宮城球場
宮城球場(みやぎきゅうじょう)は、宮城県仙台市宮城野区の宮城野原公園総合運動場内にある野球場。2005年(平成17年)よりプロ野球・パシフィック・リーグの東北楽天ゴールデンイーグルスの専用球場(本拠地)として使用されているほか、高校野球などのアマチュア野球も開催されている(後述)。
上記と同年より命名権(ネーミングライツ)が導入されており、現在は楽天モバイルパーク宮城(らくてんモバイルパークみやぎ)が優先される愛称として使用されている。(なお、命名権による愛称の変遷については後述。)
名称[編集]
宮城県立都市公園条例で定められた正式名称は宮城野原公園宮城球場(みやぎのはらこうえん みやぎきゅうじょう)であるが、一般的には公園名を省いて単に「宮城球場」と呼ばれている。施設は宮城県が所有し、東北楽天ゴールデンイーグルスの運営法人・株式会社楽天野球団が都市公園法に基づく管理許可制度により運営管理を行っている。東北楽天ゴールデンイーグルスのホームゲームの警備は2021シーズンより東北ニッソーサービス株式会社が行っている。
なお、一部報道などで「県営宮城球場」と表記されることがある。1990年代に施設管理権が宮城県教育委員会から県教委の外郭団体である宮城県スポーツ振興財団へ移管された際、県の直接管理ではなくなったことから前述の「宮城球場」に改称しており、「県営」は冠さない。2004年までは、報道などにおいて球場名に都市名を冠した仙台宮城球場という通称が使用されていた。
命名権[編集]
宮城県条例上の施設名称は「宮城球場」であるが、2005年(平成17年)1月7日に宮城県と楽天野球団との間で締結された「宮城球場ネーミングライツ基本協定書」に基づき、優先して使用される愛称を名付ける権利、すなわち、命名権を売り出している。同協定書では、球団を代理店とし、宮城県教育委員会と球団が共同で公募をし、県教委が選定をすること、および、収入を県教委が1/4、球団が3/4の配分で受け取ることが定められている。また契約期間は3年間で、漢字の「宮城」の2文字を必ず入れることなどが決められている。
契約期間(3年毎) | 契約企業 | 契約料年額(税抜) | 愛称 | 公式略記
(太字:全角6文字以下) |
---|---|---|---|---|
2005年3月20日
- 2007年10月4日 |
フルキャスト | 2億0000万円 | フルキャストスタジアム宮城 | フルスタ宮城(フルスタ) |
2008年1月1日
- 2010年12月31日 |
日本製紙 | 2億5000万円 | 日本製紙クリネックススタジアム宮城( - 2008年2月14日)
クリネックススタジアム宮城 (2008年2月15日 - ) |
Kスタ宮城(Kスタ) |
2011年1月1日
- 2013年12月31日 |
2億0000万円 | 日本製紙クリネックススタジアム宮城 | ||
2014年1月1日
- 2016年12月31日 |
楽天→楽天グループ | 2億0100万円 | 楽天Koboスタジアム宮城 | コボスタ宮城( - 2015年)
(コボスタ) Koboスタ宮城(2016年) (Koboスタ) |
2017年1月1日
- 2019年12月31日 |
2億0100万円 | Koboパーク宮城( - 2017年12月31日) | KoboパークKobo(コボパ宮城・コボパ) | |
楽天生命パーク宮城(2018年1月1日 - ) | 楽天生命パーク
楽天生命 | |||
2020年1月1日
- 2022年12月31日 |
2億0100万円 | |||
2023年1月1日
- 2025年12月31日 |
2億0100万円 | |||
楽天モバイルパーク宮城 | 楽天モバイルパーク
楽天モバイル |
- ※ しばしば用いられる非公式略記は、括弧で付記。
フルキャストスタジアム宮城[編集]
