ベネッセコーポレーション
株式会社ベネッセコーポレーション(英: Benesse Corporation)は、通信教育・出版などの事業を行う、岡山県岡山市北区に本社を置く日本の企業。ベネッセと略称される。
本項では同社の完全親会社である持株会社の、株式会社ベネッセホールディングス(英: Benesse Holdings, Inc.)についても述べる。
概要[編集]
福武哲彦が創業した株式会社福武書店(ふくたけしょてん)がルーツ。2代目社長の福武總一郎が株式会社ベネッセコーポレーションに社名変更後も「福武文庫」など語学関係の書籍に福武のブランドを継続した。現在でも『福武国語辞典』など一般向けの辞典で使用している。
かつては文芸誌「海燕」や「福武文庫」を出し、文芸・人文の出版も活発に行っていたが1990年代後半までに全面撤退し、現在は「教育・語学・生活・福祉」の分野を中心に事業を進めている。出版事業においては、妊娠から出産・育児までの子育て情報誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」、情報・交流・学びなど多様な面で支援する事業領域として、生活マガジン「サンキュ!」、愛犬や愛猫との暮らしに役立つ「いぬのきもち」「ねこのきもち」、幼児~小学生の子どもがいる家庭向けの食生活応援マガジン「ボンメルシィ!」などを展開している。
通信教育事業においては、乳幼児の発達段階に合わせた「こどもちゃれんじ」、小中高生用の進研ゼミ(小学講座・中学講座・高校講座・難関私立中高一貫講座・東大特講・京大特講)などを展開しており、特に教育・受験産業の分野を強みとした大手の出版社である。
激変する教育環境に対応する商品・サービスを通して、改めて「教育のベネッセ」として事業強化を推進しており、教育事業の業績は好調である。2005年(平成17年)より産業再生機構の要請によりPC教室アビバの支援スポンサーとなり、採算性を改善し2009年(平成21年)3月期には黒字転換を果たした。しかしアビバ単独での業務拡大は困難と判断したことやベネッセの他事業との相乗効果が見られなかったことを理由として、2010年(平成22年)3月に全株式をスリープログループに譲渡し、アビバはグループから外れた。
2007年(平成19年)4月下旬に全国一斉に行われた文部科学省の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)では、小学生におけるデータ集計業務全般を担当した。
持株会社であるベネッセホールディングスは東証第1部に上場している(証券コード:9783)。筆頭株主は従来、会長の福武總一郎個人であったが、福武および福武の妻・れい子が所有する全株式が、福武の個人会社である「イーエフユー インベストメント リミテッド」に移管され、日本マスタートラスト信託銀行に信託財産として拠出されているため、外面上の筆頭株主は2013年(平成25年)3月現在、日本マスタートラスト信託銀行となっている。
ゆとり教育などの教育方針の転換などに合わせた教材に力を入れている。その一方で顧客情報を元にダイレクトメールを送付するダイレクトマーケティングを強みとするが、それを批判する意見もある。→詳しくは進研ゼミ#ダイレクトメールを参照。
SNSやクラウドコンピューティングを教育に取り入れる一環でUstreamなどを利用した教育も行っている。
社名・企業理念の由来[編集][編集]
社名の「ベネッセ」(Benesse)は、ラテン語の bene (よい、正しい)と esse (生きる、暮らす)を組み合わせた造語である。1991年(平成3年)4月、第2次CI計画のなかで企業理念として発表され、1995年(平成7年)4月には社名として制定された。 「一人ひとりが主体的に人生を切り開いていくことを「教育・語学・生活・福祉」の分野でお手伝いする会社になろう、という決意」を表したものと説明されている。
沿革[編集][編集]
- 1955年(昭和30年)1月28日 - 福武哲彦が(旧)株式会社福武書店設立。生徒手帳の制作などから事業をスタート。
- 1973年(昭和48年) - 通信添削講座の名称を進研ゼミに変更統一。
- 1986年(昭和61年)4月 - 福武哲彦が死去し、長男の福武総一郎が社長就任。
