ブラビア
ブラビア(BRAVIA)とは、ソニー(2014年7月まではソニー(初代法人)、2019年3月まではソニービジュアルプロダクツ、2021年3月まではソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ)から開発・発売されているデジタルハイビジョンテレビ及び法人向けディスプレイのブランド名。
本ブランド名は、日本国外においても用いられているが、本項では主に日本国内における製品について記載する。
概要[編集]
BRAVIAはBest Resolution Audio Visual Integrated Architectureの略称で、2005年8月にソニーの経営不振の主要な原因になっていたテレビ部門の復活をこめて、ブランド変更された。以前のブランド名はWEGAであった。一方、同社の業務用液晶カラービデオモニターのブランド名は「LUMA」(ルーマ)である。韓国サムスン電子との合弁会社S-LCD(韓国牙山市)で生産する液晶パネル及び液晶モジュールを使用することで、短期間で液晶テレビの供給体制を整えた。
2005年の年末商戦で成功し、シャープのシェアを圧迫するまでに売上が回復した。国内では「液晶はシャープ」のイメージが強く、AQUOSが圧倒的に強いが、海外ではソニーのブランド知名度の方が高く、2006年の液晶テレビ世界シェア(金額ベース)1位はソニーだった。 2007年にはフルスペックハイビジョンのラインナップ拡充が遅れたためシェアを落としたが、同年9月に市販品としては最大の70V型を含むフルHDの15製品を一挙に発売した。また、2008年3月にはソニー最小の16V型を発売した。 2008年2月26日にはソニーは、シャープが堺市の堺泉北臨海工業地帯に建設する液晶パネル工場(→シャープ堺工場)にソニーが資本参加すると発表した。新工場の建設と運営を堺ディスプレイプロダクト(SDP/シャープとソニーの合弁会社)が行なう形となる。ソニーはサムスンからの提携から撤退し、SDPから液晶パネルの供給を受ける。
リアプロジェクションテレビ(リアプロ)はフルスペックハイビジョンのSXRDパネルを採用し、色域や応答速度、コントラストを従来モデルより引き上げたAシリーズと透過型小型液晶パネルを使用した廉価版のEシリーズがあるが、2007年11月までに全機種生産終了し、ソニーは長年生産してきたリアプロから撤退した(2008年9月には、大手メーカーで最後までリアプロを製造していたビクターも撤退し、事実上日本国内からリアプロが消滅した。)。
TVCMには女優の北川景子を起用している。それ以前は女優の篠原涼子とミュージシャンの矢沢永吉を起用しており、篠原はV5およびEX700シリーズ、矢沢はF5、W5シリーズとモデルによって使い分けていた時期もあり、以降は川口春奈が起用されていた。また、2010 FIFAワールドカップオフィシャルテレビということもあって、サッカー日本代表・内田篤人(鹿島アントラーズ)を起用したCMもあった。
2018年10月より、ブラビアをはじめとするソニー製品は日立チェーンストールでも販売されている。
4K・8Kチューナー内蔵機種は「ACASチップ」を本体に内蔵しており、デジタル放送視聴時に必須となる「B-CASまたはmini B-CASカード」を紛失・損傷する心配が解消されている。なお4Kチューナー非搭載の40V型以上モデルは2017年限りで生産を完全終了(4K非対応の現行モデルは、フルサイズB-CASカードを用いる2017年発売パーソナルモデル「KJ-32W500E」のみ。今後在庫品限りで販売を終了し、パーソナルモデルとフルHDテレビの生産から完全撤退して4K/8Kチューナー内蔵テレビのみの生産へ一本化予定)。4K非搭載大型テレビ生産からの完全撤退はソニーが国内大手メーカーで初となった。BDレコーダー一体型モデルと(モニター・チューナー分離型)無線伝送式「プライベートブラビア」は生産されておらず、小型の「ブラビアワンセグ」とBDプレーヤー一体型ポータブルブラビア「BDP-Z1」は2017年限りで販売を終了している。またFDKに生産委託していたソニーブランド乾電池は2019年7月限りで販売終了となったため、リモコン用お試し乾電池はパナソニック・マクセル・東芝ライフスタイルなどの他社より供給を受けている。
