会社によって様々である。

大企業の場合は、たとえ第一線から退いた場合であっても大きな影響力を持ち敬意をもって遇されることも少なくないが、一方で街の中小企業でも用いられることの多い肩書である。(オーナー企業における引退した前社長等)

なお、「会長」が取締役会の会長である旨の記述も散見されるが、これは誤りである。取締役会には「議長」を設ける事は出来ても「会長」は存在しない。取締役会の決議はあくまでも出席取締役の過半数(もしくは定款で定めた割合)で決まるものであり、議決権という意味では各取締役は同列であり法的に地位の優越はない。

トヨタ自動車のように、会社によっては会長の下に「副会長」というポストが置かれ、副会長も代表取締役であるケースもある。

議長[編集]

取締役会の議長は社長あるいは会長が行うことが一般的だが、コニカミノルタのように社長・会長とは別に「取締役会議長」を置いて監督と執行の分離を図ったり、日立製作所や東芝などのように、社外取締役を「取締役会議長」として取締役会の議事進行権を与え、取締役会の改革を図っているケースもある。

社長[編集]

この役職や呼称であっても、「取締役」でない者は、会社法の役員ではない。社長は、文字通り、会社の長である。銀行では、頭取と呼ぶところが多い。 社長は、通常は代表権を有する取締役(代表取締役)または執行役(代表執行役)である。ただし、あくまで会社内部の名称であるから、取締役(代表取締役)や執行役(代表執行役)である必要は法律上はない。また、取締役や執行役であっても代表権がある(代表取締役、代表執行役)とは限らない。ただし、代表権がなくても表見代表取締役(354条)、または表見代表執行役(421条)として、取引相手から会社の責任が問われる場合がある。 なお、取締役会設置会社の業務執行を取締役でも執行役でもない社長に委任する場合、会社の重要な使用人(第362条)として、取締役会が社長の選任及び解任を行う。ただし、委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、選任及び解任を執行役に委任することができる(第416条)。

取締役でも執行役でもない社長に、ライブドア社の平松庚三執行役員社長(当時)の例がある。これは、ライブドア事件に関与したとして主だった取締役が退任した結果、社長たる人材が取締役から居なくなってしまったため、2006年1月24日に執行役員のまま社長に就任したことによる。あくまでも暫定的な措置であり、同年6月14日の株主総会で取締役に選任されている。

また、社内に社長等、会社の長を名乗る人がいない状態である社長なしの会社であっても問題はないが、事実上のリーダーを制定するために、代表取締役または他の役員等から社長を選任するのが一般である。

副社長[編集]

この役職や呼称であっても、「取締役」でない者は、会社法の役員ではない。社長に準じる地位。1人とは限らず、大規模な企業では2人以上を置く場合もある一方、小規模な企業では置かないことが多い。 副社長は、通常は取締役(代表取締役)や執行役(代表執行役)である。ただし、あくまで会社内部の名称であるから、取締役(代表取締役)や執行役(代表執行役)である必要は法律上はない。また、取締役や執行役であっても代表権がある(代表取締役、代表執行役)とは限らない。ただし、代表権がなくても表見代表取締役(354条)、または表見代表執行役(421条)として、取引相手から会社の責任が問われる場合がある。 なお、取締役会設置会社の業務執行を取締役でも執行役でもない副社長に委任する場合、会社の重要な使用人(第362条)として、取締役会が副社長の選任及び解任を行う。ただし、委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、選任及び解任を執行役に委任することができる。(第416条) なお、アメリカ流のバイス・プレジデントは、直訳すると副社長であるが、日本語の副社長よりもかなり低い地位の場合が多い。

専務、常務、執行役、執行役員[編集]

これらの役職や呼称があっても、「取締役」でない者は、会社法の役員ではない。会社の業務全般の管理を担当し、社長を補佐する役員。代表権がある(代表取締役、代表執行役)とは限らない。なお、会社法の施行前の旧商法では代表権がなくても表見代表取締役(旧商法262条)として、取引相手から会社の責任が問われる場合もあったが、会社法では明文から「専務」の文言は外されたため(354条)、代表権のない取締役に専務取締役の名称を付したとしても会社の責任は問われなくなったと言える。 なお、取締役会設置会社の業務執行を取締役でも執行役でもない専務執行役員に委任する場合、会社の重要な使用人(第362条)として、取締役会が専務執行役員の選任及び解任を行う。ただし、委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、選任及び解任を執行役に委任することができる。(第416条) 常務との関係は、本来は担当職務の違いに過ぎないが、一般には常務よりも専務の方が上位として扱われる場合が多い。

執行役員[編集]

この役職や呼称があっても、「取締役」でない者は、会社法の役員ではない。会社の業務執行を行う重要な使用人の役職。会社法の執行役とは異なるので注意。取締役である者にも付けること(例・代表取締役兼執行役員社長)もある。取締役でない執行役員(専務執行役員、常務執行役員なども含む)は会社法上の役員にはあたらない。制度開始当時に多く見られた、近年では、準役員的な上級管理職としての執行役員だけでなく、専務執行役員、常務執行役員など、一部取締役の上位に立つような例も増えている。

