フットサル
フットサル (Futsal) は、いわゆる室内サッカーである南米の「サロンフットボール(ポルトガル語版)」または英国の「インドアサッカー(英語版)」を起源とする、基本的には室内で行われる、サッカーに似た競技である。長らく非公式に行われ統一ルールが存在しなかったが、1989年にフットサルも国際サッカー連盟 (FIFA) の所管となり、1994年には世界共通の統一ルールをまとめた。
バスケットボールを子供の体格や体力という理由で小規模にしたミニバスケットボールとは異なり、フットサルは全年齢で競技される。
名称の由来[編集]
サッカーを表す「fútbol (スペイン語) 」・「futebol (ポルトガル語) 」と、室内を表す「salón (スペイン語) 」・「sala (スペイン語)」・「salão (ポルトガル語) 」の合成語。スペイン語の「fútbol de salón (フットボール・デ・サロン) 」・「fútbol sala (フットボール・サラ)」(意味は共に「室内サッカー」)の名称が、いつの間にか省略されて「futsal (フットサル)」になり、定着していった。
歴史[編集]
フットサルが始まった説は二つある。
まず、一つは南米を中心に発展してきたサロンフットボールである。サロンフットボールとは弾まないボールのことで、「サロンフットボール」は、1930年にウルグアイで考案された。また、ブラジルでも同様のものが考案された。最初の統一ルールは、サンパウロで出版されたものとされている。サロンフットボールは、その後南米全域へと広まっていった。
1965年からは南米選手権が開催され、1979年まで続けられた。1961年には、国際サロンフットボール連盟(FIFUSA:Federación Internacional de Fútbol de Salón: International Futsal Federation)が設立され、1982年に世界サロンフットボール選手権がサンパウロで開催された。後に、世界フットサル協会 (AMF : Asociación Mundial de Fútbol de Salón : World Futsal Association) となった。
もう一つは、サッカーの母国イギリスより発祥して、ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなどに広まったインドアサッカーである。インドアサッカーは普通のサッカーと同じボールを使って、壁も使って行われる競技である。ルールや名称も国々によってまちまちで、スペインではフットボール・サラ、ドイツではハレン・フースバル、イタリアではカルチェット、オランダでザールと呼ばれるものがそれに当たる。ヨーロッパでは、ザールのルールを元にしてUEFAがインドアサッカーのルール統一を図った。
FIFAは、こうしたミニサッカーが世界中に広まるのをみてルールの統一を始める。1989年には初の世界大会をオランダで開催した。第2回の大会は香港で開催され、FIFAとFIFUSAによるルールの統一化が図られた。
このときのルールの問題点を改正し、1994年より競技名を「フットサル (FUTSAL) 」と改められた。
ルール[編集]
ピッチ(第1条)[編集]
- 大きさ: (縦) 38 - 42 [m]×(横) 18 - 25 [m] (国際大会)
- ラインの幅: 8 [cm]
- ピッチの外縁: 境界をラインでマークし、長い方をタッチライン、短い方をゴールラインとする。
- ピッチの中央部: ピッチを半分ずつに分けるハーフウェイラインを引き、その中心にセンターマーク、さらにセンターマークを中心にして半径 3 mの円を記す。
- ハーフウェイライン: ピッチを半分ずつに分ける線
- ペナルティエリア: それぞれのゴールポストを中心に半径 6 mの四分円を描きそれぞれの端を結ぶ。
- ペナルティマーク: ゴールポストの中央から 6 m地点。
- 10mマーク: ゴールポストの中央から 10 m地点。
- コーナーアーク: それぞれのコーナーの半径 25 cmの四分円を描く。
- 交代ゾーン: フットサルは試合中の交代が認められる。この時、交代を行うエリア。
- ハーフウェイラインからそれぞれ 5 m地点から始まり長さ 5 m, 幅 80 cmのエリア。長さ 80 cmのマーキングで示す。
- ゴール: (高さ) 2 [m]×(幅) 3 [m]×(奥行き) 1 [m]
- ピッチの表面: 滑らかかつ平坦なものとされている。天然芝・人工芝は国際大会では認められていない。
ボール(第2条)[編集]
- ボール
- 大きさ: 62 - 64 [cm](外周)
- 重さ: 400 - 440 [g]
- 空気圧: 0.6 - 0.9 [気圧]。高さ 2 mの地点から落下させたときのバウンドが 50 - 65 cmでなければならない。
- 形: 球形
- 材質: 皮革等。国際大会ではフェルト製のものは認められない。
競技者の数(第3条)[編集]
- 人数
- 競技者は5人以下。そのうち一人はゴールキーパーである。
- 交代要員は公式試合で最大9人までとする。但し国際Aマッチでは最大10人まで、その他の一般的な試合では、両チームの合意のもと、10人を超えた交代要員を置くことができる。