2022年以降発売機種はアナログAV入力端子が「映像・音声一体型ミニジャック」へ変更されたため、接続には市販の「RCAピンプラグ - 映像・音声一体型ミニジャック変換ケーブル」が別途必要。2024年モデル「XR90/80/70・A95L・X90L/80L・X75WL・A90K・X90K・X85K各シリーズ」からはアナログAV入力端子が全廃され、HDMI端子のない従来型アナログ再生機器が接続できなくなっている。
ソニー純正テレビ台(アンプ・スピーカー付き「ラックシアター」も含む)の生産はブラウン管テレビ終焉と共に終了したため、ソニー製品取扱店ではハヤミ工産(「TIMEZ」ブランド)・朝日木材加工などの他社製テレビ台を仕入れている(ソニー製ホームシアターシステム現行モデルは、サブウーハー付きシアターバーのみ)。
特徴[編集]
- 高画質エンジン
2010年までは生産された大部分の機種に、アナログ映像からハイビジョン映像まで様々な映像信号をリアルタイムに解析し、高コントラストで精細感のある映像を作り出す『ブラビアエンジン』を搭載。2011年からはデジタル放送完全移行に合わせて、超解像技術を応用した新エンジン『X-Reality』を搭載し、上位モデルのみ『X-Reality』に「XCA7」チップを搭載した『X-Reality PRO』を採用する。後に、『X-Reality』プロセッサーと「XCA7」チップは『X-Reality PRO』プロセッサーに集積化、テレビの4K化に伴い『4K X-Reality PRO』へと進化。2015年からは4Kモデルを中心に『4K X-Reality PRO』、「トリルミナスディスプレイ」、「X-tended Dynamic Range」を統合した『X1』プロセッサーを搭載する。2016年のZ9Dシリーズよりフラッグシップモデル向けに『X1 Extreme』プロセッサーを搭載し、2017年モデルには『HDR X1』を殆どのモデルに搭載する。2018年には『X1 Extreme』の後継として『X1 Ultimate』を発表。2021年には脳のように処理する認知特性プロセッサー『XR』を発表した。
- 『ブラビアエンジン』 - 2010年モデルまで。
- ブランド名変更に伴い、名称も『ベガエンジン』から『ブラビアエンジン』に変更。
- 『X-Reality』、『X-Reality PRO』 - 2011年モデル以降。
- 超解像技術搭載、画質の改善。2011年と2012年の上位モデルのみ『X-Reality』チップと「XCA7」チップとのデュアル構成による『X-Reality PRO』が搭載され、『X-Reality』の機能にデータベース型複数枚超解像処理機能が追加。
- 『X-Reality PRO』 - 2013年モデル以降。
- 『X-Reality PRO』の機能を1チップに集積化。処理速度の向上。ノイズ低減処理、「カラーマネジメント」が追加。
- 『4K X-Reality PRO』 - 2014年4Kモデル。
- 4K仕様に最適化、処理速度の向上。それ以外は『X-Reality PRO』に準ずる。
- 『8K X-Reality PRO』 - 2020年8Kモデル。
- 8K仕様に最適化、処理速度の向上。それ以外は『X-Reality PRO』に準ずる。
- 『X1』 - 2015年、2016年4Kモデル。
- 『4K X-Reality PRO』、「トリルミナスディスプレイ」制御機能、「X-tended Dynamic Range」を1チップに集積化。処理速度の向上。後期ロットでは「X-tended Dynamic Range PRO」を搭載し、「Slim Backlight Drive」に対応。
- 『X1 Extreme』 - 2016年以降、Z9Dシリーズ、A1シリーズなどの4K液晶・4K有機ELテレビ上位モデルに搭載。
