バラエティ番組
バラエティ番組(バラエティばんぐみ)は、トーク・報道・ドキュメント・コント・コメディ・歌・クイズ・ゲーム・ものまね・教養・ドッキリ・グルメ・ロケ・映像・恋愛・雑学・奇術・心霊・お色気・視聴者参加型の企画などのいくつかの種類の娯楽を組み合わせたテレビ・ラジオ番組のジャンルである。
概要[編集]
元来はバラエティショー(en: variety show)を放送メディアに移植したものであり、台本の存在するシチュエーションコメディと、ライブの2種類のバラエティ番組が存在する。用語そのものは日本産の造語であり英語圏などではReality Showと呼称する。
種類[編集]
コント番組[編集]
1960年代から1980年代まではバラエティ番組やお笑い番組のフォーマットといえば『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』等の一部の例外を除き、基本的に「コント番組」若しくはコント主体の音楽バラエティ番組が主流であり、1980年代頃までは各局の看板番組や人気番組はコント番組も多く、芸人の出世番組も大半がコント番組であった。特に1988年~1989年にはフジテレビだけでも『ドリフ大爆笑』『オレたちひょうきん族』『とんねるずのみなさんのおかげです』『志村けんのだいじょうぶだぁ』『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』『夢で逢えたら』など、多数のコント番組が放送されていた。
1990年代の企画物バラエティの隆盛でコント番組は衰退する一方で、1998年から始まった『笑う犬』シリーズが人気になると、コント番組あるいはコントコーナーが存在する番組が再び増加した時期もあった。とくに2005年には、お笑いブームの影響もあり『ワンナイR&R』『ココリコミラクルタイプ』『リチャードホール』『はねるのトびら』『サラリーマンNEO』『落下女』『ミンナのテレビ』『歌笑HOTヒット10』と各局でコント番組が放送されていた。しかしその後、ゴールデンタイム進出を果たした『はねるのトびら』は2006年頃からコントが激減し、同年に『ワンナイ』は打ち切られ再びコント番組が衰退することとなった。
ドキュメントバラエティ・企画物[編集]
1990年代に入ると元祖チャレンジ系バラエティの『1or8』や、「ドキュメントバラエティ」と呼ばれるフォーマットの『電波少年』など、ロケ主体のバラエティ番組がヒットするようになった。その後も各局で『めちゃ2イケてるッ!』、『ウリナリ』、『生ダラ』、『鉄腕!DASH!!』、『学校へ行こう!』『ぷらちなロンドンブーツ』『いきなり黄金伝説』といったチャレンジ企画やドキュメント企画が中心の番組がブームとなり、1990年代後半から2000年代前半に人気のピークを迎えた。
素人参加番組[編集]
前述のドキュメントバラエティやリアリティーショー全盛期の2000年前後には各局で『学校へ行こう!』『ガチンコ!』『あいのり』『シザーズリーグ』など素人出演番組がブームとなっており、特に『シザーズリーグ』出演者は「カリスマ美容師」と言われる社会現象的人気を博し、『学校へ行こう!』に出演した素人は芸能人並みの人気を得る状態にまでなっていたが、こうした素人ブームは、2004年頃の『エンタの神様』や『はねるのトびら』『笑いの金メダル』などのヒットで、プロのお笑い芸人による「お笑いブーム」と入れ替わる形で衰退していった。また、やらせ問題が生じやすいジャンルでもある。
恋愛番組[編集]
1990年代末から恋愛リアリティ番組などの恋愛バラエティ番組が増加している。代表的な番組は『恋のから騒ぎ』『あいのり』『キスイヤ』、初期の『ロンドンハーツ』『紳助社長のプロデュース大作戦』『もてもてナインティナイン』『ナイナイのお見合い大作戦!』『テラスハウス』『恋んトス』など。こうした恋愛番組は、芸能人以外にも素人が出演することが非常に多い。
「日本スゴイ」系番組[編集]
