ノイタミナ
『ノイタミナ』(英語表記 - noitaminA)は、フジテレビが製作し同系列各局で放送されている深夜アニメの番組枠名称。
概要・沿革[編集]
誕生への経緯[編集]
フジテレビでは2001年4月期より深夜アニメを継続して放送していたが、2004年9月の2番組の終了をもって一旦消滅。それから半年後の2005年4月期からの復活に当たり、番組枠に命名されたのが『ノイタミナ』である。『ノイタミナ』という名称は「Animation」(アニメーション)のローマ字表記を逆転させて発音したもので、「アニメの常識を覆したい」「すべての人にアニメを見てもらいたい」という制作スタッフの想いに由来する。しかし、枠開始当時にフジテレビでプロデューサーを務めた高瀬敦也曰くそれは後付けの由来であり、実際には小室哲哉のレーベル「ORUMOK RECORDS」のパクリであるとのこと。
『アニカンR Vol.3』での豊島雅郎アスミック・エース エンタテインメント社長(当時)へのインタビュー記事によると、本枠誕生の発端はアスミックが『ハチミツとクローバー』の実写版を制作したいと集英社へ交渉したところ、集英社側が「アニメ化が先」という条件を出してきたことに始まった。
この頃、タイミングよくジェンコからアニメ化の希望を聞いていたアスミックは、再度集英社と『ハチミツとクローバー』のアニメ化について交渉を行う。集英社側はアニメ化において「放送時刻は遅くとも25時台まで」と提示した。当初は2004年秋からの放送を予定していたジェンコ・アスミック両社であったが、この条件を満たす放送局が決まらず企画は一時中断した。
しかし、中断から程なくして女性向けの作品を探していたフジテレビが名乗りを上げ、アニプレックス、SME等のソニーグループ企業や電通などが製作に参加して『ハチミツとクローバー』の2005年4月期からのテレビアニメ化計画が本格始動。その後、別企画として動いていた『Paradise Kiss』も『ハチミツとクローバー』に続くフジテレビの新作アニメとして放送することが決定。そして両作品を放送する番組枠に新ブランドを冠する流れが出来上がり、『ノイタミナ』という名称が与えられた。
この経緯により、本枠で放送される作品にはフジテレビの他に電通やSMEグループ各社がほぼ一貫して関与している。
放送作品の傾向[編集]
前述の経緯により、枠創設からしばらくは少女漫画原作の作品が主流で、従来アニメを見ないと思われていたF1層を意識した展開を図っていた。企画担当の松崎容子プロデューサー(以下敬称略)は『アニメージュ』などのアニメ雑誌[要文献特定詳細情報]で「女性をターゲットにしている」とコメントしたこともある。また、『アニメージュ』2007年8月号のノイタミナの特集において、以前企画を担当していた金田耕司元プロデューサー(現・制作局長)は、「普通の人たちに観てもらいたいという気持ちで、女性向けだけに立ち上げたつもりはない」とコメント。また、同様の内容を高瀬敦也がアニカンR TV2008春改編超特集号で説明していた。『月刊ニュータイプ』2008年4月号内の特集で松崎は「主な視聴者層を意識的に変化させてきた」ともコメントしている。なお、2019年7月期に放送した『ギヴン』は初のBLものをメインとしたコミック雑誌の連載作品が原作となった。
2009年4月期には初のオリジナル作品となる『東のエデン』を放送。同作品は「一般性とオタクカルチャー双方を狙うようになった」という試みが一番出た作品であるといい、それまでの視聴者だった女性層を引き継ぎつつ、アニメファンにも受け入れられる作品となった。その後も原作のある作品とのバランスを取りつつ、アニメ好きの視聴者へ軸足を移している。
2012年の『ブラック★ロックシューター』(2012年シリーズ)以降、VOCALOID楽曲を原作とした作品や、ネット発のクリエイターが参加した作品もいくつか放送している。
オープニングジングル[編集]
番組の放送開始時には5秒間の『ノイタミナ』枠のオープニングジングルが流れる。2011年7月期まではフジテレビとBSフジ以外のネット局では『ノイタミナ』の名称を使用せずに放送していたため、ジングルもこの2局のみで使用されたが、同年10月期からは全てのネット局で『ノイタミナ』枠の名称を使用することになり、全てのネット局でジングルが挿入されている。
