士業
士業(しぎょう、さむらいぎょう)とは、日本における名称末尾に「士」の字を用いる職業(弁護士、司法書士等)の俗称である。医師、薬剤師など「師」の字を持つ職業を含め、士師業(師士業、ししぎょう)とも呼ばれる。
歴史[編集]
元々「士」の字は、江戸時代以前は以下のような意味で用いられていた。
- 官位・俸禄を有する者
- 侍
- 軍人
- 男子
- 学問・道徳があって尊敬すべき人物
明治維新後、西洋式の法律や制度を導入するにあたり、職業名としても「士」の字が用いられるようになった。
末尾に「師」の文字がつく職業は、「陰陽師」など江戸時代以前から存在し、歴史的には「士」のつく職業より古い。しかし、現代に続く職業名は「医師」と「薬師(薬剤師)」だけであり、その他の職業について「師」の字を使用する慣行が定着したのは、「士」のつく職業と同様に明治以降である。
士業の専門性と業務[編集]
国家資格を有する士業については、資格の認定プロセス(国家試験の合格、実務修習の修了等)を通して、当該業務分野に関する専門性が法的に担保される。これらの士業には、制度的に担保された専門性を背景に独占業務を認められているものも多い。
士業の多い分野として、司法、会計、不動産、建築、土木、医療、福祉などがある。特に医療、土木、建築は、業務が対象者の生命、身体、精神、生活に直接関わるとともに、公共の安全にも重大な影響を与えるため、社会的責任の大きな士業として免許を得るための国家試験についての受験資格を得るだけでも数年を要するものが多い。
士業には営利目的ではなく職能であるという意味が込められていることがある。したがって一部の士業では、営利事業に関与・兼業することが当然には許されていないことがある(許可制・届出制となっている場合もある。)。また、各士業が所属する団体として職能団体が設けられることがある(国家資格においては職能団体の設立および加入が法律上義務づけられていることもある。)。
また、士業の中には、その職域において専門性が高く、その該当する法令に「専門家」として明示されているものもある。(専門家としての士業を参照)
士業の開業・就業[編集]
士業としての業務を行うためには、国家試験に合格するだけでなく、監督官庁等に登録することが必要となることが多い。また、公認会計士等、登録に伴い一定の実務経験が必要とされる場合もある。
登録などによって士業として業務を行いうる状態になった後は、個人事業主として開業するか、または既存の事務所・事業所に勤務するかを選択できることが多い。ただし、実際にどのような勤務形態が選ばれることが多いかは各士業により異なる。登録後他人の経営する事務所や事業所に勤務して経験を積み、その後本人のキャリアプランに応じて独立を検討する士業が多いと思われるが、行政書士のように既存の事務所の求人がほとんどなく、登録後即独立開業(いわゆる即独)することが一般的といわれる業界もある。
宅地建物取引士や通関士のように、社内において専門業務を担うことが役割とされ(いわゆる必置資格)、個人事業主としての開業が予定されていない資格もある(資格を取得した者が勤務先を退職し、自分で別法人を立ち上げ新法人における必置資格者となる形での「独立開業」は可能であることもある。)。
社会福祉士のように、現行法上業務独占資格ではなく名称独占資格であっても独立開業する者がいる場合もある。
なお、民間資格の運営業者の中には士業としての開業を謳うものもあるが、法令上独占できる業務はない点に注意を要する。民間資格の「〜士」は法令上は純然たる無資格者であり、他資格の独占業務となっている業務を行えば、多くの場合犯罪行為となる。