2010年代に増えたジャンル。外国人に日本を礼賛させる。NHK『COOL JAPAN〜発掘!かっこいいニッポン〜』を先駆けとし、テレビ東京を中心に増加した。タイトルに「ニッポン」をつけることが多い。背景としては低予算で視聴率が取れる点、高齢者の承認欲求が満たされる点があるとされる。
討論番組[編集]
もともと『朝まで生テレビ!』など時事番組で多いジャンルだが、1990年代後半にバラエティ色の強い『ここがヘンだよ日本人』がヒットし、以降、各局で『真剣10代しゃべり場』『ジェネジャン』『中居正広の家族会議を開こう!』などが放送され、2000年代前半には討論番組がテレビ界でブームとなった。こうした討論番組は、劇団員が素人として出演するケースが多かった。ワイドショー、時事番組との境界は曖昧である。
トーク番組[編集]
21世紀の景気低迷、リーマンショック以降の広告収入の減少やテレビ離れに加え、規制強化やネット炎上の恐れによって従来の総合バラエティ番組がやりにくくなっていた。これに対して1990年代後半から続く『踊る!さんま御殿!!』『ダウンタウンDX』や2000年代から始まった『行列のできる法律相談所』『アメトーク』『すべらない話』『しゃべくり007』といった安上がりなトーク番組がお笑い・バラエティ番組の主流となり、2009年には「雛壇芸人」が流行語大賞にノミネートされている。
傾向[編集]
1960年代までは視聴率が40〜50%を記録するバラエティ番組が日常的に存在していた。だが、時代の移り変わりと同時にテレビ番組の視聴率は年々全体的に低下しており(詳しくはテレビ離れを参照)、2020年代の現在ではゴールデンタイムの番組でも一桁が多くなっており、10%を取れば高視聴率扱いされることさえある。
2000年代後半から2020年代の現在にかけてトーク番組がバラエティ番組の主流になっており、その原因は製作費を抑えることができることや、スポンサーへのクレームが比較的少ないと考えられるためである。
番組名のみを引き継ぎ、何の説明もなしに番組の内容が変わっていることも2000年代以降増えている。例として『行列のできる法律相談所』は当初法律を取り上げる番組だったが、現在では法律に全く関係のない話題で芸人やタレントをいじる雛壇のトークが主体となっており、正式タイトルが『行列のできる相談所』となっている。『ロンドンハーツ』も当初は素人の恋愛系の企画主体だったものが現在では女性タレントや芸人いじりの雛壇トークやドッキリ企画がメインとなっているほか、『Qさま!!』も当初とは全く違うクイズ番組となっていることが挙げられる。
ワイプ[編集]
VTRと出演者のコメントを交互に配置する番組において増えた演出方式である。VTRの端(主に右上や右下)にそのVTRを見るタレントの顔を写すようになった。正式にはPinPと呼ぶ(Picture in Picture)。現在ではワイプの無い番組を探す方が難しくなっている。 吉川圭三は日本テレビ『世界まる見えテレビ特捜部』の演出を担当していた番組初期、ひとつの紹介VTRを長い尺で放送しようとしたが、当時の上司が長過ぎるから編集で切って短くならないのかと言われ、短くしてしまうとこの内容がキチンと伝わりにくくなると思い、編集しない代わりに何とか対処出来ないかと考えたあげくVTR中に見てる出演者の顔をリアクションワイプとして要所に加える事で長い尺のVTRでも視聴者が飽きずに見てもらえるだろうと苦肉の策として使用したと述べている(ワイプの功罪の功)。ただ21世紀以降で使用されている常時ワイプは自分が仕方なく使った意図とは違うものと述べている(ワイプの功罪の罪)。
テロップ[編集]
1990年代前半から増え始めた演出。『進め!電波少年』が元祖とされる説 と、『探偵!ナイトスクープ』が元祖とされる説 があるが、後者では『電波少年』が放送を開始する約4年前の1988年6月18日放送分で初めてコメントフォローテロップが使用されたとの記録があり、客観的な史実から見れば明らかに『探偵!ナイトスクープ』のほうが元祖である。宝くじを買う理由を道行く人にインタビューする際、ある老人が「難民に寄付する」と言ったところ泣き声になって聞き取りにくかったためテロップを出したのが始まりであり、『電波少年』ではプライムタイムの放送にもかかわらず低予算で組まれていた番組のためロケの模様を市販ビデオカメラ(民生用)で撮影する場合に、音声をうまく収音できなかったため、苦肉の策としてテロップを積極的に活用したものとされている。