宮城球場が楽天の本拠地となるにあたり、所有者である宮城県は、県が保有する資産を有効活用して収入確保を図ると共に、地域に密着したプロ球団の育成を目指すため、楽天野球団と共同で施設命名権(ネーミングライツ)の売却を決定し、2005年1月11日からスポンサー企業の募集を開始。契約期間3年以上、年額1億5000万円以上で、名称の一部に「宮城」の2文字を使用することが条件だった。その結果、労働者派遣業大手のフルキャスト(現フルキャストホールディングス。当時の本社は東京都渋谷区に所在)1社のみが応募し、球団と宮城県などによる審査を経て、1月22日に契約期間3年、年額2億円(うち1億5000万円は球団、5000万円は県の収入)で基本合意に達し、呼称はフルキャストスタジアム宮城(フルキャストスタジアムみやぎ)に決定、同年3月20日から採用された。「フルスタ」「フルスタ宮城」「フルキャスト宮城」などといった略称・通称でも呼ばれ、報道などでも使用された。そのため、フルキャストによる独自調査では、同年1月20日から8月31日までに限ってもその広告宣伝効果は4億4000万円を超えるものとなった。なお、県と楽天野球団が命名権導入にあたって締結した「ネーミングライツ基本協定書」において、最低売却額は年額1億5,000万円、売却益の分配率は1:3(県25%、楽天野球団75%)と取り決められた。
ところが、2007年8月3日にフルキャストが警備員や建設・港湾荷役など労働者派遣法で定められている禁止業務に労働者を派遣する違法行為を繰り返し行ったとして、1箇月ないし2箇月の業務停止処分を受けた。これについて宮城県の村井嘉浩知事は「重大で許し難い行為。県民は快く思わないのではないか」と不快感を表明し、また楽天の池田敦司取締役も「出てきた事実に基づき県と相談します」と話した。
フルキャストは2005年に県・球団と命名権契約を交わした際、契約解除条項の一として「社会的信用が失墜したと認められる場合」を明記していた。また2008年3月18日までの契約期間終了に伴って、宮城県は年内を目途に新たな契約企業を募集する方針を当時既に決定しており、引き続きフルキャストと契約を更新することも選択肢の一つとしていたものの、前述の違法行為が発覚した際、ある県幹部は「その可能性はなくなった」と話した。
この一連の事態を受けて8月30日夕方、フルキャストの役員が宮城県庁を訪れ、宮城県に対し謝罪した上で「自社の業務停止処分の問題に関する県民・ファンへの影響などを考慮した」として命名権の契約解除を申し出た。これは翌31日に県教育委員会が開いた「広告審査委員会」の席上で明らかにされた。宮城県は9月3日以降に改めてフルキャスト側の事情聴取を行った上で結論を出すことを決めた。なおフルキャスト側は契約解除の時期を「混乱を避けるため、できればシーズン終了後にしたい」と話したという。
そして9月7日、宮城県は楽天主催公式戦のシーズン最終戦当日をもってフルキャストとの命名権契約を解消することを決定した。プロ野球本拠地野球場の命名権契約が途中解消されるのは日本では初めてのケースとなった。これに伴い、県は新たな契約企業募集に向けた準備に入り、楽天主催公式戦のシーズン最終戦(対ロッテ23回戦)が開催された10月4日に「フルキャストスタジアム宮城」の名称使用を終了し、翌10月5日から新たな契約先が決定するまでの間は県条例上の施設名称である「宮城球場」のみを暫定的に使用することになった。なお、フィールドやスコアボード、メインスタンド正面など球場施設内に掲出されていたフルキャストの社ロゴや看板、その他球場内外の標識・案内板などの撤去費用等については、その後県、仙台市などの関係機関とフルキャスト両者が協議して負担割合を決定した。
日本製紙クリネックススタジアム宮城・クリネックススタジアム宮城[編集]
フルキャストとの命名権契約解消に伴い、宮城県は2007年10月29日から11月20日にかけて命名権契約企業の募集を実施した。前回と同様、球場名には「宮城」の名を入れることを条件とした。その結果、県内外3社から応募があった。その後、県内から応募した1社が辞退し、県外2社について審査を継続した結果、宮城県内にも岩沼市と石巻市に製造拠点を置く日本製紙に命名権を売却することが決定した。県・楽天野球団と同社が検討を進めた結果、同社グループの日本製紙クレシアが製造販売するティッシュペーパーの商品名「クリネックス」を施設名に冠することが決まり、新たな施設名称は日本製紙クリネックススタジアム宮城(にほんせいしクリネックススタジアムみやぎ)に決定した。契約期間は2008年1月1日から2010年12月31日までの3年間で、契約金額は年額2億5000万円(うち1億8750万円は球団、6250万円は県の収入)。また、公式略称をKスタ宮城とすることも併せて決定した。なお新規契約先募集に先立って、基本協定書の内容が2007年10月11日付で一部変更され、最低売却額は年額2億円に引き上げられた。
