ポン・ジュノ
ポン・ジュノ(奉俊昊、朝: 봉준호、英: Bong Joon-Ho、1969年9月14日 - )は、韓国の映画監督、脚本家。慶尚北道大邱市(現・大邱広域市)出身。本貫は河陰奉氏。母方の祖父は小説家の朴泰遠。韓国のいわゆる386世代の一人である。2019年の『パラサイト 半地下の家族』は、韓国映画史上最高の興行収入を記録し、アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞を受賞、英語ではない作品として初めて作品賞を受賞した作品となった。
略歴[編集]
延世大学校社会学科卒業後、韓国映画アカデミーに再入学。1995年の16mm短編のインディペンデント映画『白色人』が初監督作品となった。アカデミー在学中に製作した短編『支離滅裂』と『フレームの中の記憶』がバンクーバー国際映画祭と香港国際映画祭に招待され、注目を集めた。
『TOKYO!』の一編「シェイキング東京」で助監督を務めた経験を持つ片山慎三によれば、元は漫画家志望で、日本では松本大洋、古谷実、業田良家、沖浦啓之などの作品を評価している。
パク・キヨンの『モーテルカクタス』で助監督、ミン・ピョンチョンの『ユリョン』で脚本家を担当したのち、『フランダースの犬(邦題『ほえる犬は噛まない)』が初の長編作品となった。
長編2作目の『殺人の追憶』では実際に起きた事件を基にし、その事件を捜査する刑事達を描いた。本作は韓国内で大ヒットを記録。同国の重要な映画賞である大鐘賞で監督賞・作品賞を受賞した。
続く『グエムル-漢江の怪物-』では、韓国の観客動員記録を更新してアジア・フィルム・アワード作品賞などを受賞し、同国を代表する若手監督とみなされるようになる。
2009年には、殺人の濡れ衣を着せられた息子を守る母親を描いた『母なる証明』を監督。カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品され、国際的に高い評価を獲得。第82回アカデミー賞外国語映画賞部門の韓国代表にも選出された。その他にも、日仏韓合作のオムニバス映画『TOKYO!』の一部として作られた「シェイキング東京」も国際的に高く評価されている。
2013年、グラフィックノベルが原作の『スノーピアサー』で、クリス・エヴァンスやティルダ・スウィントン、オクタヴィア・スペンサー、エド・ハリスなどのハリウッドスターを起用し、ハリウッド進出を果たす。
2016年、フランス共和国芸術文化勲章オフィシエを受章。
2017年には、Netflix製作のSF作品である『オクジャ』を発表。再び、ティルダ・スウィントンやジェイク・ギレンホールなどのハリウッドスターを起用し、広く注目を集めたが、第70回カンヌ国際映画祭のコンペテション部門に選出された際、記者会見の中で、審査員長のペドロ・アルモドバル監督から「個人的には、劇場公開される予定のない映画は、最高賞パルム・ドールのみならず、他のどんな賞を受賞するべきではないと考える」という発言が飛び出たことにより、議論を巻き起こした。
「パラサイト」による歴史的快挙[編集]
2019年には、現代の本国を舞台に、貧困層と富裕層の格差問題をエンターテイメントチックに描いた『パラサイト 半地下の家族』を発表。第72回カンヌ国際映画祭のコンペテション部門に選出され、審査員長であるアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督率いる審査員の満場一致で最高賞であるパルム・ドールを受賞。韓国映画100年という節目の年においての、初の最高賞受賞となった。
また、フランスでは公開から観客動員数170万人を突破し、イギリスでは外国語映画としての興業収入で歴代一位を記録。本国でも観客動員数1000万人を突破し、日本では韓国映画としての興業収入記録が『私の頭の中の消しゴム』を抜いて一位となった。
ヨーロッパやアジアでの成功だけには留まらず、アメリカでも公開後から高い評価を獲得し、その年の年間興業収入で外国語映画として一位を記録。賞レースでも注目の的となり、第77回ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞、並びに監督賞と脚本賞のノミネートを皮切りに賞レースを牽引し、アメリカ国内の映画賞において作品賞、または外国語映画賞を総なめにした。
その勢いは全く衰えることなく、第92回アカデミー賞で作品賞・監督賞など6部門にノミネートされ、第73回アカデミー賞で台湾映画の『グリーン・デスティニー』で作品賞にノミネートされたアン・リーに続いてアジア人二人目となるアカデミー作品賞ノミネートとなり、外国語映画として史上初めてとなる作品賞の受賞を筆頭に、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞した。また、フランス版アカデミー賞と呼ばれるセザール賞では、韓国初の外国語映画賞も受賞した。
アメリカのニュース雑誌『タイム』が毎年発表している世界で最も影響力のある100人のリスト「タイム100」にも2020年度のアーティスト部門で選出され、ティルダ・スウィントンは推薦文で「世界が彼に追いつく時期になったと思う(中略)」と述べている。
フィルモグラフィ[編集]
公開年 |
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役職 | 備考 | ||