『おすぎのピリ辛』(『朝日新聞』連載)では、少し前まではテロップは「うっとうしいからやめよう」という事にテレビ業界はなっていたが、小さくしたり消したりすると途端に視聴率が下がったため、余計にテロップが表示されるようになったと語られている。また、この現状について、「バラエティ番組の『突っ込みテロップ』は、誰かが突っ込みを入れてやらないと面白くならないようなことを、既に収録の時点でやってしまう。これはすごくおせっかいで、出演者をバカにしている」と語っている。
ビートたけしがフジテレビの特別番組『たけしの日本教育白書』(2007年10月27日放送) の「責任」というテーマ回で「テレビの責任」について討論中にテロップの話題が出た時に「画面にテロップを出す事は耳の不自由な人にとっては配慮として良い面がある。ただお笑いの本質は、配慮しない事で笑いが生まれる。それを配慮しちゃってるから笑うに笑えない状況になっている。普通に見てる側としては醒めてしまう」と語った。
2000年代頃は各局のバラエティ番組でテロップが多用されており、出演者のほぼ全ての発言にテロップを出している時期もあったが、2020年代の現在ではテロップの使用は一時期よりは減少しており、出演者のオチやボケ・ツッコミの際に出されることが多い。
なお、日本と韓国、台湾などの東アジアのバラエティ番組では頻繁にテロップを表示しているが、韓国はコメントフォローテロップが頻繁に使用される。
効果音[編集]
こちらは1980年代後半〜1990年代前半に登場した手法。現在はテロップと一緒に登場することが多くなっている。
台湾、中国、香港なと中華圏のバラエティ番組では効果音が頻繁に流れる。これは撮影後に編集して加えたものではなく、鍵盤老師(中国では 音楽老師)と呼ばれる効果音専門の人がエレクトーンを使い、現場の雰囲気に合うように曲を入れたり効果音を付けたりしている。
なお日韓同様、テロップと一緒に効果音を鳴らすことも少なくない。
BGM[編集]
1970年代から始まった手法。当初は『8時だョ!全員集合』などでよく見られる生演奏が主流だったが、1980年代からは『オレたちひょうきん族』を筆頭に、フュージョンや洋楽などの既存の楽曲や映画、ドラマ、アニメのサウンドトラックアルバムに収録された音楽などを後から付け加える事が多く見られるようになった。最近ではテーマに沿ったBGMが使用されることが多く、過去に使われたBGMが復活する例も少なくない。
CM中のチャンネル替え対策[編集]
21世紀に入ってから民放で一般的になった手法。出演者がクイズや質問への答えなど話題の要点を語るシーンを意図的に直前カットしたり伏字やモザイクにしたりして、視聴者の興味を喚起した状態にした上でCMに切り替える。これにより、CM中に他チャンネルに替えられる恐れが減少し、継続的に番組を視聴してもらえると共に、スポンサーにとってもCMをきちんと観てもらえる効果がある。一方でCM前のテロップとCM後の内容が全く違っていることも多く、逆にクレームが入ることも多い。
観客の演出[編集]
2000年代に入ると笑ったら手を叩く演出が多くなり、視聴率だけではなく番組に対する好奇心を与えるようになってきた。元々はヨーロッパから来た演出で、日本では1980年代後半からであるが、当時はごくわずかな番組に限られていた。 しかし、2000年にレギュラー放送を開始した『いきなり!黄金伝説』を皮切りに徐々にこの演出が採用されるようになってからは、また、ラフトラックにも使われるようにもなってきた。この演出の特徴は、笑いに堪えるのに限界があるため、手を叩く若者(主に女性)が増えてきたからでもある。締める際はひき笑いや笑いで締めているが、放送局や番組によってはするあるいはしないなど完全に統一でない。
