小林よしのり
小林 よしのり(こばやし よしのり、本名:小林 善範(読み同じ)中国語: 小林善紀、1953年〈昭和28年〉8月31日 - )は、日本の漫画家・評論家。「よしりん企画」社長、「ゴー宣道場」主宰者、「大東亜青年塾」名誉塾長。血液型O型。
概要[編集]
福岡県筑紫郡大野町(現・大野城市)生まれ、福岡県福岡市出身。福岡大学人文学部フランス語学科卒業。1976年に『ああ勉強一直線』を投稿しデビュー。『東大一直線』『おぼっちゃまくん』などのヒット作を持つ。令和初期に『おぼっちゃまくん』が人気アニメとしてテレビ放送されているインドでも知名度が高い。1992年の『ゴーマニズム宣言』以降、ギャグ路線だけでなく政治思想路線や時事ネタなどの社会評論的な活動も行うようになり、また2002年から季刊誌『わしズム』責任編集長なども務める。設定の矛盾をものともしない展開と飛びぬけた発想を身上としている。これは「細かい設定にこだわっていると、結果として内容がつまらなくなる」との作者の考えのためであり、より良い設定を思いつけば、あえて過去の設定は切り捨てるという。
略歴[編集]
出生 (小林家)[編集]
1953年(昭和28年)に母方の寺院で二人兄妹の長男として生まれる。男系家系の小林家の父親は1927年(昭和2年)生まれ。祖先は土佐勤王党を弾圧した土佐藩士の小林伝七から続き、父は元日本兵で、昭和20年に赤紙によって徴兵されて沖縄県(沖縄戦)に行く予定であったが間に合わず、宮崎県で本土決戦に備えていた。小林の父は昭和20年代に復員した後に公務員(郵便局職員)として就職した。労働組合に加入して戦後期にマルクス主義者になっていた。戦後において父は昭和天皇のものまねを皇室冗談として好んでしていた。戦後の郵便局人間であり真面目な貯金主義の人物であった。
「母親は終戦当時12歳であった」との内容を本で記載していることから、母親は1932年(昭和7年)の8月16日 - 1933年(昭和8年)8月15日の間に生まれた昭和一桁世代の女性と推測される、真言宗(密教思想)寺院の娘。母方の曾祖父は明治時代の日清戦争及び日露戦争に従軍した近衛兵だった。理想主義の共産主義を支持する父親と現実主義の仏教を支持する母親の思想対立があった。1950年代以降に生まれたしらけ世代の人物であるが、同じ世代の人物と違う特異な人物と自覚している。1990年代の平成初期に日本の差別問題を描いた本の『ゴーマニズム宣言 差別論スペシャル』の題材となった被差別部落民への部落差別問題を福岡の地域社会の中で見て育った。昭和戦後期に周囲で発言していた大人(左翼による戦前の大日本帝国の先祖や国防や愛国心への批判)や文化人を見て育った小林は、その周囲の異常な感覚に日ごろから違和感を持った。30歳頃には戦後の日本社会に違和感を持つ若手の漫画家となっていた。小林は戦後思想に真っ向から逆らう思想家として、団塊の世代とは異なる思想を持っている。『逆噴射家族』のアイドル歌手と女子プロレスラー両方志望の少女は、自身の妹がモデルである。
漫画の内容で「自分が30代になって愛する者が手術室に入っていった」「妻が婦人科系の病気で子供を出産できない身体になった」と語っており、小林には子供が一人もいない。また、小林の妻は小林と他の女性との交遊には寛容である。ただし、子供がいない要因としては、妻の不妊症以外に金銭の都合上もある。
連載作品[編集]
- 東大一直線(週刊少年ジャンプ、1976年28号-1979年46号)
- 東大快進撃(週刊ヤングジャンプ、1980年7号-1981年25号)
- 救世主ラッキョウ(月刊少年ジャンプ、1978年4月号-1979年8月号)
- 世紀末研究所(週刊ヤングジャンプ、1979年創刊号-1980年4月号)
- 格闘お遊戯(月刊少年ジャンプ、1979年9月号-1981年3月号)
- ジューシィガンコ(月刊少年ジャンプ、1981年4月号-7月号)
- (誅)天罰研究会(週刊ヤングジャンプ、1981年37号-1982年3・4合併号)
- 風雲わなげ野郎(週刊少年キング、1982年13号-22号)
- 異能戦士(週刊少年マガジン、1982年37号・1983年52号・1984年3・4合併号-33号)
- タコちゃん ザ・グレート(月刊ジャストコミック、1983年1月号-1984年5月号)
- メンぱっちん(週刊少年マガジン、1983年6号-35号)
- 角栄生きる(コミック・ノストラダムス、1983年10月号-1985年10月号)
- ときめきの蛮人(月刊コミック・バンバン、1983年)
- 青年ジェット(月刊コミック・バンバン、1984年1月30日号-6月30日号)
