ロシア
ロシア連邦(ロシアれんぽう、ロシア語: Российская Федерация)、通称ロシア(ロシア語: Россия)は、ユーラシア大陸北部に位置する連邦共和制国家である。首都はモスクワ市。
国土は旧ロシア帝国およびソビエト連邦の大半を引き継いでおり、ヨーロッパからシベリア・極東に及ぶ。面積は17,090,000 km2(平方キロメートル)以上と世界最大である。
142,021,981人(9位):2020年時点
概要[編集]
ロシアは国際連合安全保障理事会常任理事国であり、旧ソビエト連邦構成共和国でつくる独立国家共同体(CIS)の指導国であるだけでなく、G20、アジア太平洋経済協力(APEC)、上海協力機構、ユーラシア経済共同体、欧州安全保障協力機構、世界貿易機関(WTO)などの加盟国である。かつてG8加盟国であったが、2014年3月にクリミアの併合を強行したことでG8の参加資格を停止された。
核拡散防止条約により核兵器の保有を認められた5つの公式核保有国の1つであり、世界最大の大量破壊兵器保有国(英語版)である。国防費は2010年以降増加の一途を辿っている。常備軍のロシア連邦軍は地上軍・海軍・航空宇宙軍の3軍の他、戦略ロケット軍と空挺軍の2つの独立兵科で構成されている。運用面では地理的に分割された軍管区に権限が委譲されており、それぞれに統合戦略コマンドが設置されて3軍と通常兵器部隊を指揮している(戦略核兵器部隊は指揮権外)。現役軍人は約90万人であるが、2022年ロシアのウクライナ侵攻に伴う大量の戦死傷・捕虜や動員で変動しており、さらにロシア政府は2026年にかけて軍の定員を150万人へ増やす計画を進めている。。
政治体制は、ソビエト連邦の崩壊に前後してソビエト共産党による一党独裁制が放棄されて複数政党制に基づく選挙が行われるようになったが、2003年以降は事実上ウラジーミル・プーチン大統領率いる与党「統一ロシア」の一党優位政党制になっている。複数政党制や選挙は一応存在するが、選挙から反体制派候補を排除するなどプーチン体制に有利な政治制度が構築されており、政治的意思を表明する機会に乏しい。「法の独裁」による統治を目指す強権的体質が内外から批判されており、エコノミスト誌傘下の研究所エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによる民主主義指数は、世界134位と後順位で「独裁政治体制」に分類されている(2019年度)。
言論の自由に関しても、国境なき記者団による世界報道自由度ランキングは149位と後順位である(2020年度)。特に、2022年のウクライナ侵攻以降は「広範囲に検閲を行うなどしてニュースや情報を完全に支配している」と非難されており2022年は155位、2023年は164位と大幅に順位を落としている。
領土や軍事力に比べてロシアの経済は国際的地位が低いものの、2014年時点の名目GDPは世界第9位(発展途上国に有利になる購買力平価では世界第6位)であった。鉱物及びエネルギー資源は世界最大の埋蔵量であり、世界最大の原油生産国(英語版)および世界最大の天然ガス生産国(英語版)の一つである。しかし資源依存の経済体質であるため、原油安の時期は経済が停滞する。加えて2014年にクリミア併合を強行したことにより欧米から経済制裁を受けて更なる打撃を受けている。2022年にはウクライナへ侵攻したことでSWIFTからの排除など更なる経済制裁を受けている。
2023年時点ではロシアは世界第2位の仮想通貨のマイニング大国であり、またブロックチェーン技術を使用した国際決済の推進や新たな機関を設立する計画を進めている。
人口はロシア連邦国家統計庁によれば1億4680万人(2017年時点。ソ連時代の1990年には2億8862万人だった)であり、世界第9位、ヨーロッパで最も多い人口である。最大の民族はロシア人だが、ウクライナ人やベラルーシ人やトルコ系のウズベク人、またシベリアや極東の少数民族なども存在し、合計で100以上の民族がある。公用語はロシア語だが、少数民族の言語も存在する。宗教はキリスト教徒が人口の60%を占め、その大半がロシア正教会の信者である。イスラム教徒も人口の8%ほどおり、仏教徒も存在する。