- 『X1』の後継チップ。『X1』比40%の処理速度向上、「Super Bit Mapping 4K HDR」、「HDRリマスター」、「デュアルデータベース解析」が追加。「Backlight Master Drive」対応。
- 『HDR X1』 - 2017年以降4Kモデル。
- 『X1 Extreme』のコストダウンチップ。「HDRリマスター」搭載。「Slim Backlight Drive+」対応。2021年モデルからは彩度/色相/明度を3次元で検出する「トリルミナス プロ」が搭載された。
- 『X1 Ultimate』 - 2018年以降、Z9Fシリーズ、A9Fシリーズなどの8K/4K液晶・4K有機ELテレビ上位モデルに搭載。
- 『X1 Extreme』の後継チップ。『X1 Extreme』比2倍の処理速度向上、8K HDRまでの映像処理能力を備える。「オブジェクト型超解像処理」が追加。「HDRリマスター」の強化、デュアルデータベース分析の「ノイズリダクション精度」の精度向上、「Netflix画質モード」、「CalMAN for ブラビア(オートキャリブレーション機能)」対応。
- 『XR』 - 2021年以降、A90Jシリーズ、X95Jシリーズなどの4K液晶・4K有機ELテレビ上位モデル(ブラビアXR)に搭載。映像・音響総合プロセッサー。
- 『X1 Ultimate』より処理性能を更に強化。流れている映像をリアルタイムにプロセッサーで解析し、特に視聴者が注目する部位を引き立たせるような高画質化処理を行う。
- 映像面では『XR Picture』と称し、彩度/色相/明度を3次元で検出する『XR トリルミナス Pro』・HDR信号などの10bit映像を14bit相当の階調表現にして出力する『XR Smoothing』の『XR Color』、高コントラストの『XR OLED Contrast Pro(有機ELモデル) 』『XR Contrast Booster(液晶モデル)』・HDR相当までアップコンバートする『XR HDR Remaster』の『XR Contrast』、超解像度技術の『XR Clarity』『XR 4K アップスケーリング』、残像感を低減する『XR Motion Clarity』を搭載。
- 音響面では『XR Sound』と称し、信号処理を浮動小数点(32bit-float)で行うようになり、歪みのないクリアな音を出力できるようになった。モノラル音声以外のあらゆる音源を5.1.2chに変換する『3Dサラウンドアップスケーリング』機能が追加され、ボイスズーム機能も人の声の特徴を検出して的確に母音・子音の違いを認識し、それぞれを適切に強調するアルゴリズムを搭載した『ボイスズーム2』となった。
- 高画質機能
大部分のモデルでは倍速液晶技術『モーションフロー』を搭載する。『モーションフロー』は、1/60秒(60i)のコマとコマとの間に発生する「ぼやけ」を補正して補間映像を生成する『IBリダクション機能』を業界で初めて搭載した。
また倍速液晶技術に関しては、1/60秒(60i)のコマとコマとの間に3コマの補間映像を生成し挿入する、世界初の4倍速液晶技術が2008年にBRAVIAに搭載され、現在も上位モデルを中心に普及している。
2018年モデルの液晶テレビからは『モーションフロー』の進化形として、倍速パネルとLEDバックライト制御(部分駆動制御+発光時間の最適化)を組み合わせた『X-Motion Clarity』を搭載している。有機ELテレビのX-Motion Clarityにおいては、有機ELパネルの発光エリアを高密度制御する形で2020年モデルのA9SとA8Hシリーズから搭載された。
一方で、4Kモデルの発売に合わせて「トリルミナスディスプレイ」と「X-tended Dynamic Range」を搭載している。 さらにLEDバックライト制御機能では、エッジ型には「Slim Backlight Drive+」が、直下型を採用したZ9シリーズには「Backlight Master Drive」を搭載している。
- 高音質機能
- アコースティックサーフェス - 2017年以降の有機ELモデル。