略称「Kスタ」の「K」は、クリネックスの英字表記「Kleenex」の頭文字をとったもの。先の「フルスタ」に倣って「クリスタ」と省略することも検討されたものの、「『クリスタ』はいくつかの商品で商標登録されている」「大阪市中央区にある地下街『クリスタ長堀』など類似した名称を使用している施設が既にある」「『クリスタ』では『クリスタル (Crystal)』を連想させ、『クリネックス』を略したことが認識しにくくなる」などといったの理由から、略称にはイニシャルを使用する運びとなった。
だが、両者が契約文書の細部調整作業を進めていた2008年1月9日、日本製紙が製造する再生紙年賀はがきの古紙配合率が定められた基準値を下回っていることが発覚したのを発端に、製紙各社による古紙配合率偽装問題が勃発した。1月25日、日本製紙の本村秀常務らが仙台を訪れ、県に対して謝罪するとともに命名権の契約継続を要請。席上、同社側は「一定期間、呼称から『日本製紙』の社名を外したい」という考えを示した。村井知事は1月28日の定例記者会見でこの問題について「消費者を欺いた重大な社会問題だが、配合率の基準に無理があった事情も汲まなければならない」と一定の理解を示し、社名を呼称から外すという提案について「会社のPRを狙って命名権を取得したのだから、問題を非常に重く受け止めている証しではないか」と同社の姿勢を評価。楽天の島田社長も「基本的に続けて頂きたい」と契約維持を求めていた。
2月1日の広告審査委員会でこの件が審議され、日本製紙が社内に調査委員会を設け、原因究明と再発防止を進めていることや、社名外しを求めたことについても「信頼回復に努めている姿勢の表れ」と評価。また既に命名権による呼称が印刷物などで使用され始めており、特にパ・リーグ開幕が3月20日に迫っていたことから、仮に契約を解除した場合、大きな混乱が生じる可能性も考慮され、契約を継続することが決まった。これを踏まえ、宮城県の村井知事は2月4日の定例記者会見で契約継続を正式に発表。また併せて契約継続の条件として、契約満了までの3年間、呼称から社名を外すことも発表した。社名外しの期間については、日本製紙側は「1年間ないし2年間」を提示していたが、契約満了までとしたことについて、村井知事は「社会的影響を考えると、自粛して頂くのが妥当と判断しました」との見解を示した。これを受けて日本製紙側は「それだけ重大であると判断されたということ。真摯に受け止めたい」として、県、球団に改めて陳謝した。こうした過程を経て、2月15日に県・楽天野球団と日本製紙は正式に契約を締結。これにより、同日以降の呼称はクリネックススタジアム宮城(クリネックススタジアムみやぎ)となった。なお、略称のKスタ宮城は引き続き使用した。
宮城県は、旧契約の期間満了を前にした2010年9月13日、日本製紙との命名権契約を更新する方針を明らかにした。当時既に日本製紙側が契約更新の意思を県・楽天野球団側へ事前に伝達していたことから、契約中の企業が優先交渉権を有すると定めた県の規定に基づいて、県・楽天野球団は日本製紙側と契約更新に向けて交渉を進めた結果、3年間の契約延長が決まり、11月1日に発表された。契約期間は2011年1月1日から2013年12月31日までの3年間で、契約金額は年額2億円(うち1億5000万円は球団、5000万円は県の収入)。年額が5000万円減となったことについて、村井知事は同日の定例記者会見で「企業では厳しい経済状況を背景に広告経費を削減する傾向にあり、他県でも命名権の契約額を減額する傾向にある。2億円は基本協定書の最低金額を満たしており、やむを得ないものだと考えた。2億円でも更新になったのは大変ありがたい」と説明した。また契約更新にあたって県教委の広告審査委員会が同社を再審査した結果、コンプライアンス(法令順守)体制や地域貢献活動への取り組みを評価し、再び名称に社名を冠することを認めたため、2011年からの呼称は日本製紙クリネックススタジアム宮城とすることが決まった。併せて略称のKスタ宮城もこれまで通り使用を継続し、加えて旧呼称のクリネックススタジアム宮城も新たな略称として使用することになった。
しかし、日本製紙は国内需要の縮小に伴う経営効率化の一環として2013年10月に前述の命名権契約を更新しない意向を宮城県に伝えた。このため宮城県は日本シリーズ終了後の11月5日から12月4日まで、日本全国の企業を対象に新たな命名権契約企業を公募。その結果、楽天と他1社が立候補した。なお、「日本製紙クリネックススタジアム宮城」「クリネックススタジアム宮城」「Kスタ宮城」といった呼称は、契約期間の満了と新たなスポンサー企業(楽天)との命名権契約締結を機に変更された(後述)。