現在のジングルは4代目で、2020年の枠設立15周年を記念して誕生したマスコットキャラクター「ミナとノイタン」が描かれている。キャラクターデザインは羽海野チカが担当した。BGMは初代のものが継続して使用されている。
初代のジングルは2010年1月期まで使用され、内容は「Animation」と表示された後に文字の並びが逆になり『noitaminA』および『ノイタミナ』のロゴが現れるというものである。放送作品によってはロゴの色が異なる色に変更される場合があった。同年4月期に2代目のものに更新され、2014年1月期まで使用された。
枠設立10年目を迎えた2014年4月期より3代目のものにリニューアルされ、#10周年企画として制作された短編アニメ『ポレットのイス』に登場したポレットとイスが登場した。
2019年1月期の『約束のネバーランド(Season 1)』の最終回では、この回限りの特別なジングルが使用された。
10周年企画[編集]
2014年には「ノイタミナ 10th Anniversary」として、既存のテレビアニメのみならず映画やインターネットなどの他媒体でも展開することを発表。映画は「ノイタミナムービー」と称し、テレビアニメを経ずに直接映画化する作品にも「ノイタミナ」のブランドを与え、今後も映画作品の制作を活発化することを標榜している。
- webアニメーション
- スタジオコロリド製作による短編アニメ『ポレットのイス』をYouTubeノイタミナ公式チャンネルで配信。
- 劇場用アニメーション(ノイタミナムービー)
- 『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』が2015年1月より公開、同年には『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のスタッフが再集結して制作される『心が叫びたがってるんだ。』、及び“Project Itoh”と銘打って伊藤計劃による小説『虐殺器官』・『ハーモニー』・『屍者の帝国』が劇場用アニメーション作品として順次公開された。
放送枠・製作体制など[編集]
- 放送開始 - 2010年3月までは単枠(1枠30分1番組)体制。
- 2010年2月22日に行われた新作ラインナップ記者発表会で、同年4月より放送時間枠が30分拡大され、24:45 - 25:45の1時間枠・2部制になることを発表。
- 2010年4月 - 2015年3月までは2枠(2枠60分2番組)体制。
- 同年4月15日深夜(16日未明)の初回には枠の拡大を記念し、前半枠にてアニメ番組として史上初の生特番を行い、Ustreamやニコニコ生放送でも同時配信された。ロゴをリニューアルし、前半枠終了直前に関連情報などを伝えるミニコーナーを設ける。
- 2008年10月-2009年9月まで放送された『NOISE』枠は本枠の2枠目として構想されており、枠終了から半年のブランクを空けて統合されることとなった。
- 2011年10月 - 全ネット局で『ノイタミナ』の枠名称の使用を開始。ネット局が15局に拡大。これ以降、フジテレビにおける放送開始日が1月・4月・10月期は第2・3週目、7月期は第1週目からとなる。
- 2012年4月 - テレビ西日本が2年半振りにネット局に復活し、現在に至るまで地上波16局体制となる。
- 2013年4月 - BSフジがネット局から離脱し、地上波のみでの放送となる。
- 2014年4月 - サガテレビを除く全ネット局で、フジテレビと同日の放送に統一される。
- 2014年10月 - 関西テレビが新たに各作品の製作委員会に加わる。同局は2017年4月期の『冴えない彼女の育てかた♭』まで参加した。
- 2014年11月 - 「2015年ノイタミナプロジェクト発表会」において、枠の設立当初から携わってきたチーフプロデューサーの山本幸治が2015年9月をもってフジテレビを退職・独立し、森彬俊が“二代目編集長”として後任を務めることを発表。
- 2015年4月 - 放送枠が1枠体制に戻る。理由としては「ノイタミナムービーにより力を入れるため」と説明された。なお、2021年1月期のみ臨時で2枠体制となった。
- 2018年10月 - 兄弟枠となる『+Ultra』枠が新設される。
