国際連合
国際連合(こくさいれんごう、UN、ONU; アラビア語: الأمم المتحدة、中国語: 联合国/聯合國、英語: United Nations、フランス語: Organisation des Nations unies、ロシア語: Организация Объединённых Наций、スペイン語: Organización de las Naciones Unidas)は、国際連合憲章の下で1945年10月に設立された国際機関。
第二次世界大戦の勃発を防げなかった国際連盟の様々な反省を踏まえ、1945年10月24日に51ヵ国の加盟国で設立された。主たる活動目的は、国際平和と安全の維持(安全保障)、経済・社会・文化などに関する国際協力の実現である。2021年6月の加盟国は193か国であり、現在国際社会に存在する国際組織の中では最も広範・一般的な権限と、普遍性を有する組織である。
なお英語表記の「United Nations(ユナイテッド・ネイションズ)」は第二次世界大戦中の連合国(英: the Allies、Allied powers)の別名と同じだが、日本では「国際連合」の訳が一般に使用されている(詳細は名称を参照)。中国語では第一次世界大戦の中央同盟国と第二次世界大戦の連合国を「同盟國」、国際連合を「联合国/聯合國」と分けて呼んでいる。フランス語でも第二次世界大戦の連合国は「Alliés de la Seconde Guerre mondiale」、国際連合は「Nations unies/Organisation des Nations unies」と分けられている。
概要[編集]
国際連合は、第二次世界大戦を防ぐことができなかった国際連盟(1919年 - 1946年)の反省を踏まえ、アメリカ合衆国、イギリス、ソビエト連邦、中華民国などの連合国(the united nations)が中心となって設立した。1945年4月から6月にかけてアメリカ・サンフランシスコで開かれたサンフランシスコ会議で国連憲章が署名され、同年10月24日に正式に発足した。
発足時の原加盟国はイギリスやソビエト連邦の構成国であった一部の国を含めた51か国であった。2023年2月現在、国際連合の加盟国数は193か国で、世界のほとんどの全地域を網羅している。最も新しい加盟国は、南スーダン(2011年7月14日加盟)である。
国連の目的は国連憲章第1条に記されており、目的は次の三つである。
- 国際平和・安全の維持
- 諸国間の友好関係の発展
- 経済的・社会的・文化的・人道的な国際問題の解決のため、および人権・基本的自由の助長のための国際協力
これらの目的を達成するため、総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所、事務局という6つの主要機関と、多くの付属機関・補助機関が置かれている。加えて、15の専門機関と多くの関連機関が国連と連携して活動しており、全体として巨大かつ複雑な国連システム(国連ファミリー)を形成している。
国際連合の本部は、アメリカ合衆国のニューヨーク・マンハッタン島にある。本部ビルは、オスカー・ニーマイヤーを中心とした建築家国際委員会が設計したが、現在老朽化しており、新館を建築家・槇文彦が設計予定である(ただし、国際連合の資金難により計画は滞っている)。そのほか、ジュネーヴなど世界各地に事務所が置かれている。
国際連盟との間には法的な継続性がないものの、国際司法裁判所や国際労働機関(ILO)等の機関を連盟から引き継いでいる。また、旧連盟本部施設も連盟から移管されていて、部分的には継続した組織といえる。
名称[編集]
「英語: the United Nations」(連合国)という言葉が初めて用いられたのは、第二次世界大戦中、日独伊の枢軸国と対戦していた26か国がアメリカ合衆国のワシントンD.C.に集まり、1942年1月1日、枢軸国への対決を明らかにした「連合国共同宣言(ワシントン宣言)」においてである。この名称は、前日の1941年12月31日、ルーズベルト大統領がチャーチル首相に提案して同意を得たとされる。戦後の国際的な平和組織の名称としては、前述の通り1943年8月に作成されたアメリカ国務省の案の中で既に使用されていたが、その後、連合国側の構想の中で使用されるようになった。一方のソ連は「世界連邦(せかいれんぽう)」という名称を提案していた。
