ワサビ
ワサビ(山葵・山萮菜、学名: Eutrema japonicum)は、アブラナ科ワサビ属の植物。日本原産。中国大陸の近縁種とは、約500万年前に分化したと推定される。山地の渓流や湿地で生育し、春に4弁の白い小花を咲かせる。
根茎や葉は食用となり、強い刺激性のある香味を持つため薬味や調味料として使われる。日本で栽培・利用される品種は本ワサビとも呼ばれ、加工品を含めてセイヨウワサビ(ホースラディッシュ)と区別される。食欲増進作用のほか、抗菌作用がある。
名称[編集]
漢字で「山葵」と書く由来は諸説あり、一説には深山に生え、ゼニアオイ(銭葵)の葉に似ているからといわれている。ワサビの語源については、平安時代中期の『本草和名』(918年)には、「山葵」の和名を和佐比と記している。同じく平安時代の『和名類聚抄』にも和佐比と記されている。悪(わる)・障(さわる)・疼(ひびく)の組み合わせという説があるが、詳細は不明である。別名に、ヤマワサビ(山わさび)、サワワサビ(沢わさび)などともよばれている。
本種の学名は Wasabia japonica (Miq.) Matsum. とされることが多いが、現在では Wasabia 属は独立した属とはみなされていないので、Eutrema japonicum (Miq.) Koidz. が正しい学名である。
ワサビの名が付く近縁な植物としてセイヨウワサビ(ホースラディッシュ)があるが、加工品の粉ワサビやチューブ入り練りワサビなどでは、原材料にセイヨウワサビのみを使用したり、両方を使っていたりするため、日本原産のワサビを本わさびと呼び、これを使ったものを高級品として区別していることが多い。
地下茎をすり下ろした薬味、調味料も「ワサビ」と呼ぶこともある。寿司屋の符牒になみだ、さびがある。寿司や刺身の世界的な普及に伴って、英語、フランス語、台湾語、広東語、韓国語などでそのままwasabiという発音で借用されている。
花言葉は「実用」「目覚め」「嬉し涙」などである。
分布・生育地[編集]
日本の特産で、北海道、本州、四国、九州に分布し、本来は水のきれいな深山の渓谷、渓流に自生する。野生のものは珍しく、主に静岡県や長野県の清流や涼しい畑で栽培されている。絶えず澄んだ水が流れている冷涼な湿地の砂礫地、沢や水のかかる岩陰などで生育する。深い山間の渓流沿いで野生のものが見られるが、一般の山地で見られるものは半栽培の状態で生育している。
形態・生態[編集]
多年生草本。全草に香気と辛味がある。地下にある根茎は太い円柱状もしくは円錐形で横筋があり、細根を出す。野生のワサビは、栽培ワサビよりも根茎が細い。根生葉は根茎の頂部から束になって生え、長さ10 - 20センチメートル (cm) の長い葉柄があり、葉身は径5 - 13 cmの大型で円形に近い心形で光沢があり、葉縁に不揃いな鋸歯と波状の凹凸がある。茎につく葉もほぼ円形で、光沢がある。
花期は春(3 - 5月)。根茎の頂から長さ20 - 30 cmくらいの地上茎が直立し、柄の短い小型の葉を互生して、茎頂や上部の葉腋に、白色の十字型で花径3ミリメートル (mm) ほどの小さな4弁花を総状につける。花は上から順に数個から十数個が開く。