ハンバーグ
ハンバーグ(英: hamburg steak, hamburger steak, hamburger)は、ドイツ発祥の肉料理である。正式名称は、ハンバーグステーキ、あるいは、ハンバーガーステーキ。
ハンバーグの起源は18世紀頃のドイツ・ハンブルクにあり、名称もハンブルクの英語発音から「ハンバーグ」となった。 ドイツ、ハンブルグ地方から、アメリカに移民する船において、故郷のタルタルステーキが食べたい乗客の希望にそって、コックが野菜くず乾燥肉を戻したものを焼き固めて焼いたものが原型である(出典:世界語源辞典[要文献特定詳細情報])。
なお、英語の「Hamburg」は都市名の「ハンブルク」を意味する。アメリカなど欧米諸国では、サンドイッチにしない単独料理(日本語におけるハンバーグ)も含む総称として「ハンバーガー(hamburger:ハンブルク風の)」と呼ぶ。
概要[編集]
主に挽肉とみじん切りにした野菜にパン粉を混ぜ、塩を加えて粘性を出し、卵を繋ぎとしてフライパン(場合によってはオーブンなどを併用)で加熱して固めたものである。
大抵は付け合せに温野菜やサラダが用いられ、様々なソース類で味付けがされている。ナイフやフォークといった食器を使わなくても簡単に噛み切れるので、パンに挟んでハンバーガーにすることもでき、ファーストフードなどでも主力商品となっている。
調理工程内に様々な工夫を凝らす余地が随所にあるため、非常に多くのバリエーションが存在する。味付けや使用する肉の種類、挽き具合、混ぜ込む材料や焼き加減などに工夫を凝らすことが可能である。日本ではチーズやトマトソース、デミグラス、シャリアピンソースといったソースの他、照り焼きソース、大根おろしと醤油ベースのソースなど和風の味付けがなされることも多い。
また、レトルト食品のハンバーグは調理が簡単である。一度焼いたハンバーグをそのまま、またはソースとともに封入することで、パックごと湯煎するだけで食卓に出すことができ、少々の材料面における味の不備も漬け込むソースでフォローできること、衛生的な生産工場(セントラルキッチン)による大量生産によって非常に安価に製造できるメリットが大きいため、家庭用・業務用ともに広く普及している。
日本ではファミリーレストランにおいて、主力メニューであると同時に収益率の高い商品となっていることが多い。びっくりドンキーやビッグボーイ、炭焼きレストランさわやかのように、これをメインメニューに据えた「ハンバーグ専門店」も存在する。特に児童に好まれる[要出典]こともあって学校給食でも定番の人気メニューである。日本では米飯とともに食べるおかずや定食としても一般的である。
また、労働者向けの大衆食として広まったハンバーグだが、近代フランス料理の父であるエスコフィエは高級料理における定番料理としても記載している。
歴史[編集]
ハンバーグの原型の俗説[編集]
ハンバーグの原型に関しては諸説あるが、俗説として一説にはドイツのハンブルクで名物『タルタルステーキ』を原型とする説やハンブルクの労働者たちが安価な堅い肉をひき肉にして焼いた。
説が知られている。タルタルステーキはタタール人の生肉料理であり、タタール人は遠征の際、連れて行ったウマを食料にもしていた。長距離を移動するウマの肉は大変硬く筋張っていたため、硬い馬肉を細かく刻むことで食べやすいものに加工していた。
13世紀頃、モンゴル帝国のタタール人がヨーロッパに攻め込んだ際、ドイツにタルタルステーキが伝わったとされている。
ハンバーグの誕生[編集]
18世紀前半、ドイツ・ハンブルクでは挽肉にパン粉を入れた料理に火を通すようになった。これがハンバーグの起源である。
この料理はドイツで「フリカデレ」 (frikadelle) と呼ばれ、労働者を中心に広がりを見せると、瞬く間にドイツの代表的な家庭料理となった。
フリカデレがドイツからヨーロッパ中に広まると、人々はハンブルクから来たこの料理を「ハンブルク風の料理」と呼ぶようになる。
ドイツ人がイギリスに渡ると、ハンバーグも伝わった。1758年にイギリスで出版されたハンナグラスの『The Art of Cookery Made Plain and Easy』 には「Hamburgh Sausage」という名称でレシピが収載されている。当時のハンバーグはみじん切りの牛肉、スエット、スパイスで構成されていた。
1870年代、多くのドイツ人がハンブルクからアメリカに渡るようになると、移り住んだドイツ人がアメリカでもドイツの郷土料理であるフリカデレを愛食し、ハンバーグは伝わった。ハンブルクから広まったこの肉料理は、アメリカで「ハンブルクの厚肉焼き」を意味する「ハンバーグステーキ (Hamburg steak) 」と呼ばれるようになった。
しかし、当時のアメリカにおけるハンバーグの品質は決して高いものではなかった。ハンブルクはホルスタインの原産地として知られるドイツ・ホルシュタイン州と隣接しており、上質な牛肉を生産していたが、当時のアメリカのハンバーグは低品質の肉の切り身から作られていた。
現在、アメリカにおいてハンバーグが確認できる最古の文献は、1873年のニューヨークに存在したレストラン、デルモニコ (Delmonico's) のメニュー表であり、そこには「hamburger steak」と記されている。
このレストランでは、実際にチャールズ・ランホーファー(1836年 – 1899年)がハンブルクステーキの11セントプレートを顧客に提供したという記録も残っている。この価格は単純なビーフステーキの2倍にあたり、ハンバーグは高級食材として位置づけられていた。また、1894年にチャールズ・ランホーファーが出版した『The Epicurean:A Complete Treatise of Analytical&Practical Studies』という本には、「hamburger steak」のリストが掲載されている。
1876年、フィラデルフィア博覧会でドイツ人移民が多くのドイツ料理店を出店すると、当時珍しかったハンバーグは人気を博し、アメリカでも広く知られるようになった。