楽天Koboスタジアム宮城[編集]
宮城県が上記の命名権契約企業公募に応じた楽天など2社を審査した結果、イーグルスを所有する楽天が、年間契約料2億100万円で命名権を取得。2014年1月1日に、球場の愛称を同社の電子書籍通信販売サイト「楽天Kobo」の名称を冠した楽天Koboスタジアム宮城に変更した。契約期間は従来と同じ3年間で、略記は2016年1月31日まではコボスタ宮城、同年2月1日から契約期間満了まではKoboスタ宮城を用いていた。
Koboパーク宮城[編集]
2016年10月31日、楽天が宮城球場の施設命名権に関する契約を更新。2017年1月1日から1年間にわたってKoboパーク宮城という愛称を使用した。
球場の魅力向上を目指す「ボールパーク化」を反映し、それまで愛称で「スタジアム」だった部分が「パーク」に変更された。これ以降の愛称は、全て「○○パーク宮城」の形となっている。
楽天生命パーク宮城[編集]
2018年1月1日から2022年12月31日までは、楽天が宮城球場の施設命名権を保有したままグループ会社(楽天生命保険)の名を冠した「楽天生命パーク宮城」という愛称を使用した。この間には、2019年11月25日に施設命名権の契約を更新している。
楽天モバイルパーク宮城[編集]
2022年11月28日、楽天グループ(2021年4月1日に楽天より社名変更)との間で施設命名権に関する契約を更新。契約期間は2023年1月1日から2025年12月31日までの3年間で、これに合わせて球場の愛称を「楽天モバイル」(グループ傘下の電気通信事業者)の名を冠した「楽天モバイルパーク宮城」に変更した。
交通機関[編集]
路線 | 駅 | 距離 | 徒歩 | 備考 |
---|---|---|---|---|
JR仙石線 | 宮城野原駅 | 0.6 km | 7 分 | |
榴ケ岡駅 | 0.9 km | 11 分 | 宮城野通沿い | |
仙台駅 | 1.7 km | 21 分 | 宮城野通沿い | |
JR新幹線・在来線 | 仙台駅東口 | 1.8 km | 23 分 | 宮城野通沿い |
仙台市地下鉄東西線 | 薬師堂駅 | 1.3 km | 15 分 | |
連坊駅 | 1.4 km | 17 分 | ||
宮城野通駅 | 1.6 km | 20 分 | 宮城野通沿い | |
仙台市地下鉄南北線・東西線 | 仙台駅 | 2.1 km | 27 分 |
楽天の主催試合時には、JR仙石線・あおば通駅 - 小鶴新田駅間の区間運転列車が増発される場合がある。球場とJR仙台駅東口とを結ぶシャトルバスが運行されているが、JR仙台駅東口までは宮城野通を徒歩で行く方が早い場合もある。宮城野通は球場から榴ケ岡駅付近まで若干上り気味であるが、ほぼ平坦かつ直線。沿道には試合観戦者を見込んで、飲食店やスポーツ用品店、他チームのレプリカユニフォームを販売する店等がある(仙台駅東口商工事業協同組合)。
バスによるアクセス
- 仙台市バス(仙台市交通局) - 定期運行のバスは、仙台駅前から以下の便が利用可能。
- 50番のりば(三菱UFJ銀行仙台支店前・あおば通駅1番出入口近辺・地下鉄仙台駅北4番出入口近辺)より
- 「国立病院経由・小鶴新田駅・東仙台営業所行き」乗車・「宮城野原総合運動場前」下車。大人180円・小児90円。
- 5番のりば(仙台駅西口バスプール)より
- 「卸町二丁目経由・志波町・霞の目営業所行き」乗車・「宮城野三丁目・聖和学園前」下車。大人180円・小児90円
- 楽天の主催試合時には、仙台市交通局のシャトルバスが運行される。
- 仙台駅東口バスプール(76番のりば)発着便
- 行き - 試合開始2時間前より試合開始後30分まで5~10分間隔で運行。
- 帰り - 8回裏開始時~試合終了45分後まで随時運行。
- いずれも運賃は大人100円・小児50円。
- ミヤコーバス - 石巻方面から仙台 - 石巻線が利用可能。
- 「宮城球場入口・聖和学園前」(仙台市バス「宮城野三丁目・聖和学園前」と同位置)で乗降車。
- 石巻から仙台行きは降車のみ、石巻行きは乗車のみ取り扱い。
- 仙台 - 石巻間の運賃は大人850円。
- 石巻から仙台行きは降車のみ、石巻行きは乗車のみ取り扱い。
- また、JRバス東北・会津バス・福島交通の一部高速バスが当球場前まで延長運転される。なお、当球場始発の便は設定されない。