地理としてはロシアの国境は、北西から南東へ、ノルウェー、フィンランド、エストニア、ラトビア、ともにカリーニングラード州と隣接するリトアニアおよびポーランド、ベラルーシ、ウクライナ、ジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタン、中華人民共和国、モンゴル国、朝鮮民主主義人民共和国と接する。海上境界線としては、日本とはオホーツク海・宗谷海峡・根室海峡・珸瑤瑁水道、アメリカ合衆国アラスカ州とはベーリング海峡を挟んで向かい合う。ロシアの国土面積は17,075,400 km2で世界最大であり、地球上の居住地域の8分の1を占める。国土が北アジア全体および東ヨーロッパの大部分に広がることに伴い、ロシアは11の標準時を有し、広範な環境および地形を包含する(英語版)。
ロシアの歴史は、3世紀から8世紀までの間にヨーロッパで認識され始めた東スラヴ人の歴史に始まる。9世紀、ヴァリャーグの戦士の精鋭およびその子孫により設立・統治され、キエフ大公国の中世国家が誕生した。988年、東ローマ帝国からキリスト教正教会を導入し、次の千年紀のロシア文化(英語版)を特徴づける東ローマ帝国およびスラブ人の文化の統合が始まった。キエフ大公国は最終的に多くの国に分裂し、13世紀には領土の大部分がモンゴルに侵略され、遊牧国家ジョチ・ウルスの属国になり、ロシアが西洋から隔絶される原因となった(タタールのくびき)。モスクワ大公国は次第に周辺のロシアの公国を再統合し、キエフ大公国の文化的・政治的な遺産を支配するようになった。クリコヴォの戦いでジョチ・ウルスを破った後、ジョチ・ウルスは衰退し、イヴァン3世(イヴァン大帝)の時代に独立した。東ロシアのほとんどがモスクワ大公国に服した。16世紀中ごろにイヴァン4世(イヴァン雷帝)がモスクワ帝国を建設した。ピョートル大帝は、ロシア人がバルト海に行く道を確保し、1703年にバルト海に面するサンクトペテルブルクを建設した。1712年にサンクトペテルブルクはロシアの首都になり、1721年にロシアは帝国になった。周辺諸国の併合などを繰り返し、史上第3位の領土を持つ帝国となり、版図はポーランドから、北アメリカ大陸北西部(ロシア領アメリカ、後にアメリカ合衆国へ売却)まで広がった。
1917年のロシア革命の後、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国がソビエト連邦最大かつ指導的な構成国となった。スターリン時代には大粛清で国民を弾圧する一方で、工業化と軍拡、周辺国の侵略(バルト諸国占領やフィンランドに対する冬戦争)を進めた。第二次世界大戦ではナチス・ドイツの先制攻撃を受けた後に反撃に転じ(独ソ戦)、連合国の勝利に決定的な役割を果たした。こうして世界初の憲法上の社会主義共和国および、戦後はアメリカ合衆国と並ぶ超大国となった。アメリカやその同盟国とは冷戦で激しく対立したが、ソビエト連邦の宇宙開発は初期においてアメリカを凌駕し、世界初の人工衛星および世界初の有人宇宙飛行を含む20世紀のもっとも重要な複数の技術的偉業(英語版)を経験した。やがてソ連共産党による一党独裁の弊害が噴出するようになり、1991年にソビエト連邦の崩壊に至った。
新たにロシア連邦を国名とし、ロシアも同等の国名とされた(1992年の憲法改正により)。ロシアの国旗は革命前の白・青・赤の3色旗に戻り、国際連合における地位などは基本的に旧ソ連を引き継いでいる(安全保障理事会常任理事国など)。2022年2月24日にはウクライナに「特別軍事作戦」と言う名の軍事侵攻を始めた。その軍事侵攻で、現在ウクライナのドネツク州、ルハンシク州、ザポリージャ州、ヘルソン州の一部、クリミア半島全域を支配している。