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監督 | 脚本 | 製作 | |||
1994 |
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Yes | Yes | No | 短編 |
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Yes | Yes | No | 短編 | |
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Yes | Yes | No | 短編 | |
1997 |
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No | Yes | No | 監督・共同脚本:パク・ギヨン |
1999 |
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No | Yes | No | 監督・共同脚本:ミン・ビョンチョン |
2000 |
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Yes | Yes | No |
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2003 |
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Yes | Yes | No | 共同脚本:シム・ソンボ |
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Yes | Yes | No |
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2004 |
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Yes | Yes | No | オムニバス映画『三人三色』(原題:디지털 삼인삼색 2004) |
2005 |
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No | Yes | No | 監督・共同脚本:イム・ピルソン |
2006 |
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Yes | Yes | No | |
2008 |
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Yes | Yes | No | オムニバス映画『TOKYO!』 |
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No | No | No |
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2009 |
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Yes | Yes | No | 共同脚本:パク・ウンギョ |
2011 | Iki | Yes | Yes | No | オムニバス映画『3.11 A Sense of Home Films』 |
2013 |
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Yes | Yes | No | 共同脚本:ケリー・マスターソン |
2014 |
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No | Yes | Yes | 監督・共同脚本:シム・ソンボ |
2017 |
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Yes | Yes | Yes | 共同脚本:ジョン・ロンソン |
2019 |
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Yes | Yes | Yes | 共同脚本:ハン・ジウォン |
2020 |
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No | No | Yes | テレビドラマ版 |
2025 |
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Yes | Yes | Yes |
受賞歴[編集]
- 2000年 - 『ほえる犬は噛まない』
- 第19回ミュンヘン国際映画祭新人監督賞
- 第25回香港国際映画祭国際映画批評家賞
- 第3回ディレクターズ・カット・アワード今年の新人監督賞
- 2003年 - 『殺人の追憶』
- サン・セバスティアン国際映画祭国際映画批評家賞・新人監督賞・FIPRESCI賞
- トリノ映画祭観客賞
- 第24回青龍映画賞最多観客賞
- 第40回大鐘賞作品賞・監督賞
- 大韓民国映画大賞作品賞・監督賞・脚本脚色賞(シム・ソンボと共同受賞)