- 1987年(昭和62年)4月 - 休眠会社のタバイサイエンス株式会社が(旧)株式会社福武書店を吸収合併し、株式会社福武書店(2代目)へ商号変更(いわゆる株式額面変更目的の合併)。
- 1990年(平成2年)8月 - 岡山市北区南方に新本社ビルが完成。
- 1993年(平成5年) -ベルリッツ コーポレーションをグループ会社化。
- 1994年(平成6年) - 第二の業務拠点である福武書店東京ビルが東京都多摩市に竣工(現在はベネッセコーポレーション東京ビルに改称)。
- 1995年(平成7年)
- 4月1日 - 株式会社ベネッセコーポレーションへ商号変更。
- 10月 - 大阪証券取引所市場第二部および広島証券取引所へ株式を上場。
- 1997年(平成9年)9月 - 大阪証券取引所市場第一部に指定替え。
- 2000年(平成12年)3月 - 東京証券取引所市場第一部へ株式を上場。
- 2001年(平成13年)3月 - ベルリッツを完全子会社化。
- 2003年(平成15年) - ソニー出身の森本昌義が代表取締役社長兼COOに就任(2006年同CEO、2007年退社)。
- 2006年(平成18年)10月 - 首都圏の予備校お茶の水ゼミナールを買収。
- 2007年(平成19年)
- 2月21日 - 代表取締役社長兼CEO 森本昌義が辞任を表明し、福武總一郎が代表取締役会長兼社長兼CEOに就任。
- 4月27日 - 取締役兼執行役員専務 福島保が、代表取締役社長兼COOに就任。
- 12月3日 鉄緑会を傘下に入れることが発表された。
- 2009年(平成21年)10月1日 - 持株会社に移行。株式会社ベネッセホールディングスに商号変更し、同時に、会社分割(新設分割)を行い、完全子会社として新たに株式会社ベネッセコーポレーション(2代目)を設立。
- 2010年(平成22年)3月 - パソコン教室事業を行う子会社アビバをスリープログループに売却。また、介護施設事業を行うボンセジュールを買収し、グループインさせる。
- 2014年(平成26年)
- 6月21日 - 原田泳幸が会長兼社長に就任。前社長 福島保は代表取締役副会長に、前会長 福武總一郎は最高顧問にそれぞれ就任。
- 7月9日 - ベネッセ個人情報流出事件が発覚。
- 2015年(平成27年)
- 7月31日 - 事件の影響で、営業損益が4億3000万円の赤字に。ピーク時には420万人だった会員が1年間で94万人減少と発表。
- 2016年(平成28年)
- 5月6日 - 2016年3月期上期の107億円の赤字が、10-3月期(下期)は133億円に拡大。
- 6月25日 - 原田泳幸 会長兼社長が退任。社長には野村證券出身の福原賢一副社長兼CAO(最高管理責任者)が昇格。ベネッセコーポレーション代表取締役社長には小林仁が就任。
- 10月1日 - 福原賢一社長が副会長に、社外取締役の安達保(外資系ファンド出身)が新社長に就任。
- 2017年(平成29年)
- 10月2日 - 保有していた株式会社TMJ全株式を、丸紅保有分株式を含めセコムへ譲渡。TMJはグループから離脱。
- 2019年(令和元年)
- 6月22日 - 福原賢一副会長、取締役を退任して特別顧問に就任。
- 2020年(令和2年)
- 3月31日 - 保有している株式会社サイマル・インターナショナル全株式を、TAKARA & COMPANYへ譲渡。サイマル・インターナショナルはグループから離脱。
- 4月13日 - 学習支援クラウドサービスClassiが不正アクセスがあったことを発表。教員や保護者を含む全利用者約122万人分のユーザーIDと、パスワードを暗号化した文字列、2031人の教員が作成した自己紹介文が流出した可能性がある。
- 2022年(令和4年)
- 2月14日 - 保有しているベルリッツ コーポレーション全株式を、カナダのILSCホールディングスが設立した特別目的会社に譲渡。ベルリッツコーポレーションはグループから離脱。
- 2024年(令和6年)
- 2月上旬 - ベネッセホールディングスが経営陣とスウェーデンの投資ファンドによる自社買収(MBO)を目的とした株式公開買付け(TOB)実施。TOB成立後に株式上場を廃止する予定。