メディア・リテラシー
メディア・リテラシーとは、メディアの機能を理解するとともに、あらゆる形態のメディア・メッセージを調べ、批判的に分析評価し、創造的に自己表現し、それによって市民社会に参加し、異文化を超えて対話し、行動する能力である。また、用語としてのメディア・リテラシーはメディア・リテラシーの実践や運動を含む。
概要[編集]
世界的に広く使われている有力な定義としては、NAMLE(全米メディア・リテラシー教育学会)やカナダのAML(メディア・リテラシー協会)の影響を受けて設立されたアメリカのCML、欧州連合(EU)、ユネスコによる定義があげられる。
NAMLEの定義は以下の通りである。「メディア・リテラシーとは、あらゆるコミュニケーション形態を用いてアクセス、分析、評価、創造し、行動する能力である。もっとも単純な用語としては、メディア・リテラシーは伝統的なリテラシーを土台とし、新しい読み書きの形態をもたらすものである。メディア・リテラシーは、人々を批判的に思考し、かつ創造し、効果的にコミュニケーションするアクティブな市民にする。」
また、CMLの定義は以下の通りである。「メディア・リテラシーは、多様な形態(印刷からビデオ、インターネットまで)のメッセージへアクセス、分析、評価、創造、参加するための枠組みをもたらす。メディア・リテラシーは、社会におけるメディアの役割の理解を構築するとともに探究に必須のスキルであり、民主主義社会における市民の自己表現に不可欠なものである。」
EUの定義は以下の通りである。「メディア・リテラシーはあらゆる技術的、認知的、社会的、市民的および創造的諸能力に関わるものであり、それらは私たちがメディアへアクセスし、その批判的理解とメディアとの関わりあいを可能にする。これらの諸能力によって私たちは批判的思考力を鍛えるとともに、社会の経済的、社会的、文化的側面に参加し、民主主義的プロセスへ積極的な役割を演じることを可能にする。」
一方、ユネスコはメディア・リテラシーと図書館界を中心に概念が形成された情報リテラシー を統合し、ニュース情報を批判的に評価する能力としてのニュース・リテラシー や情報・コミュニケーション技術を用いる能力としてのデジタル・リテラシー などの新たなリテラシーを包含したメディア情報リテラシーと呼ばれる用語を用いる。ユネスコによる情報リテラシーおよびメディア・リテラシーの定義は以下の通りである。
情報リテラシー
- 情報の必要性を明確化・区分化する。
- 情報の場所を特定し、アクセスする。
- 情報を批判的に評価する。
- 情報を組織する。
- 情報を倫理的に利用する。
- 情報を交流する。
- 情報の加工のためにICTを利用する。
メディア・リテラシー
- 民主主義社会におけるメディアの役割と機能を理解する。
- メディアがその機能を十分に発揮しうる条件を理解する。
- メディア機能の観点からメディア・コンテンツを批判的に評価する。
- 自己表現、異文化間対話、民主主義的参加のためにメディアに取り組む。
- ユーザー・コンテンツを創造するのに必要なスキル(ICTを含む)を身につけて用いる。
なお、ユネスコの定義に見られるように、メディア・リテラシーは情報リテラシーやニュース・リテラシーとは異なる概念であることに注意が必要である。とりわけメディア・リテラシーと情報リテラシーの類似性や違いについてはさまざまな議論がある。