- おーっと、フル・タッチ!(月刊ジャストコミック、1984年5月号-12月号) - 作:古舘伊知郎、画:第一部のみ小林、第二部は国友やすゆき
- いろはにほう作(週刊少年チャンピオン、1984年36号-1986年24号)
- おぼっちゃまくん(月刊コロコロコミック、1986年5月号-1994年9月号)
- タコちゃん ザ・グレーテスト(月刊少年チャンピオン、1986年9月号-1987年5月号)
- ろまんちっく牛之介(週刊少年チャンピオン、1986年28号-1987年1・2合併号)
- 忠牛ばっふぁ郎(週刊少年チャンピオン、1987年20号-49号)
- 突撃!!(偏)(へんさち)BOYS(週刊ヤングジャンプ、1987年52号-1988年)
- 厳格に訊け!(週刊ヤングサンデー、1988年10号-1989年18号)
- おこっちゃまくん(月刊宝島、1989年2月号-1991年7月24日号)
- おこっちゃまくん(月刊コロコロコミック、1991年10月号-1994年5月号)
- 最終フェイス(週刊ヤングサンデー、1989年23号-1991年8号)
- どとーの愛(隔週刊スーパージャンプ、1992年4号-18号)
- ゴーマニズム宣言(週刊SPA!、1992年1月22日号-1995年8月2日号)
- 新・ゴーマニズム宣言(SAPIO、1995年9月27日号-2007年)
- ゴーマニズム外伝(月刊Views、1996年1月号-4月号・7月号)
- ゴー宣・暫(2007年- )
- 世論という悪夢(わしズム2006年冬号-2009年冬号連載のコラム「天籟」と描き下ろしを収録、本の帯・そでに活字版ゴーマニズム宣言と記載されている)
- ゴーマニズム宣言PREMIUM 修身論(過去のゴーマニズム宣言シリーズの単行本よりテーマに合わせて抜き出し、加筆訂正のうえ転載したもの)
- ゴーマニズム宣言NEO
- ゴーマニズム宣言EXTRA
- ゴーマニズム宣言 2nd Season(週刊SPA!、2018年4月-)
- いなか王兆作(月刊コロコロコミック、1992年4月号・8月号-1993年1月号)
- よしりんぞーん(週刊少年サンデー、1993年7号・12号・17号)
- ザ・カリスマンガ 聖人列伝(月刊PANjA、1994年7月号-1995年2月号)
- ザ・よしりん仮面(週刊金曜日、1995年4月7日号-4月28日号)
- 私たち普通の日本人(週刊ヤングマガジン、1995年38号・41号-43号・46号-1996年6号) - 隔週連載
- よしりん昔話(月刊宝島30、1996年4月号-5月号)
- 次元冒険記(週刊ヤングマガジン、1996年16号-38号) - 隔週連載
- 夫婦の絆(わしズム、2002年-現在中断中)
- 遅咲きじじい(ビッグコミック、2006年-2008年)
- 卑怯者の島
- よしりん辻説法(FLASH)
- 新・おぼっちゃまくん(小説幻冬、2018年-2020年)
読み切り・描き下ろし[編集]
- ザ・樹海
- ゴーマニズム宣言 差別論スペシャル
- 新・ゴーマニズム宣言スペシャル脱正義論
- 新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論
- 新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 「個と公」論
- 新ゴーマニズム宣言スペシャル・台湾論
- 新ゴーマニズム宣言スペシャル・沖縄論
- 新ゴーマニズム宣言スペシャル・靖国論
- 目の玉日記
- ゴーマニズム宣言スペシャル・パール真論
- ゴーマニズム宣言SPECIAL よしりん戦記
- ゴーマニズム宣言スペシャル・天皇論
- ゴーマニズム宣言スペシャル・天皇論追撃篇
- ゴーマニズム宣言スペシャル・天皇論 平成29年
- ゴーマニズム宣言スペシャル・昭和天皇論
- ゴーマニズム宣言SPECIAL 新天皇論
- ゴーマニズム宣言スペシャル・国防論
- ゴーマニズム宣言スペシャル・反TPP論
- ゴーマニズム宣言SPECIAL 大東亜論
- ゴーマニズム宣言スペシャル・脱原発論
- ゴーマニズム宣言スペシャル AKB48論
- ゴーマニズム宣言ライジング ニセモノ政治家の見分け方
- ゴーマニズム宣言ライジング 開戦前夜
- 女性天皇の時代
- 保守も知らない靖国神社
- ゴーマニズム宣言SPECIAL 新戦争論
- 9条は戦争条項になった
- ゴーマニズム宣言SPECIAL 民主主義という病い
- ゴーマニズム戦歴
- ゴーマニズム宣言外伝「女について」
- 素晴らしき哉、常識!
