マニフェスト
マニフェスト(英語: manifesto)とは
- 個人または団体がその方針や意図を広く多数の者に向かって知らせるための文書や演説。声明文(せいめいぶん)・宣言書(宣言)を意味する外来語。
- 上記が転じて、選挙において政党が公約に掲げる要目を投票に先立って示す文書。選挙公約(せんきょこうやく)を意味する外来語。→ 本項で詳述。
用語[編集]
マニフェスト(Manifesto)の語源はラテン語で「手(manus)」と、「打つ(fendere)」が合わさった、とする説が有力。「手で打つ」⇒「手で感じられるほど明らかな」⇒「はっきり示す」と派生したと考えられている。これがイタリア語でManifesto (伊)「声明(文)・宣言(文)」となる。その後、イギリスにおいて党首の演説がManifesto(声明文)と呼ばれるようになる。manifest(英)は英語の一般名詞・動詞・形容詞であるが、イタリア語・ラテン語由来のManifestoと記述する場合はとくに政治上の声明文を意味する名詞となる。manifestの発音 /ˈmænɪfest/ は「マニフェスト」に近く、manifestoは/ˌmænɪˈfestəʊ/ /ˌmænɪˈfestoʊ/というように語尾が二重母音になっており「マニフェストウ」に近い。
Manifestoと呼ばれる党首の(所信表明)演説がイギリスで最初に選挙公約として使われるようになったのは1835年の総選挙(英語版)において保守党党首・首相サー・ロバート・ピール准男爵がタムワース選挙区(英語版)の選挙区民に向けて出したものだとされる。この「タムワース・マニフェスト」は保守党党首で前首相でもあったピールの個人的な公約の性格が強いものであった。この声明は翌年の総選挙において保守党の政治方針として公式に採用された。以来、イギリスでは総選挙ごとに主要政党はマニフェストを発表してきた。1906年には労働党が政党の公約として初めてマニフェストを出す。現在のように冊子の形になったのは1935年総選挙時の保守党のものが最初であるとされる。また1980年代初頭以降、各党のマニフェストは写真入りのカラー印刷冊子となった。現在、日本においていわれる選挙公約としてのマニフェストは、このイギリスの19世紀以来の政治慣行を参考にしたものである。しかし、イギリスにおけるマニフェストには数値目標や財源が詳しく記載されていると言う理解は誤りであるとの見解もある。
イギリスなどの議会選挙では "party manifesto"(または "the manifesto of a party")、アメリカ合衆国大統領選挙では "party platform" とも呼ばれる。
なお選挙公約に限らず、マニフェストの用語を使用した世界的に著名な例には以下がある。
- アメリカ独立宣言
- 共産党宣言 非常に著名なもののため、「マニフェスト」だけでこれを指す場合もある。
- 未来主義創立宣言
概要[編集]
マニフェストは政権公約と訳される場合が多いが、単なる政治理念ではなく、財政的裏付け、数値目標、実施期限なども記したもので、1934年にイギリスでトーリー党が始めたものが起源とされる。日本では2003年の衆院選よりこの表現が使用された。
日本ではその体裁から「有権者団との契約」と主張されることが多いが、実際に法的拘束力があるものではなく、あくまでも選挙公約の一形態にすぎない。本家のイギリスでも法的な意味での契約の命令的性格については否定されている。
日本では、選挙においては政党の選挙公約の声明(書)において英語のマニフェストがよく使われたことからこの意味に限定されていることが多く、有権者に政策本位の判断を促すことを目的として、政党または首長・議員等の候補者が当選後に実行する政策を予め確約(公約)し、それを明確に知らせるための声明(書)との意味になる。この場合のマニフェストは「政策綱領」「政権公約」「政策宣言」「(政治的)基本方針」などと訳すことが多い。しかし、この用法は「選挙ごとに、政治の基本政策・基本理念が変わる」ことを意味する結果となることから、「選挙公約」、「(政治的)基本方針」とすることが適当であるとの論点もある。