- 試合実施に必要な1チームあたりの最低人数は3人。一方のチームがピッチ上に選手を3人置けなくなった場合は放棄試合となる。
- 交代
- 交代の数は制限されない。
- 交代は交代ゾーンより行われる。
- 退場があった場合の扱い
- 選手が退場を命じられた(レッドカードを提示された)ことによりピッチ上の選手数が減ったチームは、その退場から2分経過後、あるいは相手チームよりも人数が少ない状態で失点した場合に選手を一人補充できる。
用具(第4条)[編集]
- ジャージまたはシャツ
- パンツ
- ソックス
- すね当て
- シュー
審判(第5, 6, 7条)[編集]
- 主審
- 第2審判: 主審と反対側のサイドで主審の手助けをする。
- タイムキーパー: フットサルはアウトオブプレーになったとき、試合再開時まで止める。ピッチの外でストップウォッチを操作する。
- 第3審判: タイムキーパーの手助けをし、反則数のカウントなどを行う。
試合時間(第8条)[編集]
- 前後半の20分の計40分で行われる。
- 前後半1回ずつ1分間のタイムアウトを要求できる。
- 時間内に決着しなければ延長戦を行うことが出来る。延長戦ではタイムアウトはできない。
- 延長戦でも決着しない場合はPKで勝敗を決める。
プレーの開始および再開(第9条)[編集]
- キックオフ若しくはドロップボールで試合が開始、再開される。
インプレーおよびアウトオブプレー(第10条)[編集]
- アウトオブプレー
- ボールが完全にラインを越えた場合(ボールが地上・空中であるかは問わない)。
- 主審が停止した場合。
- ボールが天井に当たった場合: キックインにより再開される。
- インプレー: アウトオブプレー以外の時間。
得点の方法(第11条)[編集]
ボール全体がゴールポストとゴールバーの間でゴールラインを完全に越えた場合。
ファウルと不正行為(第12条)[編集]
- 直接フリーキックが与えられるファウル
- キッキング - 相手を蹴る行為
- トリッピング- 相手をつまずかせる行為。
- ジャンピングアット - 相手に飛び掛る行為
- ファウルチャージ - 不当にチャージする行為
- ストライキング - 相手を殴る、または殴りかかろうとする行為
- プッシング - 相手を押す行為
- ホールディング - 相手を押さえつける行為
- スピッティング - つばを吐きかける行為
- スライディング - 過度な力で相手にスライディングタックルを仕掛けて倒す行為
- ハンドリング - ボールを故意に手または腕で扱う行為
- 間接フリーキックが与えられるファウル
- ゴールキーパーが保持していたボールを離した後、相手側のプレーヤーに当たる前に、ボールをゴールキーパーが受ける行為
- ゴールキーパーがバックパスを手で受ける行為
- 味方がキックインしたボールを直接ゴールキーパーが手で受ける行為
フリーキック(第13条)[編集]
- 直接フリーキック
- ボールが直接相手ゴールに入った場合は得点となる。
- 間接フリーキック
- ボールがゴールに入る前に、蹴った競技者以外に触れた場合のみ得点となる。
累積ファウル(第14条)[編集]
前後半でそれぞれ計5つまで直接フリーキックとなるファウルを記録する。
- ファウルが5つまで
- フリーキックのときに壁を作る事が出来る。守備チームは、フリーキックの地点から 5 m離れなければならない。
- 6つ目以降のファウル
- フリーキックのときに壁を作れない。
- ゴールキーパーは、ペナルティエリア内でフリーキック地点から 5 m離れなければならない。
- フリーキックが行われたのち、ゴールキーパーが触れるか、クロスバー・ゴールポストに当たるか、ボールがピッチ外へ出るまで、他のプレーヤーはボールに触れることができない。
- 自陣の10mマークより前方でのファウルの場合は、相手は10mマークからフリーキックを行う事ができる。これを「DFKSAF(累積ファウル6つ目からの直接フリーキック)」と呼ぶ。かつてはこのプレーの名称が「第2ペナルティーマークからの壁なしフリーキック」だったため、「第2PK」と呼ばれていた。
ペナルティキック(第15条)[編集]
直接フリーキックが与えられるファウルを、ペナルティエリア内で防御側プレーヤーが犯した時に行う。
- ペナルティエリアからキックを行う。直接ゴールに入れる事ができる。
- キックが行われたあとは、他のプレーヤーが触れるまで、キッカーはボールに触る事ができない。
キックイン(第16条)[編集]
ボールがタッチラインを超えたときにおこなう。ボールが外に出たタッチライン上よりボールを蹴ってプレーを再開する。
ゴールクリアランス(第17条)[編集]
ゴールラインを割ったときに最後に触れた選手が攻撃側だった場合、守備側のゴールキーパーがペナルティエリアの任意の地点からボールを投げる。直接ゴールに入れても得点とはならない。
コーナーキック(第18条)[編集]
ゴールラインを割ったときに最後に触れた選手が守備側だった場合、ボールの出たところから近いコーナーアークから相手に邪魔されない形でキックすることができる。直接ゴールを狙ってもよい。