- A1シリーズ以降の全ての有機ELテレビのモデルに搭載。2019年モデルより「アコースティックサーフェスオーディオ」に改称。A9Gシリーズには上位の「アコースティックサーフェスオーディオ+」が搭載される。2021年モデル以降は「アコースティックサーフェスオーディオ+」を搭載。
- 最大の特徴は、アクチュエーターとサブウーファーを使用してパネル全体が振動してスピーカーユニットとして機能する点である。他社も同様の方法を採用しているが、ソニーは過去にフルコンデンサー型スピーカー「SS-R10」やサウンティーナ「NSA-PF1」を開発・発売した実績があり、これらのノウハウが生かされている点が他社と大きく異なる。
- アコースティックマルチオーディオ - 液晶モデル。
- その他の機能
全シリーズ共通のユーザーインターフェイスとしては、クロスメディアバー(XMB)の採用が特徴。当初は2005年9月に発売されたXシリーズのみに採用され、携帯電話のような折りたたみ形のリモコンも特徴であったが、2006年9月に発売されたX2500シリーズではこれらのものを廃止し、使いやすさや見やすさを重視した 新シンプルリモコン が採用されている。その後、2007年4月に発売されたJ3000/J5000シリーズからクロスメディアバーが復活し全シリーズに採用されるようになったが、2011年春モデルからは再び廃止され、新しいUIが採用された。2007年9月以降に発売された一部機種には、無線通信を使用し画面に向けなくても操作できる「おき楽リモコン」が付属している。
2015年モデルからはGoogleのテレビ向けOSである「Android TV」を搭載し、マイク内蔵リモコンまたはテレビ本体に直接話しかけることによる音声検索やGoogle Playストアによるアプリの追加、Chromecast(旧Google Cast)接続が簡単にできるようになった。Android TV搭載で「チャンネルポン」は廃止されたが、2017年モデルから復活し、2016年秋モデルのみ2017年6月のOSアップデートで対応した。また、2018年モデルから搭載されているGoogleアシスタントはAndroid TVを搭載した2017年モデル及び2016年モデルの一部(Z9D/X8300D/X7000Dのみ)にも2018年9月にソフトウェアアップデートによる機能追加によって搭載されるようになり、Amazon Alexaは2018年秋モデルのA9F/Z9Fシリーズに加え、Android TV搭載の2016年以降のモデル(2016年モデルはZ9D/X8300D/X7000Dのみ)でも2018年10月のソフトウェアアップデートにより対応する(アップデート完了後、ホーム画面に「Amazon Alexa 連携設定」アプリが表示されるようになる)。
シャープの「亀山モデル」に対抗して「稲沢モデル」を名乗ったり(後述)、ワンセグ対応携帯電話でも「AQUOSケータイ」に対抗して「BRAVIAケータイ」を発表したりと、「AQUOS」を意識している傾向が見られる。
なお、地上デジタルテレビジョン放送非対応機のみが最後まで生産されていたトリニトロンカラーテレビが2007年4月に生産を終了したため、ソニーはブラウン管テレビおよび地デジ非対応テレビがラインアップから消滅した。また、WEGAブランド時代はプラズマテレビの販売もしていたが、BRAVIAブランドのプラズマテレビはラインアップされていない。
ソニーは4K UHDが主力製品になる前は37型及び42型の代わりに40型を販売していた(途中からは競合他社もこの傾向がみられた)。またかつては衛星アンテナとアンテナ周辺部品(アンテナプラグ・分配器など)を自社生産しており、ブラビアカタログにもソニーブランドの衛星アンテナと分配器などが掲載されていた。しかし赤字拡大などによるリストラや組織再編の一環として2014年までにソニーはアンテナとその周辺部品生産より撤退。ブラビアカタログからソニーブランドアンテナは消え、ソニーショップへ供給される衛星アンテナとアンテナ周辺部品は(マスプロ電工・日本アンテナ・サン電子・DXアンテナなどの)他社製品へと変わっている。