取締役会設置会社の業務執行を取締役でも執行役でもない執行役員に委任する場合、会社の重要な使用人(第362条)として、取締役会が執行役員の選任及び解任を行う。ただし、委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、選任及び解任を執行役に委任することができる(第416条)。

近年は、取締役会の意思決定を迅速化するためと取締役の過大な責任を避けるため、取締役の数を絞る傾向がある。そのため、取締役ではない役員待遇の幹部従業員にこのような地位を与える。日本ではソニーが初めて執行役員制度を導入した。取締役への就任は株主総会の承認が必要だが、執行役員の任用は株主総会の承認は必要ない。ソニーの動きに追従して、多くの企業が執行役員制度を導入したが、本質的な改革になっていないという声がある。また、パナソニックなどでは、取締役とは別に「役員」という呼称を使用、専務役員、常務役員などの上級職も設けられており、他社の執行役員に相当する。これも会社法上の役員にはあたらない。

2005年2月に、執行役員として勤務していて過労死した男性について、東京地裁は2011年5月に、「実質的に労働者にあたる」として、労災の不認定を取り消す決定をした。

相談役・顧問[編集]

これらの役職や呼称があっても、「監査役」または「取締役」でない者は、会社法の役員ではない。相談役と顧問は、会社に助言を行う役職である。相談役は、法律上の役員であるケースと役員ではないケースがあり、顧問は役員ではないことが通常であるが、先の経営中枢が「院政」を敷く場合もあり、各企業の内情・実勢を見ないと判断できないものである。

相談役は、社長や会長などが経営の第一線を退いた後に就く名誉職的な側面が強く、いわゆる「大所高所からの助言」が求められることが多い一方、必要に応じて経営上または企業の運営上の重大な問題に関して大胆な助言を求められたり、社内が割れるような紛議があった際にはその調停にあたったりもする。

相談役の法律上の位置付けは個々の会社によって異なり、法律上の役員を兼ねる取締役相談役、代表取締役相談役もある一方、相談役が取締役ではないケースもある。

顧問は、社外の専門家に顧問を委嘱し顧問契約を締結するケースの他に、外部から招聘されて近々取締役に選任される予定の者が、次期株主総会までの間の短期間だけ就く一時的・便宜的な役職の場合もあれば、大企業同士の合併などによって新企業では経営の実務から閉め出されてしまった旧企業の元専務取締役などを、新企業の取締役を兼ねた「常任顧問」として処遇するための半恒久的な役職の場合もある。いずれの場合も、顧問はその者本人の専門知識や社内経験にもとづいた実務的で日常的助言が求められることが多い。

また創業者や企業の発展に多大な功績のあった特別な社長や会長などは、経営の第一線を退いた後もしばらくの間は取締役を兼ねた「最高顧問」として処遇される場合がある。しかしいかに「最高」でも「顧問」であることに変わりはなく、最高顧問が新経営陣の企業経営に積極的に介入することは稀である。最高顧問の設置は多くの場合、伝説的な旧経営者を引き継いだ比較的無名の新経営者が、株主や取引先に要らぬ不安を与えないように当面の間だけ担いでおく御輿的な側面が強い。任期を満了した最高顧問が今度は相談役に横滑りという例がよく見られるのはこのためである。

なお、顧問と取締役は法的な責任および権限が異なるため、顧問は取締役ではないことが一般的であるが、取締役に顧問の役職名を付与するケースや「代表取締役顧問」も中にはある。取締役でない場合、顧問は会社経営に関して法的な責任と権限は無いが、顧問が取締役である場合は、取締役としての法的な義務および責任が課せられる。

取締役ではない相談役や顧問と企業との関係は、顧問契約を締結する場合や、会社との間に雇用関係が存在し法律上は会社の「従業員」である場合の他に、顧問が会社から報酬を得ない場合には単に名前だけの顧問のケースもある。 こうした曖昧な制度がコンプライアンス違反に繋がる事例もしばしば見受けられる。 本来のルールからは意思決定に関与しないはずのOB・大御所からの指示により、企業の方向性に影響を与える場合があるからである。

東芝は2015年に発覚した長年にわたる粉飾決算などの不正会計問題の指摘を受けて、相談役制度を廃止することを検討。これにより同社元社長・会長でもある西室泰三も2016年内に退任することになった。東芝は当時2人の相談役のほかに、2人の特別顧問、2人の常任顧問、14人の顧問を抱えており、会計不祥事に関連して経営体制に対して社会的な批判を浴びた。

2017年、上場企業の株主総会で顧問・相談役の廃止を求める株主提案が見られたほか、自発的にポストの廃止に向けて検討を始める企業も現れた。また、日本政府は2018年初頭を目途に、相談役や顧問が就任する際には業務内容などを開示するよう義務付けることを検討している。

みなし役員[編集]

みなし役員は、会社法における役員として登記されていないものの、法人税法においては役員として扱われる者をいう。みなし役員に該当すると、役員報酬や賞与などにおいて税制上の縛りを受ける。



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