- 第23回韓国映画評論家協会賞最優秀作品賞・監督賞
- 第4回釜山映画評論家協会賞監督賞・脚本賞(シム・ソンボと共同受賞)
- 第11回椿事映画賞大賞・今年の監督賞・今年の脚本賞(シム・ソンボと共同受賞)
- CINE21映画賞今年のシナリオ賞(シム・ソンボと共同受賞)
- 第1回マックスムービー最高の映画賞最高の作品賞・最高の監督賞
- ソウル芸術大学今年の作家賞
- 第16回東京国際映画祭アジア映画賞
- 2006年 - 『グエムル-漢江の怪物-』
- 第27回ファンタスポルト国際ファンタジー映画賞最優秀監督賞
- シッチェス・カタロニア国際映画祭オリエント・エクスプレス賞
- 第25回ブリュッセルファンタスティック国際映画祭大鴉賞
- 第1回アジア・フィルム・アワード最優秀作品賞
- 第27回青龍映画賞最優秀作品賞・韓国映画最多観客賞
- 第44回大鐘賞最優秀監督賞
- 第43回百想芸術大賞大賞(映画部門)
- 第5回大韓民国映画大賞最優秀作品賞・監督賞
- 第26回韓国映画評論家協会賞審査委員特別賞
- マックスムービー最高の映画賞最高の監督賞
- 2009年 - 『母なる証明』
- オンライン映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
- アメリカ南東部映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
- アメリカ女性映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
- ロサンゼルス映画批評家協会賞最優秀外国映画賞 Runner-Up
- サンフランシスコ映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
- ボストン映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
- カンザスシティ映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
- 第28回ミュンヘン国際映画祭最優秀作品賞
- 第25回サンタバーバラ国際映画祭イーストミーツウェストシネマ賞
- 第24回マール・デル・プラタ国際映画祭最優秀作品賞
- 第6回ドバイ国際映画祭アジア-アフリカ長編映画部門脚本賞
- 第5回Asia-Pacific Producers Network Award 監督賞
- 第4回アジア・フィルム・アワード最優秀作品賞・最優秀脚本賞
- 第30回青龍映画賞最優秀作品賞賞
- 第29回韓国映画評論家協会賞最優秀作品賞・脚本賞
- 第10回釜山映画評論家協会賞最優秀作品賞
- 第18回釜日映画賞最優秀作品賞
- 今年の女性映画賞大賞
- 第1回今年の映画賞作品賞
- 第5回大韓民国大学映画祭監督賞
- 第2回グリーンイメージ国際環境映画祭最優秀外国映画賞・最優秀外国監督賞・最優秀ドラマ賞・最優秀外国文化映画賞
- 2013年 - 『スノーピアサー』
- ボストン映画批評家協会最優秀監督賞
- ローマ国際映画祭監督賞
- 第34回青龍映画賞監督賞
- 第50回百想芸術大賞監督賞(映画部門)
- 第14回ディレクターズ・カット・アワード今年の監督賞
- 第22回釜日映画賞最優秀監督賞
- 第14回釜山映画評論家協会賞脚本賞
- 第33回韓国映画批評家協会賞最優秀作品賞・監督賞
- 第5回今年の映画賞最優秀作品賞・監督賞
- 韓国映画俳優協会誇らしい映画人賞
- マックスムービー最高映画賞最高の監督賞
- ゴールデントマト賞作品賞(Comic-Book部門)
- 2017年 - 『オクジャ/okja』
- アメリカオースティン映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
- 第17回ディレクターズ・カット・アワード今年の監督賞
- 第37回韓国映画評論家協会賞国際批評家連盟賞
- 第27回国際環境メディア協会作品賞
- マックスムービー最高の映画賞最高の監督賞
- PETA Person Of The Year
- ソウル芸術大学今年の作家賞
- 2019年 - 『パラサイト 半地下の家族』
- 第72回カンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞)
- フランス劇場協会アートハウスシネマ賞
- 国際シネフィル協会賞監督賞
- シドニー国際映画祭大賞
- ユーラシア国際映画祭監督賞
- 第24回春史大賞映画祭最優秀監督賞・脚本賞
- ゴールデン・グローブ賞:最優秀外国語映画賞
- シカゴ映画批評家協会賞:最優秀外国語映画賞
- ロサンゼルス映画批評家協会賞:最優秀作品賞・監督賞
- 放送映画批評家協会賞:外国語映画賞・監督賞
- 全米映画批評家協会賞:最優秀作品賞・脚本賞
- ニューヨーク映画批評家協会賞:最優秀外国語映画賞
- サンフランシスコ映画批評家協会賞:最優秀作品賞
- バンクーバー映画批評家協会賞:最優秀作品賞
- 英国アカデミー賞:非英語作品賞・オリジナル脚本賞
- 第92回アカデミー賞:作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞
- セザール賞:最優秀外国語映画賞
- 2021年湖巌賞芸術部門