メカトロニクス
メカトロニクス(英語:Mechatronics)とは、機械工学、電気工学、電子工学、情報工学の知識・技術を融合させることにより、従来手法を越える新たな工学的解を生み出す学問・技術分野をさす。
概要[編集]
語源[編集]
メカトロニクスは、昭和44年(1969年)に安川電機の技術者であった森徹郎によって出願された言葉で、機械装置(メカニズム、mechanism)と電子工学(エレクトロニクス、electronics)を合わせた和製英語である。昭和47年(1972年)1月に安川電機の商標として登録された(特許公昭46-32714)。この言葉は出願前から現場を中心に使われており、商標登録によって一般にも広まっていった。現在は安川電機が商標権を放棄し一般名称として使われている。海外にも普及していき、メカトロニクスを冠する学術論文集も、日本の欧文誌『Journal of Robotics and Mechatronics』が1989年に、国際自動制御連盟(英語版)(IFAC)の『Journal of Mechatronics』が1991年、アメリカの『Transaction on Mechatronics』が1996年に創刊されている。
メカトロニクス製品[編集]
従来、機械製品に複雑な動作をさせるには、リンク機構やカム、歯車など多くの機構部品を組み合わせる必要があった。このような製品は、大型・高価になりやすく、複雑で組み立てにくいものとなっていた。
そこで、制御の部分を電子回路化し、センサやアクチュエータと組み合わせることによって、複雑な動作を簡単に実現したり、機械要素の組み合わせだけでは実現できないような機能を持たせることが可能になる。今日では制御にマイクロプロセッサ(マイコン)を用いることによって、自動化や適応制御など、より豊富で便利な機能を実現している。また、同一の機構であっても、電子回路やマイコンプログラム(ファームウェア)の変更で、仕様の変更や追加を容易に対応できる利点ももつ。
以上のような特長により、従来機械産業とされてきた、時計、カメラ、自動車、工作機械など、ほとんどの分野でメカトロニクス化が進んできている。また、ロボット、ハードディスク、CDプレーヤー、自動改札機、ATMなど、メカトロニクスによってはじめて成り立つ分野も数多くある。
FAのためのメカトロニクス[編集]
ファクトリーオートメーション(FA)においては、与えられた目的に対し、センサ、コントローラ、アクチュエータ、メカニズムをシステムとしていかに構築するかが問題となる。アクチュエータとしては各種モータのみならず、空気圧機器も良く使われる。メカニズムにはカム、リンク(スライダクランク機構等)、ゼネバ、歯車、ベルト等の機械要素もふんだんに使われ、コントローラとしては、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)が使われることが多い。メカトロニクスを対象とする資格試験や競技大会においてもFAを意識したものが多い(#資格・免許や#競技会の節を参照)。
特徴[編集]
名称は機械+電子の機電一体であるが、実際は機械工学・電気工学・電子工学・情報工学の融合である。また、センサ・コンピュータ(コントローラ)・動力源(パワー源)・アクチュエータ・メカニズムを要素とするシステムとして構成され、ハードウェアとソフトウェアの構成には多様性があり、ソフトウェアに比重を置くとインテリジェンスやフレキシビリティを持たせることができる。
メカトロニクスの定義や範疇には幅があり、取り扱う人の立場、時代、用途によっても変わってくる。事例として時計を考えると、機械式時計は全てが機械であり、クォーツ時計はほとんどがエレクトロニクス化したメカトロニクス、電波時計はマイコン・モーターを搭載して通信も行う高度なメカトロニクスになる。ミシンの例では、当初は完全に機械式であったものが、補助機構が別モータで制御されるようになり、さらにすべてのモータがコンピュータ制御で同期が取られるようになっていった。