国際連合の設立に尽力したルーズベルト大統領は、サンフランシスコ会議開幕直前である1945年4月12日に死去した。会議では、「United Nations」という英語は複数形であり国際機構を意味するものとしては不適当ではないかとの意見もあったが、彼に対する敬意を表してこの名称を採用することが合意された。しばらくは文法上の理由からUnited Nations Organization(UNO)という名称も使われたが、次第に使われなくなった。
一方、フランス語では「機構」を示す「Organisation」を付してOrganisation des Nations uniesから、「ONU」との略称を用いている。スペイン語(Organización de las Naciones Unidas)、イタリア語 (Organizzazione delle Nazioni Unite) も同様である。ドイツ語でも正式名称はOrganisation der Vereinten Nationenであるが、通常は Vereinte Nationen「連合国」を用いることが多い。略称は「UN」が一般的である。
日本においては、戦争中の国家連合の名称としては「連合国」(れんごうこく)、国際機構に対しては「国際連合」(こくさいれんごう)との訳語が一般に用いられてきた。後者を軍事同盟の連合国と区別するために「国際連合」と意訳したのは外務官僚であるとされる。ただし、連合国側も枢軸国の占領時には連合国について "the Allied Powers" と表記しており、"the United Nations" という用語を軍事的な意味で継続して使用する意思はなかった。1944年(昭和19年)10月にダンバートン・オークス会議で発表された「国際連合憲章の原案(「一般的国際機構設立に関する提案」)」を同年12月に外務省が翻訳した際には、既に「国際連合」という訳語が用いられており、その後も国際機構を指す言葉としては戦中から戦後、現在に至るまで使用されている。朝日新聞は、当時条約局事務官で、後に駐英大使を務めた森治樹が名付け親だとする話を報じている。
日本と同様に漢字を使用している中華民国(台湾)や中華人民共和国では「聯合國/联合国」が主に用いられている。
専門機関[編集]
専門機関は、政府間の協定によって設けられ、経済・社会等の各分野において国際的責任を有する国際組織で、かつ国連との間で連携協定を締結しているものをいう(国連憲章57条、63条)。国連ファミリーに含まれるが、国連とは別個の国際法主体性を有する、独立した国際組織である。中でも、国際金融機関である世界銀行グループとIMFは最も独立色が強く、規模も国連本体に並び、次いでWHO、FAO、ILO、UNESCOの4機関の規模が大きい。これらの専門機関が力を持つ余り、経社理が形骸化して経済社会分野の国連改革が進まないとの批判もある。
現在存在する専門機関は、次の通りである。
- 国際労働機関(ILO)
- 国際連合食糧農業機関(FAO)
- 国際連合教育科学文化機関(UNESCO)
- 世界保健機関(WHO)
- 世界銀行グループ
- 国際復興開発銀行(IBRD)
- 国際開発協会(IDA)
- 国際金融公社(IFC)
- 多国間投資保証機関(MIGA)
- 国際投資紛争解決センター(ICSID)
- 国際通貨基金(IMF)
- 国際民間航空機関(ICAO)
- 国際海事機関(IMO)
- 国際電気通信連合(ITU)
- 万国郵便連合(UPU)
- 世界気象機関(WMO)
- 世界知的所有権機関(WIPO)
- 国際農業開発基金(IFAD)
- 国際連合工業開発機関(UNIDO)
- 世界観光機関(UNWTO)
関連機関[編集]
関連機関は、国連と関係を有するが、専門機関としての連携協定を結んでいない国際組織である。国連には次の関連機関がある。
|
|
言語[編集]
国連の公用語は、アラビア語、中国語(普通話・簡体字)、英語(イギリス式)、フランス語、ロシア語、スペイン語の6言語である。公式文書と公式会合での発言は、最小限これらの公用語に翻訳される。国連発足時からの公用語は、現在の言語よりアラビア語を除いた5言語であった。アラビア語が公用語に追加されたのは、1973年の第30回総会においてである。
国連事務局の作業言語は、英語とフランス語である。実質的には英語が使用されることが多い。
国際連合本部は米国ニューヨーク市に置かれているが、国際連合で用いられている英語はイギリス英語である。日付が「24 October 1945」と表記されたり(アメリカ英語: October 24, 1945)、単語のつづりが「organisation」など英国式になったりする(アメリカ英語: organization)。