視聴率[編集]
- バラエティ番組の30年間【1クールの視聴率ランキング】
1990~2020年に放送されたレギュラー番組の視聴率を示す。
順位 | 番組名 | 視聴率(%) | 平均視聴率最高記録クール | 放送局 |
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1 | マジカル頭脳パワー!! | 28.18 | 1996年1月~3月 | 日本テレビ |
2 | SMAP×SMAP | 27.23 | 2001年1月~3月 | フジテレビ |
3 | 進ぬ!電波少年 | 26.55 | 1998年7月~9月 | 日本テレビ |
4 | 伊東家の食卓 | 26.18 | 2000年1月~3月 | 日本テレビ |
5 | 投稿!特ホウ王国 | 25.69 | 1995年1月~3月 | 日本テレビ |
6 | とんねるずの生でダラダラいかせて!! | 24.59 | 1994年1月~3月 | 日本テレビ |
7 | トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜 | 24.53 | 2003年7月~9月 | フジテレビ |
8 | 関口宏の東京フレンドパークII | 24.12 | 1996年1月~3月 | TBSテレビ |
9 | 速報!歌の大辞テン | 23.85 | 2000年1月~3月 | 日本テレビ |
10 | 平成教育委員会 | 23.83 | 1993年1月~3月 | フジテレビ |
11 | 愛する二人別れる二人 | 23.68 | 1999年10月~12月 | フジテレビ |
12 | とんねるずのみなさんのおかげです | 22.75 | 1993年1月~3月 | フジテレビ |
13 | さんまのSUPERからくりTV | 22.68 | 1998年1月~3月 | TBSテレビ |
14 | クイズ世界はSHOW by ショーバイ!! | 22.65 | 1992年1月~3月 | 日本テレビ |
15 | 嗚呼!バラ色の珍生!! | 22.46 | 1997年1月~3月 | 日本テレビ |
16 | 踊る!さんま御殿!! | 21.79 | 2003年1月~3月 | 日本テレビ |
17 | 志村けんのだいじょうぶだぁ | 21.76 | 1990年1月~3月 | フジテレビ |
18 | 世界まる見え!テレビ特捜部 | 21.75 | 2000年1月~3月 | 日本テレビ |
19 | クイズ!年の差なんて | 21.50 | 1992年1月~3月 | フジテレビ |
20 | ネプリーグ | 21.42 | 2009年10月~12月 | フジテレビ |
21 | 加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ | 21.28 | 1990年1月~3月 | TBSテレビ |
22 | THE夜もヒッパレ | 21.24 | 1996年1月~3月 | 日本テレビ |
23 | 笑点 | 20.91 | 2009年10月~12月 | 日本テレビ |
24 | 行列のできる法律相談所 | 20.66 | 2008年4月~6月 | 日本テレビ |
25 | ウッチャンナンチャンのウリナリ!! | 20.65 | 1999年1月~3月 | 日本テレビ |
26 | 世界の果てまでイッテQ! | 20.48 | 2015年1月~3月 | 日本テレビ |
27 | 特命リサーチ200X | 20.32 | 1999年1月~3月 | 日本テレビ |
28 | ポツンと一軒家 | 20.23 | 2020年4月~6月 | テレビ朝日 |
29 | ザ!鉄腕!DASH!! | 20.09 | 2001年10月~12月 | 日本テレビ |
30 | ガチンコ! | 21.01 | 2001年1月~3月 | TBSテレビ |