ポカリスエット
ポカリスエット(Pocari Sweat)は、大塚製薬が製造・販売する日本のスポーツドリンクである。1980年に日本で発売され、現在では東アジア、東南アジア、中東、オーストラリア、メキシコでも販売されている。
日本においては同社の登録商標(第1574161号ほか)である。日本におけるスポーツドリンクの先駆けであり、以降多数の後追い商品が生まれた。大塚製薬はポカリスエットをスポーツドリンクでなく、発売当時より 「発汗により失われた水分、イオン(電解質)をスムーズに補給する健康飲料」としている。略称は「ポカリ」。
開発における商品コンセプトは「飲む点滴」で、ヒトの体液に含まれる7種類のイオン(陽イオン (mEq/l) Na+:21,K+:5 ,Ca2+:1 ,Mg2+:0.5、陰イオン (mEq/l) Cl-:16.5, citrate3-:10, lactate-:1)を含有する。
概要[編集]
昭和55年(1980年)4月に245 ml缶、6月に1L希釈用のパウダータイプで発売された。価格は缶タイプで当時120円(この時点のコカ・コーラ社製品の250 ml缶は100円であった)。
発売当初、ポカリスエットのキャッチフレーズは「アルカリイオン飲料」であったが、「内溶液のpHがアルカリ性を示す」との誤解を招きかねないため、現在は 「イオンサプライドリンク」とショルダーフレーズを変更している。ショルダーフレーズはパッケージデザイン節を参照。
ヒトの体液に近い組成と浸透圧の生理食塩水(リンゲル液)が、発汗によって失われた水分を補給するのに効率が良い事は、大日本帝国陸軍など、様々な研究機関で研究されており、アメリカ合衆国では、リンゲル液を飲みやすい味に仕上げたスポーツドリンクとして、ゲータレードがすでに商品化されていた。
昭和48年(1973年)、オロナミンCドリンクの開発を担当した研究員の播磨六郎が、メキシコ出張で水にあたり、ひどい下痢になって医師の診察を受けた折、抗生物質の処方以外に「水分補給のためジンジャーエールを飲みなさい」と指示された。これは下痢にジンジャーエールが効くということではなく、当時のメキシコにはミネラルウォーターがあまり売られていなかったためである。この経験から、播磨は体にすぐ吸収される飲料が商品化できないかと考えつく。
帰国後、後に社長に就任する大塚明彦にこの事を報告すると、「そういう商品もポツポツいるな」という返事が返ってきた。実はこの時、すでに大塚明彦は雑誌の記事でアメリカでゲータレードが発売されたことを知っていたのである。そして大塚が社長に就任したあと商品開発がスタートした。多くの人に飲んでもらえるようにと、スポーツドリンクではなく、日常生活の中で飲む飲料を目指すこととなった。
大塚製薬は元々、病院で使用される点滴用のリンゲル液を手がけており、グループ会社である大塚製薬工場は輸液(点滴)の分野では最大手であったため、先行商品であるゲータレードがリンゲル液の組成に近い事はすぐに判明した。また、長時間の手術を終えて疲労した医師が、水分補給にリンゲル液を飲用している事実も知っていた。こうした背景から、新商品は自社のリンゲル液を元にして開発が進められた。各種イオン濃度は綿密に調整され、ヒトの体液に極めて近い組成および浸透圧になっている(「アイソトニック飲料」という用語もここから生まれた)。先行商品であるゲータレードに対抗するために、食味の研究も入念に行われ、赤穂の塩味饅頭をヒントに、塩味と甘みの絶妙のバランスを図った[要出典]。
無果汁と表記されているが、ポカリスエットは苦味を和らげるために果汁を使用しており、原材料にも「果汁」と表記されている。これは法律上、果汁5パーセント未満であれば、果汁%表記のほかに無果汁表記の選択が認められているためである。しかしこのようなケースでは、殆どの製品が果汁%表記を選択しているので、不思議に思われることが多い。かつては大塚ベバレジ(現在は大塚食品)のMATCHでも同様であった(MATCHは2016年現在、果汁1%表記に変更)。
現在は日本や東南アジアをはじめ、多くの国家で発売されている。大塚製薬によれば「食品分野の日本製品で、これだけ国際的な知名度を持つ製品は少ない」とのこと。ただ、アメリカ合衆国など、英語圏の国々では商品名が「スウェット=汗」(=汗くさい)を連想させる、と指摘される。米国内でスポーツドリンクといえば、老舗のゲータレードの方が強いが、ゲータレードは平成27年(2015年)に日本市場から撤退している。
日本では日本コカ・コーラが発売するアクエリアスが、長年にわたり最大のライバル商品となっている。ポカリスエットは甘味が強く、アクエリアスは酸味が強い。
リトルリーグなどの統括団体、日本少年野球連盟の公認スポーツドリンクである。
平成19年(2007年)頃から環境問題に配慮して、すでに販売している製品の一部でエコボトルを採用している。