- ゴーマニズム宣言SPECIAL 新・堕落論
- 慰安婦
- ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論
- ゴーマニズム宣言SPECIAL ウクライナ戦争論
- ゴーマニズム宣言SPECIAL 愛子天皇論
- よしりん御伽草子
- 原発はヤバイ、核兵器は安全
- ゴーマニズム宣言SPECIAL 日本人論
対談、共著[編集]
- 『知のハルマゲドン―ゴー宣・サリン・パープリン』 小林よしのり、浅羽通明(1995年) ISBN 4198603146
- 『ゴーマニズム思想講座 正義・戦争・国家論―自分と社会をつなぐ回路』 竹田青嗣、橋爪大三郎、小林よしのり(1997年) ISBN 4770501587
- 『教科書が教えかねない自虐』 小林よしのり、竹内義和、日本の戦争冤罪研究センター(1997年) ISBN 4821105527
- 『歴史教科書との15年戦争―「侵略・進出」から「慰安婦」問題まで』 西尾幹二、藤岡信勝、小林よしのり、高橋史朗(1997年) ISBN 4569557651
- 『朝日新聞の正義―逆説の新ゴーマニズム宣言』 小林よしのり、井沢元彦(1997年) ISBN 4093895414
- 『知のハルマゲドン』 小林よしのり、浅羽通明(1998年) ISBN 487728561X
- 『新しい歴史教科書を「つくる会」という運動がある』 小林よしのり、新しい歴史教科書をつくる会(1999年) ISBN 4594026052
- 『戦争論争戦―小林よしのりVS.田原総一朗』 小林よしのり、田原総一朗(1999年) ISBN 4821106493
- 『子どもは待ってる!親の出番』 金美齢、高橋史朗、小林よしのり、濤川栄太(1999年) ISBN 4900682373
- 『国家と戦争―徹底討議』 小林よしのり、西部邁、佐伯啓思、福田和也(1999年) ISBN 4870313715
- 『自虐でやんす。』 小林よしのり、竹内義和、日本の戦争冤罪研究センター(1999年) ISBN 4877287655
- 『教科書が教えかねない自虐』改題版。タイトルの文字の配置にお遊びがしてあり、『自虐ですやん。』(関西弁で「(その内容は)自虐じゃないですか」)とも読める。
- 『入国拒否―『台湾論』はなぜ焼かれたか』 小林よしのり、金美齢(2001年) ISBN 4344000951
- 『李登輝学校の教え』 李登輝、小林よしのり(2001年) ISBN 4093890528
- 『愛国対論』 渡部昇一、小林よしのり(2002年) ISBN 4569620647
- 『反米という作法』 西部邁、小林よしのり(2002年) ISBN 4093890536
- 『アホ腰抜けビョーキの親米保守』 小林よしのり、西部邁(2003年) ISBN 4870315645
- 『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 個と公論』
- 『日本人なら知っておきたい靖國問題』小林よしのり、高森明勅、大原康男、小堀桂一郎、中西輝政、西尾幹二、百地章、長谷川三千子(2007年6月) ISBN 4792604028
- 『誇りある沖縄へ』企画・編著:小林よしのり、著:宮城能彦、高里洋介、砥板芳行(2008年6月) ISBN 9784093877923
- 『日本人よ、もっと悪人になりなさい』上坂冬子、小林よしのり(2009年6月) ISBN 9784898316047
- 『日本を貶めた10人の売国政治家』小林よしのり編、副島隆彦、大原康男、田久保忠衛、堀辺正史、西尾幹二、関岡英之、潮匡人、古谷野敦、勝谷誠彦、木村三浩、宮城能彦、長谷川三千子、高森明勅、宮台真司、高山正之、八木秀次、富岡幸一郎、業田良家、西村幸祐(2009年7月) ISBN 9784344981300
