外交
外交(がいこう、英語: diplomacy)とは、国家間の関係のマネジメント。国家間の関係のマネージに関する活動や技術などのこと。
概説[編集]
- 定義
外交という言葉は外国との交際に関わるさまざまな政治的活動の総称であるが、その内容には二つの意味に大きく分類することができると考えられている。ハロルド・ニコルソンの『外交』によれば、それは「外交交渉」という技術的側面と、「外交政策」という政治的側面である。外交という言葉は両者の全く性質が異なる概念を包括しており、使い分けられるべきものである。
日本大百科全書にも同様の説明がされており『外交には、対外「政策」を決定する面と、決定された政策を相手国との「交渉」によって実現する面との両面がある。』とされている。そして「外交とは両面の統一である」と解説している。
- 政府による外交
一般に「外交」と言うと第一義的には国家の組織や政府要人によるものを指している。
典型的には国を代表する外交官や大統領や首相などが直接的な外交を行っている。
一般に国家には、外交を担当する行政機関が設置されている。名称、翻訳名称はさまざまであり、欧州のものは欧州対外行動局、アメリカのものはアメリカ合衆国国務省、日本のものは外務省、台湾は外交部、韓国も外交部、中国も外交部など。ロシアのものはロシア外務省と翻訳することが一般的である。
外交戦略に基づき立案される政策を外交政策、または実際に二国間ないし多国間で行われる具体的な国家間交渉を外交交渉という。
- 非政府系の外交の存在
国際社会一般、あるいは国際法において正当な外交の主体とは主権国家であり、すなわちその国を代表する政府が担うことを基本としている。
ただし昨今では一議員やNGO関係者が外国要人などと会談する、いわゆる民間外交や議員外交も盛んになっている。このような外交の場はセカンドトラックと呼ばれる。国家間の政府外交のみならず民間外交、議員外交、あるいはNGOなどによるトラックII外交など、多様な主体が行う国際交流ないし交渉も含めることがある。これも国家間の関係に結果として大きな影響力を持ち、関係の土壌を作る上で重要であるが、やはり国家の正規の機関の政策の影響力のほうがはるかに大きいので「外交」は第一義的には政府系のものを指すという状況に変わりはない。というのは、今日の国際社会においては各国の政策決定者や政府だけが正式の外交交渉の権限をもっていて、それによって国家間の関係を大きく変更することが可能だからである。
- 秘密外交の存在
また外交は古来から秘密裏にも行われてきており、また現代においてもその交渉をしばしば国民には隠して秘密裏に行う、ということが行われている。デリケートな交渉過程が明らかになることによって外交交渉の運用そのものが制限されることを避けるためのものであり、外交上の慣習であり、特に国際法違反というわけではない。なお秘密裏に結ぶ条約を秘密条約(en:Secret treaty)と言う。
ただし、機密文書であっても一定の年月のあとで公開されることになっている国も多いので、後の時代になって秘密外交や秘密条約が存在していたことが明らかになり、そこで誤った判断や愚かな条約が締結されていたなどと発覚すると国民から政府に対して大きな非難が沸き起こることにもなりがちである。例としては日米核持ち込み問題などがあげられる。
- 諸活動と情報収集
国際状況に適合した適切な外交が行えるかどうかは情報収集にかかっている。
たいていの国が、外交を担当する政府系組織を設置しており、関係のある国に大使館や領事館などの在外公館を設置し外交官を常駐させて、外交に関する諸活動を行っている。外交官はさまざまな情報収集も行う。
だが、外交担当の人々が質の高い情報を大量に集めたとしても、政策決定者の側にはバイアス(政策決定者の心にある、特定のイメージ)があり、せっかくの情報にフィルターをかけてしまう。政策決定者の側に強いバイアスがあると国際的な現実から目をそむけた不健全な外交となりがちで、バイアスが少ないと健全な外交となる傾向がある。