パレスチナ国
パレスチナ国(パレスチナこく、アラビア語: دولة فلسطين Dawlat Filasṭīn, ダウラト・フィラスティーン、英: State of Palestine)は、地中海東部のパレスチナに位置する共和制国家。国際連合(UN)には未加盟であるが、2021年時点で138の国連加盟国が国家として承認している。
領土は自治政府(ファタハ政権)が実効支配するヨルダン川西岸地区およびガザ政府(ハマス政権)が実効支配するガザ地区(パレスチナ領域)から成り、東エルサレムを首都として定めているが、パレスチナ自治政府により実際に支配されているのは西岸地区の一部にとどまり、首都機能はラマッラーが担っている。
歴史[編集]
1988年11月15日に初代大統領のヤーセル・アラファートがパレスチナの独立宣言を発表し、パレスチナ国を国号として定めた。1993年にパレスチナ自治政府が発足して、長らくイスラエルに占拠されていたパレスチナでパレスチナ人による実効支配が始まった。2012年11月にはそれまでの組織としてではなく、国家として国際連合総会オブザーバーとして承認された。
地方行政区画[編集]
パレスチナ国はヨルダン川西岸地区とガザ地区から成る。ガザ地区の面積は365km²で全体の6%程度しかないが、人口は全体の38%を占める。ヨルダン川西岸地区はパレスチナ自治政府の様々な機関が置かれており、首都がある。
西岸地区の総面積は5,660km²であり、以下に区分けされている。
- A地区
- パレスチナ政府が行政権など全てを握っている。面積は西岸地区のうち18%の約1,018km²である。
- B地区
- イスラエル軍が警察権を握っているが行政権はまだパレスチナ政府にある。面積は西岸地区の21%の約1,188km²である。
- C地区
- イスラエル軍が行政権など全てを握っている。面積は西岸地区の61%で約3,452km²である。
また、西岸地区のイスラエル軍管轄地域はユダヤ・サマリア地区と言われている。
パレスチナ国は領有を主張する国土に16の県(ガザ地区に5、ヨルダン川西岸地区に11)を設置している。ただしイスラエルの実効支配下にある地域を含んでいるため、ヨルダン川西岸地区の県の多くの地域が統治下にはない。
国際関係[編集]
2019年7月時点で、国際連合加盟国(193か国)中、138か国が国家承認している。安保理常任理事国ではロシアと中国が承認し、上海協力機構(SCO)加盟国およびアラブ連盟加盟国は全てが承認、アフリカ連合はカメルーンとエリトリア以外の全て、東南アジア諸国連合(ASEAN)はシンガポール、ミャンマーを除く8か国が、それぞれ承認している。
対して承認していない国連加盟国は55か国である。安保理常任理事国であるアメリカ合衆国、イギリス、フランスの3か国に日本、カナダ、ドイツ、イタリアを加えたG7諸国はすべて承認していない。北大西洋条約機構(NATO)加盟国でみると、トルコ、アイスランドの他に旧東側諸国(チェコ、スロバキア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア)が東側陣営時代の1988年、モンテネグロがNATO非加盟時の2006年に承認しているだけでそれ以外はすべて承認していない。欧州連合(EU)加盟国では上記の旧東側諸国とスウェーデン(2014年承認)、欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国ではアイスランド(2011年承認)以外は全て承認していない。当事国であるイスラエルも未承認である。
ただし、2012年のパレスチナ国のオブザーバー格上げ決議では、非承認国家でも賛成した国もある(得票数:19/67)。例えば日本は「将来の承認を予定した自治区」としてパレスチナ国を扱っており、経済支援や議員外交などを行っている。
国連との関係[編集]
1974年にパレスチナ解放機構がオブザーバー団体として国連に加盟した。2012年にはオブザーバー団体からオブザーバー国家に格上げされ、事実上国家承認された。
国連では、毎年のようにパレスチナ人の民族自決権を確認する決議が提出されている。非承認国家でも、明確な反対はイスラエル・アメリカ合衆国及び一部の親米国に限られる。直近の2023年12月19日の決議では、日本を含む172ヶ国の賛成で採択された(反対はイスラエル、ナウル、ミクロネシア連邦、アメリカ合衆国の4ヶ国。棄権はカメルーンなど10ヶ国、欠席はアフガニスタンなど7ヶ国)。