- 『希望の国・日本 九人の政治家と真剣勝負』小林よしのり(2010年4月28日)飛鳥新社 ISBN 4870319977
- 『国民の遺書「泣かずにほめて下さい」靖国の言乃葉100選』小林よしのり責任編集(2010年7月16日)産経新聞出版発行/日本工業新聞社発売 ISBN 978-4-8191-1107-2
- 『新日本人に訊け!―ゴーマニズム対論集』小林よしのり、石平、呉善花、鄭大均、ペマ・ギャルポ、ビル・トッテン、金美齢(2011年5月)飛鳥新社 ISBN 978-4-86410-084-7
- 日本に帰化した「親日」の元外国人たちとの対談集。
- 『はじめての支那論 中華思想の正体と日本の覚悟』小林よしのり、有本香(2011年7月27日)幻冬舎新書 ISBN 978-4-344-98225-3
- 『私と宗教』渡邊直樹編、高村薫、小林よしのり、小川洋子、立花隆、荒木経惟、高橋恵子、龍村仁、細江英公、想田和弘、水木しげる(2011年、10月)平凡社新書 ISBN 978-4-582-85608-8
- 『AKB48白熱論争』小林よしのり、宇野常寛、中森明夫、濱野智史(2012年8月27日)幻冬舎新書
- 『ナショナリズムの現在―〈ネトウヨ〉化する日本と東アジアの未来』宇野常寛、萱野稔人、小林よしのり、朴順梨、與那覇潤(2014年12月12日)朝日新聞出版
- 『戦争する国の道徳 安保・沖縄・福島』小林よしのり、宮台真司、東浩紀(2015年10月15日)幻冬舎新書
- 『孤独を貫け』小林よしのり、清水克衛(2016年5月15日)イースト・プレス
- 『ザ・議論!~「リベラルVS保守」究極対決~』小林よしのり、井上達夫(2016年11月11日)毎日新聞出版
- 『日本人なら知っておきたい天皇論』小林よしのり、田原総一朗(2017年10月)ソフトバンク新書
- 『ゴー宣〈憲法〉道場①白帯』小林よしのり、井上達夫、山尾志桜里、駒村圭吾、曽我部真裕(2018年4月)毎日新聞出版
- 『ゴー宣〈憲法〉道場②黒帯』小林よしのり、井上達夫、山尾志桜里、枝野幸男、伊勢崎賢治、山元一、井上武史(2018年10月)毎日新聞出版
- 『天皇論『日米激突』』小林よしのり、ケネス・ルオフ(2019年10月)小学舘
- 『新型コロナ-専門家を問い質す』小林よしのり、泉美木蘭(2020年11月)光文社
- 『コロナ脳 日本人はデマに殺される』小林よしのり、宮沢孝幸(2021年4月)小学館
- 『コロナとワクチンの全貌』小林よしのり、井上正康(2021年9月)小学館
- 『統一協会問題の闇 国家を蝕んでいたカルトの正体』小林よしのり、有田芳生(2023年3月)扶桑社
関連本[編集]
- 呉智英編『ゴーマニズムとは何か! 小林よしのり論序説…』 (出帆新社、1995年)
- 『ゴ-宣レター集 ゴーマニスト大パーティー』既刊3巻 (ポット出版、1996年 - 1997年)
批判本[編集]
- ロフトブックス編『教科書が教えない小林よしのり』(1997年11月 ロフトブックス ISBN 4795200696)
- 『君たちは戦争で死ねるか-小林よしのり『戦争論』批判』 ISBN 4272520563(1999年)
- 『“小林よしのり『台湾論』”を超えて―台湾への新しい視座』 東アジア文史哲ネットワーク(2001年) ISBN 4878933895
- 吉本隆明『「超」戦争論』
- 上杉聰『脱ゴーマニズム宣言-小林よしのり「慰安婦問題」』東方出版(2002年)
- 『トンデモ本の世界R』、と学会(編)、太田出版、2001年10月、ISBN 4-87233-608-9:『戦争論』をトンデモ本として認定。
- 目取真俊『沖縄・地を読む 時を見る』世織書房(2006年11月)ISBN 978-4-902163-26-1 『ゴーマニズム宣言スペシャル沖縄論』の盗作問題を指摘。
キャラクターデザイン[編集]
- ライブ・ア・ライブ (1994年、スクウェア)原始編のキャラクターデザイン