- 2022年 - 同年9月5日に行われたフジテレビの改編説明会にて、『ノイタミナ』枠や『+Ultra』枠がバラエティやドラマを含む他の深夜帯の番組と共に『ストリームZone』の1つとして位置づけられた。
- 2023年10月 - 中国アニメの日本語吹き替え版を主に放送する『B8station』枠が新設され、フジテレビの深夜アニメレギュラー枠が3枠となる。
- 2025年4月 - 開始20周年を記念して放送枠を23時台に移動し、併せてフジテレビ系列全国ネットとなる予定(曜日は2024年12月時点で非公表)。
評価[編集]
初回最高視聴率は『東京マグニチュード8.0』の5.8%。全体における最高視聴率は『のだめカンタービレ 巴里編』第9話の6.6%、瞬間最高視聴率7.4%。
2007年には番組枠としての『ノイタミナ』が第13回AMDアワード年間コンテンツ賞・優秀賞を受賞した。
2010年には、本枠で放送された『四畳半神話大系』が文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で、テレビアニメ史上初となる大賞を受賞した。
同一作品の実写版との連動[編集]
『ノイタミナ』枠でのテレビアニメの放送に前後して、同一の原作がテレビドラマや映画作品などとして実写化された事例も過去にいくつかある。中には、テレビアニメ版と相互に連動してプロモーションが行われたり、作品内にアニメ版の要素が盛り込まれたりした事例もある。主な事例は以下の通り。
積極的な連動例
2007年1月期の『のだめカンタービレ』では、先行して放送された実写ドラマ版との相互連動が行われ、アニメ版スタッフが製作した劇中アニメが実写ドラマ内で使用されるなどの試みがなされた。
2014年1月期の『銀の匙 Silver Spoon』(第2期)では、テレビアニメの放送と同時期に実写映画版が上映された。連動企画として、実写映画版で主演を務める中島健人(Sexy Zone)がアニメに出演した。実写映画版ではTBS系列基幹局が製作委員会に入っているため、テレビのネットワーク系列を超えた連動企画となった。
2015年には『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』が実写化され、スペシャルドラマが同じフジテレビ系列にて放送。ノイタミナ枠で放送されたオリジナルアニメとしては初の実写化となった。
2017年1月期の『クズの本懐』では、同時期に同じフジテレビにて実写ドラマ化され、アニメとドラマの相互連携として、実写ドラマで主役を演じる吉本実憂がアニメにゲスト出演。アニメ版で主演を務めた安済知佳もドラマ版の最終話にゲスト出演した。
同年10月期の『いぬやしき』では、安堂直行役の本郷奏多がアニメ版の声優と翌2018年公開の実写映画版の俳優として共通で演じる連携を行った他、アニメ版でオープニングテーマを担当したMAN WITH A MISSIONが映画版の主題歌も担当した。
特段に連動していない例
2007年に放送された『もやしもん』が、2010年に『ノイタミナ』枠としては初めてテレビドラマとして放送された。ただし、アニメとドラマはそれぞれ独立した作品として制作されており、相互の連携は特に行われなかった。2018年には月9枠で『海月姫』の実写ドラマ版が放送されたが、こちらもアニメ放送から7年近く経っていたこともあり、独立した別の作品として展開された(ただし、ドラマの放送期間中にフジテレビでアニメ版の集中再放送が行われた)。
2011年7月期に放送された『うさぎドロップ』は同時期に実写映画版が上映され、主題歌を共通にしていたものの、プロモーションでは特に連携はなされなかった。
2016年1月期に放送された『僕だけがいない街』は、放送期間中の同年3月より実写映画が公開されたが、特に連携したプロモーションは行われなかった(2017年7月にはフジテレビで映画の地上波初放送を行なった)。
この他にも、本枠でアニメ化された数ヶ月から数年後に実写映画化された作品(『Paradise Kiss』・『四月は君の嘘』など)が複数あるが、制作体制がアニメ版と実写版で異なることから、全く連携のない独立した作品として展開される事例が少なくない。
共通スタッフ[編集]
- チーフプロデューサー - 山本幸治→森彬俊(2代目)
- 過去のスタッフ
- 企画 - 金田耕司、松崎容子
- プロデューサー - 伊藤幸弘、細貝康介